東大塾長の山田です。
あなたは「良問の風」を知っている、もしくは使っているでしょうか?あるいは「存在は知っているけど、使おうか検討中」でしょうか?
物理の勉強中では
「この参考書をやれば本当に実力がつくのかな…?」
「ちゃんと理解できているんだろうか…?」
など、いろいろと不安になることがあると思います。
私の塾でも「良問の風」を使用しています。いわゆる中堅大学レベルを固めるのに非常に役立つからです。
この記事では、受験物理問題集「良問の風」について、徹底解剖しています。難易度や使い方、独学するときの効率的な勉強方法まで網羅しているのでぜひ参考にしてください。
1 「良問の風」とは
まずは「良問の風」が、どのような参考書なのかを解説していきます。
1.1 「良問の風」の難易度やレベル感について
まず「良問の風」は、著者である浜島清利氏のシリーズものです。以下の三部作ならなっています。
難易度やレベル感については「センター試験満点レベル~MARCH/中堅国立大」と考えてください。具体的には「センター試験レベルで一定の点数を取れるようになったら次に取り組む問題集」というイメージです。
一定レベルの基礎力が求められるので、基礎に不安がある場合や特定の分野だけ基礎が足りない場合は、まずは「物理のエッセンス」から仕上げていくことをおすすめします。
1.2 「良問の風」の特徴:参考書内部はこんな構成になっている
参考書の内部構成は以下のようになっています。
問題冊子は下の図を見るとイメージが掴めると思います。
【問題冊子】
- まとめ知識
- 扱う物理現象についてのコンパクトな説明と、解法や立式についてのまとめ知識が説明されています
- 演習問題
- 入試過去問題をアレンジした問題になっています。
- 論述問題
- 物理現象に対する定性的理解を深めるのにとても役立ちます。計算式ではなく文章で物理現象を説明する問題です。
- Answer(答えのみ)
- 答えのみ。解説は見ずに解き直すための配慮です。
各部分の内容や特徴は以下のようになっています。
- KEY POINT
- 問題を解く際に着眼すべきポイントをコンパクトに説明しています。間違った問題は、ここを読んでから解き直しをするとよいです。
- 問題解説
- 問題に対する考え方や、より深い理解のための解説がなされています。記述式解答の模範になるような立式根拠の記述も参考になります。
1.3 「良問の風」に取り組むべき人・そうでない人
前述した通り、「良問の風」に取り組むには、ある程度の基礎がないと効率的に勉強ができません。基礎が不十分なら、まずは基礎固めをすべきです。
目安としては、センター試験で7~8割程度の得点を取れる状態であれば、「良問の風」に取り組んでもOKです。一方でまだ基礎が完成していない場合は、基礎固めが優先です。その場合は姉妹書「物理のエッセンス」に取り組んだ方が良いです。
2 「良問の風」の効率的な勉強法について
ここでは、「良問の風」を効率的に勉強する方法をお話ししていきます。
2.1 著者の言葉の通りにやる
参考書のまえがきには「本書の使い方」がきちんと記されています。私自身も直接近くで高校生を指導していて、本当にその通りだな、という流れが書いてあります。これをヒントにしましょう。
参考書からの引用です。
- 重要事項のまとめの確認
- 問題を解く
→巻末のANSWERTで答え合わせをする
→誤った設問への再挑戦(別冊の解説のKEY POINTもヒントとして活用)
- 別冊の解説で詳しく検討(考え方をしっかり確認する。答えが合った設問でも得るところが多いはず)
→できなかった設問は解説を閉じて解答を再現できるか確認する。
- 間違えた設問は、後日再びやり直し、考え方を確実に定着させる
少し抽象的な部分もあるので、細かいところで迷うことがあるかもしれません。例えば「復習のタイミングってどうすればいいの?」とか。
なので、この筆者の言葉を噛み砕いて具体的にした勉強プランをこれからお話しします。がその前に、勉強の流れの前提をもう2つ知っておいてください。
2.2 単元毎に区切ってループする(復習法)
単元ごとに区切って、その単元をマスターしてからまた次の単元へ行く、という流れでやると良いです。程よい区切りを設けることで、復習のしやすさと効果、勉強スピードも変わってきます。
例えば波動分野では
1.波の性質
2.弦・気柱の振動
3.ドップラー効果
4.反射・屈折の法則
5.干渉
と5つの単元に分かれています。
「1.波の性質」をマスターしてから「2.弦・気柱の振動」へ行く、という流れでやりましょう。
2.3 解説を読むときの注意
解説を読むときに意識して欲しいのが、その解答の必然性です。
もし、解説を読んだときに「あれっ?よくわからない…」となったときは、
「なぜこの公式を使うのか?」
「なぜエネルギー保存則を使うのか?」
と自問自答します。その確認作業が理解度や実力を高めてくれるからです。
それでもわからない時は「物理のエッセンス」などに戻り、基礎をしっかりと固めてから再挑戦しましょう。
3 具体的な勉強スケジュールモデル
では、勉強法に前提知識を押さえたうえで、具体的な勉強法プロセスを紹介します。
3.1 単元内の勉強方法
まず、単元毎に区切って勉強を進めるのでした。その単元毎の勉強の流れです。
■単元1周目:解く→解き直す→解説確認
- まとめ知識を確認し、まずは解いてみる
重要事項を確認したうえで、まずは解いてみます。時間を測る必要は特にありませんが、いくらでも時間をかけていいのかというと、そうではありません。
目安として1~2分考えても解けない問題は飛ばして「×」印をつけておきます。物理の問題は大体が連動しているので、「×」以降の小問はすべて解けないことになりますが、仕方ないです。入試はそういう勝負ですので、「何としてもその部分の解法を身に付けなければ!」と気合いを入れましょう。
- 答え合わせ→解き直し→解説確認
1問解き終えたら、Answerを見て答え合わせをします。間違った問題については、解説冊子の「KEY POINT」を読んでからもう一度挑戦しましょう。それでも分からない場合は解説を確認します。
解説の確認は、合っていた問題も含めます。「考え方は正しかったか?」をチェックしましょう。間違えた問題については、解説の確認の後、解説の写経をしておきます。
以上の流れで単元内の問題をまずは1周やってみます。
■単元2周目以降:×が○になるまで反復
2周目以降は「×」の問題が解けるかどうかのチェックです。問題を読み、すぐさま立式ができて答えが出たら「○」をつけます。またダメだったら、もう一度理解し直しです。
こうして、単元内のすべての問題が「○」の状態になるまで繰り返します。
3.2 次の単元へ、そして分野毎復習
1つの単元が終わったら、次の単元も同じ要領でこなしていきましょう。分野内の単元がすべて終わったら、その分野を丸ごと復習します。
具体的にいうと、「例えば波動の単元をすべて終えたら、波動分野の演習問題を1からすべて解いていく」ということです。こうして「力学」「波動」「熱力学」「電磁気」「原子」の5分野をマスターしていきます。
※「原子」分野は必要な人のみ
4 「良問の風」が終わったら次にやること
「良問の風」を終えた人は、次は何をやっていけばいいのでしょうか?
ここでは目的別に合わせて、「良問の風」を終えた後のルートを紹介します。
4.1 MARCH/中堅国立志望の場合は「過去問演習」
「良問の風」で解法パターン演習は済んだので、後は過去問演習です。
過去問演習の詳しいやり方については「最短で難関大の物理を攻略するための3ステップ勉強法」の記事を確認してください。
4.2 さらなるレベルアップに「名問の森」
さらに上のレベルを目指す場合は「名問の森」をおすすめします。
この「名問の森」も良問の風と同じ方が書いています。シリーズの最上位版です。実際に解いてみて解説を読めばわかりますが、エッセンスから踏襲している「イメージを大事にしながら、基礎を積み上げて問題に対処する」という姿勢で解説がなされています。難関大の問題をさほど難しさを感じずに勉強を進めているでしょう。
ただ、この「名問の森」だけでは早稲田・慶応レベルに行くにはちょっと厳しいかなという印象があります。
そこで推奨するのが次のルートです。
4.3 最難関大学を目指す人に推奨する勉強ルート
最難関大学を目指す人への別ルートが、「標準問題精講」のマスターです。
これについても、詳しくは別の記事「最短で難関大の物理を攻略するための3ステップ勉強法」をご確認ください。
5 さいごに
5.1 「良問の風」で入試レベルの足固めはOK
「良問の風」をマスターすることで、入試レベルの基礎が固まります。MARCHや東京理科大なのであれば、過去問演習に入ってOKです。
過去問演習の際、「あ、これ良問の風でやった問題とほとんど同じだな」と感じることが多いことに驚くかもしれませんが、そうなっていれば大丈夫です。物理現象を読み解く力が相当ついていること現れですから。
ぜひ「良問の風」を使って、あなたの勉強を加速させてください。
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