静電エネルギーの公式と導出(エネルギー収支についても)

 

東大塾長の山田です。

このページでは、静電エネルギーについて詳しく説明しています。
静電エネルギーの導出や、エネルギー収支についての解説、入試レベルの問題を用いた内容確認を行うことで、静電エネルギーの体系的な理解が可能になっています。

ぜひ勉強の参考にしてください!

1.静電エネルギーとその導出

1.1 静電エネルギーとは

静電エネルギーとは、電場が持つエネルギーのことですが、今回は特にコンデンサーにおける静電エネルギーについて扱っていきます。(コンデンサーについての記事はこちらから

電気量\(Q\)、電圧\(V\)をもつ電気容量\(C\)のコンデンサーは、「静電エネルギー」を蓄えています。このとき、静電エネルギーは以下のように書き下すことができます。

静電エネルギー

\[\displaystyle\frac{1}{2}CV^2= \displaystyle\frac{1}{2}QV=\displaystyle\frac{Q^2}{2C}\]

上は一つの形さえ覚えておけば、あとは\(Q=CV\)の関係式を適応させて他二つの形も導き出すことができます。問題に応じて使い分けましょう。

1.2 導出

それでは導出を行います。

下図のように、はじめ帯電していない極板間距離\(d\)の極板に、電荷\(q, -q\)が帯電するまでに蓄えられるエネルギーを考えていきます。

今回の場合は、この操作に要する仕事以外にエネルギーに影響を与えるものがないので、仕事とエネルギーの関係より、この操作に要する仕事\(W\)が、コンデンサーの静電エネルギーになることが分かります。\(W\)を求めていきましょう。

微小電荷\(\Delta x\)を上の極板にどんどん運ぶことで、最終的に電荷\(+q\)が帯電したとしましょう。このとき、微小電荷を運ぶ際の外力の仕事は、

\[\Delta W=f_外 \cdot d\] \[\qquad =\Delta x E\cdot d\] \[\qquad =\displaystyle\frac{xd}{\varepsilon_0 S}\Delta x\]

の和を考えて、

\[W=\sum \frac{x d}{\varepsilon_{0} S} \Delta x\]

一般には、

\[\begin{aligned} W &=\int_{0}^{q} \frac{xd}{\varepsilon_{0}S} d x \\ &=\frac{q^{2} d}{2\varepsilon_{0}S}=\frac{1}{2} \frac{q^{2}}{c} \end{aligned}\]

となり、無事静電エネルギーの公式を導き出すことができました!

2. エネルギー収支

次に、入試で頻出のコンデンサーにおけるエネルギー収支について考えてみましょう。

2.1 エネルギー収支について

電池のスイッチを入れたとき、誘電体を挿入したときなどのとき、これらの操作が静電エネルギーやジュール熱に影響を与えます。このとき、エネルギーの供給分と行き先を考えると、以下のエネルギー保存則が成り立つことが分かります。

\[[電池のした仕事]+[外力の仕事]=[静電エネルギーの変化]+[ジュール熱]\]

このとき、左辺が供給分右辺が行き先になっています。この関係式は、丸暗記でなく意味を理解するようにして覚えましょう。

2.2 基本問題

上で学んだ関係式を用いて問題を解いてみましょう。

例題

(1)ある電気容量のコンデンサーを起電力\(2V\)の電池で充電すると、抵抗で\(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)のジュール熱が発生した。電気容量はいくらか。

(2)電圧\(V\)で充電された電気容量\(C\)のコンデンサーに電圧\(3V\)の電池をつなぎ、スイッチを入れた。このとき、抵抗で発生する熱量\(H\)を求めよ。

どこからエネルギーが生じてどこに流れるかをしっかりと意識して解いてみましょう!

それでは解答です。

解答

(1)

電気容量を\(kC\)とします。十分に時間がたつまでに、電池は\(Q=kC\cdot 2V\)の電気量を通すから、電池がした仕事は、

\[W=Q\cdot 2V=4kCV^2\]

であり、この仕事はコンデンサーの静電エネルギー\(\displaystyle\frac{1}{2}kC(2V)^2=2kCV^2\)とジュール熱\(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)に変わったので、エネルギー収支より

\[4kCV^2=2kCV^2+\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\] \[∴k=\displaystyle\frac{1}{4}\]

よって求める電気容量は、\(\displaystyle\frac{1}{4}C\cdots答\)

(2)

はじめ、コンデンサーは\(CV\)の電気量と\(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)の静電エネルギーを蓄えています。

この状態から\(3V\)の電池で充電すると、コンデンサーの電気量は\(3CV\)となり、この間に電池を通過した電気量

\[3CV-CV=2CV\]

とわかり、この間に電池がした仕事は、

\[2CV\cdot 3V=6CV^2\]

と分かります。最後にエネルギー収支を用いると、

\[6CV^2=\displaystyle\frac{1}{2}C(3V)^2-\displaystyle\frac{1}{2}CV^2+H\] \[∴H=2CV^2\cdots答\]

2.3 応用問題(難関大入試レベル)

次に、少し難しめの問題を解いてみましょう。といってもすることは前の問題と変わりません。少し問題設定が複雑になっただけなので、気負わずしっかりと解きましょう!

問題

真空中(誘電率\(\varepsilon_0\))において、一辺の長さが\(a\)で面積\(S\)の極板二枚が、間隔\(d\)で並べられれた平行平板コンデンサーがある。この間に、極板と同じ形で、厚さ\(d\)、誘電率\(\varepsilon(\varepsilon>\varepsilon_0)\)の誘電体板が挿入されている。

極板を電池につないで充電した後、スイッチを閉じたまま、外力を加えて個の誘電体板を右方向へゆっくりと引き出した(下図参照)。このとき、\(0≦x≦a\)とする。また、媒質の誘電率として記号\(\varepsilon\)を用いても良い。

以下の問いに答えよ。

(1)極板間の真空部分の長さが\(x\)になったときの、極板電荷\(Q\)とコンデンサーに蓄えられている静電エネルギー\(U\)を求めよ。

(2)誘電体を\(x\)から右向きに\(\Delta x\)ゆっくり引き出した。このときの、極板上の電荷変化\(\Delta Q\)と静電エネルギー変化\(\Delta U\)を求めよ。

(3)(2)で電池がした仕事を求めよ。

(4)上図の状態で、誘電体板に働く電気的な力の大きさと向きを答えよ。

先ほどの例題と同様のことをやるだけです!(4)ではエネルギー収支を考えてみましょう。

それでは解答です。

解答

(1)

並列コンデンサーの合成容量の公式\(C=\sum_{i} C_{i}\)を用いましょう。

全体の容量は、

\[C(x)=\varepsilon_0\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{Sx}{a}}{d}+\varepsilon_r \varepsilon_0\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{S(a-x)}{a}}{d}\] \[\qquad =\left\{\varepsilon a-\left(\varepsilon-\varepsilon_{0}\right) x\right\} \frac{S}{a d}\]

ただし、誘電率を\(\varepsilon=\varepsilon_r \varepsilon_0\)としました。

\(Q=CV\)より、

\[Q(x)=C(x)V=\left\{\varepsilon a-\left(\varepsilon-\varepsilon_{0}\right) x\right\} \frac{SV}{a d}\cdots答\]

よってこの時の静電エネルギーは、

\[U=\displaystyle\frac{1}{2}Q(x)V=\left\{\varepsilon a-\left(\varepsilon-\varepsilon_{0}\right) x\right\} \frac{SV^2}{2a d}\cdots答\]

(2)\(x→x+\Delta x\)だから、

\[\begin{aligned} \Delta Q &=Q(x+\Delta x)-Q(x) \\ &=-\left(\varepsilon-\varepsilon_{0}\right) \frac{S V}{ad} \Delta x \end{aligned}\cdots答\] \[\Delta U=-\left(\varepsilon-\varepsilon_{0}\right) \frac{S V^2}{2ad} \Delta x\cdots答\]

(3)先ほど考えたように、電子がした仕事とは、電池が運んだ電荷のエネルギー変化のことだから、

\[W=\Delta QV=-\left(\varepsilon-\varepsilon_{0}\right) \frac{S V^2}{ad} \Delta x \cdots答\]

(4)エネルギー収支より

\[W+F_外 \Delta x=\Delta U\]

日本語で表すのならば、「エネルギー変化は、電池のした仕事と外力のした仕事の和である」となります。これを解くと、

\[F_外 =\left(\varepsilon-\varepsilon_{0}\right) \frac{S V^2}{2ad} \]

このことにより、元の誘電体には、この外力と同じ大きさで逆向きの力が働いていたことが分かります。よって求める答えは、

\[力の向き:xが減る向き、大きさ:\left(\varepsilon-\varepsilon_{0}\right) \frac{S V^2}{2ad}\cdots答\]

解けたでしょうか?入試で頻出な考え方も用いられているので、しっかりと解けるようにしておきましょう。

3. まとめ

お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!

静電エネルギーまとめ

静電エネルギー:\(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2= \displaystyle\frac{1}{2}QV=\displaystyle\frac{Q^2}{2C}\)

エネルギー収支:\([電池のした仕事]+[外力の仕事]=[静電エネルギーの変化]+[ジュール熱]\)

6か月で偏差値を15上げるための動画

3件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

理系専門オンライン予備校LUS
※無料:過去問演習プリント/参考書解説授業
6か月で偏差値を+15上げる
理系専門オンライン予備校LUS
※無料:過去問演習プリント/参考書解説授業
6か月で偏差値を+15上げる