浸透圧とは(実験・公式)

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東大塾長の山田です。

このページでは浸透圧について解説しています。

ここでは、浸透圧の原理や計算方法など詳しく説明しているので、是非参考にしてください。

1. 半透膜、浸透

溶液中の特定の粒子だけを通す膜のことを半透膜といいます。浸透圧の単元では、大きい溶質粒子を通さず、小さい溶媒分子を通す膜のことをいいます。

下図のように、容器の中央を半透膜で仕切り、一方に純粋な溶媒、もう一方に溶液を両液面の高さが等しくなるように入れ、長時間放置します。

すると、溶媒分子が半透膜を通り純溶媒側から溶液側に移動し、溶液側の液面が上がり、純溶媒側の液面は下がります。そして、両液面の高さに一定の差がついたところで溶媒の移動が止まります。

このように、溶液と溶媒、または、濃度が異なる2つの溶液が半透膜などで区切られているとき、ある物質が膜を通過して拡散していく現象のことを浸透といいます。浸透は、全体の濃度が均一に近づく方向に進みます。

上の図の場合は純溶媒(濃度の低いほう)が溶液(濃度の高いほう)の方に流れ込み濃度差をなくそうとしています。

 

2. 浸透圧

上図のように、両液面の高さに差が生じるのは、溶液側から溶媒側に液面の高さの差h分に相当する圧力が働いているからです。そのため、液面の高さに差が生じないためには、溶液の液面に圧力をかけなければなりません。このとき、両液面の高さが等しくなるように加えた圧力のことを浸透圧といいます。

浸透圧は、両液面が等しいときの、「半透膜を押す溶媒の圧力」と「半透膜を押す溶液の圧力」の差でもあります。また、溶媒が半透膜を通過し、溶液側に浸透しようとする圧力であるともいえます。

浸透圧とは

① 浸透を抑えるために必要な圧力

② 半透膜を押す溶媒の圧力と半透膜を押す溶液の圧力との差

③ 溶媒が半透膜を通過して溶液側に浸透しようとする圧力

 

 

3. ファントホッフの法則

溶液の浸透圧\(π〔Pa〕\)は、溶質や溶媒の種類に関係せず、その溶液のモル濃度\(C〔mol/l〕\)や絶対温度\(T〔K〕\)によって変化します。溶液が希薄溶液であるときには、\(π\)は\(C\)や\(T\)に比例し、次の関係式が成り立ちます。

ファントホッフの法則

\[π=CRT\]

ただし、Rは気体定数

ここでのモル濃度\(C\)については沸点上昇度や凝固点降下度を求めるときに考慮した電離や会合の効果について考える必要があります。

次に、上で示した関係式を溶液の体積\(V〔L〕\)、溶液中の溶質の物質量\(n〔mol〕\)を用いて表してみましょう。モル濃度\(C\)は、\(C=\frac{n}{V}\)と表せるので、これを上の関係式に代入すると次の関係式が得られます。

ファントホッフの法則

\[πV=nRT\]

Rは気体定数

この式は、気体の状態方程式と同じ形の式ですが、ここではファントホッフの法則と呼ばれます。

このように、浸透圧について上で示した関係式が成り立つことをファントホッフの法則といいます。

 

また、溶質の物質量\(n〔mol〕\)は、溶液中の溶質の質量\(w〔g〕\)、溶質のモル質量\(M〔g/mol〕\)を用いると、\(n=\frac{w}{M}\)と表せます。これより、浸透圧の関係式は以下のようにも変形できます。

ファントホッフの法則

\[πV=\frac{w}{M}RT\]

これより、電離も会合もしない溶質\(w〔g〕\)を溶媒に溶かし、\(V〔L〕\)の溶液とし、絶対温度\(T〔K〕\)におけるこの溶液の浸透圧\(π〔Pa〕\)を測定すれば、溶質の分子量\(M\)を求めることができます。

浸透圧はかなり小さな値まで読み取ることができるので、沸点上昇や凝固点降下では測定できなかった高分子化合物などの大きな分子量をもつ物質の分子量測定にも適しています。

 

4. 浸透圧の測定

浸透圧を測定する装置は2つあり、1つ目は2で示したU字管の中央を半透膜で仕切り、一方に純粋な溶液、もう一方に溶液を両液面の高さが等しくなるように入れ、長時間放置した後にできる液面差\(h\)を測定し、高さ\(h\)の溶液柱が示す圧力を算出するものです。

もう一方は下図のような装置を用いて上記と同様の実験を行い、\(h\)を測定し、高さ\(h\)の溶液柱が示す圧力を算出するものです。

このような液面差\(h\)から浸透圧を求める方法を紹介します。

浸透圧を求めるには、\(1.013\times10^5 Pa\)を示す水銀柱の高さが\(76.0 cm\)であることと、水銀の密度が\(13.6〔g/cm^3〕\)であることを用います。

まず、ここで用いる溶液を溶液Aとし、溶液Aの密度を\(d〔g/cm^3〕\)とします。

液面差が\(h〔cm〕\)であるとき、\(h〔cm〕\)の溶液Aの柱が示す圧力が、水銀柱において何cm分の圧力に相当するのかを考えます。水銀柱において\(x〔cm〕\)分の圧力にあたるとすると、

\[h〔cm〕\times d〔g/cm^3〕=x〔cm〕\times 13.6〔g/cm^3〕\]

の関係式が成り立ち、

\[x〔cm〕=h〔cm〕\times\frac{d〔g/cm^3〕}{13.6〔g/cm^3〕}\]

となります。

\(1.013\times10^〔Pa〕\)を示す水銀柱の高さが\(76.0 〔cm〕\)であることから、求める浸透圧\(π〔Pa〕\)は

\[1.013\times10^5〔Pa〕:76.0〔cm〕=π〔Pa〕:x〔cm〕\]

\[π〔Pa〕=1.013\times10^5 \times\frac{x}{76.0}\]

\[π〔Pa〕=1.013\times10^5 \times\frac{h}{76.0}\times\frac{d}{13.6}\]

と求めることができます。

 

5. 例題

ここでは、浸透圧に関する問題の具体例を紹介したいと思います。ただし、気体定数\(R=8.3\times10^3〔Pa・L/(K・mol)〕\)とし、答えは有効数字2桁とします。

問題1

塩化ナトリウム\(\rm {NaCl}\)\(1.17g\)を水に溶かして半透膜で仕切ったU字管に入れ、\(500ml\)の溶液を調整した。\(25℃\)のときのこの溶液の浸透圧は\(何Pa\)となるか求めよ。ただし、原子量は、\(Na=23\)、\(Cl=58.5\)とする。

解答1

ファントホッフの法則より浸透圧\(π〔Pa〕\)は

\[π=\frac{wRT}{MV}\]

となります。

また、塩化ナトリウムの電離を考慮すると、塩化ナトリウムは次のように電離します。

\[NaCl→Na^++Cl^-\]

よって、電離を考えたうえで値を代入すると、

\[π=\frac{1.17〔g〕\times2\times8.3\times10^3〔Pa・L/(K・mol)〕\times298〔K〕}{58.5〔g/mol〕\times0.5〔L〕}=1.97‥\times10^6〔Pa〕\]

\[≒2.0\times10^6〔Pa〕\]

したがって、答えは

答‥2.0×106〔Pa〕

 

問題2

ある非電解質を半透膜で仕切ったU字管の片側に溶解させ、生じた液面差を測定すると、\(27℃\)で\(11.3cm\)であった。この液面差に相当する浸透圧を求めよ。ただし、水銀の密度を\(13.6〔g/cm^3〕\)、水溶液の密度を\(1.0〔g/cm^3〕\)、\(1.0\times10^5〔Pa〕=76cmHg\)とする。

解答2

まず、水銀柱における液面の高さを\(x〔cm〕\)とすると、

\[1.0〔g/cm^3〕\times11.3〔cm〕=13.6〔g/cm^3〕\times x〔cm〕\]

\[x=\frac{11.3}{13.6}〔cm〕\]

となります。よって、求める浸透圧\(π〔Pa〕\)は

\[1.0\times10^5:76=π:\frac{11.3}{13.6}\]

\[π=\frac{11.3}{76\times13.6}\times1.0\times10^5=1.09‥10^3≒1.1\times10^3〔Pa〕\]

したがって、答えは

答‥1.1×103〔Pa〕

 

問題3

断面積\(1.0cm^2\)のU字管の中央部に半透膜を置き、左側に、純水を\(20ml\)を入れ、右側に水溶液中で電離も会合もしない分子性の物質を\(0.15g\)溶かした水溶液を純水と同じ高さになるように入れた。\(27℃\)のまま時間をおいて、液面を見ると、両液面の高さの差が\(4.0cm\)になっていた。このときのある物質の分子量を求めよ。ただし、水銀の密度を\(13.6〔g/cm^3〕\)、この水溶液および純水の密度を\(1.0〔g/cm^3〕\)、\(1.0\times10^5〔Pa〕=76cmHg\)とする。

解答3

まず、純水が溶液に浸透したことによる溶液の体積変化を考えます。

溶液は\(\frac{4.0}{2}cm\)上昇したので溶液の体積は\(20+1.0\times\frac{4.0}{2}=22ml\)になります。

次に、液面差\(4.0cm\)の溶液中が示す浸透圧\(π〔Pa〕\)を求めます。水銀柱における高さを考えて

\[π=1.0\times10^5 \times\frac{4}{76.0}\times\frac{1.0}{13.6}〔Pa〕\]

ファントホッフの法則の法則より、分子量\(M\)は次のように表せます。

\[M=\frac{wRT}{πV}\]

この式に上で求めたπと問題文に与えられた値を代入して、

\[M=\frac{13.6\times76\times0.15\times8.3\times10^3\times300}{4\times1.0\times10^5\times0.022}=4.38‥10^4\]

\[≒4.4\times10^4〔g/mol〕\]

よって、答えは

答‥4.4×104〔g/mol〕 

 

6. まとめ

最後に浸透圧についてまとめておこうと思います。

  • 浸透圧とは、浸透を抑えるために必要な圧力。半透膜を押す溶媒の圧力と半透膜を押す溶液の圧力との差。溶媒が半透膜を通過して溶液側に浸透しようとする圧力。

  • \(π=CRT\)の関係が成り立つことをファントホッフの法則という。

  • \[π〔Pa〕=1.013\times10^5 \times\frac{h}{76.0}\times\frac{d}{13.6}\]

 

浸透圧は出題されることが多いです。苦手とする人も多い分野ですが、原理を理解すれば間違えることはなくなります。

しっかりマスターしてください!

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