東大塾長の山田です。
このページでは、電磁誘導について詳しく解説しています。
電磁誘導をつかさどる「ファラデーの法則」「レンツの法則」を説明した後、その例や電磁誘導により引き起こされる様々な運動・現象、さらにはコイルの性質についても丁寧にアプローチしています。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 電磁誘導
まずは電磁誘導について簡単な説明を行います。
1.1 電磁誘導とは
コイルを検流計につなぎ、コイル内に棒磁石を出し入れした際に、検流計の針が流れます。これはコイル内に電流が流れたため、電磁力により検流計の針が動いたからです。(くわしくはこちら)こういった実験を中学や高校でした人も多いのではないでしょうか。

こうした現象のことを「電磁誘導」、この時生じた電流のことを「誘導電流」といいます。また、この時コイルには電流を流すもととなった「誘導起電力」が生じています。
この記事ではこの電磁誘導という現象について詳しく扱っていきます!
2. ファラデーの法則・レンツの法則
まずは、電磁誘導においてその誘導起電力の大きさや向きを決定する二つの法則について詳しく説明していきます。誘導起電力が分かるということは、その回路の様子が分かるということなので、これらの公式はとても重要です。しっかりと理解していきましょう。
公式の説明の前に、前提知識として「磁束(磁束密度)」について説明していきます。
2.1 磁束と磁束密度
電磁誘導は、明らかに磁場の変化と密接な関係があります。そこで、磁場の様子をどのように表現するかが大きな問題となります。
電磁誘導においては、磁場の強さは磁場\vec{H}ではなく、磁束密度\vec{B}と磁束\phiを用いて表されます。
磁場のある空間には磁束線が走っており、単位面積あたりの磁束線の本数がB本のとき、その空間の磁束密度がBであるとすることができます。すると面積Sを貫く磁束線の本数Nは
N=BS
と書き下すことができます。この本数Nのことを「磁束」といい、記号phiで表されます。
\phi=BS
上の式はあくまでも磁束と磁束が垂直な場合で、もし上図のように\vec{B}と平面の法線ベクトルとのなす角が\thetaの場合は
となります!必ず頭に入れておきましょう。
磁場と磁束密度についてさらに詳しいことを知りたい方は、こちらも参照してください!
2.2 ファラデーの法則・レンツの法則
次に、電磁誘導における超重要公式「ファラデーの法則」「レンツの法則」について扱います!
まずは形を見てみましょう。ファラデーの法則・レンツの法則は以下のように記述されます。
閉回路Cを貫く磁束\phiが変化するとき、その閉回路に生じる起電力の大きさ|V_{emf}|は、
|V_{emf}|=\left|\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\right|
となる(ファラデーの法則)
また、このときの起電力の向きは、「磁束の変化を妨げる向き」である。(レンツの法則)
ファラデーの法則は、「誘電起電力の大きさが磁束の変化率の大きさそのものである」ことを意味しており、この形は覚えてしまいましょう!
N巻きのコイルにおいて磁束\phiが変化したときに生じる起電力の大きさはどうなるでしょうか?
よくある間違えとしては、公式の形そのものである|V_{emf}|=\left|\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\right|があります。なぜ間違いかわかりますか?
上の公式は、閉回路における話です。閉回路とは文字通り閉じた回路のことで、コイルに例えるとコイル一周分になります。つまり、コイル一周において誘導起電力\left|\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\right|が生じているということです。
だから、そのようなコイルがN回巻かれているとき、全体の誘電起電力の大きさは
|V_{emf}|=N\left|\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\right|
となります!よく見受けられるミスなので注意しましょう!
レンツの法則については以下のように考えましょう!
下図のように、法線ベクトル\vec{n}を磁束密度\vec{B}の方向にとる(\cos\theta>0)と\phi>0になります。
ここで\vec{B}を大きくすると(面積を大きくしても良い)、磁束は増加するので、誘導起電力はその\phiの増加を妨げるように、もとの\vec{B}と逆向きの磁束密度\vec{B’}を作るような電流(下図青矢印)を流すような向きにとなります。

逆に、\vec{B}を小さくする(面積を小さくする)と、磁束\phiは減少するから、誘導起電力はその\phiの減少を妨げるように、もとの\vec{B}と同じ向きの磁束密度\vec{B’}を作るような電流(下図青矢印)を流すような向きにとなります。

2.3 電磁誘導の表現
大抵の場合は上のように、起電力の大きさと向きが分かればよいですが、磁束が増減を繰り返すような場合は、いちいち起電力の大きさと向きを求めると手間がかかってしまいます。そのようなときは、あらかじめどちらかの向きを正に決めておき、起電力の符号が自動的に決まるようにしてあげれば便利です。
そこで法線ベクトル\vec{n}に対して右回りを起電力の正の向きとします。そうすれば上の二つの図を考えたときに、
\begin{cases} 磁束\phi増加⇒V_{emf}>0\\ 磁束\phi減少⇒V_{emf}<0 \end{cases}
となります。したがってファラデーの法則は以下のように書き換えることができます!
V_{emf}=-\displaystyle\frac{d\phi}{dt}
多くの人は教科書や参考書でこの形のファラデーの法則を覚えるのではないでしょうか?この式のマイナスにはレンツの法則の意味も含まれていることが分かりました!しっかりと頭に入れておきましょう。
3. レンツの法則の力学的現れ
誘導起電力の向きが磁束の変化を妨げる向きになる、というレンツの法則ですが、この法則は力学的にはどのような意味を持っているでしょうか?磁場中を動く導体棒を例にとって考えてみましょう!
3.1 磁場中を動く導体棒

レールad, bc(間隔l)の上に質量mの導体棒を直角におきます。レール間には磁束密度Bの一様な磁場が面に垂直に下から上にかけられています。
導体棒pqが右に速度vで動いているとき、閉回路abqpを貫く磁束\phiは増加するから、レンツの法則より誘導起電力は磁束の増加を妨げる向きに発生します。磁束の増加を妨げるためには、もとの磁束と逆方向の磁束密度B’を発生させる必要があるので、電流の向きは、a→p→q→bとなります。

ここで電流に働くローレンツ力の向きを考えてみましょう。上図の電流の向きに加えて、磁束密度の向きも一緒に図にすると、ローレンツ力fの向きは下図のようになります。
もちろん導体棒の運動の向きが逆向きならローレンツ力の向きも逆になります。
次に電流の大きさや、ローレンツ力の大きさについて考えていきましょう。
apの長さをxとすると、pqの速度はv=\displaystyle\frac{dx}{dt}、また面apqbの法線ベクトル\vec{n}を下から上の向きにしたとき、磁束は、\phi=Blxとなります。
よって誘導起電力を引き起こす電流Iは\vec{n}に対して右回り(q→p→a→b)を正にとったとき、
V_{emf}=RI=-\displaystyle\frac{d\phi}{dt}=-Bl\displaystyle\frac{dx}{dt}=-vBl
これより、
\begin{cases} v>0のとき:I<0\quad (p→q)\\ v<0のとき:I>0\quad (q→p) \end{cases}
となることが分かります!また、導体棒に働くローレンツ力(右向き正)は
F=IBl=-\displaystyle\frac{\left(IB\right)^2}{R}v
となり、速度方向と力の向きの関係は以下のようになります。
\begin{cases} v>0(運動右向き)のとき:F<0(力左向き)\quad (p→q)\\ v<0(運動左向き)のとき:F>0(力右向き)\quad (q→p) \end{cases}
この結果より、「誘導電流に働くローレンツ力はつねに速度と逆で運動を妨げる向き」になることが分かります!
また、その他の辺にかかる力はすべて内向きになっており、今回の場合は磁束の増加を妨げるよう面積を縮める向き、になっています。
これらの力の向きは、すべて磁束の増加を妨げる向きでありレンツの法則の力学的な表れであると解釈することができます!結局このような問題を考えるときは、磁束の変化を妨げるように電流や力を置いてあげれば十分なことが分かります。
3.2 レンツの法則とエネルギー保存則
次にエネルギー保存則について考えてみましょう。導体棒pqの運動方程式(右向き正)は、
m\displaystyle\frac{dv}{dt}=F=IBl
両辺にvを掛けると
mv\displaystyle\frac{dv}{dt}=IBlv\cdots①
①に関して、左辺を整理し、右辺にvBL=-RIを代入すれば
\displaystyle\frac{d}{dt}\left(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\right)=-RI^2
これはジュール熱の発生分だけ運動エネルギーが減少するというエネルギー保存則を表します。問題で問われることが多いかつ符号ミスも多いので、式の形で覚えるというよりも意味を覚えてしまう方がおすすめです。
運動方程式から定量的に導出したエネルギー保存則ですが、定性的に考えて導き出すことも可能です。
そもそもエネルギー保存則というのは、変化に対する効果が基の変化を抑制するように働く、といったものです。(例:ばねの自然長からの伸びが大きくなった時に速度が小さくなる)
これを先ほどの回路で考えてみると、電流が流れる限り抵抗でジュール熱が発生し続けるため発生した分だけ運動エネルギーは減らなけらばなりません。そのため、力は減速の向き、すなわち速度と逆向きにならなければいけないのです。
力の向きもエネルギー保存則も、意味を考えてあげることで頭に入れやすくなります。
4. 自己誘導
ここまでの電磁誘導の知識を用いて、新たな回路要素として「コイル」を考えていきましょう。
4.1 コイルと自己インダクタンス
回路要素としてコイルを考えていきます。コイルとは、下図のように導線をらせん状や渦巻き状に巻いたもののことを指します。

コイルは回路の一部をなし電流が流れるため、その電流の変化による磁束の変化により起電力が発生します。このことを「自己誘導」といい、このとき発生した起電力のことを「自己誘電起電力」といいます。
自己誘導が扱われるのは、交流の場合が多いので、上図の青矢印の方向を電流の正の向きとして、それと逆向きの時はI<0と考えます。また、このコイルを囲む面に対する法線ベクトル\vec{n}の向きを電流の正の向きに対し右ねじの向きとします。
このとき、この電流Iによって生じる磁束は、
と書けます。
ここで、電流の大きさをn倍したら、磁束の大きさもn倍になるため、\phi∝Iと分かります。また、電流の向きが逆だと\vec{B}は\vec{n}と逆向きになります。そのため、L>0となることが分かります!
この正の定数Lのことを「コイルの自己インダクタンス」といいます。
4.2 自己誘電起電力(コイルの回路におけるはたらき)
この磁束をファラデーの法則に代入すると以下の式を得ます。
この式は、「コイルの起電力は電流Iの正の向きと同じ向きを正として-L\displaystyle\frac{dI}{dt}」(①)ということを意味しており、これは「電流Iの正の向きと逆向きを正としてL\displaystyle\frac{dI}{dt}」(②)と同値です。①②を図に表すと下図のようになります。

つまり、コイルの電圧降下は「電流Iと正の向きと同じ向きを正としてL\displaystyle\frac{dI}{dt}下がる」(③)となることが分かりました!

回路方程式を立てる際に、コイルの電圧降下の向きで悩む人も多いですが、上の画像のような認識を持っておくと、符号ミスをしなくなると思うので、しっかりと頭に入れておきましょう。
5. 相互誘導
先ほどはコイルが一つだけの場合について扱いました。もしコイルが二つになったらお互いにどのように影響を及ぼすのでしょうか?考えていきましょう!
5.1 相互誘導
二つのコイルC_1, C_2が接近して置かれているとします。このとき、一方のコイルに電流が流れていると気に生じる磁束密度は、他のコイルをも貫いています。それゆえ他方のコイルにも誘導起電力が生じます。このような現象のことを「相互誘導」といいます。
以下のように巻かれている二つのコイルについて考えていきましょう。

コイルC_1とC_2の自己インダクタンスをそれぞれL_1, L_2とします。
5.2 相互インダクタンス
下図のように、コイルC_1のみに電流I_1を流し、C_2は開いておく。このときC_1に生じる起電力は、I_1の正の向きに
V_1=-L_1\displaystyle\frac{dI_1}{dt}
また、このときC_2を貫く磁場もI_1に比例しているから、C_2に生じる起電力の大きさは、比例定数M_{21}を用いて
\left|V_2\right|=M_{21}\left|\displaystyle\frac{dI_1}{dt}\right|
と表すことができます。V_2の符号はC_2の巻き方によって変化します。

逆に、下図のようにC_2にのみ電流I_2を流し、C_1を開いておくとそれぞれのコイルに生じる起電力は
V_{2}’=-L_2\displaystyle\frac{dI_2}{dt},\quad \left|V_{1}’ \right|=M_{12}\left|\displaystyle\frac{dI_2}{dt}\right|
となります。

ここで先ほど用いた比例定数M_{12},M{21}に関してですが、この二つに関しては以下の関係が成り立ちます。
M_{21}=M_{12}
この定数は簡単にMと書かれることが多く、この比例定数のことを「相互インダクタンス」といいます。
V=-M\displaystyle\frac{dI}{dt}
*マイナスはレンツの法則の表れ
5.3 電圧と巻き数
二つのコイルが重ねて置かれている場合や、磁束密度の漏れがないような鉄心にコイルが巻かれている場合(つまりは磁気漏れがない)、二つのコイルは同一の磁束密度に貫かれています。
コイルC_2を開いており、C_1に電流I_1を流したときに発生した磁束密度をBとします。二つのコイルの断面積はSとします。このとき、コイル一巻きあたりを貫く磁束はどちらのコイルにおいても\phi=BSであり、コイルC_1, C_2の巻き数をN_1, N_2としたとき、それぞれの起電力の大きさは
\begin{cases} \left|V_1 \right|=\left|\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\right|\times N_1=\left|\displaystyle\frac{d}{dt}(BS)\right|\times N_1\\ \left|V_2\right|=\left|\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\right|\times N_2=\left|\displaystyle\frac{d}{dt}(BS)\right|\times N_2 \end{cases}
したがって
\left|V_1\right|:\left|V_2\right|=N_1:N_2
となり、「端子電圧の大きさは巻き数に比例する」ことが分かりました!
6. まとめ
お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!
磁束と磁束密度:\phi=BS\cos\theta

ファラデーの法則:V_{emf}=-\displaystyle\frac{d\phi}{dt}
ただしこの式には、誘導起電力の向きは、「磁束の変化を妨げる向き」である、というレンツの法則の表れでもある。
コイルの自己誘導:V_{emf}=-L\displaystyle\frac{dI}{dt}
コイルの相互誘導:V_{emf}=-M\displaystyle\frac{dI}{dt}
端子電圧の大きさは、コイルの「巻き数」に比例する。