磁場と磁束密度の公式まとめ

東大塾長の山田です。

このページでは、磁場と磁束密度について説明しています。

最初に磁場と磁束密度についての基本的な説明をした後に、電流が作る磁場の公式を扱い、最後に磁場が与える力について詳しくまとめています。

ぜひ勉強の参考にしてください!

1. 磁場と磁束密度について

まずは磁場と磁束密度について詳しく説明していきます!

1.1 磁場とは

電場が荷電粒子に力を及ぼす空間の性質である一方、「磁場」運動している電荷に力を及ぼす空間の性質のことを言います。

つまり、はじめに荷電粒子お制止させた時に受ける力を測定したのちに、荷電粒子に速度を与え、その時に力が変化したのならば、その空間には磁場があると言えます。

1.2 磁場におけるクーロン則

磁場の例として磁石がある空間を考えてみましょう。磁石同士の間には力が生じます、この力のことを「磁気力」といいます。同種の磁極間には斥力がはたらき、異種の磁極間には引力が働きます。

下図のように、磁極の強さ(磁気量)が\(m_1, m_2\)のN極・S極が距離\(r\)だけ離されておかれているとします。

このとき、二つの磁極に働く力の大きさは、

\[F=k_m\displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\]

ただし、\(k_m\)は比例定数で、

\[k_m=\displaystyle\frac{1}{4\pi μ}\]

です。\(μ\)は透磁率といって、周りの媒質によって変化します。

と書き下すことができます。これを磁気に関するクーロンの法則といいます。(クーロンの法則についてはこちら

この公式が出てくることはあまりありませんが、教科書にも載っているので頭に入れておくと良いでしょう。

1.3 磁場と磁束密度

空間の物理的性質としての磁場を表す物理量としては「磁場\(\vec{H}\)」「磁束密度\(\vec{B}\)」があります。ここではこの二つについて詳しく説明していきます。

磁場

j磁場について

磁場\(\vec{H}\):ある場所において1Wbの磁極が受ける力の大きさのことで、向きはその場所においてN極を置いた時に受ける力の向きに等しい。

磁場の単位は、

\[[\rm{N/Wb}]\]

例えば、磁場が\(\vec{H}\)で表される磁場において、\(m\)[Wb]の磁極を置いたときの磁極が受ける力\(\vec{F}\)は、

\[\vec{F}=m\vec{H}\]

となります。定義と合わせて頭に入れておくと良いでしょう!

磁束密度

先ほどは磁極の強さに対応する量として磁場\(\vec{H}\)を設定しましが、物理現象においては磁極が受ける力よりも電流が受ける力を議論することが多いです。そこで、電場\(\vec{E}\)に対応する量として「磁束密度\(\vec{B}\)」を定義します。

磁束密度について

磁束密度\(\vec{B}\):単位面積当たりの磁束の強さ⇔単位長さ当たりの導線が、単位電流あたりに受ける力の大きさ

磁束密度の単位は、\[[\rm{T}]=[\rm{Wb/m^2}]\]

二つの定義どちらの重要なので頭に入れておきましょう。特に二つ目の定義「単位長さ当たりの導線が、単位電流あたりに受ける力の大きさ」は記事後半で詳しく解説するのでそちらを参考にしてください!

二つの関係

磁場\(\vec{H}\)と磁束密度\(\vec{B}\)の間には以下の関係が成り立ちます。

磁場と磁束密度の関係

\[\vec{B}=μ \vec{H}\]

このときの比例定数\(μ\)は、クーロンの法則でも登場した「透磁率」です。とても登場頻度が高い関係式なので、かならず頭に入れておきましょう。

2. 電流が作る磁場

次に、電流が作る磁場について考えていきましょう。電流が流れているところには必ず磁場が発生します。以下の三パターン「直線電流」「円形電流」「ソレノイド」において、磁場がどのように表されるかについて扱っていきます。

2.1 直線電流

直線電流\(I\)が作る磁場は電流の周りに渦巻き状に分布し、電流から垂直距離\(r\)離れた位置では以下のように表記することができます。

直線電流

大きさ:\(H(r)=\displaystyle\frac{I}{2\pi r}\)

向き:\(I\)に垂直な面内で\(I\)に対して右回り(\(I\)の向きに右ねじを回す向き

2.2 円形電流

次に、一巻き円形コイルに電流を流したとき、中心に作られる磁場について考えていきます。半径\(r\)の円形電流\(I\)の中心における磁場は以下のように表すことができます。

円形電流

大きさ:\(H(r)=\displaystyle\frac{I}{2r}\)

向き:\(I\)に垂直な面内で\(I\)に対して右回り(\(I\)の向きに右ねじを回す向き)

2.3 ソレノイド

最後のソレノイドに電流を流したときの磁場について考えていきます。ソレノイドとは導線をコイル状に巻いたもののことを言い、円形電流が重なったものと考えることもできます。

ソレノイドに十分な長さがある場合、内部の磁場は場所に依らず一定で、単位長さ当たりの巻き数を\(n\)、電流を\(I\)としたとき、磁場は以下のように表すことができます。

ソレノイド

大きさ:\(H=nI\)

向き:軸に平行で電流に対して右ねじの向き

ソレノイドに関しては、\(n\)が巻き数ではなく、単位長さ当たりの巻き数であることに注意してください。

これら三つの公式は必ず覚えるようにしましょう!

同じ式?違う式?

上では三パターンにおいて磁場の公式を紹介しましたが、すべて形が違いましたね。これらは全く違う式であると言えるでしょうか?

実はそうではありません。上三つの公式は、一つの法則「ビオサバール則」により導出されます。

ビオサバール則:\(\boldsymbol{H}=\int_{V} \frac{\boldsymbol{j}\left(\boldsymbol{r}^{\prime}\right) \times\left(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^{\prime}\right)}{4 \pi\left|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^{\prime}\right|^{3}} d^{3} \boldsymbol{r}^{\prime}\)

高校範囲ではないので導出は省略しますが、すべてこの式から導き出すことができるということは頭に入れておくと面白いと思います。

3. 荷電粒子が磁場から受ける力(ローレンツ力)

次に、磁場が荷電粒子に与える力について考えていきましょう。この力のことを「ローレンツ力」といい、以下のように表すことができます。

\[\vec{F_L}=q\vec{v}\times\vec{B}\]

これは

\[\displaystyle\frac{\vec{F_L}}{q}=\vec{v}\times\vec{B}\]

と変形することができ、一つのベクトルで大きさと向きを持ちます。

向きや大きさについては詳しく書いてあるこちらの記事を参照してください!

4. 電流が磁場から受ける力

次に、電流が磁場から受ける力についてですが、ここで磁束密度定義のうちの一つ、「単位長さ当たりの導線が、単位電流あたりに受ける力の大きさ」に着目してみましょう。

そもそも電流が流れている導線\(l\)あたりに磁場から受ける力\(F\)

\[\vec{F}=\vec{I}\times\vec{B}\times\Delta l\]

と書き下すことができます。\(\theta\)は電流と磁束密度のなす角です。このとき力の大きさ

\[\left|F\right|=\left|\vec{I}\right|\left|\vec{B}\right|l\sin\theta\]

となります。これは\(\theta=0\)、つまり電流と磁束密度が平行な場合には力が働かないことを意味しています。つまり、力を計算する場合は垂直成分のみを考えればよいということです。

そこであらためて垂直成分を\(B_⊥\)と考えてあげると

\[\left|F\right|=\left|\vec{I}\right|\left|\vec{B_⊥}\right|l\]

となって、

\[\left|\vec{B_⊥}\right|=\displaystyle\frac{\left|F\right|}{\left|\vec{I}\right|l}\]

と変形でき、「磁束密度とは単位長さ当たりの導線が、単位電流あたりに受ける力の大きさのこと」という定義にぴったり当てはまるようになります。教科書では、単に\(F=IBl\)と書かれていることも多いですが、上のようにして定義の成り立ちをしっかりと理解できると良いと思います!

電磁力についてさらに詳しく知りたい人は、こちらの記事もご覧ください!

5. まとめ

お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、ぜひ復習に役立ててください!

磁場・磁束密度まとめ

磁気に関するクーロン則:\(F=k_m\displaystyle\frac{m_1 m_2}{r^2}\)
ただし、\(μ\)は透磁率

磁場\(\vec{H}\):ある場所において1Wbの磁極が受ける力の大きさのことで、向きはその場所においてN極を置いた時に受ける力の向きに等しい。単位は\([\rm{N/Wb}]\)。

磁束密度\(\vec{B}\):単位面積当たりの磁束の強さ⇔単位長さ当たりの導線が、単位電流あたりに受ける力の大きさのこと。単位は、\([\rm{T}]=[\rm{Wb/m^2}]\)

関係式:\(\vec{B}=μ \vec{H}\)

電流が作る磁場公式

①直線電流

大きさ:\(H(r)=\displaystyle\frac{I}{2\pi r}\)

向き:\(I\)に垂直な面内で\(I\)に対して右回り(\(I\)の向きに右ねじを回す向き)

②円形電流

大きさ:\(H(r)=\displaystyle\frac{I}{2r}\)

向き:\(I\)に垂直な面内で\(I\)に対して右回り(\(I\)の向きに右ねじを回す向き)

③ソレノイド

大きさ:\(H=nI\)

向き:軸に平行で電流に対して右ねじの向き

磁場が与える力

ローレンツ力:\(\vec{F_L}=q\vec{v}\times\vec{B}\)

電磁力:\(\vec{F}=\vec{I}\times\vec{B}\times\Delta l\)

 

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