東大塾長の山田です。
このページではアンモニアソーダ法について解説しています。
仕組みについて詳しく説明しています。是非参考にしてください。
1. アンモニアソーダ法の仕組み
塩化ナトリウム\(NaCl\)と炭酸カルシウム\(CaCO_3\)を原料とした炭酸ナトリウム\(Na_2CO_3\)の工業的製法のことをアンモニアソーダ法といいます。(ソルベー法ということもあります。)
ここでは、どのようにして炭酸ナトリウム\(Na_2CO_3\)が生成されているのか、アンモニアソーダ法の仕組みを解説していきます。
アンモニアソーダ法では以下の5段階の反応が起こっています。
では、それぞれの反応について詳しく見ていきましょう。
①石灰石\(CaCO_3\)を熱分解する
まず、石灰石\(CaCO_3\)を加熱します。これによって、次のような反応が起こります。
\(CaCO_3 →CaO + CO_2\)
ここで生成した\(CO_2\)は後で使われます。
②塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を吹き込む
次に、①で生成した\(CO_2\)と\(NH_3\)を飽和食塩水に吹き込み次の反応を起こします。
\(CO_2 + H_2O →H_2CO_3\)
\(H_2CO_3 + NH_3 →{HCO_3}^- + {NH_4}^+\)
\(Na^+ + {HCO_3}^- →NaHCO_3\)
このようにして、\(NaHCO_3\)を得ます。\(NaHCO_3\)は溶解度が小さいため析出します。
これらの反応を合わせると次のような反応式になります。
\(NaCl + H_2O + CO_2 + NH_3 →NaHCO_3 + NH_4Cl\)
\(NaHCO_3\)が得られると同時に\(NH_4Cl\)が生成します。
③炭酸水素ナトリウム\(NaHCO_3\)を熱分解する
②で生成した\(NaHCO_3\)を加熱して分解します。
\(2NaHCO_3 →Na_2CO_3 + CO_2 + H_2O\)
ここで、この反応の目的物である\(Na_2CO_3\)を得ることができます。
④生石灰\(CaO\)を水に溶かす
①で生成した\(CaO\)は金属元素が含まれる酸化物なので塩基性酸化物です。
\(CaO\)は水と反応させると水酸化物が生成します。
\(CaO + H_2O →Ca(OH)_2\)
⑤消石灰\(Ca(OH)_2\)と塩化アンモニウム\(NH_4Cl\)を反応させる
②で生成した\(NH_4Cl\)と④で生成した\(Ca(OH)_2\)が反応して次のような反応が起こります。
\(2NH_4Cl + Ca(OH)_2 →2NH_3 + 2H_2O + CaCl_2\)
②で生成した\(NH_4Cl\)はこの反応では必要ない生成物ですよね?したがって、これを利用して効率よく反応を行えるようにしたいと考えたときに原料として入れた\(CaCO_3\)が役に立つのです。
\(CaCO_3\)が反応してできた\(Ca(OH)_2\)と\(NH_4Cl\)が反応することで\(NH_3\)が生成します。これは、②の反応に再利用できます。したがって、必要ない\(NH_4Cl\)から\(NH_3\)を作ることができるので効率よく反応を進めることができます。
①~⑤までの反応をすべて合わせるとアンモニアソーダ法の全体での反応式は
\(2NaCl + CaCO_3 →Na_2CO_3 + CaCl_2\)
\(NaCl\)と\(CaCO_3\)は安価で買えるため、アンモニアソーダ法は安価で大量に効率よく作ることができます。
ちなみに、\(NaCO_3\)はガラス工業に使われて、ケイ素\(SiO_2\)や石灰石\(CaCO_3\)とともに加熱し、ソーダガラスを合成することができます。
アンモニアソーダ法で起こる反応を図で表したものは以下のようになります。
2. まとめ
最後にアンモニアソーダ法についてまとめておこうと思います。
①石灰石\(CaCO_3\)を熱分解する
②塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を吹き込む
③炭酸水素ナトリウム\(NaHCO_3\)を熱分解する
④生石灰\(CaO\)を水に溶かす
⑤消石灰\(Ca(OH)_2\)と塩化アンモニウム\(NH_4Cl\)を反応させる
アンモニアソーダ法は副生物を反応させ、製造に必要な物質を作ることができます。原料も安いですし、効率よく生成できるので工業的製法に用いられるのです。
自分でアンモニアソーダ法の図が作れるようにしっかり理解してください!
①石灰石\(CaCO_3\)を熱分解する
②塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を吹き込む
③炭酸水素ナトリウム\(NaHCO_3\)を熱分解する
④生石灰\(CaO\)を水に溶かす
⑤消石灰\(Ca(OH)_2\)と塩化アンモニウム\(NH_4Cl\)を反応させる