東大塾長の山田です。
このページではオストワルト法について解説しています。
是非参考にしてください。
1. オストワルト法
白金を触媒としてアンモニアを酸化させることにより一酸化窒素を作り、これを原料に硝酸を作る方法のことをオストワルト法といいます。
オストワルト法では次のような3段階の反応が起こり、アンモニアから硝酸を作っています。
では、この3つの段階について詳しく説明していきましょう。
【①】
\(4NH_3 + 5O_2 →4NO + 6H_2O\)
この反応は白金触媒のもとで\(800℃\)という高温で起こります。この反応は次の2つの反応式を組み合わせてできています。(1)+2×(2)をすれば、①の式を得ることができます。
\(\begin{align}
\\
4NH_3 + 3O_2 &→2N_2 + 6H_2O ‥‥(1)\\
\\
N_2 + O_2 &⇄2NO ‥‥(2)\\
\\
\end{align}\)
ここで、2つ目の窒素から一酸化窒素が生成する(2)の平衡反応は、右向きの反応が吸熱反応になっています。
したがって、高温にすると温度を下げる方向、つまり、②の右方向に平衡が移動します。
そのため、高温の状態で、白金触媒を使うと一酸化窒素が多く生成します。逆に、低温にすると\(NO\)が生成しにくくなるので硝酸の収率が低くなってしまいますよね。
これが、①の反応を高温、白金触媒下で行う理由です。
【②】
①で作った\(NO\)は簡単に酸化され\(NO_2\)に変化します。
\(2NO + O_2 →2NO_2\)
【③】
②で生成した二酸化窒素\(NO_2\)を水に溶かすとよく溶け、こうしてできた水溶液が硝酸\(HNO_3\)となります。
\(3NO_2 + H_2O →2HNO_3 + NO\)
このとき、\(HNO_3\)が生成するのと同時に一酸化窒素\(NO\)が生成します。この\(NO\)は②の反応の原料であるので再利用することができ、オストワルト法は無駄なく反応を進めることができます。
①~③をもとにオストワルト法全体の反応式を作りましょう。
①~③の反応の中で\(NO\)と\(NO_2\)は中間生成物であるのでこれらを消去するように全体の反応式を作ります。①+②×3+③×2をすると次の式が得られます。
\(4NH_3 + 8O_2 →4HNO_3 + 4H_2O\)
これを4で割ると
\(NH_3 + 2O_2 →HNO_3 + H_2O\)
という式が導けるのでこれがオストワルト法全体の反応式になります。
2. まとめ
最後に、オストワルト法についてまとめておこうと思います。
①\(4NH_3 + 5O_2 →4NO + 6H_2O\)
②\(2NO + O_2 →2NO_2\)
③\(3NO_2 + H_2O →2HNO_3 + NO\)
全体:\(NH_3 + 2O_2 →HNO_3 + H_2O\)
オストワルト法は白金触媒で高温の条件で行われます。高温で行われる理由は、ルシャトリエの原理に基づいて考えれば簡単に理解することができると思いますが、触媒に白金が使われることは覚えないといけないので確実に覚えるようにしましょう!
また、オストワルト法の原料であるアンモニアはハーバーボッシュ法という製法で工業的に作られます。忘れてしまった人はこれを機に「ハーバーボッシュ法とは(触媒なども)」の記事で確認してください。
①\(4NH_3 + 5O_2 →4NO + 6H_2O\)
②\(2NO + O_2 →2NO_2\)
③\(3NO_2 + H_2O →2HNO_3 + NO\)