ボイル・シャルルの法則(計算例題)

東大塾長の山田です。
このページではボイル・シャルルの法則」について解説しています

比較的わかりやすい分野であるとは思いますが、式をしっかり覚えていないと間違えてしまいます。
ここでは、式やグラフをしっかり解説しているので是非参考にしてください。

1. ボイルの法則

 一定量の気体をピストン付きのシリンダーの中に入れます。

温度を一定に保ったまま、ピストンを押し体積を \( \displaystyle \frac{1}{2} \),\( \displaystyle \frac{1}{3} \),\( \displaystyle \frac{1}{4} \)と圧縮していくと,圧力は2倍,3倍,4倍と大きくなっていきます。
これは、体積が小さくなることで分子の壁への衝突回数が増えることにあります。

このように、温度が一定のとき、気体の圧力 \( P[Pa] \) は体積 \( V[m^3] \) に反比例します。
これをボイルの法則といいます。

ボイルの法則

温度が一定のもとでは、物質量が一定の気体について、圧力\(P\)は体積\(V\)に反比例する

\( \displaystyle PV=k(一定) または P_1V_1=P_2V_2=k \)

ただし、\(k\) は温度と物質量によって決まる定数

ボイルの法則をグラフで表すと上図のようになります。この曲線は等温曲線と呼ばれます。

上図において青線のときの方が温度が高くなります。
気体の状態方程式を考えればわかると思いますが、温度が高くなると \(k\) の値は大きくなり、グラフの曲線は原点から遠ざかります。

 

2. シャルルの法則

一定量の気体をピストン付きのシリンダーの中に入れます。

圧力を一定に保ったまま、気体を加熱していくと体積は大きくなっていきます。
温度が上がると分子の運動が激しくなり、壁に勢いよくあたり、衝突回数も増え圧力が上がります。
ピストンは重さがなく、自由に動けるようにしておきます(つまり、シリンダー内部の圧力と外部の圧力が等しくなるようにしておく)。
このとき、圧力が高まった内部の気体がピストンを押し、外部の気体の圧力と釣り合うまでピストンを持ち上げます。

このように、圧力が一定のとき、気体の絶対温度 \(T〔K〕\)は体積\(V〔m^3〕\)に比例します。
これをシャルルの法則といいます。

シャルルの法則

圧力が一定のもとでは、物質量が一定の気体について、絶対温度\(T\)は体積\(V\)に比例する

\( \displaystyle \frac{V}{T}=k または \frac{V_1}{T_1}=\frac{V_2}{T_2}=k \)

ただし、\(k\)は圧力と物質量によって決まる定数

 

圧力が一定のもとでは、一定量の気体について、体積 \(V\) は、温度が \( 1K \) 上昇(降下)するごとに、\(0℃\)における体積 \(V_0\) の \( \displaystyle \frac{1}{273} \) 倍ずつ増大(減少)します。

これをもとに、実際にシャルルが実験で導き出した式は、セルシウス温度を \( t[℃] \)、絶対温度 \( T[K] \)とすると、次の式でした。

\( \displaystyle V=V_0 \left(1+\frac{1}{273}t \right) \)

この関係式に,セルシウス温度と絶対温度の関係式 \( T=t+273 \) を代入し式変形すると,

\( \displaystyle \frac{V}{T}=\frac{V_0}{273} \)( \( \displaystyle \frac{V_0}{273} \) は定数、つまり \( k \) とおける)

となり、絶対温度でのシャルルの法則の式が得られます。

シャルルの法則をグラフで表すと上図のようになります。圧力が高いとグラフの曲線は黄色の線のように温度軸に近づきます。また、質量が大きいとグラフの曲線は赤線のように体積軸に近づきます。

 

3. ボイル・シャルルの法則

ボイルの法則 \( PV=k \) と、シャルルの法則 \( \displaystyle \frac{V}{T}=k \) は1つの式に組み合わせることができます。
これを、ボイル・シャルルの法則といいます。

ボイル・シャルルの法則

物質量が一定の気体について、体積\(V\)は、圧力\(P\)に反比例し、絶対温度\(T\)に比例する。

\( \displaystyle \frac{PV}{T}=k または \frac{P_1V_1}{T_1}=\frac{P_2V_2}{T_2}=k \)

ただし、\(k\)は物質量のみによって決まる定数

ボイル・シャルルの法則は、同一物質量のまま、「ある状態」から「圧力、体積、温度などが異なる別の状態」への変化を考えるときに用いられます。

 

【ボイル・シャルルの法則の誘導】

状態1(\(P_1,V_1,T_1 \))と状態2(\( P_2,V_2,T_2 \))の間に、中間状態(\( P_2,V’,T_1 \))を置くことにします。

すると、状態1と中間状態の間では、温度(\( T_1 \))が一定であるので、ボイルの法則が成り立ちます。
また、中間状態と状態2の間では、圧力(\( P_2 \))が一定であるので、シャルルの法則が成り立ちます。

上記の①式と②式から \( V’ \) を消去することにより、ボイル・シャルルの法則が得られます。

 

4. 計算問題

ここでは、ボイル・シャルルの法則を使った計算問題の例を紹介します。
以下、答えは有効数字2桁で表します。

問題1

\( \displaystyle 1.5\times10^5Pa \) で体積4.0Lの気体を、温度一定で \( \displaystyle 3.0\times10^5Pa \) にすると体積は何Lになるか。

解答1

温度が一定であるからボイルの法則 \( PV=k(一定) \) を用いる。

求める体積を \(V\) とすると、

\( \displaystyle 1.5\times10^5[Pa] \times 4.0[L] \\
= 3.0 \times 10^5[Pa] \times V[L]\)

となるから、これを解くと、

\( V = 2[L]\)

よって、

答‥2.0〔L〕

 

問題2

圧力一定で37℃で体積4.0Lの気体を、温度を250℃まで上げると気体の体積は何Lになるか。

解答2

圧力が一定であるからシャルルの法則 \( \displaystyle \frac{V}{T}=k(一定) \) を用いる。

求める体積を \( V \) とすると、

\( \displaystyle \frac{4.0[L]}{310[K]}=\frac{V[L]}{523[K]} \)

となるから、これを解くと、

\( \displaystyle V=6.74‥‥[K] \)

よって、

答‥6.7〔L〕

 

問題3

57℃、2.5Lで \( 1.0 \times 10^5 Pa \) の気体は、147℃、4.0Lで圧力は何Paになるか。

解答3

ボイル・シャルルの法則 \( \displaystyle \frac{PV}{T}=k(一定) \) を用いる。

求める圧力を \(P\) とすると、

\( \displaystyle \frac{1.0 \times 10^5[Pa] \times 2.5[L]}{330[K]} = \frac{P[Pa] \times 4.0[L]}{420[K]} \)

となるから、これを解くと、

\( \displaystyle P = 7.95[Pa] \)

よって、

答‥8.0×104〔Pa〕

 

5. まとめ

最後にボイル・シャルルの法則についてまとめておこうと思います。

ボイル・シャルルの法則まとめ
  • 温度が一定のとき、気体の圧力 \( P[Pa] \) は体積 \( V[m^3] \) に反比例する。これをボイルの法則といい、式は \( \color{red}{ PV = k } (一定) \) または \( \color{red}{ P_1 V_1 = P_2 V_2 = k } \) となる。
  • 圧力が一定のとき、気体の絶対温度 \( T[K] \) は体積 \( V[m^3] \) に比例する。これをシャルルの法則といい、式は \( \displaystyle \color{red}{ \frac{V}{T} = k } \) または \( \displaystyle \color{red}{ \frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2} = k } \) となる。
  • ボイルの法則とシャルルの法則を組み合わせたものをボイル・シャルルの法則といい、式は \( \displaystyle \color{red}{ \frac{PV}{T} = k } \) または \( \displaystyle \color{red}{ \frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2} = k } \) となる。

ボイルの法則とシャルルの法則を覚えればボイル・シャルルの法則は自分で導き出せるようになります。

ボイルの法則、シャルルの法則についても気体の状態方程式を考えれば理解できると思います。
この2つの式が混同しないようにしっかり覚えてください!

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