東大塾長の山田です。
このページでは、LC回路の電気振動について詳しく説明しています。
LC回路の方程式を解くことで、数学的に振動の様子を考察し、その後図を用いて直感的な理解も図っています。さらに練習問題を解くことで、理論も演習もばっちりな内容になっています。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. LC振動回路について
1.1 LC振動回路の方程式
LC回路とは名の通り、コイルとコンデンサーのみが導線でつながれた回路のことです。今回は下図のように、充電した状態(電荷\(Q_0\))のコンデンサーを、時刻\(t=0\)にコイルにつないだ状態を考えていきます。
その後時刻\(t\)になったときの回路の様子を考えていきましょう。このときの電流の大きさは\(I\)で下図青矢印の向きを正にとります。また、このときのコンデンサーの電荷を\(Q\)とします。
このとき、キルヒホッフの法則(回路方程式)より
\[\displaystyle\frac{Q}{C}+L\displaystyle\frac{dI }{dt}=0\quad∴L\displaystyle\frac{dI }{dt}=-\displaystyle\frac{Q}{C}\cdots①\]
電流の定義より、
\[I=\displaystyle\frac{dQ}{dt}\cdots②\]
これは単振動の方程式(単振動の記事はこちらから)
\[m\displaystyle\frac{dv}{dt}=-kx\cdots①’,\quad v=\displaystyle\frac{dx}{dt}\cdots②’\]
とまったく一緒で、\(\omega=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}}\)とおけば、①の一般解は、
\[Q=A\sin(\omega t+\alpha),\quad I=\omega A \cos(\omega t+\alpha)\]
ととりあえず書くことができます。
①②①’②’は、
\[Q↔a, \quad I↔v, \quad L↔m, \quad\displaystyle\frac{1}{C}↔k\]
と置きかえれば入れ替わるので、数学的には同じ式であると解釈することができます。よって①②の一般解は、①’②’の一般解で、
\[\omega=\sqrt{\displaystyle\frac{k}{m}}↔\omega=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}}\]
と置きかえれば、回路方程式の一般解を求めることができます。
次に初期条件を考えると、\(t=0\)において、\(Q(0)=Q_0, I(0)=0\)で、これらを先ほどの一般解に代入すると、\(A=Q_0, \alpha=\displaystyle\frac{\pi}{2}\)と決まるので、結局この回路方程式の解は
となることが分かります!
回路全体としては\(\omega=\sqrt{\displaystyle\frac{k}{m}}\)より、周期
\[T=\displaystyle\frac{2\pi}{\omega}=2\pi\sqrt{LC}\]
で同じ挙動を繰り返すことが分かります!
それでは1周期の間ではどのような挙動を示すでしょうか?求めた解を用いて分析していきましょう。
1.2 振動の様子
LC回路の解は
\[Q=Q_0\cos\omega t,\quad I=-\omega Q_0 \sin\omega t\]
となりましたが、ここからどのようなことが分かるでしょうか?
まず、\(\displaystyle\frac{Q}{Q_0}, \displaystyle\frac{I}{\omega Q_0}\)の時間変化のグラフを考えてみましょう。(∵どちらも定数で、かつ三角関数の挙動が知りたい)今回は\(t=0~\displaystyle\frac{\pi }{\omega}\)(\(t=0~\displaystyle\frac{T}{2}\))
グラフは以下のようになります。
はじめ\(I<0\)だったことから、放電をしたことが分かります。もし、コイルに自己インダクタンスがなければ、大きな電流が流出してすぐに\(Q\)は減少しますが、実際は自己インダクタンスがあるためそうはならず、ゆっくり\(Q\)が減少し、\(|I|\)はゆっくりと増加します。
また、\(Q=0\)になったとき、極板間電圧も0となりますが、ここでも自己インダクタンスの影響ですぐには電流が0にはならず、そのまま流れ続けるので、コンデンサーは逆向きに充電されていきます。
回路の状態が単振動の方程式で表せることが、自己インダクタンスの働きの表れであることが分かりますね。
以上の議論より、\(t=0~\displaystyle\frac{T}{2}\)において回路は以下のような挙動を示すことが分かります。
これを基に、\(t=\displaystyle\frac{T}{2}~T\)の状態も考えてみると以下のようになります。
上のグラフと照らし合わせて把握すると良いでしょう!この回路の様子はすぐに書けるようにしっかりと理解できるようにしましょう!
1.3 エネルギー保存則
最後に、この回路におけるエネルギー保存則を考えていきましょう。
①②式を辺々掛け合わせて
\[\quad LI\displaystyle\frac{dI}{dt}+\displaystyle\frac{Q}{C}\displaystyle\frac{dQ}{dt}=0\] \[∴\displaystyle\frac{d}{dt}\left(\displaystyle\frac{1}{2}LI^2+\displaystyle\frac{1}{2}\displaystyle\frac{Q^2}{C}\right)=0\]
となり、以下のエネルギー保存則が導出できます。
\[\displaystyle\frac{1}{2}LI^2+\displaystyle\frac{1}{2}\displaystyle\frac{Q^2}{C}=\rm{const.}\]
この式は、コンデンサーとコイルのエネルギー和が一定であることとともに、コイルやコンデンサーで電力消費がない(エネルギー損失がない)ということも意味しています。
また、この時の一定値\(\rm{const.}\)は、\(\displaystyle\frac{1}{2}\displaystyle\frac{Q_0^2}{C}\)となります。
いつでも導き出せるようにしておきましょう!
2. 練習問題
ここまでの内容が理解できたか、問題を解くことでチェックしていきましょう!
起電力\(E\)の電池と容量\(C\)のコンデンサー、自己インダクタンス\(L\)のコイルが以下のようにつながれている。はじめスイッチSは閉じられている。
しばらく時間がたった後、スイッチSを切ったところ電気振動が始まった。このとき以下の問いに答えよ。
【問1】コンデンサーの電圧の最大値を求めよ。
【問2】極板1の電位が最大となるまでの時間を求めよ。
ある時間において、電気振動がどのような挙動をしているのかをしっかりと把握することがポイントです。しっかりと考えてみましょう。
考えてみましたか?
それでは解答です!
【問1】コンデンサーの電圧の最大値を求めよ。
スイッチを閉じているとき、コイルには電流\(I_0=\displaystyle\frac{E}{R}\)が流れていて、スイッチを開いた後、自己インダクタンスによりコイルが電流を維持しようとするために電気振動が始まります。
はじめ、静電エネルギーがないため、コイルだけがエネルギーを持っています。よって、最大電圧を\(V_{max}\)としたとき、エネルギー保存則より
\[\displaystyle\frac{1}{2}L{I_0}^2+0=0+\displaystyle\frac{1}{2}CV_{max}^2\]
これを解いて
\[V_{max}=\displaystyle\frac{E}{R}\sqrt{\displaystyle\frac{L}{C}}\cdots答\]
【問2】極板1の電位が最大となるまでの時間を求めよ。
振動周期と振動の様子を照らし合わせて考えていくと下図のようになります。
よって\(t=\displaystyle\frac{3}{4}T\)のときに極板1の電位が最大になることが分かったので、あとは\(T\)を計算してしまえばおしまいです。
ここでは、\(T\)を先ほどとは異なった、交流の知識を生かして求めていきましょう。
コイルとコンデンサーは並列に繋がれているため、最大電圧\(V_0\)は常に等しく、直列にもつながれているため、最大電流\(I_0\)の値も等しいです。よって
\[コンデンサー:V_0 =\displaystyle\frac{1}{\omega C}I_0,\quad コイル:V_0=\omega L I_0\]
となり、二式より
\[\quad\displaystyle\frac{1}{\omega C}=\omega L\] \[∴\omega=\sqrt{\displaystyle\frac{k}{m}}\]
が求まります!こちらのやり方もスマートなのでおススメです。結局求める答えは、
\[t=\displaystyle\frac{3}{4}T=\displaystyle\frac{3}{2}\pi\sqrt{LC}\cdots答\]
3. まとめ
お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に活用してください!
上図のLC回路において
\[Q=Q_0\sin\omega t,\quad I=-\omega Q_0 \sin\omega t\]
となり、周期は
\[T=\displaystyle\frac{2\pi}{\omega}=2\pi\sqrt{LC}\]
となる。この時の振動の様子は下図のようになる。
質問です。確認問題でスイッチを閉じて十分に時間が経ったあと、極板1には負の電荷が蓄積されるのでしょうか。また、確認問題問2では、答えに書いてあるはじめの状態がt=0だと思うのですが、そこはどのように決めれば良いのでしょうか。
LC回路のQなのですが、t=0のときQ=0になってしまうのですが、、、
あってる?
一番最初のCL回路の電流の正の向きを逆にした時のキルヒホッフの式や単振動もどきの式はどうなるか教えてほしいです。