東大塾長の山田です。
このページでは、交流理論(RLC直列回路・RLC並列回路)について詳しく説明しています。
丸暗記に終始してしまいがちなRLC並列・直列回路のインピーダンスの導出や、エネルギー保存則を考えることで、二つの回路の特性についてしっかりと理解することができます。
ぜひ勉強の参考にしてください!
0. 導入
交流理論を学ぶにおいて、RLC並列回路・直列回路のインピーダンスが出てきた際に多くの人が躓いてしまいます。
インピーダンスとはいうなれば回路の合成抵抗のことで、回路の電圧と電流の実効値をそれぞれ\(V_{eff},\quad I_{eff}\)としたとき、回路のインピーダンス\(Z\)は
\[Z=\displaystyle\frac{V_{eff}}{I_{eff}}\]
と表されます。
そんなインピーダンスですが、なぜ多くの人が躓くのでしょうか?
理由の一つに「インピーダンスの形が覚えられないから」というものがあります。RLC並列回路のインピーダンス\(Z_並\)と直列回路のインピーダンス\(Z_直\)の形は以下のようになります。
\[\left\{\begin{array}{l}{z_{並}=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\left(\displaystyle\frac{1}{R}\right)^{2}+\left(w C-\displaystyle\frac{1}{\omega L}\right)^{2}}}} \\ {z_{直}=\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C}\right)^{2}}}\end{array}\right.\]
勿論この公式を覚えるに越したことはないのですが、直列と並列がごっちゃになったり、そもそも式自体を間違える可能性もあります。
この記事においては解決策として、インピーダンスの導出を行うことで、この公式を丸暗記する必要がなくなります。そのため公式ミスがなくなり、ライバルとの差を付けることが可能になります!
まずは導出過程をしっかりと理解していきましょう!
1. RLC並列回路
まずは比較的簡単な、並列回路について扱っていきます。以下では、この回路のインピーダンス\(Z_{並}\)を求めることを目標にしていきましょう。(電圧は分かっているから電流が分かればよい!)
1.1 回路方程式(キルヒホッフ則)
上図のような回路を考えていきます。このとき、外部の交流電源の起電力\(E\)を、
\[E=V_0 \sin\omega t\]
とします。また、抵抗・コンデンサー・コイルに流れる電流をそれぞれ、\(i_R, i_C, i_L\)とおき、電流\(I\)を、\(I=i_R+i_C+i_L\)として定義します。また、コンデンサーは\(Q\)帯電しているとします。このとき、各素子における回路方程式は
\[\begin{cases}抵抗:E=Ri_R \\コンデンサー:E=\displaystyle\frac{Q}{C}\\コイル:E-L\displaystyle\frac{di_L}{dt}=0\end{cases}\]
となり、書き直せば
\[E=Ri_R=\displaystyle\frac{Q}{C}=L\displaystyle\frac{di_L}{dt}\cdots①\]
となります。図で下から上に見た電位がどこでも等しいことを用いて、いきなり上の式を書いてしまっても構いません!
1.2 電流の導出
次に、各電流を計算していきます。回路方程式より、
\[\begin{cases}i_R=\displaystyle\frac{E}{R}=\displaystyle\frac{V_0}{R}\sin\omega t \\i_C=\displaystyle\frac{dQ}{dt}=\displaystyle\frac{d}{dt}CE=\omega CV_0\cos\omega t\\i_L=\displaystyle\int \displaystyle\frac{E}{L}dt=\int\displaystyle\frac{V_0}{L}\sin\omega t=-\displaystyle\frac{V_0}{L\omega}\cos\omega t\end{cases}\]
数3の知識が必要ですが、基本的な計算のみで電流を導出することができました!
\(\displaystyle\frac{di_L}{dt}=\displaystyle\frac{E}{L}\)を積分したときの積分定数は、0とみなすことができます。
この積分における積分定数は、回路の電源の起電力に無関係な一定電流が、回路に流れていることを意味していますが、実際にそのような電流があったとしても抵抗により減衰されるので、交流理論においては「無視」できます。
1.3 インピーダンスの導出
それでは、インピーダンスを求めていきましょう。その前に、回路全体に流れる電流\(I\)を求めていきましょう。
回路全体に流れる電流\(I\)は、
\[I=i_R+i_C+i_L\] \[\quad =\displaystyle\frac{V_0}{R}\sin\omega t +\left(\omega CV_0- \displaystyle\frac{V_0}{L\omega}\right)\cos\omega t\] \[\quad =V_0 \left\{ \displaystyle\frac{1}{R}\sin\omega t +\left(\omega C- \displaystyle\frac{1}{L\omega}\right)\cos\omega t \right\}\]
三角関数の合成を用いてさらに変形してあげましょう。
\[\cos\alpha= \displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{R}}{\sqrt{\left(\displaystyle\frac{1}{R}\right)^{2}+\left(w C-\displaystyle\frac{1}{\omega L}\right)^{2}}},\quad \sin\alpha=\displaystyle\frac{\omega C- \displaystyle\frac{1}{L\omega}}{\sqrt{\left(\displaystyle\frac{1}{R}\right)^{2}+\left(w C-\displaystyle\frac{1}{\omega L}\right)^{2}}}\]
とすると、
\[I=V_0\sqrt{\left(\displaystyle\frac{1}{R}\right)^{2}+\left(w C-\displaystyle\frac{1}{\omega L}\right)^{2}}\sin(\omega t+\alpha)\]
となり、これより電流の実効値は
\[I_{eff}=\displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}}\sqrt{\left(\displaystyle\frac{1}{R}\right)^{2}+\left(w C-\displaystyle\frac{1}{\omega L}\right)^{2}}\] \[\quad =V_{eff}\sqrt{\left(\displaystyle\frac{1}{R}\right)^{2}+\left(w C-\displaystyle\frac{1}{\omega L}\right)^{2}}\]
したがってRLC並列回路のインピーダンス\(Z_{並}\)は
となることが分かりました!
1.4 エネルギー保存則
次に、この回路のエネルギー保存則について考えていきましょう。電源のする仕事率\(EI\)を考えると、この電源の仕事率は\(E(i_R+i_C+i_L)\)となり①を代入すると、
\[E=i_R^2 R+\displaystyle\frac{Q}{C}\displaystyle\frac{dQ}{dt}+Li_L\displaystyle\frac{di_L}{dt}\quad(i_C=\displaystyle\frac{dQ}{dt})\] \[\quad =i_R^2 R+\displaystyle\frac{d}{dt}\left(\displaystyle\frac{Q^2}{2C}+\displaystyle\frac{L}{2}i_L^2\right)\]
これは、単位時間あたりに電源がする仕事が、一部はジュール熱に、残りはコンデンサーとコイルのエネルギーの増加に用いられたことを意味しています。
コンデンサーやコイルのエネルギーは、それぞれに蓄えられていて電荷や電流が減少すれば再び回路に戻されますが、ジュール熱は熱損失として回路の外に行ってしまい、取り戻すことはできません。
したがって電力は抵抗だけで消費されます!
2. RLC直列回路
次に、直列回路について考えていきましょう。考える手順は並列回路の場合と同じで、インピーダンス\(Z_直\)の導出を目標にしていきましょう。(電圧は分かっているから電流が分かればよい!)
2.1 回路方程式(キルヒホッフ則)
上図のような回路を考えていきます。回路全体に流れる電流を\(I\)とおき先ほど同様、外部の交流電源の起電力\(E\)を
\[E=V_0\sin\omega t\]
とおきます。このときの回路方程式(キルヒホッフ則)は
\[V_0\sin\omega t=RI+\displaystyle\frac{Q}{C}+L\displaystyle\frac{dI}{dt}\cdots②\]
また、電流の定義より
\[I=\displaystyle\frac{dQ}{dt}\cdots③\]
となります。
2.2 回路方程式の解き方
上の回路方程式ですが、先ほどとは異なり各素子についての式がないためまったく別の観点から解いてあげる必要があります。
②③より、
\[V_0\sin\omega t=R\displaystyle\frac{dQ}{dt}+\displaystyle\frac{Q}{C}+L\displaystyle\frac{d^2Q}{dt^2}\cdots④\]
となります。
④式から解の形を予想してみましょう。右辺の各項には\(Q\)が登場しているので、\(Q\)の解を考えていきましょう。
左辺に\(\sin\omega t\)があるので、右辺にも\(\sin\omega t\)が来る必要があります。\(Q\)に\(\sin\omega t\)が含まれているとすると、\(\displaystyle\frac{dQ}{dt}\)には\(\cos\omega t\)が、\(\displaystyle\frac{d^2 Q}{dt^2}\)には\(\sin\omega t\)が含まれていることになり、三角関数の合成を用いて\(\sin\omega t\)の式にすることができるので、\(Q\)を\(\sin\omega t\)の式で表すと都合が良いと思われます。
\[Q=A\sin(\omega t+Φ)\]
とおくと、
\[I=\displaystyle\frac{dQ}{dt}=\omega A\cos(\omega t+Φ)=B\sin(\omega t+\alpha)\]
と電流を置けばよいことが分かります!このように\(I\)を設定して解いていきましょう。
2.3 インピーダンスの導出
ここで、
\[I=I_0\sin(\omega t+\alpha)\]
とおいてみましょう。このときの\(I_0\)は未知数です。これを④に代入すると、
\[右辺=RI_0\sin(\omega t+\alpha)+I_0\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C}\right)\cos(\omega t+\alpha)\] \[\qquad =I_{0} \sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}\] \[\qquad \times\left\{\displaystyle\frac{R}{\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}}\sin(\omega t+\alpha)+\displaystyle\frac{\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C}}{\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}}\cos(\omega t+\alpha)\right\}\]
ここで、
\[\begin{cases}
\cos\beta=\displaystyle\frac{R}{\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}}\\
\sin\beta=\displaystyle\frac{\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C}}{\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}}
\end{cases}
\]
とすると、
\[右辺=I_0\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}\sin(\omega t+\alpha+\beta)\]
これを④の左辺\(V_0\sin\omega t\)と比較すると、未知数の値として
\[I_0=\displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}},\quad \alpha=-\beta\]
が得られ、電流の値が求まりました!これより電流の実効値\(I_{eff}\)は
\[I_{eff}=\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}}}{\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}}\] \[\qquad =\displaystyle\frac{V_{eff}}{\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}}\]
したがって、RLC直列回路のインピーダンス\(Z_直\)は
\[Z_直=\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}\]
となることが分かりました!
2.4 エネルギー保存則
直列回路についてもエネルギー保存則を考えてみましょう。
②の両辺に\(I=\displaystyle\frac{dQ}{dt}\)を掛けてあげると、
\[E=RI^2+\displaystyle\frac{Q}{C}\displaystyle\frac{dQ}{dt}+LI\displaystyle\frac{dI}{dt}\] \[\quad =RI^2 +\displaystyle\frac{d}{dt}\left(\displaystyle\frac{Q^2}{2C}+\displaystyle\frac{L}{2}I^2\right)\]
が得られます。これも並列回路の場合とまったく同様で、電源のする仕事がジール熱及び、コンデンサーとコイルのエネルギーの上昇に用いられたと解釈することができます。
ここでも電力は抵抗だけで消費されます!
交流回路において、電力は抵抗だけで消費される。
3. まとめ
お疲れ様でした。最後に今回学んだ内容をまとめておくので、復習に役立ててください!
RLC並列回路
インピーダンス:\(Z_{並}=\displaystyle\frac{V_{eff}}{I_{eff}}=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\left(\displaystyle\frac{1}{R}\right)^{2}+\left(w C-\displaystyle\frac{1}{\omega L}\right)^{2}}}\)
RLC直列回路
インピーダンス:\(Z_直=\sqrt{R^{2}+\left(\omega L-\displaystyle\frac{1}{\omega C} \right)^2}\)
どちらの回路においても、電力は抵抗だけで消費される!
どのサイト、問題集でも2分のπ進む遅れると頭打ちな考えしか説明してなく、本質を理解したかったのでたすかりました。
やべー、このサイト神かもしれない