東大塾長の山田です。
このページでは、クーロンの法則を紹介して、そこから位置エネルギーやエネルギー保存則を導出し、最後に知識の確認として練習問題を紹介しています!
この記事を読めば、体系的にクーロン則を理解することが可能になります。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. クーロンの法則について
1.1 点電荷間のクーロン力(クーロンの法則)
\( Q_1 [\rm{C}] \)、\( Q_2[\rm{C}] \) に帯電した物体A、Bが \( r[\rm{m}] \) 離れて置かれているとき、物体間には静電気力が働き、その大きさ \( F[\rm{N}] \) は以下のように表されます。
これを「クーロンの法則」といいます。
この式は暗記必須です。間違いなく使えるようにしましょう!
以下に注意点を記しておきます。
*1 電荷が同符号(\( Q_1 Q_2>0 \))ならば、斥力(お互いに反発しあう力)となり、異符号(\( Q_1 Q_2<0 \))ならば引力となります。
*2 作用・反作用則より、二つの電荷が受ける力の大きさは等しく、同一作用線上にあります。
クーロンの法則の比例定数の大きさは、\( \displaystyle k ≒ 9.0\times10^9 [\rm{N\cdot m^2/c^2}] \) であり、電気素量が \( \displaystyle e ≒ 1.6\times 10^{-19}[\rm{C}] \)(1molだと、\( \displaystyle e \times 6.0\times 10^{23}≒9.6 \times 10^4 \))であることを考えると、電気の力は非常に強いことが分かります!
1.2 クーロン力の位置エネルギー
次に、クーロン力による位置エネルギーを考えてみましょう!
クーロン力の位置エネルギー \( U \) は以下のように表すことができます。
\( \displaystyle U = k \frac{Q_1 Q_2}{r} \)
先ほどの式に引き続き、この式も暗記必須です!
1.3 位置エネルギーの導出とエネルギー保存則
次に位置エネルギーの導出を行いましょう。
忘れてしまったときに公式を導き出せるようにしておくと便利なので、ぜひ頭に入れておきましょう。
今回は簡易のために以下の運動を考えてみます。
電荷 \(Q_1 , \ Q_2 \) の二物体同士の間のクーロン力を考えますが、電荷 \( Q_1 \) の物体を不動(基準)と考えていき、電荷 \( Q_2 \) の物体を注目物体とします。
このとき、物体Bの質量を \( m \) として考えていきます。
注目物体の運動方程式は、
\( \displaystyle m \frac{dv}{dt} = k \frac{Q_1 Q_2}{x^2} \)
両辺に\( \displaystyle v = \frac{dx}{dt} \) を掛けて、
\( \begin{align}
\displaystyle & mv \frac{dv}{dt} = k \frac{Q_1 Q_2}{x^2} \frac{dx}{dt} \\
\\
∴ \ & \frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2}mv^2 \right) = – \frac{d}{dt} \left( k \frac{Q_1 Q_2}{x} \right) \\
\\
∴ \ & \frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2}mv^2 + k \frac{Q_1 Q_2}{x} \right) = 0 \\
\\
∴ \ & \frac{1}{2} mv^2 + k \frac{Q_1 Q_2}{x} = const.
\end{align} \)
最後の式変形で力学的エネルギー保存則が示されると同時に、位置エネルギーが \( \displaystyle k \frac{Q_A Q_B}{x} \) がであることも示されました!
2. 練習問題
ここまでの内容を理解できたかどうか、問題を解くことで確認してみましょう!
基本確認問題と応用問題で分けましたが、どちらも求められている知識は同じで、解答を導き出すまでの手数が多いか少ないかの問題です。
どちらもしっかりと解けるようにしましょう!
2.1 基本確認問題
【問1】帯電した物体AとBがあり、Aの電荷は \( 1.0\times 10^{-6} \)[C] で、20cm離れた物体Bから左向きに 90[N] の力を受けている。Bの電荷はいくらか。ただし、比例定数は \( \displaystyle k = 9.0 \times 10^9 [\rm{N\cdot m^2/c^2}] \)
【問2】電荷 \( +q, \ +q, \ -2q \) をもつ、三つの小球A,B,Cが置かれている。AB間、AC間の距離をそれぞれ \(a, \ b\) で \( \angle BAC \) は直角である。このとき、Aが受けている静電気力の大きさ \( F \) とその向きを図示せよ。
二問ともここまでの内容をしっかりと理解できていれば解ける問題です!しっかりと考えてみましょう。
以下に二つの問題の方針を載せておくので、途中で詰まったときの参考にしてください。
【問1】まず力の向きから、Bの電荷が正か負かを確かめる。その次にクーロン則を用いて電荷の大きさを求める。
【問2】AがBとCから受ける力の大きさと向きを図示して、その後に力の合成を行う。
・・・・・
それでは解答です。
【問1】
AはBから斥力を受けているのでからBの電荷は正。Bの電荷の大きさを \( q\)[C] とおくと、クーロン則より
\( \displaystyle 90 = 9 \times 10^9 \times \frac{1.0\times 10^{-6} q}{0.2^2} \)
これを解くと、
\( q = 4.0 \times 10^{-4} [\rm{C}] \color{red}{ \cdots 【答】 } \)
が得られます。
【問2】
AはBからは斥力、Cからは引力を受けます。それぞれの力の大きさを求めていきましょう。
\( \begin{cases}
\displaystyle F_B = k \frac{q^2}{a^2}\\
\displaystyle F_C = k \frac{q\cdot 2q}{\left(2a\right)^2} = \frac{1}{2} F_B
\end{cases} \)
\( \begin{align}
\displaystyle ∴ \ F & =\sqrt{F_B^2+F_C^2} \\
\\
& = \frac{kq^2}{a^2} \sqrt{1+\frac{1}{2^2}} \\
\\
& = \frac{\sqrt{5}kq^2}{2a^2}
\end{align} \)
これを踏まえて図示すると下図を得ます。
2.2 応用問題
次に、少し手の込んだ問題を解いてみましょう。
これが解ければ、電荷の運動に関する問題については心配ないでしょう。
下図のように、真空上の \( xy \) 平面上の二点 \( \left(a, 0 \right) \),\( \left( -a, 0 \right) \ (a>0) \) に、いずれも正の電荷 \( Q \) をもった点電荷が固定されている。クーロン則の比例定数を \( k \) として、以下の問に答えよ。
以下では、質量 \( m \) をもち、正の電気量(電荷)\( q \) に帯電した小球Aが運動する場合を考える。
【問1】点B \( \left(0, \sqrt{3} \right) \) から小球を速さ \( v_B \) で \( y \) 軸の負の向きに打ち出したところ、小球Bは \( y \) 軸にそって運動し、 \( x \) 軸を横切った。そのような運動をするための、\( v_B \) の条件を求めよ。
【問2】小球を原点 \( O \) に置いたとする。小球がx軸上の身を運動するとすると、小球を原点からわずかにずらして離したとき、小球は原点を中心とする単振動を行う。このときの周期を求めよ。
ただし、\( \left|x \right| \) が \( a \) に比べ十分に小さい時に成立する近似式
\( \displaystyle \frac{1}{(a \pm x)^{2}} ≒\frac{1}{a^{2}}\left\{1 ∓ 2 \frac{x}{a}\right\} \)
を用いてよい。
手数が多い問題です、基礎知識を理解したうえで問題文の条件を定式化する能力が求められています。
以下に方針を載せておきます。
【問1】まずは運動方程式を考えてます、それで解けなさそうならエネルギー保存則を用いて定式化を目指してみましょう。
【問2】単振動することはわかっているのだから、単振動の運動方程式の形に持っていけば、角振動数が分かり、そこから周期もわかります。
・・・・・
それでは解答です!
【問1】小球が \( \left(0,y \right) \) にあるときの、運動方程式を考えてみましょう。
そのためには、小球にかかる力を図示する必要があります。力を図示すると下図のようになります。
ただし \( \displaystyle \cos \theta = \frac{y}{r} \) を満たします。
このときの小球の運動方程式は、
\( \begin{align}
\displaystyle m \frac{d^{2} y}{d t^{2}} & = k \frac{Q q}{r^{2}} \cos \theta + k \frac{Q q}{r^{2}} \cos \theta \\
\\
& = \frac{2 k Q q y}{\left(r^{2}+y^{2}\right)^{\frac{3}{2}}}
\end{align} \)
この運動方程式が解けるに越したことはありませんが、この微分方程式は解くことができないので、他の方法を考える必要があります。
ここで用いるのが「エネルギー保存則」です。
エネルギー保存則より、
\( \displaystyle \frac{1}{2} m v^{2}+k \frac{Q q}{r}+k \frac{Q q}{r}=const. \)
\( \displaystyle ∴ \ \frac{1}{2} m v^{2}+\frac{2 k Q q}{\sqrt{a^{2}+y^{2}}}=const. \)
注:二つの電荷から影響を受けることに注意!位置エネルギーを一つだけしか書かないミスが多い。
原点通過時の速さを \( v_0 \) とすると、点B の座標\( \left(0, \sqrt{3} \right) \)より
\( \displaystyle \frac{1}{2} m v_{0}^{2} + \frac{2 k Q q}{a} = \frac{1}{2} m v_{B}^{2}+\frac{2k Q q}{\sqrt{a^{2}+3}} \)
この\(v_0\)が存在する条件は、\( \displaystyle \frac{1}{2} mv_0^2 > 0 \) だから、
\( \displaystyle v_{B} > \sqrt{\frac{4k Q q}{m}(\frac{1}{a}-\frac{1}{\sqrt{a^{2}+3}})}\color{red}{ \cdots 【答】 } \)
【問2】
小球の運動方程式は、
\( \displaystyle m \frac{d^{2} x}{d t^{2}}=k \frac{Q q}{\{x-(-a)\}^{2}}- k \frac{Q q}{(x-a)^{2}} \)
\( \left|x \right|<<a \) だから(わずかに動かしたときを考えているから)、
\( \displaystyle m \frac{d^{2} x}{d t^{2}}≒\frac{k Qq}{a^{2}}\left\{\left(1-2 \frac{x}{a}\right)-\left(1+2 \frac{x}{a}\right)\right\} \)
\( \displaystyle ∴ \ \frac{d^{2} x}{d t^{2}} ≒ – \frac{4 k Q q}{m a^{3}} x \)
単振動の運動方程式の形と比較すると、
\( \displaystyle w=\sqrt{\frac{4 k Q q}{m a^{3}}} \)
よって、求める周期 \( T \) は、
\( \displaystyle T = \frac{2\pi}{\omega}=2 \pi \sqrt{\frac{m a^{3}}{4 k Q q}} \color{red}{ \cdots 【答】 } \)
解くことはできたでしょうか?問題の設定は複雑でも用いる道具は今まで学んできたものばかりです。
しっかりと解けるようにしましょう!
3.まとめ
お疲れ様でした。最後に、今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!
クーロン則:\( \displaystyle F = k_0 \frac{Q_1 Q_2}{r^2} \)
位置エネルギー:\( \displaystyle U = k \frac{Q_1 Q_2}{r} \)
エネルギー保存則:\( \displaystyle \frac{1}{2}mv^2+k\displaystyle\frac{Q_1 Q_2}{x}=const. \)
\( \displaystyle F = k \frac{Q_1 Q_2}{r^2} \)
\( k \):比例定数で誘電率 \( ε \) を用いて、\( \displaystyle k = \frac{1}{4\pi ε} \) と表される。