東大塾長の山田です。
このページでは、ジュール熱について詳しく説明しています。
ジュール熱と電力についての公式を提示した後、その証明を行い、さらに問題演習を通すことで、盤石な理解が可能になっています。ぜひ勉強の参考にしてください!
1. ジュール熱について
まずはジュール熱についての基本的な説明を行います。
1.1 ジュール熱と消費電力
「ジュール熱」とは、抵抗がある導体に電流を流したときに発生する熱エネルギーのことで、単位は[J](ジュール)です。また、単位時間当たりのジュール熱のことを「(消費)電力」といい、単位は[W](ワット)を用います。
ジュール熱の大きさは、抵抗に流れる電流の大きさによって制御することができるので、昔から身の回りで多く使われてきました。炊飯器・こたつ・アイロンなど熱を利用するものは大抵ジュール熱を利用しています。
1.2 公式
ジュール熱や消費電力の定義は分かりましたね。次は、それが数式でどのように表記できるのか確認しましょう。
ジュール熱は以下のように定義できます。
抵抗\(R\)[Ω]の物体に、\(I\)[A]の電流を\(t\)秒間流したときに発生するジュール熱\(Q\)[J]は、
\[Q=RI^2t\]
これはオームの法則\(V=RI\)を用いることで、以下のように表記することもできる。
\[Q=RI^2t=VIt=\displaystyle\frac{V^2}{R}t\]
これがジュール熱の定義です。また、消費電力が単位時間あたりのジュール熱であることを考慮すると、消費電力\(P\)は以下のように定義できます。
\[P=RI^2=VI=\displaystyle\frac{V^2}{R}\]
これらの公式は暗記必須です!試験中にすぐに出てくるようにしましょう。
1.3 導出
公式は暗記必須ですが、もちろん証明もできます。勉強のためにも証明も頭に入れておくと良いでしょう。ここでは、導線内の自由電子運動の観点から証明を行います。(電流・抵抗の電子モデルの記事はこちら)
ここでは議論を簡潔に紹介します。
下図のように、断面積\(S\)、長さ\(l\)の導体に、電荷\(-e\)の自由電子が存在しているとします。(ただし\(e>0\)とします)また、単位体積中の自由電子数(数密度)を\(n\)とします。ここで導体の両端に電圧\(V\)をかけてみると、自由電子は電場から力を受けて運動を開始します。
このとき、電子は電流の向きとは逆に運動し、この時の速さを\(v\)とします。
このとき、導線内の電流の大きさ\(I\)は、
\[I=enSv\]
導体の両端に電圧\(V\)を掛かっているとき、自由電子は電場から受ける力以外に、陽イオンなどから抵抗力も受けることになります。
このときの抵抗力の大きさ\(F\)は自由電子の速さ\(v\)に比例し、比例定数\(k\)を用いて
\[F=kv\]
で表されるものとします。やがて電子が電場から受ける力と抵抗力がつり合い、一定速度\(v_c\)で移動するようになります。このとき、運動方程式より、
\[m\cdot 0=eE-kv_c\] \[∴v_c=\displaystyle\frac{eE}{k}\]
この式は、\(V=El\)より結局
\[v_c=\displaystyle\frac{eV}{kl}\]
となり、ついさっき導出した公式\(I=enSv_c\)を用いると、
\[I=\displaystyle\frac{e^2nS}{kl} V\] \[∴V=\displaystyle\frac{kl}{e^2 nS}\times I≡RI\]
となり、オームの法則が導出できます。
単位時間に自由電子一個が電場からされる仕事(仕事率)について考えてみましょう。クーロン力の仕事率は、自由電子一個当たりで
\[eE\times v_c=e \displaystyle\frac{V}{l} \cdot \displaystyle\frac{e V}{k l}\] \[\qquad\quad =\displaystyle\frac{1}{k}\left(\displaystyle\frac{e v}{l}\right)^{2}\]
これが導線全体だと
\[P=\displaystyle\frac{1}{k}(\displaystyle\frac{eV}{l})^2\times nSl\] \[\quad =\displaystyle\frac{e^2 n S}{kl}V^2=\displaystyle\frac{V^2}{R}\]
このエネルギーがすべてジュール熱に変わるため、この\(P\)が単位時間あたりのジュール熱、すなわち消費電力だということが分かります。
これにより導出することができました。この議論の流れは頭に入れておくと良いでしょう。
2. 問題演習
ここまでの内容が理解できたかどうか問題を解くことで確認してみましょう。
2.1 計算問題
\(100\)[V]で\(500\)[W]の炊飯器がある。発熱によって抵抗の大きさが変わらないとして、以下の問いに答えよ。
(1)\(100\)[V]の電源に五分間つなぎ電流を流し続けたときの発熱量を求めよ。
(2)炊飯器の抵抗は何Ωか。
ジュール熱の公式の中で、どの形のものを使えばよいのかに気を付けて解きましょう。
それでは解答です。
(1)炊飯器の電力は、単位時間当たりのジュール熱だから、求値\(W\)は
\[W=Pt=500\times 5\times 60=1.5\times10^5 J\cdots答\]
(2)電圧と消費電力が与えられているから、使う公式は\(P=\displaystyle\frac{V^2}{R}\)で、これを用いると
\[R=\displaystyle\frac{V^2}{P}=\displaystyle\frac{100^2}{500}=20Ω\cdots答\]
2.2 応用問題
次に少しひねった問題を考えてみましょう。この問題で用いる考え方は、入試で頻出です。これを機にマスターしましょう。
起電力\(E\)、内部抵抗\(r\)の電池に、抵抗\(R\)の抵抗をつないだ。抵抗\(R\)での消費電力\(P\)と、\(P\)が最大値を取るときの\(R\)の値を求めよ。
物理的な要素に加え、数学的なテクニックも必要です。じっくりと考えてみましょう。
それでは解答です。
回路の様子は下図のようになります。
キルヒホッフ則より、
\[I=\displaystyle\frac{E}{R+r}\]
このとき、抵抗\(R\)での消費電力\(P\)は、
\[P=RI^2\] \[\quad =R\left(\displaystyle\frac{E}{R+r}\right)^2\] \[\quad =\displaystyle\frac{RE^2}{R^2+2Rr+r^2}\] \[\quad =\displaystyle\frac{E^2}{R+2r+\displaystyle\frac{r^2}{R}}\] \[\quad =\displaystyle\frac{E^2}{\left(\sqrt{R}-\displaystyle\frac{r}{\sqrt{R}}\right)^2+4r}\]
\(P\)が最大になるとき、分母が最小になるから
\[\sqrt{R}-\displaystyle\frac{r}{\sqrt{R}}=0\] \[∴R=r\cdots答\]
<別解>
\[P=\displaystyle\frac{E^2}{R+2r+\displaystyle\frac{r^2}{R}}\]
までは一緒。ここから相加相乗平均を用いるというやり方もあります。
\[R+\displaystyle\frac{r^2}{R}≧2r\quad(R=\displaystyle\frac{r^2}{R}⇔R=rで等号成立)\]
3. まとめ
お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!
抵抗\(R\)[Ω]の物体に、\(I\)[A]の電流を\(t\)秒間流したときに発生するジュール熱\(Q\)[J]は、
\[Q=RI^2t\]
これはオームの法則\(V=RI\)を用いることで、以下のように表記することもできる。
\[Q=RI^2t=VIt=\displaystyle\frac{V^2}{R}t\]
消費電力\(P\)[W]:単位時間当たりのジュール熱
\[P==RI^2=VI=\displaystyle\frac{V^2}{R}\]
とても分かりやすい解説でした!
ありがとうございました!!