東大塾長の山田です。
このページでは強酸と弱酸・強塩基と弱塩基について解説しています。
酸や塩基の強さによって反応式の書き方が違ってきます。ここでは、そのことについて詳しく説明しています。
是非参考にしてください。
1. 酸・塩基
1.1 電離度
水に溶かした酸や塩基の物質量(または濃度)に対する、電離している酸や塩基の物質量(濃度)の割合を電離度といいます。一般に、記号\(α\)で表します。
電離度の大きさは、水溶液の濃度や温度によって変わります。
\[電離度α=\frac{電離している酸(塩基)の物質量}{水に溶かした酸(塩基)の物質量}\]
\(α\)の取りうる範囲は\(0<α≦1\)である。
1.2 酸の強弱
酸は電離の程度によって、強酸と弱酸に分けられます。
電離度が、濃度によらずほぼ1に近い値になる酸のことを強酸といいます。強酸の例として塩化水素\(HCl\)があります。強酸の化学反応式は次のようになります。
\[HCl→H^++Cl^-\]
強酸は電離度がほぼ1であり、ほぼ完全に電離しイオンに変化するため、反応式では右向きの反応しか起こらないという意味で「→」で表します。
一方で、水溶液中でごく一部しか電離しない、つまり電離度が1に比べて極めて小さい酸のことを弱酸といいます。弱酸の例として酢酸\(CH_3COOH\)があります。弱酸の化学反応式は次のようになります。
\[CH_3COOH⇄CH_3COO^-+H^+\]
弱酸は電離度がかなり小さいので、イオンになりにくく、イオンになってもそのイオンが再びくっつきやすくなります。(一回電離した酢酸イオンと水素イオンがくっつき、再び酢酸に戻るということです。)したがって、電離とは逆の反応も進行します。そのため、弱酸の反応式では、「⇄」で表します。
1.3 塩基の強弱
塩基も酸と同様に電離度の大きさにより、強塩基と弱塩基に分けられます。
電離度が、濃度によらずほぼ1に近い値になる塩基のことを強塩基といいます。強塩基の例として水酸化ナトリウム\(NaOH\)があります。強塩基の化学反応式は次のようになります。
\[NaOH→Na^++OH^-\]
また、水溶液中でごく一部しか電離しない、つまり電離度が1に比べて極めて小さい塩基のことを弱塩基といいます。弱塩基の例としてアンモニア\(NH_3\)があります。弱塩基の化学反応式は次のようになります。
\[NH_3+H_2O⇄NH_4^++OH^-\]
強塩基、弱塩基の反応式の書き方は酸の場合と同じになります。
2. 酸・塩基の分類
2.1 価数
酸が電離して水素イオン\(H^+\)になることのできる化学式中の\(H\)の数を酸の価数といいます。
例えば、塩化水素\(HCl\)は1価の酸で、電離して1つの\(H^+\)が生じます。
\[HCl→H^++Cl^-\]
また、硫酸\(H_2SO_4\)は2価の酸で、電子して2つの\(H^+\)が生じます。
\[H_2SO_4→H^+{HSO_4}^-\]
\[{HSO_4}^-⇄H^+{SO_4}^-\]
また、塩基が電離して水酸化物イオン\(OH^-\)になることのできる化学式中の\(OH\)の数、あるいは、1分子が受け取ることができる水素イオン\(H^+\)の数を塩基の価数といいます。
例えば、水酸化カリウム\(KOH\)は1価の塩基で、電離して1つの\(OH^-\)が生じます。
\[KOH→K^++OH^-\]
アンモニア\(NH_3\)の場合、アンモニア1分子は1個の\(H^+\)を受け取ることができます。また、水と反応すると1個の\(OH^-\)が生じます。これより、アンモニアは1価の塩基に分類されます。
\[NH_3+H_2O⇄{NH_4}^++OH^-\]
2.2 酸・塩基の例
酸、塩基を価数、酸・塩基の強さで分類すると、以下の表のようになります。
強酸 | 弱酸 | |
1価 | \(HCl\)、\(HBr\)、\(HI\)、\(HNO_3\) | \(CH_3COOH\)、\(HF\) |
2価 | \(H_2SO_4\) |
\(H_2CO_3\)、\((COOH)_2\)、\(H_2S\) |
3価 |
\(H_3PO_4\) |
炭酸\(H_2CO_3\)は、二酸化炭素\(CO_2\)を水に溶かしたときの物質です。(\(CO_2+H_2O→H_2CO_3\))
強塩基 | 弱塩基 | |
1価 | \(NaOH\)、\(KOH\) | \(NH_3\) |
2価 | \(Ca(OH)_2\)、\(Ba(OH)_2\) | \(Mg(OH)_2\)、\(Cu(OH)_2\) |
3価 |
\(Al(OH)_3\)、\(Fe(OH)_3\) |
強酸か弱酸か、あるいは、強塩基か弱塩基かは覚えなければなりません。表で示したものは高校化学では頻出のものであるので、しっかり覚えてください!
3. まとめ
最後に酸・塩基についてまとめておこうと思います。
- 水に溶かした酸や塩基の物質量(または濃度)に対する、電離している酸や塩基の物質量(濃度)の割合を電離度という。一般に、記号\(α\)で表す。
- 電離度が、濃度によらずほぼ1に近い値になる酸のことを強酸という。水溶液中でごく一部しか電離しない、つまり電離度が1に比べて極めて小さい酸のことを弱酸という。
- 電離度が、濃度によらずほぼ1に近い値になる酸のことを強酸という。水溶液中でごく一部しか電離しない、つまり電離度が1に比べて極めて小さい酸のことを弱酸という。
- 電離度が、濃度によらずほぼ1に近い値になる塩基のことを強塩基という。水溶液中でごく一部しか電離しない、つまり電離度が1に比べて極めて小さい塩基のことを弱塩基という。
酸も塩基も電離度によって、電離の仕方が変わり反応式の書き方が違ってきます。ちょっとしたことですが、矢印が違うだけでまったく反応が違います。矢印の意味を理解していれば、すごく簡単です。
この記事を読んでしっかりマスターしてください!
強酸と強塩基は加水分解が起こらないという意味が解りません。
教えて下さい。
そもそも加水分解というのは、溶解している塩が、水分子H2Oからできる水素イオンH+または水酸化物イオンOH-と反応できるという条件下で発生する現象です。
弱酸と弱塩基の塩は、強酸と強塩基の塩とは逆に、酸(または塩基)と簡単にくっつくことができます。
なので、弱酸(または弱塩基)の塩が1つでも入っていればそれが水分子と反応してくれるので加水分解が起こります。
しかし、強酸と強塩基の塩だけで、弱酸の塩も弱塩基の塩も入っていなければ、水分子とくっつけるイオンが無いので、加水分解はおこらず、pHも中性のままです。
加水分解についての質問です。遊離反応に対して、加水分解における反応はごくわずかだと習いました。
なぜ加水分解だけ反応が小さくなるのでしょうか? ①塩がH2Oから電離したH+もしくはOH-と結合して加水分解をする
②H2Oが水中から無くなったH+もしくはOH-の分だけ水の電離度に従って再び電離する。
これを繰り返し行けば加水分解反応は進み続けませんか?
単純に強酸や強塩基は、水に電離してしまうので、水を加えても反応が起こらないということです。
強塩基と強酸を中和点まで混ぜたときに、加水分解(強塩基と弱酸・強酸と弱塩基を中和点まで混ぜた時、発生した塩が水と反応をすすめてしまうこと)が起こらない、ということです。
簡単に言うと、
強塩基(強い)vs強酸(強い)=加水分解は起こらない
強塩基(強い)vs弱酸(弱い)=塩基性(強いものが勝つ)
で覚えればいいと思います。
ただ、例外はあります。