ボルタ電池とは(仕組み・分極の原理など)

東大塾長の山田です。

このページではボルタ電池について解説しています。

この記事を見れば覚えておくべき知識をしっかりマスターすることができます。是非参考にしてください。

1. 電池

1.1 電池とは?

化学変化(酸化還元反応)にともなって放出される化学エネルギーを熱エネルギーや光エネルギーではなく、直接電気エネルギーに変換して取り出す装置のことを電池(化学電池)といいます。電池には、化学変化を利用する化学電池の他に、物理現象を利用する物理電池(太陽電池や原子力電池など)もあります。

 

1.2 負極と正極

電池において、導線に向かって電子が流れ出す電極(金属または炭素)のことを負極といい、導線から電子が流れ込む電極のことを正極といいます。

負極と正極

負極‥導線に向かって電子が流れ出す電極

正極‥導線から電子が流れ込む電極

つまり、負極側では電子を放出する変化、すなわち、物質が酸化する反応正極側では電子を受け取る変化、すなわち、物質が還元される反応が起こります。よって、負極側には酸化される物質(還元剤)があり、この物質のことを負極活物質といい、正極側には還元される物質(酸化剤)があり、この物質のことを正極活物質といいます。

電池の負極側と正極側で起こる反応

負極側‥還元剤(負極活物質)があり、酸化反応が起こる。

正極側‥酸化剤(正極活物質)があり、還元反応が起こる。

 

 

1.3 電流と起電力

これまで述べたことをまとめると、電池は、酸化還元反応が酸化と還元に分かれて別々の場所で行われ、酸化剤と還元剤の間での電子の授受を導線を経由させることで、導線中に電子の流れを導きエネルギーを電流として外部に取り出せるようにしたものです。

電子は1.2で述べたことをもとに考えると、負極から正極に向かって電子は流れます。一方で、電流は電子とは逆の向きに流れていきます。つまり、正極から負極に電流は流れます。

電池は、負極側に還元剤、正極側に酸化剤があり、両者が互いに電解液で結ばれています。

 

2. ボルタ電池

1800年ごろにイタリアのボルタによって発明された、亜鉛\(Zn\)板と銅\(Cu\)板を希硫酸\(H_2SO_4\)中に浸した電池をボルタ電池といいます。これは史上最初の電池です。

2.1 ボルタ電池の仕組み

まず、ボルタ電池の仕組みについて解説していきましょう。

【ボルタ電池の仕組み】

① イオン化傾向の大きい金属板が溶ける。

希硫酸\(H_2SO_4\)中に亜鉛\(Zn\)板と銅\(Cu\)板を浸したときに、イオン化傾向が大きい方の金属板が溶け出します。亜鉛\(Zn\)と銅\(Cu\)では、イオン化傾向は亜鉛\(Zn\)の方が大きくなります。(イオン化傾向については、「イオン化傾向とは(覚え方・電池・金属と腐食・大きさの表)」の記事で詳しく解説しているので参照してください。)したがって、亜鉛\(Zn\)板が溶け出します。

このとき、亜鉛\(Zn\)が、酸化されて亜鉛イオン\(Zn^{2+}\)になり電子を放出します。すなわち、亜鉛\(Zn\)板は電子を放出する電極(負極)になります。負極で起こっている反応は次のようになります。

\(Zn →Zn^{2+} + 2e^-\)

② ①で発生した電子がもう片方の金属板の方へ流れる。

次に、①で発生した電子\(e^-\)が銅\(Cu\)板側に流れ込みます。

このとき、電子が通過することで(電流が発生し)豆電球が点灯します。

③ 流れてきた\(e^-\)が溶液中のイオン化傾向の小さい陽イオンとくっつく。

銅\(Cu\)板では、電解液中の水素イオン\(H^+\)が流れてきた電子\(e^-\)を受け取り、還元され水素\(H_2\)になります。すなわち、\(Cu\)板は電子を受け取る電極(正極)になります。正極で起こっている反応は次のようになります。

\(2H^+ + 2e^- →H_2\)

 

以上①~③がボルタ電池の仕組みです。

ボルタ電池の構成を表す電子式は次のとおりです。

\((-) Zn | H_2SO_4 aq | Cu(+)\)

また、この電池全体では次の酸化還元反応が起こります。

\(Zn + 2H^+ →Zn^{2+} + H_2\)

 

2.2 ボルタ電池の欠点

2.1で説明したようにボルタ電池は正極で水素\(H_2\)を発生します。ボルタ電池を使い続けるとこの\(H_2\)が銅\(Cu\)板のまわりに溜まってきてしまいます。

溜まった\(H_2\)が、水溶液中の\(H^+\)が負極から流れてきた電子\(e^-\)を受け取るのを妨害します。これが原因で、電子の受け渡しに不具合が生じて電圧が急激に低下します。実際に、この電池に起電力は約\(1.1V\)ありますが、電流を流し始めるとすぐに電圧が下がり始めやがて\(0.4V\)程度まで低下します。このような起電力の低下のことを分極といいます。

このような欠点があったため、ボルタ電池は実用化されませんでした。

 

3. まとめ

最後に、ボルタ電池についてまとめておこうと思います。

電池の仕組み
ボルタ電池の仕組み

 イオン化傾向の大きな金属である亜鉛板が溶ける。

 ①で発生した電子がもう片方の金属である銅板の方へ流れる。

 流れてきた\(e^-\)が溶液中のイオン化傾向の小さい陽イオンである水素イオンとくっつく。

 

ボルタ電池の仕組みはイオン化傾向の大小を覚えていれば確実に解くことができます。この機会にイオン化傾向についても復習しておいてください。

また、ボルタ電池の欠点について問題に出されることもあるので頭に入れておいてください。

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