塩の加水分解

東大塾長の山田です。

このページでは塩の加水分解について解説しています。

この記事では塩の種類や水溶液の液性についてすごく理解しやすいように説明しています。是非参考にしてください。

1. 中和反応と塩の生成

酸の水溶液と塩基の水溶液が過不足なく反応し、酸の性質も塩基の性質も失われる反応のことを中和反応といいます。

例えば、塩酸\(HCl\)と水酸化ナトリウム\(NaOH\)を過不足なく反応させたとき、次のような反応が起こります。

\[HCl+NaOH→NaCl+H_2O\]

この式から酸である\(HCl\)塩基である\(NaOH\)が完全に反応し、酸から生じた水素イオン\(H^+\)塩基から生じた\(OH^-\)が反応して水\(H_2O\)になり、互いに酸と塩基の性質を打ち消し合うことがわかります。

また、中和反応が起こるときに、水が生成するのと同時に生じる、「酸の電離によって生じる陰イオン」と「塩基の電離によって生じる陽イオン」が互いに結びついて生成する化合物のことを塩(えん)といいます。上の式での塩は\(NaCl\)です。

硫酸\(H_2SO_4\)と水酸化銅\(Cu(OH)_2\)の中和反応を考えると、化学反応式は次のようになります。

\[H_2SO_4+Cu(OH)_2→CuSO_4+2H_2O\]

この式より、硫酸\(H_2SO_4\)と水酸化銅\(Cu(OH)_2\)の中和反応における塩は\(CuSO_4\)となります。

 

2. 塩の種類

1で説明した塩にはいくつか種類があります。ここでは、その種類について解説していきます。

2.1 正塩

化学式中に、電離によって\(H^+\)になることができる酸の\(H\)や、\(OH^-\)になることができる塩基の\(OH\)が残っていない塩のことを正塩といいます。

正塩の例としては、\(NaCl\)や\(NH_4Cl\)、\(CH_3COONa\)などがあります。

 

2.2 酸性塩

化学式中に、電離によって\(H^+\)になることができる酸の\(H\)が残っている塩のことを酸性塩といいます。

酸性塩の例としては、\(NaHSO_4\)や\(NaHCO_3\)、\(Na_2HPO_4\)などがあります。

ちなみに、正塩の\(NH_4Cl\)や\(CH_3COONa\)は化学式中に\(H\)を含みますが、これらは水に溶けても\(H^+\)にはならないので酸性塩とはなりません。

 

2.3 塩基性塩

化学式中に、電離によって\(OH^-\)になることができる塩基の\(OH\)が残っている塩のことを塩基性塩といいます。

塩基性塩の例としては、\(MgCl(OH)\)や\(NaHCO_3\)、\(CaCl(OH)\)、\(CuCl(OH)\)などがあります。

 

3. 強酸(強塩基)による弱酸(弱塩基)の遊離反応

ここでは、酸塩基反応のなかでも頻出の「弱酸遊離反応」と「弱塩基遊離反応」について解説します。

3.1 弱酸遊離反応

弱酸由来の塩と強酸を反応させると、強酸由来の塩と弱酸が生成します。つまり、弱酸が遊離するのです。このように塩の状態から弱酸を遊離させる反応のことを弱酸遊離反応といいます。

弱酸遊離反応

\[弱酸由来の塩+強酸→強酸由来の塩+弱酸\]

1つ例を紹介します。

\[CH_3COONa+HCl→NaCl+CH_3COOH\]

この式では、\(CH_3COONa\)が弱酸由来の塩、\(CH_3COOH\)が弱酸となっていて塩酸によって酢酸が遊離していることがわかります。

このように、弱酸由来の塩とは弱酸から生じた塩のことをいいます。\(CH_3COONa\)は\(CH_3COOH\)から生じた弱酸由来の塩、\(FeS\)は\(H_2S\)から生じた弱酸由来の塩です。

 

3.2 弱塩基遊離反応

酸の時と同様に、弱塩基由来の塩と強塩基を反応させると、強塩基由来の塩と弱塩基が生成します。つまり、弱塩基が遊離するのです。このように塩の状態から弱塩基を遊離させる反応のことを弱塩基遊離反応といいます。

弱塩基遊離反応

\[弱塩基由来の塩+強塩基→強塩基由来の塩+弱塩基\]

1つ例を紹介します。

\[NH_4Cl+NaOH→NaCl+NH_3+H_2O\]

この式では、\(NH_4Cl\)が弱塩基由来の塩、\(NH_3\)が弱塩基となっていて水酸化ナトリウムによってアンモニアが遊離していることがわかります。

 

4. 塩の水溶液の液性

2で塩の種類について説明しましたが、塩を水溶液に溶かしたとき塩の名前と水溶液の液性が異なるということがあります。ここでは、塩の水溶液の液性について説明します。

4.1 正塩

4.1.1 強塩基と弱酸の中和反応

ここでは、強塩基と弱酸の中和反応によって生じる正塩の水溶液の液性を説明します。

例として、強塩基が\(NaOH\)、弱酸が\(CH_3COOH\)の時を考えてみましょう。この2つの物質が中和反応をすると次の式から、正塩\(CH_3COONa\)が生じることがわかります。

\[NaOH+CH_3COOH→CH_3COONa+H_2O\]

\(CH_3COONa\)は水溶液中で、次式のように完全に電離します。

\[CH_3COONa→CH_3COO^-+Na^+\]

\(Na^+\)は強塩基\(NaOH\)を構成するイオンです。\(NaOH\)は完全に電離するので、水の電離で生じた\(OH^-\)と\(Na^+\)が結びつき\(NaOH\)が再び生成するということはありません。

一方で、\(CH_3COO^-\)は弱酸\(CH_3COOH\)を構成するイオンです。\(CH_3COOH\)は弱酸であるので電離度が小さく、\(CH_3COO^-\)の一部は、水の電離で生じた\(H^+\)と結びつき\(CH_3COOH\)に戻ります。この反応は次のように表されます。

\[CH_3COO^-+H_2O⇄CH_3COOH+OH^-\]

このような反応のことを塩の加水分解といいます。このような加水分解により生じた\(OH^-\)によって、この水溶液の液性は塩基性になります。

このように、強塩基と弱酸の中和反応によって生成する正塩の水溶液は、塩の加水分解によって塩基性を示します。

 

4.1.2 強酸と弱塩基の中和反応

ここでは、強酸と弱塩基の中和反応によって生じる正塩の水溶液の液性を説明します。

例として、強酸が\(HCl\)、弱塩基が\(NH_3\)の時を考えてみましょう。この2つの物質が中和反応をすると次の式から、正塩\(NH_4Cl\)が生じることがわかります。

\[HCl+NH_3→NH_4Cl\]

\(NH_4Cl\)は水溶液中で、次式のように完全に電離します。

\[NH_4Cl→{NH_4}^++Cl^-\]

\(Cl^-\)は強酸\(HCl\)を構成するイオンです。\(HCl\)は完全に電離するので、水の電離で生じた\(H^+\)と\(Cl^-\)が結びつき\(HCl\)が再び生成するということはありません。

一方で、\({NH_4}^+\)は弱塩基\(NH_3\)を構成するイオンです。\(NH_3\)は弱塩基であるので電離度が小さく、\({NH_4}^+\)の一部は、水に\(H^+\)を与えて\(NH_3\)に戻ります。この反応は次のように表されます。

\[{NH_4}^++H_2O⇄NH_3+H_3O^+\]

このような加水分解により生じた\(H_3O^+(H^+)\)によって、この水溶液の液性は酸性になります。

このように、強酸と弱塩基の中和反応によって生成する正塩の水溶液は、塩の加水分解によって酸性を示します。

 

4.1.3 強酸と強塩基の中和反応

ここでは、強酸と強塩基の中和反応によって生じる正塩の水溶液の液性を説明します。

例として、強酸が\(HCl\)、強塩基が\(NaOH\)の時を考えてみましょう。この2つの物質が中和反応をすると次の式から、正塩\(NaCl\)が生じることがわかります。

\[HCl+NaOH→NaCl+H_2O\]

\(Na^+\)は強塩基\(NaOH\)を構成するイオンです。\(NaOH\)は完全に電離するので、水の電離で生じた\(OH^-\)と\(Na^+\)が結びつき\(NaOH\)が再び生成するということはありません。

また、\(Cl^-\)は強酸\(HCl\)を構成するイオンです。\(HCl\)は完全に電離するので、水の電離で生じた\(H^+\)と\(Cl^-\)が結びつき\(HCl\)が再び生成するということはありません。

すなわち、\(NaCl\)水溶液中では加水分解が起こらないため、\(H_3O^+(H^+)\)や\(OH^-\)が増加することはありません。したがって、水溶液の液性は中性になります。

このように、強酸と強塩基の中和反応によって生成する正塩の水溶液は、塩の加水分解が起こらないので中性を示します。

 

ちなみに、弱酸と弱塩基による塩の水溶液の液性は、一般的に中性となりますが、塩によって水溶液の液性が異なるため単純には決められません。

 

4.2 酸性塩

酸性塩の水溶液の液性は、正塩のように単純には判定することができません。

例えば、強酸\(H_2SO_4\)と強塩基\(NaOH\)の塩である\(NaHSO_4\)は強酸と強塩基の塩であるから中性であると考えますよね?

しかし、酸性塩である\(NaHSO_4\)の水溶液は、硫化水素イオン\({HSO_4}^-\)の電離(\({HSO_4}^-→H^++{SO_4}^{2-}\))によって、酸性を示します。

また、リン酸水素二ナトリウム\(Na_2HPO_4\)の水溶液は、主に

\[{HPO_4}^2-+H_2O⇄{H_2PO_4}^-+OH^-\]

という加水分解が生じるので塩基性を示します。

このように酸性塩であるからといって水溶液の液性が酸性であるとも限りません。

酸性塩はその塩を構成する酸と塩基の強さで判断することもできないし、酸性塩であるから水溶液の液性が必ずしも酸性になるわけでもありません。

そこで、酸性塩でよく問われるものは限られているので覚えてしまいましょう!

物質 液性
\(NaHSO_4\) 酸性
\(Na_2HPO_4\) 塩基性
\(NaH_2PO_4\) 酸性
\(NaHCO_3\) 塩基性

上の表で示したものを覚えておけば大丈夫なので頑張って覚えてください!

 

4.3 塩基性塩

一般に、塩基性塩は水に対して難溶性であるため水溶液の液性は考える必要はありません。

 

5. まとめ

最後に塩についてまとめておこうと思います。

  • 中和反応が起こるときに、水が生成するのと同時に生じる、「酸の電離によって生じる陰イオン」と「塩基の電離によって生じる陽イオン」が互いに結びついて生成する化合物のことを塩(えん)という。

 

  • 化学式中に電離によって\(H^+\)になることができる酸の\(H\)や、\(OH^-\)になることができる塩基の\(OH\)が残っていない塩→正塩
  • 化学式中に、電離によって\(H^+\)になることができる酸の\(H\)が残っている塩→酸性塩
  • 化学式中に、電離によって\(OH^-\)になることができる塩基の\(OH\)が残っている塩→塩基性塩
塩の水溶液の液性

・正塩

強酸と強塩基の塩 中性
強塩基と弱酸 塩基性
強酸と弱塩基 酸性

・酸性塩

単純には判断できないので覚える。

物質 液性
\(NaHSO_4\) 酸性
\(Na_2HPO_4\) 塩基性
\(NaH_2PO_4\) 酸性
\(NaHCO_3\) 塩基性

・塩基性塩

水に難溶性であるので考えない。

 

塩の種類や水溶液の液性は間違えやすい部分ですが、ここで説明したように考えれば簡単に理解できると思います。

この記事を読んでしっかりマスターしてください!

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