東大塾長の山田です。
このページでは錯イオンについて解説しています。
是非参考にしてください
1. 錯イオン
配位結合や水素結合などにより、1つにまとまっている分子のことを錯体といいます。
その中で、金属イオンに分子や陰イオンが配位結合することによってできたイオンのことを錯イオンといいます。(配位結合については、「共有結合とは(例・結晶・イオン結合との違い・半径)」で詳しく説明しているので参考にしてください。)
\(H^+\)、\(Cu^{2+}\)、\({NH_4}^+\)、\(CH_3COO^-\)、\(Cl^-\)、\(OH^-\)
\([Ag(NH_3)_2]^+\)、\([Zn(OH)_4]^{2-}\)、\([Cu(H_2O)_4]^{2+}\)
2. 錯イオンの形
2.1 配位数
錯イオンにおいて、金属イオンに配位結合している分子やイオンのことを配位子といいます。また、配位子の数のことを配位数といいます。
錯イオンの配位数は金属イオンの種類によって決まっています。以下が各金属イオンの配位数です。
金属イオン | 配位数 |
\(Ag^+\) | 2 |
\(Zn^{2+}\) | 4 |
\(Cu^{2+}\) | 4 |
\(Ni^{2+}\) | 6 |
\(Fe^{2+}\) | 6 |
\(Fe^{3+}\) | 6 |
\(Al^{3+}\) | 6 |
また、配位数が決まっていることにより金属イオンの種類によって錯イオンの立体構造も決まります。
以下が各金属イオンごとの錯イオンの立体構造です。
この表からわかるように配位数が2のときは直線形、配位数が6のときは正八面体形になりますが、配位数が4のときは正方形と正四面体形の2パターンがあります。
ほとんどの金属イオンの錯イオンの立体構造は正四面体形になりますが、\(Cu^{2+}\)だけは正方形になります。間違えないように確実に覚えてください!
3. 錯イオンの命名法
これまでは配位数や立体構造について解説してきました。ここでは、錯イオンの命名法について説明していきましょう。
錯イオンの名前を決めるにあたって、配位子、配位数の呼び方を覚えてください。
配位子 | 呼び方 |
\(OH^-\) | ヒドロキシド |
\(NH_3\) | アンミン |
\(H_2O\) | アクア |
\(CN^-\) | シアニド |
\(F^-\) | フルオド |
\(Cl^-\) | クロリド |
\(SCN^-\) | チアシアナト |
\({S_2O_3}^{2-}\) | チオスルファト |
配位数 | 呼び方 |
1 | モノ |
2 | ジ(ビス) |
3 | トリ |
4 | テトラ |
5 | ペンタ |
6 | ヘキサ |
7 | ヘプタ |
8 | オクタ |
9 | ノナ |
10 | デカ |
配位数はギリシャ語で数えます。
錯イオンの名前をつけるときはこの呼び方をもとに命名します。
では、実際に錯イオンを命名していきましょう!
\([Cu(NH_3)_4]^{2+}\)の錯イオンの名前を決定していきます。
錯イオンを命名するときの手順は次のようになります。
①配位数の呼び方を決定する
②配位子の呼び方を決定する
③金属イオンを決定する
④配位数→配位子→金属イオンの順で錯イオンの名前を決定する
①配位数の呼び方を決定する
配位子の数のことを配位数というんでしたね。\([Cu(NH_3)_4]^{2+}\)の配位子は\(NH_3\)であり配位数は4です。
上表より4の呼び方はテトラであるので、配位子はテトラと決定できます。
②配位子の呼び方を決定する
配位子は\(NH_3\)です。よって、配位子の名前はアンミンと決定できます。
③金属イオンを決定する
\([Cu(NH_3)_4]^{2+}\)の金属イオンは\(Cu^{2+}\)です。よって、銅(Ⅱ)イオンと決定できます。
④配位数→配位子→金属イオンの順で錯イオンの名前を決定する
①、②、③より配位数はテトラ、配位子はアンミン、金属イオンは銅イオンと呼び方を決めまることができました。
最後はこれらを配位数→配位子→金属イオンの順にくっつけることで錯イオンを命名することができます。
したがって、錯イオンの名前はテトラアンミン銅(Ⅱ)イオンとなります。
以下に他の錯イオンの名前の例を載せておきます。
錯イオン | 名前 |
\([Ag(NH_3)_2]^+\) | ジアンミン銀(Ⅰ)イオン |
\([Zn(OH)_4]^{2-}\) | テトラヒドロキシド亜鉛(Ⅱ)酸イオン |
\([Al(OH)_4]^-\) | テトラヒドロキシドアルミン酸イオン |
\([Fe(CN)_6]^{4-}\) | ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン |
\([Ag(S_2O_3)_2]^{3-}\) | ビスチオスルファト銀(Ⅰ)酸イオン |
錯イオンの名前に酸がついているものとついていないものがありますが、錯イオンが負になる場合イオンの前に酸をつけます。
4. まとめ
最後に錯イオンについてまとめておこうと思います。
錯体‥配位結合や水素結合などによって、1つにまとまっている分子のこと
錯イオン‥金属イオンに分子や陰イオンが配位結合することによってできるイオンのこと
配位子‥金属イオンに配位結合している分子やイオンのこと
配位数‥配位子の数のこと
金属イオン | 配位数 | 立体構造 |
\(Ag^+\) | 2 | 直線形 |
\(Cu^{2+}\) | 4 | 正方形 |
\(Zn^{2+}\) | 4 | 正四面体形 |
\(Ni^{2+}\) | 6 | 正八面体形 |
\(Fe^{2+}\) | 6 | 正八面体形 |
\(Fe^{3+}\) | 6 | 正八面体形 |
\(Al^{3+}\) | 6 | 正八面体形 |
①配位数の呼び方を決定する
②配位子の呼び方を決定する
③金属イオンを決定する
④配位数→配位子→金属イオンの順で錯イオンの名前を決定する
配位数がわかっていれば錯イオンの形もわかります。銅だけが特徴的なので間違えないようにしっかり覚えてください!
また、錯イオンの名前がわからないと問題が理解できないということがあるので錯イオンの命名法もしっかりマスターしましょう!
ヘキサシアニド鉄Ⅱイオン酸の生成反応をWikipediaで
FeSO4+6KCN→2K2SO4+K4[Fe(CN)6]
と見たことがあります。しからばヘキサシアニド鉄Ⅲイオン酸の生成反応は
Fe2(SO4)3+12KCN→2K3[Fe(CN)6]+3K2SO4
となるのでしょうか。ご教示をお願いします。