東大塾長の山田です。
このページでは、電流と抵抗の公式・電子モデルについて扱っています。
金属内の自由電子の運動を考えることで、電流の公式から、オームの法則、抵抗の公式、ジュール熱の公式までを導出することができます。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 金属内の電子の運動
以下では、金属内の自由電子の運動について考えていきます。
自由電子の運動を考えることでどのようなことが分かるのでしょうか?順を追って説明していきます。
1.1 電流
まずは、金属内の電流がどのように表記できるのか考えていきましょう。下図のように、断面積\(S\)、長さ\(l\)の導体に、電荷\(-e\)の自由電子が存在しているとします。(ただし\(e>0\)とします)また、単位体積中の自由電子数(数密度)を\(n\)とします。ここで導体の両端に電圧\(V\)をかけてみると、自由電子は電場から力を受けて運動を開始します。
このとき、電子は電流の向きとは逆に運動し、この時の速さを\(v\)とします。
\(\Delta t\)間の電子の運動について考えてみましょう。\(\Delta t\)間に下図の青円柱内の電子が自由電子が、断面を通過することが分かります。
このときの通過電子の個数は
\[個数=n\times Sv\Delta t\]
よって、通過電荷は、
\[電荷=-e\times nsv\Delta t\]
ここで、電流の定義を思い出してみましょう。
この定義を用いると。電流は以下のように表せることができます!
1.2 オームの法則
導体の両端に電圧\(V\)を掛かっているとき、自由電子は電場から受ける力以外に、陽イオンなどから抵抗力も受けることになります。
このときの抵抗力の大きさ\(F\)は自由電子の速さ\(v\)に比例し、比例定数\(k\)を用いて
\[F=kv\]
で表されるものとします。やがて電子が電場から受ける力と抵抗力がつり合い、一定速度\(v_c\)で移動するようになります。このとき、運動方程式より、
\[m\cdot 0=eE-kv_c\] \[∴v_c=\displaystyle\frac{eE}{k}\]
この式は、\(V=El\)より結局
\[v_c=\displaystyle\frac{eV}{kl}\]
となり、ついさっき導出した公式\(I=enSv_c\)を用いると、
\[I=\displaystyle\frac{e^2nS}{kl} V\] \[∴V=\displaystyle\frac{kl}{e^2 nS}\times I\]
上式より、「電圧が電流に比例する」ことが分かります。これが「オームの法則」です。
1.3 電気抵抗と抵抗率
電圧が電流に比例すること(オームの法則)はわかりましたが、その比例定数\(\displaystyle\frac{kl}{e^2 nS}\)は何を意味するでしょうか?
この比例定数\(\displaystyle\frac{kl}{e^2 nS}\)は、導線の「電気抵抗」を意味しています。電気抵抗とは、電流の流れにくさを表す量で、多くの場合記号\(R\)を用いて表されます。
\[R=\displaystyle\frac{kl}{e^2 nS}\]
オームの法則:V=RI
さらに詳しく見ていきましょう。\(R\)の式は、
\[R=\displaystyle\frac{k}{e^2 n}\cdot\displaystyle\frac{l}{S}\]
と変形できます。このとき、\(\displaystyle\frac{k}{e^2 n}\)を「抵抗率」といい、通常記号\(ρ\)で表されます。抵抗率は、素材と温度で決まります。この\(ρ\)を用いて電気抵抗は、
と表記でき、電流は「導線が細いほど流れづらく」、「断面積が大きいほど流れやすい」ことが分かります!
今までの議論を別のモデルを用いて議論してみましょう。
上の状態において自由電子は、静電気力を受けて加速され、時間\(t_0\)ごとに陽イオンに衝突して止まり、そしてまた加速され・・・という流れを繰り返すとします。
このときの平均の速さを\(v\)、自由電子一個当たりの質量を\(m\)として考えていきます。今回は、抵抗率をこれらの記号を使って表すことをゴールにしていきます。
加速されているときの、電子の運動方程式は、
\[m\displaystyle\frac{dv}{dt}=eE\] \[\displaystyle\frac{dv}{dt}=\displaystyle\frac{eE}{m}=\displaystyle\frac{eV}{ml}\]
電子の最大の速さ\(v_m\)は、\(v_m=\displaystyle\frac{dv}{dt}t_0\)だか、
\[v=\displaystyle\frac{0+v_m}{2}=\displaystyle\frac{eVt_0}{2ml}\]
よって
\[I=enSv=\displaystyle\frac{e^2 n SVt_0}{2ml}\] \[∴V=\displaystyle\frac{2ml}{e^2 n t_0 S}I\]
これはオームの法則の意味の表れであり、\(R=\rho\displaystyle\frac{l}{S}\)と比較すると
\[\rho=\displaystyle\frac{2m}{e^2 n t_0}\]
1.4 ジュール熱と消費電力
次に、単位時間に自由電子一個が電場からされる仕事(仕事率)について考えてみましょう。クーロン力の仕事率は、自由電子一個当たりで
\[eE\times v_c=e \displaystyle\frac{V}{l} \cdot \displaystyle\frac{e V}{k l}\] \[\qquad\quad =\displaystyle\frac{1}{k}\left(\displaystyle\frac{e v}{l}\right)^{2}\]
これが導線全体だと
\[P=\displaystyle\frac{1}{k}(\displaystyle\frac{eV}{l})^2\times nSl\] \[\quad =\displaystyle\frac{e^2 n S}{kl}V^2=\displaystyle\frac{V^2}{R}\]
このエネルギーはすべてジュール熱へと変わります。この\(P\)のことを「消費電力」といいます。消費電力とは、単位時間当たりのジュール熱のことです。
また、オームの法則\(V=RI\)を用いると、消費電力は以下のように書き下すことができます。
\[P=\frac{V^{2}}{R}=I V=R I^{2}\]
2. まとめ
お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!
電流:\(I=enSv\)
オームの法則:\(V=\displaystyle\frac{kl}{e^2 nS}\times I(⇔V=RI)\)
抵抗\(R=\displaystyle\frac{k}{e^2 n}\cdot\displaystyle\frac{l}{S}≡\rho\displaystyle\frac{l}{S}\)(\(\rho\)は抵抗率)
消費電力:\(P=\frac{V^{2}}{R}=I V=R I^{2}\)
電流:単位時間あたりに断面を通過する電気量