万有引力の公式まとめ

東大塾長の山田です。
このページでは、「万有引力についての説明」「エネルギー保存則」「宇宙速度」について詳しくまとめてあります

万有引力という言葉は耳にしたことはあると思いますが、詳しい概念・式を理解している人は多くないと思います。
ぜひ勉強の参考にしてください!

1. 万有引力について

1.1 万有引力(の法則)

まずは言葉で理解していきましょう。

万有引力の法則とは以下のようなものです!

万有引力の法則

地上において質点(物体)が地球に引き寄せられるだけではなく、この宇宙においてはどこでも全ての質点(物体)は互いに引き寄せる作用(=gravitation)を及ぼしあっている、という法則のこと。

そして、この引き寄せる力のことを「万有引力」といいます。

オマケ;よくある勘違い

一般的に「ニュートンが木から落ちるリンゴを見て万有引力を発見した」という言説が信じられていますが、実はそれは誤った解釈です。

ニュートンが着想したのは「リンゴに対して働いている力が、月や惑星に対しても働いているのではないか」というものです。

ニュートンの時代ではすでに、地上では物体に対し地球に引き寄せる力が働いていることは理解されていました。
ニュートンが行った変革とは「同様なことが宇宙でも起きている(そして同時にすべての質量をもつ物体同士が相互に引きあっているということと、天体もその物体の一つに過ぎない)」という形で提示したことにあります。

1.2 万有引力

万有引力の概念について理解できたところで次は式で説明していきます。

万有引力の大きさ\(F\)は、二物体の質量をそれぞれ\(M,m\)、二物体間の距離を\(r\)として

\( \displaystyle F = G \frac{Mm}{r^2} \)

と表記できます。

ただし\(G\)は万有引力定数と呼ばれる定数で、

\( \displaystyle G=6.67259×10^{-1}[\rm{m^3・s^{-2}・kg^{-1}}] \)

です。この数値を見てわかるように万有引力は通常ものすごく弱い力です。人間同士でも働いてはいますが、それを感じることはありません。しかし、天体同士となると質量の積が大きくなるため話は別です。

この式は暗記必須です。

1.3 万有引力と重力

続いては万有引力と重力の関係について考えてみましょう。
今回は以下の図のような、地表付近の物体が地球から受ける万有引力について考えます。

地球の質量を\(M\)、物体の質量を\(m^{*}\)、地球の中心から地表までの距離を\(R\)とします。(地表から物体までの距離は無視)このとき、物体が地表から受ける万有引力の大きさ\(F\)は、

\( \displaystyle F = G \frac{Mm^{*}}{R^2} \)

\( \displaystyle \quad = m^{*} \frac{GM}{R^2} \)

れが物体が受ける重力\(m^{*}g\)と等しいことから、以下の関係が成り立つことが分かります。

\( \displaystyle g = \frac{GM}{R^2} \)

これは入試で頻繁に用いられる関係なので、必ず何度も導出してすぐに形が思い浮かぶようにしましょう!

 

2. 万有引力の位置エネルギー

続いては万有引力の位置エネルギーについて考えてみましょう!

2.1 位置エネルギー

万有引力の位置エネルギー\(U\)は以下のように表すことができます。

\( \displaystyle  = -G \frac{Mm}{r} \)

ただしエネルギーの基準点は無限遠です。この式は暗記必須です。

2.2 エネルギー保存則と位置エネルギーの導出

次に位置エネルギーの導出を行いましょう。
忘れてしまったときに公式を導き出せるようにしておくと便利なので、ぜひ頭に入れておきましょう。

今回は簡易のために以下の運動を考えてみます。質量\(M,m\)の二物体同士の間の万有引力を考えますが、質量\(M\)の物体を不動と考えていき、質量\(m\)の物体を注目物体とします。

注目物体の運動方程式は

\( \displaystyle m \frac{dv}{dt} = -G \frac{Mm}{x^2} \)

両辺に\(v=\displaystyle\frac{dx}{dt}\)を掛けて

\( mv \displaystyle \frac{dv}{dt}=-G\displaystyle\frac{Mm}{x^2}\displaystyle\frac{dx}{dt} \)

\( ∴ \displaystyle\frac{d}{dt}\left(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\right)=\displaystyle\frac{d}{dt}\left(G\displaystyle\frac{Mm}{x}\right) \)

\( ∴\displaystyle\frac{d}{dt}\left(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2-G\displaystyle\frac{Mm}{x}\right)=0 \)

\( ∴\displaystyle\frac{1}{2}mv^2-G\displaystyle\frac{Mm}{x}=const. \)

最後の式変形で力学的エネルギー保存則が示されると同時に、位置エネルギーが\(ーG\displaystyle\frac{Mm}{x}\)がであることも示されました!

 

3. 宇宙速度

万有引力の大きさ、エネルギー保存則について理解できましたか?最後に宇宙速度という概念を解説します。
以下では、地球の質量を\(M\)、半径を\(R\)とします。

3.1 宇宙速度とは?

宇宙速度とは、地表において物体にある初速度を与えたとして、衛星軌道などの「宇宙飛行」と言えるような軌道に乗せるために必要な速度のことです。

特に地球や太陽に対し、「第一宇宙速度」「第二宇宙速度」「第三宇宙速度」と呼ばれている速度があり、入試でそのテーマが問われることもあります。

必ずしも暗記する必要はないですが、特に第一宇宙速度・第二宇宙速度は必ず導出できるようにしましょう。

3.2 第一宇宙速度

第一宇宙速度\(v_1\)とは、地球においてその高度を地表すれすれとした円軌道の衛星軌道の起動速度のことを言い、以下のように表すことができます。

\[v_1=\sqrt{\displaystyle\frac{GM}{R}}\]

これに実際の数値を代入すると

\( \displaystyle v_1≒7.91 \left[\rm{km/s}\right] \)

となります。

この速度未満の場合、物体を打ち出したとしても地表に戻ってしまい、逆にこの速度を超えると、そのまま楕円軌道に投入されます。

導出

質量\(m\)の物体が、地球の重心を中心として速度\(v_1\)で等速円運動しているとき、運動方程式は以下のようになります。

\( \displaystyle m \frac{v_1^2}{R}=G\displaystyle\frac{Mm}{R^2} \)

これを解くと

\( \displaystyle v_1=\sqrt{\displaystyle\frac{GM}{R}} \)

を導き出すことができます。

3.3 第二宇宙速度

第二宇宙速度\(v_2\)とは、地球の重力を振り切るために必要な地表における初速度のことで、以下のように表すことができます。

\( \displaystyle v_2 = \sqrt{\frac{2GM}{R}} \)

これに実際の数値を代入すると、

\( \displaystyle v_2≒11.2\left[\rm{km/s}\right] \)

となります。

第二宇宙速度は、地球の重力圏を脱するという意味で「地球脱出速度」とも呼ばれます。

導出

運動している物体が地球の重力圏を脱することができれば、無限遠に達することができます。(宇宙空間で地球の重力が無視できるとすれば、重力圏を脱したのち、物体は等速運動を行うから)

ということは、無限遠における力学的エネルギーが0以上になれば良いから、運動物体の質量\(m\)と第二宇宙速度\(v_2\)の間には以下の関係が成り立つ必要があります。

\( \displaystyle \frac{1}{2}mv_2^{2}-G\displaystyle\frac{Mm}{R}=0 \)

これを解いて

\( \displaystyle v_2 = \sqrt{\frac{2GM}{R}} \)

を導き出すことができます。

3.4 第三宇宙速度

第三宇宙速度は他の二つに比べて、入試で見かける機会はぐっと少なくなりますが、第二宇宙速度と根幹は同じなのでまとめておきます。

第三宇宙速度\(v_3\)とは、第二宇宙速度と同様の考え方で地球軌道・地表においてある初速度を与えたとして、地球さらには太陽の重力を振り切るために必要な速度のことです。

以下では次のステップで第三宇宙速度を求めます。

①地球公転軌道周辺における太陽の重力からの脱出速度\(v_s\)を考える。

②\(v_s\)が太陽から見た速度であることに留意して、地球の公転軌道の速さ\(V_E\)を求めたのちに、公転軌道からの脱出速度\(v_E\)を求める。

③地表から打ち上げる場合、初速度が地球の重力を振り切る分だけ早くする必要があることに注意して、\(v_3\)を求める。

①まず、地球公転軌道周辺における太陽の重力からの脱出速度\(v_s\)を考えます。

求め方は第二宇宙速度と同じで、地球の公転半径\(R_E\)、太陽の質量\(M_S\)を用いて、

\( \displaystyle v_s=\sqrt{\displaystyle\frac{2GM_S}{R_E}} \)

②\(v_s\)が太陽から見た速度であることに留意して、地球の公転軌道の速さ\(V_E\)を求めたのちに、公転軌道からの脱出速度\(v_E\)を求めます。

地球が円運動していると仮定すると、公転速度\(V_E\)は以下の運動方程式から求めることができます。

\( \displaystyle M_E \frac{V_E^2}{R_E}=G\displaystyle\frac{M_S M_E}{R_E^2} \)

\( \displaystyle ∴V_E=\sqrt{\frac{GM_S}{R_E}} \)

よって地球公転軌道からの脱出速度\(v_E\)は

\( \displaystyle v_E=v_S-V_E=(\sqrt{2}-1)\sqrt{\displaystyle\frac{GM_S}{R_E}} \)

これに実際の数値を代入すると、

\( \displaystyle v_E≒12.3\left[\rm{km/s}\right] \)

③地表から打ち上げる場合、初速度が地球の重力を振り切る分だけ早くする必要があることに注意して、\(v_3\)を求めていきます。

地表からの打ち上げののち、\(v_E\)の速度になればよいので以下のエネルギー保存則が成り立ちます。

\( \displaystyle \frac{1}{2} m v_{3}^{2}-G \frac{Mm}{R}=\frac{1}{2} m v_{E}^{2} \)

これを解いて、

\( \displaystyle v_3=\sqrt{\frac{2GM}{R}+v_E^2} = \sqrt{\frac{2GM}{R} + (\sqrt{2}-1)^2 \frac{GM_S}{R_E}} \)

を得ます。実際の数値を代入すると、

\( \displaystyle v_3≒16.7\left[\rm{km/s}\right] \)

となります。

 

4. まとめ

最後に今回学んだ内容をまとめておきます。復習に役立ててください!

まとめ

万有引力の大きさ:\(F=G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)

関係式:\(g=\displaystyle\frac{GM}{R^2}\)

位置エネルギー:\(U=-G\displaystyle\frac{Mm}{r}\)

第一宇宙速度:\(v_1=\sqrt{\displaystyle\frac{GM}{R}}\)

第二宇宙速度:\(v_2=\sqrt{\displaystyle\frac{2GM}{R}}\)

第三宇宙速度:\(v_3=\sqrt{\displaystyle\frac{2GM}{R}+(\sqrt{2}-1)^2\displaystyle\frac{GM_S}{R_E}}\)

 

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