東大塾長の山田です。
このページでは、「ケプラーの法則」の詳しい説明をしています!
また、面積速度一定則についても証明を交えて詳しく解説をしています。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. ケプラーの法則とは
1.1 ケプラーの法則
ケプラーの法則とは、ケプラーによって発表された惑星の運動に関する法則のことで、第一法則・第二法則・第三法則があります。
第一法則
惑星は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を描く。(楕円軌道の法則)
第二法則
惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間内に通過する面積は、楕円軌道上の場所に寄らず一定である。(面積速度一定の法則)
第三法則
惑星の公転周期の二乗は、軌道長半径(太陽と惑星の間の半長軸)の三乗に比例する。(調和の法則)
*1:これらの法則はすべて、太陽を不動と見なし、惑星間の相互作用を無視したうえで万有引力の法則から導出できます。
*2:上では太陽と惑星の関係で説明しましたが、「太陽→惑星」「惑星→(人工)衛星」に置き換えても同様のことが成り立ちます。
*3:楕円についての基本的知識が不足している人のために、簡単な用語の解説をします。
楕円とは、ある二定点(焦点)からの距離の和が一定である点の集合のことを指します。
この二つの焦点を通る線分を「長軸」といい、長軸を垂直二等分する線分を「短軸」といいます。また、長軸と短軸の半分の長さのことを、「半長軸」「半短軸」といいます。
1.2 科学史における万有引力とケプラーの法則
受験には関係ないですが、科学史における万有引力とケプラーの法則の関係について見ていきましょう。
万有引力の解説記事では、ニュートンが発見した万有引力についてまとめましたが、ケプラーの法則との関係はどのようになっているでしょうか?
以下に簡潔にまとめました。
①ティコ・ブラーエが行った天体観測のデータをもとに、ケプラーがケプラーの法則に気づく。
②ニュートンがケプラーの法則が成立するために必要な天体間に働く力(万有引力)を導き出す。
③ニュートンがそれがすべての質量をもつ物体について成り立つという革命的発想をした。
このように二つの間には切っても切れない関係があることが分かりますね。
2. ケプラーの法則の詳しい説明
それでは、三つの法則について詳しい説明を行っていきます。言葉のみならず式や図でも理解することが重要なので、しっかりと解説します。
2.1 第一法則(楕円運動の法則)
惑星は、太陽を焦点の一つとする楕円軌道上を動きます。
第一法則は、「惑星の軌道が真円ではなく楕円であること」と、「太陽の位置が楕円の中心ではなく焦点の一つであること」を述べています。また、暗に「惑星の軌道が太陽を含む同一平面上であること」も示されています。
2.2 第二法則(面積速度一定の法則)
惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間内に通過する面積(面積速度)は、楕円軌道上の場所に寄らず一定です。
2.2.1 面積速度一定の法則の定式化
まずは面積速度をどのように定式化できるのかを考えていきましょう。
面積速度とは惑星と太陽を結ぶ線分(動径)が単位時間内に通過する面積(単位時間当たりに動径が掃く面積)のことです。
太陽と惑星の距離を\(r\)、惑星の速さを\(v\)、惑星と太陽を結ぶ線分と速度のなす角を\(\theta\)とします。(下図参照)
単位時間に動径が掃いた面積を求めるために、非常に短い時間\(\Delta t\)の間に動径が掃いた面積\(\Delta S\)を考えることにします。
非常に短い時間の間では、惑星は直線運動をするとみなせます。したがって下図点線で囲まれたの三角形の面積を考えればよいということが分かります。
この三角形の面積\(\Delta S\)は
\( \displaystyle \Delta S = \frac{1}{2} r v \Delta t \sin \theta \)
となります。よって、面積速度は
\( \displaystyle \frac{\Delta S}{\Delta t} = \frac{1}{2} rv \sin \theta \)
と表すことができます。これにより面積速度一定の法則は以下のように定式化できます。
\( \displaystyle \frac{1}{2} rv \sin \theta = const. \)
2.2.2. 面積速度一定の法則の証明(一般化)
ここで面積速度一定の法則の証明を行います。受験で面積速度一定則を証明させることはないですが、高校生でも理解できる範囲なので興味のある人は読んでみてください!
ここで示すのは「中心力のみを受けた物体の運動において面積速度は一定である」ということです。惑星の運動も中心力のみを受けた物体の運動にあたります。
面積速度が単位時間に動径が掃いた面積であることを考慮すると、上図の運動において面積速度\(h\)は、点線で囲まれた三角形の面積になるので、
\[h=\displaystyle\frac{1}{2}\left(xv_y -yv_x\right)\]
と定義できます。
ここで常に中心力のみを受けている運動であることを考慮しましょう。中心力とは常に「力の向き」\(/\!/\)「動径」である力のことです。
だから上図において、\(\vec{F}/\!/\vec{r}\)より
\[xF_y -yF_x=0\cdots①\]
が成立します。①式に運動方程式\(ma=F\)を代入すると
\[①⇔xma_y -yma_x=0\] \[\quad∴\displaystyle\frac{d}{dt}\left[m(xv_y -yv_x)\right]=0\] \[\quad∴m(xv_y -yv_x)=const.\] \[\quad∴h=\displaystyle\frac{1}{2}\left(xv_y -yv_x\right)=const.\]
以上より面積速度一定則を示すことができました!
2.2.3. 問題を解くにあたって
実際に問題を解くにあたっては以下の三点を頭に入れておくと便利です。
①大抵は \( \displaystyle \sin \theta = 1 \)(すなわち \( \displaystyle \theta = \frac{π}{2}) \) のときしか出てこない。
これはほとんどの天体の問題において言えることです。別の言い方をすれば近日点と遠日点でしか面積速度一定の法則を用いないということです。
試しに上図で面積速度一定則を用いると
\( \displaystyle \frac{1}{2}r_1 v_1=\frac{1}{2}r_2 v_2 \)
となります。
②楕円軌道を解くときは「面積速度一定の法則」と「エネルギー保存則」を用いればよい!
これは楕円軌道を解くときの鉄則です。先ほどと同じ図で考えてみましょう。
「この図において\(v_1,v_2\)を\(r_1,r_2\)を用いて表せ」等と問われたら、面積速度一定則とエネルギー保存則を連立すればよく、
\( \begin{cases}
\displaystyle 面積速度一定則:\frac{1}{2} r_1 v_1 = \frac{1}{2} r_2 v_2 \\
\displaystyle エネルギー保存則:\frac{1}{2} m {v_1}^2 – G \frac{Mm}{r_1} = \frac{1}{2} m{v_2}^2 – G \frac{Mm}{r_2}
\end{cases} \)
この連立方程式を解くと結果が得られます。
③天体の問題以外で面積速度一定の法則の用いる必要がある場合は、必ず問題文で指示される。
面積速度一定則は中心力のみを受けた物体に置いて成り立ちますが、天体以外の問題で中心力に依存する(かつ面積速度一定則を用いる必要がある)物体の問題を解く場合は、必ず問題文に面積速度一定則が指示されます。
自分で気づけることが理想ですが、気づけなくても全く問題ないことを知っていると安心できると思います。
2.3 第三法則(調和の法則)
惑星の公転周期の二乗は、軌道半径長(半長軸)の三乗に比例します。これは別の言い方をすると以下のようになります。
周期を\(T\)、半長軸を\(a\)とすると
\( \displaystyle \frac{T^2}{a^3} = const. \)
証明についても頭に入れておくと良いでしょう!
万有引力が向心力となって円運動している天体について考えます。
この円運動の方程式は
\( \displaystyle m \frac{v^2}{r} = G \frac{Mm}{r^2} \)
でこれを解くと
\( \displaystyle v = \sqrt{ \frac{GM}{r} } \)
と分かり、これより公転周期\(T\)が
\( \displaystyle T = \frac{2πr}{v} = 2 \pi r \sqrt{\frac{r}{GM}} \cdots ② \)
と分かります。②式の両辺を二乗して整理すると、
\( \displaystyle \frac{T^2}{r^3} = \frac{4π^2}{GM}=const. \)
となり、第三法則が得られました!
3. まとめ
以上です。最後にケプラーの法則をまとめておくので、復習に活用して下さい!
第一法則
惑星は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を描く。(楕円軌道の法則)
第二法則
惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間内に通過する面積は、楕円軌道上の場所に寄らず一定である。(面積速度一定の法則)
\( \displaystyle \frac{1}{2}rv \sin \theta = const. \)
第三法則
惑星の公転周期の二乗は、軌道長半径(太陽と惑星の間の半長軸)の三乗に比例する。(調和の法則)
\( \displaystyle \frac{T^2}{r^3} = \frac{4π^2}{GM}=const. \)
素晴らしい❣松見和也