東大塾長の山田です。
このページでは、浮力の公式やそれを用いた問題の解き方について解説しています!
間違えやすいポイントについても書いてあるので、一通り理解したよって人もぜひ参考にしてください!
1. 浮力について
「浮力」と聞いた瞬間に、顔をしかめてしまうような人も多いのではないのでしょうか?
浮力が関わってくる問題になると、頭がごっちゃになってしまう原因は、公式や原理をあやふやにしか理解していないことに起因することが多いです。
まずはしっかりと浮力について理解しましょう!
1.1 そもそも浮力って?
具体例から説明すると、プールに入ったときに体を浮き上がるときや、水に投げ入れた物体がゆっくりと沈んているとき、体や物体にかかっているモノを浮き上がらせる力のことを浮力といいます。
この例から、浮力が重力とは反対方向に力を及ぼすことはわかると思います。
また、浮力は、水中物体の上下の圧力差によって発生します。
水中の物体の、上面をにかかる水圧より下面を水圧の方が大きいことにより、浮力が生じます。この二つの圧力差によって生じる鉛直上向きの力が浮力です。
この説明では物体の上下で圧力差が出ることを用いましたが、なぜそうなるのでしょうか?
以下で解説していきます!
2. 式による浮力の求め方
それでは、どのように浮力が発生するのか式で理解していきましょう。
以下のステップで求めます!
- 水圧の式を導出して、物体の上下にかかる圧力を求める
- 二つの圧力差が浮力であることを用いて、浮力を求める
2.1 水圧を求める
まず、水圧の式を求めていきます。
以下のような、液体が静止している状況を考えてみましょう!
液体の状況は均一なので今回は以下の一部分に着目します。
液体の密度を\(ρ\)、深さ\(h\)における水圧の大きさを\(P\)、大気圧の大きさを\(P_0\)、着目する部分の断面積を\(S\)、重力加速度を\(g\)とします。
着目部分の液体はつり合っているので、つり合いの式から
\[P_{0}S+ρShg-PS=0\] \[∴P=P_0+ρhg\]
となることが分かります!
これが、水圧の公式です。
上のつり合いの式にある、\(ρShg\)を見てしっくりこない人もいるのではないのでしょうか?
これは重力の大きさを表していて、\(ρSh\)が質量、つまり\(mg\)における\(m\)と同じ意味を持ちます。
密度の定義が「物質の単位当たりの質量」であることから、密度\(ρ\)に体積\(Sh\)を掛けたものが質量となるわけです!
2.2 浮力を求める
それでは浮力を求めていきましょう。
物体の上下の水圧差を求めたいので以下の物体が液中で静止している場合を考えます。
環境は先ほどと同じで、それに加えて液面から物体上部までの深さを\(h_1\)、液面から物体下部までの深さを\(h_2\)、物体の上下の長さを\(h\)とします。
浮力は物体の上下の水圧差、つまり「上部にかかる水圧と浮力の和」が「下部にかかる水圧」に等しいため、浮力\(F\)は物体の体積\(V\)を用いて
\[F=(P_0+ρh_2g)S-(P_0+ρh_1g)S=ρS(h_2-h_1)g=ρShg=ρVg\]
と表すことができます!
これが浮力の公式です。
先ほど扱った水圧の公式と一緒に覚えておくのが理想ですが、これらはすぐに導出できると思うので、すぐに導出できるように繰り返し練習しましょう!
2.3 浮力の式が意味するところ~アルキメデスの原理~
浮力の大きさが\(ρVg\)で表せることは分かったと思いますが、この式は何を意味しているのでしょうか?
実はこの式によりアルキメデスの原理が説明できます。
流体中の物体は、その物体が押しのけている流体の重さ(重量)と同じ大きさで上向きの浮力を受ける。
式を見ればアルキメデスの原理が成り立つことはわかりますが、なぜ押しのけた流体の質量が浮力になるのかしっくりこない人もいるのではないのでしょうか?
そこで別の視点からアルキメデスの原理を説明したいと思います!
まず物体を入れる前の状況を考えてみましょう。点線部が物体が入る部分です。
このとき点線内の液体の質量を\(m\)とすると重力として\(mg\)がかかっています。(上図白矢印)
また液体は安定状態にある、つまり静止しているので、分子同士の作用などにより重力と反対方向に同じ大きさ\(mg\)の力がかかっているはずです。(上図オレンジ矢印)
この状態で物体を入れたらどうなるでしょうか?下図を想像しましょう。
それでは入れたときに大きさ\(mg\)の力(上図オレンジ矢印)は変化するでしょうか?
この力は変わりません。同じ部分に液体があろうが物体があろうが周りの水分子がその部分を押そうとする力は変わらないはずだからです。
このことからも、もともと液体が入っていた時に重力とつりあっていた力がそのまま浮力として作用する(アルキメデスの原理)、ということが分かります!
どちらの視点からも理解できると良いです!
この事実を覚えておくことで公式の暗記しやすさが格段にアップするのではないのでしょうか。とても大事なので覚えておくと便利です!
3. 浮力を扱った問題
浮力の公式については理解できましたか?
ここからは実際に問題を考えてみることで理解の定着をはかりましょう。
3.1 公式の確認問題
浮力の公式が本当に理解できたのか、次の問題を解いて確かめましょう!
【問】密度\(ρ_0\)、高さが\(h\)、上下の断面積が\(S\)の物体を密度\(ρ\)の液体に沈めようとしたところ、下図のように\(x\)だけ沈み静止した。このとき\(x\)を求めよ。ただし重力加速度の大きさを\(g\)、大気圧を\(P_0\)とする。
解いてみましたか?それでは解答です。
物体にかかる重力と浮力がつりあっているので、
\[ρ_0Shg-ρSxg=0\] \[∴x=\frac{ρ_0}{ρ}h\]
解けた人は浮力をよく理解できていますね!
この問題では以下のようなミスをしてしまう人がたまに見受けられます。
物体にかかる重力、浮力、大気圧がつりあっているので、
\[ρ_0Shg+P_0S-ρSxg=0\] \[∴x=\frac{ρ_0}{ρ}h+\frac{P_0}{ρg}\]
なぜこの解答が間違いか説明できますか?
これは浮力を求めたときの以下の式を思い出してあげると理解できます。
\[F=(P_0+ρgh_2)S-(P_0+ρgh_1)S\]
そうです、浮力を求めるときに大気圧は打ち消しあっているのです!だから、浮力を考えるときは、大気圧の効果を無視することができます!
混合しやすい部分なので、ここでしっかりと理解しましょう!
3.2 引っ掛かりやすい問題
これは初めて解いたときに引っ掛かる人が多い問題です。実際に考えてみましょう!
【問】以下のように片方が開いている容器が液中で静止している。このときの容器内の空気の体積を\(V\)とする。この状態から容器を手で下に押してからすぐに離すとその後容器はどのように運動するでだろうか?ただし空気の漏れはないものとする。
- そのまま下降する
- 手を離した位置で再び静止する
- 離した直後から上昇する
考えましたか?
正解は①です!
最初の静止状態では浮力と重力がつり合っていますが、手で押し込み深くすると水圧が大きくなり容器内の空気の体積\(V\)が減ります。そうすると浮力\(ρVg\)も小さくなり、それにも関わらず空気の質量は変わらないので重力の方が大きくなり、容器は下降するのです。
式でも説明します。空気の質量を\(m\)とすると、最初の状態におけるつり合いの式は
\[ρVg=mg\]
そこから水圧の上昇により体積が\(V\)から\(V’\)になったとすると(もちろん\(V>V’\))、
\[ρV’g<mg\]
となり力のつり合いが成り立たなくなり、容器が下降することが分かります。
皆さん正解できたでしょうか!おそらく③と答えた人も多いのではないでしょうか?
風呂桶を沈めたときにすぐに浮き上がってくることも考え③とした人もいると思いますが、そもそも風呂桶が水中で静止状態になることがないので(すぐに浮き上がってくる)今回のような水中で静止状態になる問題設定のパターンには当たらないことから、それが解答の根拠にならないことがわかります!
似たような問題を聞かれたときに間違えないよう、なぜこのような答えになったのかしっかりと理解しておきましょう!
4. 浮力公式まとめ
最後に今回学んだことをまとめておきます。
深さ\(h\)における水圧:\(P=P_0+ρgh\)
浮力の大きさ:\(F=ρVg\)
アルキメデスの原理: 流体中の物体は、その物体が押しのけている流体の重さ(重量)と同じ大きさで上向きの浮力を受ける。
ただし\(P_0\)は大気圧、\(ρ\)は液体の密度、\(V\)は液体中の体積、\(g\)は重力加速度を表します。
以上です。勉強の参考にしてください!
\(P\)が\(h\)の一次関数になっていることから、深さが増すほどに水圧が大きくなる(水圧が深さに比例する)ことが分かります。