東大塾長の山田です。
このページでは、「方べきの定理」について解説します。
方べきの定理とその証明を、イラスト付きで丁寧にわかりやすく解説していきます。
ぜひ参考にしてください!
1. 方べきの定理とは?
まずは方べきの定理とは何か説明します。
円の2つの弦\( \mathrm{ AB, CD } \)の交点(パターンⅠ),またはその延長の交点(パターンⅡ)を\( \mathrm{ P } \)とすると
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ PA \cdot PB = PC \cdot PD } } \)
円の外部の点\( \mathrm{ P } \)から円に引いた接線の接点を\( T \)とする。また\( \mathrm{ P } \)から円に引いた直線の2つの交点を\( \mathrm{ A, B } \)とすると
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ PA \cdot PB = PT^2 } } \)
これら3つすべてまとめて「方べきの定理」といいます。
2. 方べきの定理の証明
それでは、なぜ方べきの定理が成り立つのか?証明をしていきます。
パターンⅠ・Ⅱ・Ⅲそれぞれの場合の証明をしていきます。
2.1 方べきの定理Ⅰの証明
パターンⅠは、点\( \mathrm{ P } \)が弦\( \mathrm{ AB, CD } \)の交点の場合です。
\( \mathrm{ \triangle PAC } \)と\( \mathrm{ \triangle PDB } \)において
対頂角だから \( \angle APC = \angle DPB \ \cdots ① \)
円周角の定理より \( \angle CAP = \angle BDP \ \cdots ② \)
①,②より2組の角がそれぞれ等しいから
\( \mathrm{ \triangle PAC } \) ∽ \( \mathrm{ \triangle PDB } \)
よって \( PA:PD = PC:PB \)
\( \displaystyle ∴ \ \large{ \color{red}{ PA \cdot PB = PC \cdot PD } } \)
となり、方べきの定理パターンⅠが成り立つことが証明できました。
2.2 方べきの定理Ⅱの証明
パターンⅡは、点\( \mathrm{ P } \)が弦\( \mathrm{ AB, CD } \)の延長の交点の場合です。
\( \mathrm{ \triangle PAC } \)と\( \mathrm{ \triangle PDB } \)において
共通な角だから \( \angle APC = \angle DPB \ \cdots ① \)
円に内接する四角形の内角は,その対角の外角に等しいから
\( \angle PAC = \angle PDB \ \cdots ② \)
①,②より2組の角がそれぞれ等しいから
\( \mathrm{ \triangle PAC } \) ∽ \( \mathrm{ \triangle PDB } \)
よって \( PA:PD = PC:PB \)
\( \displaystyle ∴ \ \large{ \color{red}{ PA \cdot PB = PC \cdot PD } } \)
となり、方べきの定理パターンⅡが成り立つことが証明できました。
2.3 方べきの定理Ⅲの証明
パターンⅢは、パターンⅡの\( \mathrm{ C, D } \)が一致しているパターンです。
\( \mathrm{ \triangle PTA } \)と\( \mathrm{ \triangle PBT } \)において
共通な角だから \( \angle TPA = \angle BPT \ \cdots ① \)
接弦定理より \( \angle PTA = \angle PBT \ \cdots ② \)
①,②より2組の角がそれぞれ等しいから
\( \mathrm{ \triangle PTA } \) ∽ \( \mathrm{ \triangle PBT } \)
よって \( PT:PB = PA:PT \)
\( \displaystyle ∴ \ \large{ \color{red}{ PA \cdot PB = PT^2 } } \)
となり、方べきの定理パターンⅢが成り立つことが証明できました。
接弦定理については「接弦定理まとめ(証明・逆の証明)」の記事で詳しく解説しています。接弦定理を忘れてしまった人は確認しておきましょう。
3. 方べきの定理Ⅰ・Ⅱの逆とその証明
方べきの定理Ⅰ・Ⅱは、その逆も成り立ちます。
3.1 方べきの定理Ⅰ・Ⅱの逆
2つの線分\( \mathrm{ AB } \)と\( \mathrm{ CD } \),または\( \mathrm{ AB } \)の延長と\( \mathrm{ CD } \)の延長が\( P \)で交わるとき,
\( PA \cdot PB = PC \cdot PD \)が成り立つならば,4点\( A, B, C, D \)は1つの円周上にある。
3.2 方べきの定理Ⅰ・Ⅱの逆の証明
下図の,「【Ⅰ】点\( P \)が線分\( \mathrm{ AB } \)と\( \mathrm{ CD } \)の交点の場合」,「【Ⅱ】点\( P \)が線分\( \mathrm{ AB, CD } \)の延長の交点の場合」,いずれの場合も証明は同様です。
\( \mathrm{ \triangle PAC } \)と\( \mathrm{ \triangle PDB } \)において
仮定 \( PA \cdot PB = PC \cdot PD \)より
\( PA:PD = PC:PB \ \cdots ① \)
[【Ⅰ】対頂角],[【Ⅱ】共通な角]だから
\( \angle APC = \angle DPB \ \cdots ② \)
①,②より2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいから
\( \mathrm{ \triangle PAC } \) ∽ \( \mathrm{ \triangle PDB } \)
\( ∴ \ \angle PAC = \angle PDB \)
よって,[【Ⅰ】円周角の定理の逆],[【Ⅱ】円に内接する四角形の性質]より,4点\( A, B, C, D \)は1つの円周上にあるといえます。
したがって,\( PA \cdot PB = PC \cdot PD \)が成り立つならば,4点\( A, B, C, D \)は1つの円周上にあることが証明できました。
4. 方べきの定理Ⅲの逆とその証明
方べきの定理Ⅲについても、その逆が成り立ちます。
4.1 方べきの定理Ⅲの逆
線分\( \mathrm{ AB } \)の延長上に点\( \mathrm{ P } \)があり,直線\( \mathrm{ AB } \)上にない点\( \mathrm{ T } \)に対し,
\( PA \cdot PB = PT^2 \)が成り立つならば,\( PT \)は\( \triangle TAB \)の外接円に接する。
4.2 方べきの定理Ⅲの逆の証明
\( \mathrm{ \triangle PTA } \)と\( \mathrm{ \triangle PBT } \)において
仮定 \( PA \cdot PB = PT^2 \)より
\( PA:PT = PT:PB \ \cdots ① \)
共通な角だから \( \angle TPA = \angle BPT \ \cdots ② \)
①,②より2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいから
\( \mathrm{ \triangle PTA } \) ∽ \( \mathrm{ \triangle PBT } \)
\( ∴ \ \angle PTA = \angle PBT \)
よって,接弦定理の逆より, \( PT \)は\( \triangle TAB \)の外接円に点\( T \)で接するといえます。
したがって,\( PA \cdot PB = PT^2 \)が成り立つならば,\( PT \)は\( \triangle TAB \)の外接円に接することが証明できました。
接弦定理については「接弦定理まとめ(証明・逆の証明)」の記事で詳しく解説しています。接弦定理を忘れてしまった人は確認しておきましょう。
5. 方べきの定理のまとめ
以上が方べきの定理の解説です。しっかり理解できましたか?
方べきの定理はとても便利であり、超重要公式の1つです。
必ず覚えておきましょうね!
とても勉強になりました。
図あってます?
2つの円が交わっていて、交点A,Bとする。線分AB上の点Pを通る2直線が2つの円と交わる点をそれぞれC,D,E,Fとするとき4点C,D,E,Fは同一線上にあることを証明せよ、この解決のポイントは何ですか?
教えてください
とてもわかりやすい解説ありがとうございます。僭越ながら1点だけ,コメントさせてください。
方べきの定理ⅡとⅢを説明している最初の2枚の図について,to-oskさんもご指摘なさっておられるように,長い赤線および青線の表記が紛らわしく感じます。
パターンⅡでは,長い赤線はPB間,長い青線はPD間を結ぶように描き,
パターンⅢでは,長い赤線はPB間を結ぶように描く方がより理解しやすいかと思います。
ほんとそれ
何様のつもりけ笑笑