東大塾長の山田です。
このページでは、「対数(log)の公式」について解説します。
本質を理解できるように、公式の証明(導出)も解説しています。
また、使い方がイメージしやすいように、具体例として計算問題も解説しているので、ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 対数(log)の公式・底の変換公式まとめ
まずは対数(log)の定義と性質・底の変換公式をまとめます。
\( a > 0, \ a \neq 1, \ M > 0, \ N > 0 \) のとき
【対数の性質】
\( \log_{a} a = 1 \)
\( \log_{a} 1 = 0 \)
【積の対数】
\( \color{red}{ \log_{a} MN = \log_{a} M + \log_{a} N } \)
【商の対数】
\( \displaystyle \color{red}{ \log_{a} \frac{M}{N} = \log_{a} M \ – \log_{a} N } \)
【累乗の対数】
\( \color{red}{ \log_{a} M^r = r \log_{a} M } \)(\( r \) は実数)
\( a, b, c \) は正の数で,\( a \neq 1, \ b \neq 1, \ c \neq 1 \) のとき
\( \displaystyle \color{red}{ \log_{a} b = \frac{\log_{c} b}{\log_{c} a} } \)
特に \( \displaystyle \color{red}{ \log_{a} b = \frac{1}{\log_{b} a} } \)
\( a, b, c \) は正の数で,\( a \neq 1, \ b \neq 1, \ c \neq 1 \) のとき
\( \color{red}{ \log_{a} b \log_{b} c = \log_{a} c } \)
\( \displaystyle \color{red}{ a^{\log_{b} c} = c^{\log_{b} a} } \)
\( \displaystyle \color{red}{ \log_{a^n} b = \frac{1}{n} \log_{a} b } \)
※ これらの公式は教科書には載っていませんが、便利な公式なので覚えておくとよいです。
それぞれの公式の証明(導出)や使い方を解説していきます。
2. 対数の定義と使い方・計算例
まずは対数の定義から確認していきましょう。
\( a > 0, \ a \neq 1 \) とするとき、任意の正の数 \( M \) に対して、
\( a^p = M \)
となる実数 \( p \) がただ1つ定まります。
この \( p \) を
\( \color{red}{ \log_{a} M } \)
で表し、\( a \) を底とする \( M \) の対数といいます。
また、\( M \) を \( \log_{a} M \) の真数といいます。
\( a^p > 0 \) だから、真数 \( M \) は正の実数となります。
\( a > 0, \ a \neq 1, \ M > 0 \) のとき
\( \color{red}{ a^p = M \ \Longleftrightarrow \ \log_{a} M = p } \)
記号「\( \log \)」は、対数を意味するlogarithmに由来しています。
【例1】
(1) \( \color{blue}{ 2 }^\color{red}{ 3 } = \color{green}{ 8 } \) であるから \( \log_{\color{blue}{ 2 }} \color{green}{ 8 } = \color{red}{ 3 } \)
(2) \( 10^2 = 100 \) であるから \( \log_{10} 100 = 2 \)
【例2】 \( \log_{3} 27 \) の値を求めよ。
\( \log_{3} 27 = p \) とおくと
\( 3^p = 27 = 3^3 \)
よって \( p = 3 \) であるから
\( \log_{3} 27 = \log_{3} 3^3 = 3 \)
このことから、一般に、次の等式が成り立ちます。
\( \color{red}{ \log_{a} a^p = p } \)
3. 対数の公式の証明と計算問題
続いて、対数の性質と公式の証明(導出)、そして計算問題を通して公式の使い方を解説していきます。
3.1 積の対数
まずは積の対数の性質です。
\( a > 0, \ a \neq 1, \ M > 0, \ N > 0 \) のとき
\( \color{red}{ \log_{a} MN = \log_{a} M + \log_{a} N } \)
【証明】
\( \log_{a} M = p, \ \log_{a} N = q \) とおくと
\( M = a^p, \ N = a^q \)
よって
\( MN = a^p \cdot a^q = a^{p+q} \)
両辺の \( a \) を底とする対数をとると
\( \begin{align}
\color{red}{ \log_{a} MN } & = \log_{a} a^{p+q} \\
\\
& = p+q \\
\\
& \color{red}{ = \log_{a} M + \log_{a} N }
\end{align} \)
公式を利用する計算問題をやってみましょう。
\( \log_{6} 4 + \log_{6} 9 \) を簡単にせよ。
【解答】
\( \begin{align}
\color{red}{ \log_{6} 4 + \log_{6} 9 } & = \color{red}{ \log_{6} (4 \cdot 9) } \\
\\
& = \log_{6} 36 \\
\\
& = \log_{6} 6^2 \\
\\
& \color{red}{ = 2 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
3.2 商の対数
次は商の対数の性質です。
\( a > 0, \ a \neq 1, \ M > 0, \ N > 0 \) のとき
\( \displaystyle \color{red}{ \log_{a} \frac{M}{N} = \log_{a} M \ – \log_{a} N } \)
【証明】
\( \log_{a} M = p, \ \log_{a} N = q \) とおくと
\( M = a^p, \ N = a^q \)
よって
\( \displaystyle \frac{M}{N} = \frac{a^p}{a^q} = a^{p \ – q} \)
両辺の \( a \) を底とする対数をとると
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \log_{a} \frac{M}{N} } & = \log_{a} a^{p \ – q} \\
\\
& = p \ – q \\
\\
& \color{red}{ = \log_{a} M \ – \log_{a} N }
\end{align} \)
公式を利用する計算問題をやってみましょう。
\( \log_{4} 96 – \log_{4} 6 \) を簡単にせよ。
【解答】
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \log_{4} 96 – \log_{4} 6 } & = \color{red}{ \log_{4} \frac{96}{6} } \\
\\
& = \log_{4} 16 \\
\\
& = \log_{4} 4^2 \\
\\
& \color{red}{ = 2 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
3.3 累乗の対数
続いて累乗の対数です。
\( a > 0, \ a \neq 1, \ M > 0 \) のとき
\( \color{red}{ \log_{a} M^r = r \log_{a} M } \)
【証明】
\( \log_{a} M = p \) とおくと
\( M = a^p \)
両辺を \( r \) 乗すると
\( M^r = a^{pr} \)
両辺の \( a \) を底とする対数をとると
\( \begin{align}
\color{red}{ \log_{a} M^r } & = \log_{a} a^{pr} \\
\\
& = pr \\
\\
& = \color{red}{ r \log_{a} M }
\end{align} \)
公式を利用する計算問題をやってみましょう。
次の式を簡単にせよ。
(1) \( \displaystyle \frac{1}{2} \log_{2} 25 + \log_{2} \frac{1}{10} \)
(2) \( \displaystyle \frac{3}{2} \log_{3} \sqrt[3]{12} \)
【解答】
(1) \( \displaystyle \frac{1}{2} \log_{2} 25 + \log_{2} \frac{1}{10} \)
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \frac{1}{2} \log_{2} 25 + \log_{2} \frac{1}{10} } & = \color{red}{ \log_{2} \left( 5^2 \right)^{\frac{1}{2}} } + \log_{2} \frac{1}{10} \\
\\
\displaystyle & = \log_{2} 5 + \log_{2} \frac{1}{10} \\
\\
\displaystyle & = \log_{2} \left( 5 \cdot \frac{1}{10} \right) \\
\\
\displaystyle & = \log_{2} \frac{1}{2} \\
\\
\displaystyle & = \log_{2} 2^{-1} \\
\\
& \color{red}{ = -1 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
(2) \( \displaystyle \frac{3}{2} \log_{3} \sqrt[3]{12} \)
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \frac{3}{2} \log_{3} \sqrt[3]{12} } & = \color{red}{ \log_{3} \left( 12^{\frac{1}{3}} \right)^{\frac{3}{2}} } \\
\\
\displaystyle & = \log_{3} 12^{\frac{1}{2}} \\
\\
& \color{red}{ = \log_{3} 2 \sqrt{3} \cdots 【答】 }
\end{align} \)
3.4 底の変換公式
次は底の変換公式です。
\( a, b, c \) は正の数で,\( a \neq 1, \ b \neq 1, \ c \neq 1 \) のとき
\( \displaystyle \color{red}{ \log_{a} b = \frac{\log_{c} b}{\log_{c} a} } \)
【証明】
\( \log_{a} b = p \) とおくと
\( a^p = b \)
両辺の \( c \) を底とする対数をとると
\( \log_{c} a^p = \log_{c} b \)
よって
\( p \log_{c} a = \log_{c} b \)
\( a \neq 1 \) より,\( \log_{c} a \neq 0 \) であるから
\( \displaystyle p = \frac{\log_{c} b}{\log_{c} a} \)
すなわち
\( \displaystyle \color{red}{ \log_{a} b = \frac{\log_{c} b}{\log_{c} a} } \)
また、底の変換公式より
\( \displaystyle \log_{a} b = \frac{\log_{b} b}{\log_{b} a} \)
であるから
\( \displaystyle \color{red}{ \log_{a} b = \frac{1}{\log_{b} a} } \)
が成り立つ。
底の変換公式を利用する計算問題をやってみましょう。
(1) \( \log_{27} 9 \) の値を求めよ。
(2) \( \log_{4} 9 \ – \log_{2} 12 \) を簡単にせよ。
【解答】
(1) \( \log_{27} 9 \)
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \log_{27} 9 } & = \frac{\log_{3} 9}{\log_{3} 27} \\
\\
\displaystyle & = \frac{\log_{3} 3^2}{\log_{3} 3^3} \\
\\
\displaystyle & = \frac{2 \log_{3} 3}{3 \log_{3} 3} \\
\\
\displaystyle & \color{red}{ = \frac{2}{3} \cdots 【答】}
\end{align} \)
(2) まず対数の底をそろえます。
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \log_{4} 9 } \ – \log_{2} 12 & = \color{red}{ \frac{\log_{2} 9}{\log_{2} 4} } – \log_{2} 12 \\
\\
\displaystyle & = \frac{1}{2} \log_{2} 9 \ – \log_{2} 12 \\
\\
& = \log_{2} 9^{\frac{1}{2}} \ – \log_{2} 12 \\
\\
& = \log_{2} 3 \ – \log_{2} 12 \\
\\
\displaystyle & = \log_{2} \frac{3}{12} \\
\\
\displaystyle & = \log_{2} \frac{1}{4} \\
\\
& = \log_{2} 2^{-2} \\
\\
& \color{red}{ = \ -2 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
3.5 その他の公式
さいごに、教科書には載っていませんが、覚えておくと便利な公式の解説です。
\( a, b, c \) は正の数で,\( a \neq 1, \ b \neq 1, \ c \neq 1 \) のとき
\( \color{red}{ \log_{a} b \log_{b} c = \log_{a} c } \)
\( \displaystyle \color{red}{ a^{\log_{b} c} = c^{\log_{b} a} } \)
\( \displaystyle \color{red}{ \log_{a^n} b = \frac{1}{n} \log_{a} b } \)
【証明】 \( \color{red}{ \log_{a} b \log_{b} c = \log_{a} c } \)
底の変換公式より
\( \displaystyle \log_{b} c = \frac{\log_{a} c}{\log_{a} b} \)
よって
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \log_{a} b \log_{b} c } & = \log_{a} b \cdot \frac{\log_{a} c}{\log_{a} b} \\
\\
& \color{red}{ = \log_{a} c }
\end{align} \)
【証明】 \( \displaystyle \color{red}{ a^{\log_{b} c} = c^{\log_{b} a} } \)
等式
\( \log_{b} c \cdot \log_{b} a = \log_{b} a \cdot \log_{b} c \)
において、対数の性質 \( \color{red}{ r } \log_{a} M = \log_{a} M^{\color{red}{ r }} \) より
\( \color{red}{ \log_{b} c } \cdot \log_{b} a = \color{red}{ \log_{b} a } \cdot \log_{b} c \)
\( \Leftrightarrow \log_{b} a^{\color{red}{ \log_{b} c } } = \log_{b} c^{\color{red}{ \log_{b} a } } \)
両辺の対数の真数は等しいから
\( \displaystyle \color{red}{ a^{\log_{b} c} = c^{\log_{b} a} } \)
【証明】 \( \displaystyle \color{red}{ \log_{a^n} b = \frac{1}{n} \log_{a} b } \)
底の変換公式より
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \log_{a^n} b } & = \frac{\log_{a} b}{\log_{a} a^n} \\
\\
& = \frac{\log_{a} b}{n \log_{a} a } \\
\\
& \color{red}{ = \frac{1}{n} \log_{a} b }
\end{align} \)
以上が対数の公式の解説すべてです!
\( a > 0, \ a \neq 1, \ M > 0 \) のとき
\( \color{red}{ a^p = M \ \Longleftrightarrow \ \log_{a} M = p } \)
・「\( \log_{a} M \)」を、\( a \) を底とする \( M \) の対数という。
・\( M \) を \( \log_{a} M \) の真数という。真数は正の数。