絶対値を含む不等式の解き方まとめ

東大塾長の山田です。
このページでは、「絶対値を含む不等式の解き方」について解説します

「絶対値記号のはずし方の基本」からしっかり解説しつつ、具体的に問題を解きながら「絶対値を含む不等式の解き方」を、丁寧に分かりやすく解説しています

「絶対値記号のはずし方」から知りたい方は「1. 絶対値記号のはずし方」から、
「絶対値を含む不等式の解き方」を手っ取り早く知りたい方は「2. 絶対値を含む不等式の解き方(基礎・基本)」からご覧ください。

それでは、この記事を最後まで読んで、「絶対値を含む不等式の解き方」をマスターしてください!

1. 絶対値記号のはずし方

絶対値がある方程式や不等式では、絶対値記号が付いたままでは計算ができません。

なので、まずは「絶対値記号のはずし方」から確認しておきましょう。

 

絶対値は次のように、場合分けをして、絶対値記号「\( | \ \ | \)」をはずす必要があります

絶対値のはずし方

  1. \( X≧0 \) のとき \( \cdots |X|=X \)
  2. \( X<0 \) のとき \( \cdots |X|=-X \)

※絶対値の中が、「0以上」か「負」かで場合分けする
※絶対値の中が負なら、「-1倍」する

 

具体的に、例を挙げてみます。

【例①】( |x-1| )

\( |x-1| \)

  1. 絶対値の中が0以上、つまり \( x-1≧0 \) のとき、すなわち \( x≧1 \) のとき
    \( |x-1| = x-1\)
  2. 絶対値の中が負、つまり \( x-1<0 \) のとき、すなわち \( x<1 \) のとき
    \( |x-1| = -(x-1) = -x+1\)
【例②】( |x+5| )

\( |x+5| \)

  1. 絶対値の中が0以上、つまり \( x+5≧0 \) のとき、すなわち \( x≧-5 \) のとき
    \( |x+5| = x+5\)
  2. 絶対値の中が負、つまり \( x+5<0 \) のとき、すなわち \( x<-5 \) のとき
    \( |x+5| = -(x+5) = -x-5\)

 

2. 絶対値を含む不等式の解き方(基礎・基本)

それでは、絶対値のある不等式の解き方を、例題を解きながら解説していきます。

2.1 例題①【\( |x|<3 \)】

例題①

\( |x|<3 \) を解け。

\( |x|<3 \) を図で表すと、次のようになります。

\( |x| \) が-3と3の内側(±3は含まない)ということになります。

よって、不等式の解は、

\( \color{red}{ -3<x<3 \cdots 【答】 } \)

となります。

それでは、解答をまとめます。

解答

下の図より

\( \color{red}{ |x|<3 \Longleftrightarrow -3<x<3 \cdots 【答】 } \)

 

2.2 例題②【\( |x|>10 \)】

例題②

\( |x|>10 \) を解け。

\( |x|>10 \) を図で表すと、次のようになります。

今度は、\( |x| \) が-10と10の外側(±10は含まない)ということになります。

よって、不等式の解は、

\( \color{red}{ x<-10, \ 10<x \cdots 【答】 } \)

となります。

それでは、解答をまとめます。

解答

下の図より

\( \color{red}{ |x|>10 \Longleftrightarrow x<-10, \ 10<x \cdots 【答】} \)

 

2.3 例題③【\( |x-2|≦3 \)】

例題③

\( |x-2|≦3 \) を解け。

例題③も、例題①・②と同じ考え方でいきます。

\( |x-2|≦3 \) を図で表すと、次のようになります。

\( |x-2| \) が-3と3の内側(±3を含む)ということになります。

よって、与式は、

\( -3≦x-2≦3 \)

各辺に\( +2 \)をして

\( \color{red}{ -1≦x≦5 \cdots 【答】 } \)

となります。

それでは、解答をまとめます。

解答

下の図より

\( \begin{align}
|x-2|≦3 \Longleftrightarrow & -3 ≦ x-2 ≦ 3 \\
\Longleftrightarrow & -1 ≦ x ≦ 5
\end{align} \)

 

2.4 例題④【\( |2x+1|≧1 \)】

例題④

\( |2x+1|≧1 \) を解け。

\( |2x+1|≧1 \) を図で表すと、次のようになります。

\( |2x+1| \) が-1と1の外側(±1は含まない)ということになります。

 

よって、与式は

\( 2x+1≦-1, \ 1≦2x+1 \)

各辺に\( -1 \)をして

\( 2x≦-2, \ 0≦2x \)

各辺を2で割って

\( \color{red}{ x≦-1, \ 0≦x \cdots 【答】 } \)

となります。

それでは、解答をまとめます。

解答
下の図より

\( \begin{align}
& |2x+1|≧1 \\
\Longleftrightarrow \ & 2x+1≦-1, \ 1≦2x+1 \\
\Longleftrightarrow \ & 2x≦-2, \ 0≦2x \\
\Longleftrightarrow \ & x≦-1, \ 0≦x
\end{align} \)

 

ここまでのポイントをまとめておきます。

ポイント

  • \( |x|<A \ \Leftrightarrow -A<x<A\)
  • \( |x|>A \ \Leftrightarrow x<-A, \ A<x\)

 

3. 絶対値を含む不等式の解き方(標準)

次は、場合分けを使う解き方を解説します。

3.1 絶対値の不等式の解き方の手順(原則)

まずは、絶対値の不等式の解き方の手順をまとめておきます。

絶対値を含む不等式の解き方の手順

  1. 絶対値の中が0以上か負かで、場合分けをする。
  2. ①のそれぞれ場合について、不等式を解く。
  3. ①の条件と、②で求めた解の共通範囲から、それぞれの場合の解と求める。
  4. ③の合わせた範囲が解となる。

文章だけではイメージしにくいと思うので、具体的に問題を使って解説します。

3.2 例題⑤【\( |x-4|<3x \)】

例題⑤

\( |x-4|<3x \) を解け。

絶対値の中が0以上か負かで、場合分けをします

(i) \( x-4≧0 \ \Leftrightarrow \ x≧4 \)のとき

\( \begin{align}
与式 \Leftrightarrow x-4 & <3x \\
-2x & <4 \\
x & >-2 \\
\end{align} \)

\( x≧4 \) との共通範囲は、\( \color{red}{ x≧4 } \cdots ①\)

 

(ii) \( x-4<0 \ \Leftrightarrow \ x<4 \)のとき

\( \begin{align}
与式 \Leftrightarrow -(x-4) & <3x \\
-x+4 & <3x \\
-4x & <-4 \\
x & >1
\end{align} \)

\( x<4 \) との共通範囲は、\( \color{red}{ 1<x<4 } \cdots ② \)

 

最後に、①と②を合わせた範囲が、不等式の解となります。

①、②の共通範囲を図示すると、次のようになります。

よって、解は

\( \color{red}{ x > 1 \cdots 【答】 } \)

となります。

それでは、解答をまとめます。

解答

\( |x-4|<3x \)

(i) \( x-4≧0 \ \Leftrightarrow \ x≧4 \)のとき

\( \begin{align}
与式 \Leftrightarrow x-4 & <3x \\
-2x & <4 \\
x & >-2 \\
\end{align} \)

\( x≧4\)との共通範囲は、\( \color{red}{ x≧4 } \cdots ① \)

 

(ii) \( x-4<0 \ \Leftrightarrow \ x<4 \)のとき

\( \begin{align}
与式 \Leftrightarrow -(x-4) & <3x \\
-x+4 & <3x \\
-4x & <-4 \\
x & >1
\end{align} \)

\( x<4 \) との共通範囲は、\( \color{red}{ 1<x<4 } \cdots ② \)

①,②より、求める解は、

\( \color{red}{ x > 1 \cdots 【答】 } \)

 

4. 絶対値が2つ以上ある不等式の解き方(例題⑥)

今度は、不等式に絶対値が2つ以上あるパターンの問題です。

例題⑥

\( |x-7|+|x-8|<3 \) を解け。

絶対値が2つ以上ある場合は、「絶対値の中=0」となる点を境目として、場合分けをします

 

今回の問題では、\( (x-7)=0, \ (x-8)=0 \)、つまり \( x=7,\ 8 \) を境目として、場合分けをします。

(i) \( x<7 \) のとき

\( |x-7| \) の中は負、\( |x-8| \) の中は負となるので

\( \begin{align}
与式 \ & \Leftrightarrow -(x-7)-(x-8)<3 \\
& \Leftrightarrow -x+7-x+8<3 \\
& \Leftrightarrow -2x<-12 \\
& \Leftrightarrow x>6 
\end{align} \)

よって,\( x<7 \) との共通範囲は

\( \color{red}{ 6<x<7 } \cdots ① \)

(ii) \( 7≦x<8 \) のとき

\( |x-7| \) の中は0以上、\( |x-8| \) の中は負となるので、

\( \begin{align}
与式 \ & \Leftrightarrow (x-7)-(x-8)<3 \\
& \Leftrightarrow x-7-x+8<3 \\
& \Leftrightarrow 1<3 (実数全体)
\end{align} \)

よって,\( 7≦x<8 \) との共通範囲は

\( \color{red}{ 7≦x<8 } \cdots ② \)

(iii) \( 8≦x \) のとき

\( |x-7| \) の中は0以上、\( |x-8| \) の中は0以上となるので、

\( \begin{align}
与式 \ & \Leftrightarrow (x-7)+(x-8)<3 \\
& \Leftrightarrow x-7+x-8<3 \\
& \Leftrightarrow 2x<18 \\
& \Leftrightarrow x<9
\end{align} \)

よって,\( 8 ≦ x \) との共通範囲は

\( \color{red}{ 8 ≦ x < 9 } \cdots ③ \)

①,②,③の共通範囲を図示すると、次のようになります。

よって、解は

\( \color{red}{ 6 < x < 9 \cdots 【答】 } \)

となります。

それでは、解答をまとめます。

解答

\( |x-7|+|x-8|<3 \)

(i) \( x<7 \) のとき

\( |x-7| \) の中は負、\( |x-8| \) の中は負となるので、

\( \begin{align}
与式 \ & \Leftrightarrow -(x-7)-(x-8)<3 \\
& \Leftrightarrow -x+7-x+8<3 \\
& \Leftrightarrow -2x<-12 \\
& \Leftrightarrow x>6 
\end{align} \)

よって,\( x<7 \) との共通範囲は

\( \color{red}{ 6<x<7 } \cdots ① \)

(ii) \( 7≦x<8 \) のとき

\( |x-7| \) の中は0以上、\( |x-8| \) の中は負となるので、

\( \begin{align}
与式 \ & \Leftrightarrow (x-7)-(x-8)<3 \\
& \Leftrightarrow x-7-x+8<3 \\
& \Leftrightarrow 1<3 (実数全体)
\end{align} \)

よって,\( 7≦x<8 \) との共通範囲は

\( \color{red}{ 7≦x<8 } \cdots ② \)

(iii) \( 8≦x \) のとき

\( |x-7| \)の中は0以上、\( |x-8| \)の中は0以上となるので、

\( \begin{align}
与式 \ & \Leftrightarrow (x-7)+(x-8)<3 \\
& \Leftrightarrow x-7+x-8<3 \\
& \Leftrightarrow 2x<18 \\
& \Leftrightarrow x<9
\end{align} \)

よって,\( 8 ≦ x \) との共通範囲は

\( \color{red}{ 8 ≦ x < 9 } \cdots ③ \)

①,②,③より、求める解は、

\( \color{red}{ 6 < x < 9 \cdots 【答】 } \)

ポイント

絶対値が2つ以上ある場合は、「絶対値の中=0」となる点を境目として、場合分けをする

 

5. 絶対値の不等式の解き方まとめ

最後に、「絶対値のはずし方」と、「絶対値を含む不等式の解き方」をまとめておきます。

絶対値のはずし方

  1. \( X≧0 \) のとき \( \cdots |X|=X \)
  2. \( X<0 \) のとき \( \cdots |X|=-X \)

※絶対値の中が、「0以上」か「負」かで場合分けする
※絶対値の中が負なら、「-1倍」する

絶対値を含む不等式の解き方の手順

  1. 絶対値の中が0以上か負かで、場合分けをする。
  2. ①のそれぞれ場合について、不等式を解く。
  3. ①の条件と、②で求めた解の共通範囲から、それぞれの場合の解と求める。
  4. ③の合わせた範囲が解となる。
  • 絶対値が2つ以上ある場合は、「絶対値の中=0」となる点を境目として、場合分けをする

以上が、絶対値を含む不等式の解き方の解説です。
しっかりと理解できましたか?

絶対値の計算は、「絶対値の中が正か負かで、場合分けをする」ことが肝になります。

「絶対値記号のはずし方」と「場合分け」を正しくできれば、必ずマスターできるので、どんどん練習を積んで慣れていってください!

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5件のコメント

大変わかりやすい解説で助けられました。

ただ一つだけわからない点があります。
例題(6)の(ii)1(ii) 7≦x与式 ⇔(x−7)−(x−8)<3⇔x−7−x+8<3⇔1よって,7≦x7≦x<8⋯②

計算でxが消去された解1<3がなぜ実数全体になり、7≦x<8とな理由がわかりません。

xが消えて残った1<3 という不等式は、xの値に関係なく成立する不等式です。つまり、xにどんな値を入れても成り立つ→xは実数全体 となります (私の解釈が正しければですが、、、)

いや別にええやろそんぐらい
質問して何が悪いんやお前らアホなんか

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