東大塾長の山田です。
このページでは、「微分係数と導関数」について解説します。
微分係数と導関数の定義や求め方を、はじめから丁寧に解説しています。
また、微分係数と導関数の違いについても解説しているので、ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 微分係数
まずは「微分係数」について解説していきます。
1.1 微分係数とは?
関数 \( y = f (x) \) の \( x \) が \( a \) から \( a + h \) まで変わるときの平均変化率
\( \displaystyle \frac{f (a+h) \ – f (a)}{h} \)
において,\( h \) を限りなく0に近づけたときの値(極限値)を
関数 \( y = f (x) \) の \( x = a \) における微分係数
といいます。
このときの微分係数を \( \color{red}{ f’ (a) } \) で表します。
1.2 微分係数の定義
関数 \( y = f (x) \) の \( x = a \) における微分係数の定義は,\( \lim \) を用いて次のように表します。
微分係数 \( f’ (a) \) は,曲線 \( y = f (x) \) 上の点 \( ( a, \ f (a) ) \) における接線の傾きに等しい。
1.3 微分係数の定義による求め方(問題)
実際に、定義にしたがって微分係数を求める問題をやってみましょう。
微分係数の定義にしたがって,次の関数の,与えられた \( x \) の値における微分係数を求めよ。
(1) \( \displaystyle f (x) = \ – x^2 + 3x \ – 5 \) (\( x = \ – 1 \))
(2) \( \displaystyle f (x) = x^3 \ – 2x \) (\( x = 2 \))
【解答】
(1) \( \displaystyle f’ (-1) = \color{red}{ \lim_{h \to 0} \frac{f (-1 + h) \ – f (-1)}{h} } \)
\( \begin{align}
f (-1 + h) & = \ – (-1 + h)^2 + 3 (-1 + h) \ – 5 \\
\\
& = \ – h^2 + 5h \ – 9
\end{align} \)
\( \begin{align}
f (-1) & = \ -(-1)^2 + 3(-1) \ – 5 \\
\\
& = \ -9
\end{align} \)
したがって
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ f’ (-1) } & = \lim_{h \to 0} \frac{(- h^2 + 5h \ – 9) \ – (-9)}{h} \\
\\
\displaystyle & = \lim_{h \to 0} \frac{-h^2 + 5h}{h} \\
\\
\displaystyle & = \lim_{h \to 0} (-h + 5) \\
\\
& \color{red}{ = 5 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
(2) \( \displaystyle f’ (2) = \color{red}{ \lim_{h \to 0} \frac{f (2+h) \ – f (2)}{h} } \)
\( \begin{align}
f (2+h) & = (2+h)^3 \ – 2 (2+h) \\
\\
& = h^3 + 6h^2 + 10h + 4
\end{align} \)
\( \begin{align}
f (2) & = 2^3 \ – 2 \cdot 2 \\
\\
& = 4
\end{align} \)
したがって
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ f’ (2) } & = \lim_{h \to 0} \frac{( h^3 + 6h^2 + 10h + 4) \ – 4}{h} \\
\\
\displaystyle & = \lim_{h \to 0} \frac{ h^3 + 6h^2 + 10h }{h} \\
\\
& = \lim_{h \to 0} (h^2 + 6h + 10h) \\
\\
& \color{red}{ = 10 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
2. 導関数
次は、「導関数」について解説していきます。
2.1 導関数とは?
関数 \( y = f (x) \) において,\( x \) の各値 \( a \) に微分係数 \( f’ (a) \) を対応させると,1つの新しい関数が得られます。
これを関数 \( y = f (x) \) の導関数といい,\( \color{red}{ f’ (x) } \) で表します。
具体例でみていきましょう。
【例】 \( f (x) = x^2 \)
関数 \( f (x) = x^2 \) の \( x = a \) における微分係数 \( f’ (a) \) の対応は次の表のようになる。
よって、微分係数 \( f’ (a) \) は
\( f’ (a) = 2a \)
となる。
ここで、文字 \( a \) を文字 \( x \) に置き換えて得られる関数 \( f’ (x) = 2x \) が,関数 \( f (x) = x^2 \) の導関数となる。
2.2 導関数の定義
関数 \( f (x) = x^2 \) の導関数 \( f’(x) \) は次の式で定義されます。
関数 \( f (x) \) の導関数 \( f’(x) \) は
\( \displaystyle \color{red}{ f’ (x) = \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) \ – f(x)}{h} } \)
上の導関数の定義の式において,\( h \) は \( x \) の変化量を表し,\( f(x+h) \ – f(x) \) はそれにともなう変化量を表しています。
これらをそれぞれ \( x \) の増分,\( y \) の増分といい,それぞれ \( \Delta x \),\( \Delta y \) で表します。
(\( \Delta \) はギリシャ文字で,デルタと読みます。)
よって
\( \Delta x = h, \ \ \Delta y = f(x+ \Delta x ) \ – f(x) \)
\( \Delta x \),\( \Delta y \) を用いると,導関数は次のように表します。
関数 \( f (x) \) の導関数 \( f’(x) \) は
\( \displaystyle \color{red}{ f’ (x) = \lim_{\Delta x \to 0} \frac{\Delta y}{\Delta x} = \lim_{\Delta x \to 0} \frac{ f(x+ \Delta x ) \ – f(x)}{\Delta x} } \)
※ 導関数を表すには,\( f’ (x) \) の他に,\( y’ \),\( \displaystyle \frac{ dy }{ dx } \),\( \displaystyle \frac{ d }{ dx } f (x) \) なども用いられる。
また,関数 \( f (x) \) から導関数 \( f’(x) \) を求めることを,\( f (x) \) を 微分する(または \( x \) で微分する)といいます。
2.3 導関数の定義による求め方(問題)
ここでは,定義にしたがって導関数を求める問題を解説します。
導関数の定義にしたがって,次の関数を微分せよ。
(1) \( f (x) = 2x+5 \)
(2) \( f (x) = \ – x^3 \)
【解答】
(1) \( f (x) = 2x+5 \)
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ f’ (x) } & = \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) \ – f(x)}{h} \\
\\
\displaystyle & = \lim_{h \to 0} \frac{ \left\{ 2(x+h) + 5 \right\} \ – (2x+5) }{h} \\
\\
\displaystyle & = \lim_{h \to 0} \frac{2h}{h} \\
\\
& = \lim_{h \to 0} 2 \\
\\
& \color{red}{ = 2 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
(2) \( f (x) = \ – x^3 \)
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ f’ (x) } & = \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) \ – f(x)}{h} \\
\\
\displaystyle & = \lim_{h \to 0} \frac{ \left\{ – (x+h)^3 \right\} \ – (- x^3) }{h} \\
\\
\displaystyle & = \lim_{h \to 0} \frac{-3x^2 h \ – 3xh^2 \ -h^3}{h} \\
\\
& = \lim_{h \to 0} (-3x^2 \ -3xh \ -h^2) \\
\\
& \color{red}{ = -3x^2 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
3. 微分係数と導関数の違い
ここまで微分係数と導関数の定義と求め方を解説してきましたが,微分係数と導関数の違いは理解できていますか?
これらの違いは,次のようになります。
- 微分係数 \( \color{red}{ f’ (a) } \) は定数であり,関数 \( y = f(x) \) 上の特定の点(\( x = a \) の接点)における接線の傾き。
- 導関数 \( \color{red}{ f’ (x) } \) は関数であり,関数 \( y = f(x) \) 上のすべての点における接線の傾きを \( x \) の関数で表したもの。
つまり、\( x = a \) における微分係数を求めたければ、\( f (x) \) を微分してから、それに \( x = a \) を代入すれば求まります。
今回は、微分係数と導関数の定義をしっかり理解するために、定義にしたがった微分係数の求め方を解説しましたが、導関数 \( f’(x) \) を求めてから \( x = a \) を代入して求めたほうが計算は楽です。
先ほどの例題1(1)「\( \displaystyle f (x) = \ – x^2 + 3x \ – 5 \) の \( x = \ – 1 \) における微分係数」を、この方法で求めてみると次のようになります。
【例】 \( \displaystyle f (x) = \ – x^2 + 3x \ – 5 \) (\( x = \ – 1 \))
\( \displaystyle f (x) = \ – x^2 + 3x \ – 5 \) を微分すると
\( f’(x) = \ -2x + 3 \)
したがって、\( x = \ – 1 \) における微分係数 \( f’(-1) \) は
\( \begin{align}
\color{red}{ f’(-1) } & = \ -2 \cdot (-1) + 3 \\
\\
& \color{red}{ = 5 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
4. 微分係数と導関数まとめ
さいごに今回の内容をもう一度整理します。
関数 \( y = f (x) \) の \( x = a \) における微分係数は
\( \displaystyle \color{red}{ f’ (a) = \lim_{ h \to 0 } \frac{f (a + h) \ – f (a)}{h} } \)
関数 \( f (x) \) の導関数 \( f’(x) \) は
\( \displaystyle \color{red}{ f’ (x) = \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) \ – f(x)}{h} } \)
\( \displaystyle \color{red}{ f’ (x) = \lim_{h \to 0} \frac{\Delta y}{\Delta x} = \lim_{h \to 0} \frac{ f(x+ \Delta x ) \ – f(x)}{\Delta x} } \)
※ 導関数を表すには,\( f’ (x) \) の他に,\( y’ \),\( \displaystyle \frac{ dy }{ dx } \),\( \displaystyle \frac{ d }{ dx } f (x) \) なども用いられる。
- 微分係数は,導関数 \( f’(x) \) に \( x = a \) を代入すれば求められる。
微分係数と導関数は、微分の学習の基礎となるので、定義と求め方をしっかりと理解しておきましょう!
関数 \( y = f (x) \) の \( x = a \) における微分係数は
\( \displaystyle \color{red}{ f’ (a) = \lim_{ h \to 0 } \frac{f (a + h) \ – f (a)}{h} } \)