東大塾長の山田です。
このページでは、「積分の面積公式」について解説します。
積分で面積を求める有名な公式として,「1 / 6公式」というものがありますが,知っていますか?これを知っていると知らないとでは計算スピードが大きく変わってきます。
また,「1/6公式」の他にも,曲線と接線の間の面積を求める「1 / 3公式」,「1 / 12公式」というものもあります。
これらの公式についても詳しく解説しているので,ぜひ勉強の参考にしてください!
定積分による面積の求め方や,基本的な公式は「積分と面積の超解説(証明と理由)」の記事で詳しく解説しています。
1. 「1 / 6公式」
まずは有名な「1 / 6公式」について解説していきます。これは必ずおさえておきましょう!
1.1 「1 / 6公式」と証明
\( \displaystyle \color{red}{ \int_{\alpha}^{\beta} (x – \alpha) (x – \beta) dx = \ – \frac{1}{6} (\beta – \alpha)^3 } \)
2通りの証明を示しておきます。
【証明1】
\( \begin{align}
\displaystyle & \color{red}{ \int_{\alpha}^{\beta} (x – \alpha) (x – \beta) dx } \\
\\
\displaystyle & = \int_{\alpha}^{\beta} (x – \alpha) \left\{ (x – \alpha) – (\beta – \alpha) \right\} dx \\
\\
\displaystyle & = \int_{\alpha}^{\beta} \left\{ (x – \alpha)^2 – (\beta – \alpha) (x – \alpha) \right\} dx \\
\\
\displaystyle & = \left[ \frac{1}{3} (x – \alpha)^3 – (\beta – \alpha) \cdot \frac{1}{2} (x – \alpha)^2 \right]_{\alpha}^{\beta} \\
\\
\displaystyle & = \frac{1}{3} (\beta – \alpha)^3 – \frac{1}{2} (\beta – \alpha)^3 \\
\\
\displaystyle & \color{red}{ = \ – \frac{1}{6} (\beta – \alpha)^3 }
\end{align} \)
【証明2】
\( \begin{align}
\displaystyle & \color{red}{ \int_{\alpha}^{\beta} (x – \alpha) (x – \beta) dx } \\
\\
\displaystyle & = \int_{\alpha}^{\beta} \left\{ x^2 – (\alpha + \beta) x + \alpha \beta \right\} dx \\
\\
\displaystyle & = \left[ \frac{1}{3} x^3 – \frac{1}{2} (\alpha + \beta) x^2 + \alpha \beta x \right]_{\alpha}^{\beta} \\
\\
\displaystyle & = \frac{1}{3} ( \beta ^3 – \alpha ^3 ) – \frac{1}{2} ( \alpha + \beta ) ( \beta ^2 – \alpha ^2 ) + \alpha \beta ( \beta – \alpha ) \\
\\
\displaystyle & = \frac{1}{3} ( \beta – \alpha ) ( \beta ^2 + \beta \alpha + \alpha ^2 ) – \frac{1}{2} ( \beta + \alpha )^2 ( \beta – \alpha ) + \beta \alpha ( \beta – \alpha ) \\
\\
\displaystyle & = \frac{1}{6} (\beta – \alpha ) \left\{ 2 ( \beta ^2 + \beta \alpha + \alpha ^2 ) – 3 ( \beta ^2 + 2 \beta \alpha + \alpha ^2 ) + 6 \beta \alpha \right\} \\
\\
\displaystyle & = \frac{1}{6} (\beta – \alpha ) ( – \beta ^2 + 2 \beta \alpha – \alpha ^2 ) \\
\\
\displaystyle & \color{red}{ = \ – \frac{1}{6} (\beta – \alpha)^3 }
\end{align} \)
1.2 「1 / 6公式」の使い方(問題)
1 / 6公式は,「放物線と直線」や「放物線と放物線」に囲まれた面積を求めるときに非常に便利です。
具体例で公式を使って面積を求めてみましょう!
【例1】
「\( y = x^2 \) と \( y = x + 6 \) に囲まれた図形の面積 \( S \)」
まず交点の \( x \) 座標を求めると
\( x^2 = x + 6 \)
\( x^2 – x – 6 = 0 \)
\( (x-3) (x+2) = 0 \)
∴ \( \color{red}{ x = -2, \ 3 } \)
したがって,求める面積 \( S \) は
\( \begin{align}
\displaystyle S & = \int_{-2}^3 \left\{ (x+6) – x^2 \right\} dx \\
\\
\displaystyle & = – \int_{-2}^3 (x^2 – x – 6 ) dx \\
\\
\displaystyle & = – \int_{ \color{blue}{ -2 } }^{ \color{green}{ 3 } } ( x \color{blue}{ +2 } ) ( x \color{green}{ -3 } ) dx \\
\\
\displaystyle & = – \left\{ \color{red}{ – \frac{1}{6} \left( 3 – (-2) \right)^3 } \right\} \\
\\
\displaystyle & = \frac{125}{6}
\end{align} \)
【例2】
「\( y = 2x^2 + 3x + 1 \) と \( y = -x^2 – 2x + 3 \) に囲まれた図形の面積 \( S \)」
まず2つの曲線の交点の \( x \) 座標を求めると
\( 2x^2 + 3x + 1 = -x^2 – 2x + 3 \)
\( 3x^2 + 5x – 2 = 0 \)
\( (x+2) (3x-1) = 0 \)
\( \displaystyle ∴ \ \color{red}{ x = -2, \ \frac{1}{3} } \)
したがって,求める面積 \( S \) は
\( \begin{align}
\displaystyle S & = \int_{-2}^{\frac{1}{3}} \left\{ \left( -x^2 – 2x + 3 \right) – \left( 2x^2 + 3x + 1 \right) \right\} dx \\
\\
\displaystyle & = \int_{-2}^{\frac{1}{3}} \left( -3x^2 – 5x + 2 \right) dx \\
\\
\displaystyle & = \ – \int_{-2}^{\frac{1}{3}} (x+2) (3x-1) dx \\
\\
\displaystyle & = -3 \int_{ \color{blue}{ -2 } }^{ \color{green}{ \frac{1}{3} } } (x \color{blue}{ +2 } ) \left( x \color{green}{ -\frac{1}{3} } \right) dx \\
\\
\displaystyle & = – 3 \cdot \color{red}{ \left( – \frac{1}{6} \right) \left\{ \frac{1}{3} – (-2) \right\}^3 } \\
\\
\displaystyle & = \frac{343}{54}
\end{align} \)
「1 / 6公式」の使い方は理解できましたか?
このように,曲線や直線で囲まれた図形の面積を求めようとすると,式変形中に必ず「1 / 6公式」の形になるので,公式を使うと計算が楽になります。
1.3 放物線と直線(1 / 6公式)
この「1 / 6公式」を,「放物線と直線で囲まれた図形の面積」に関して一般化すると,次のようになります。
放物線 \( y = ax^2 + bx + c \) と直線 \( y = px+q \) の交点の \( x \) 座標を \( \alpha, \ \beta \)(\( \alpha < \beta \))とすると,この放物線と直線で囲まれた図形の面積 \( S \) は
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{ |a| }{ 6 } ( \beta – \alpha)^3 } \)
1.4 放物線と放物線(1 / 6公式)
同様に,「1 / 6公式」を,「放物線と放物線で囲まれた図形の面積」に関して一般化すると,次のようになります。
放物線 \( y = a_1 x^2 + b_1 x + c_1 \) と放物線 \( y = a_2 x^2 + b_2 x + c_2 \) との交点の \( x \) 座標を \( \alpha, \ \beta \)(\( \alpha < \beta \))とすると,この2つの放物線で囲まれた図形の面積 \( S \) は
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{ | a_1 – a_2 | }{ 6 } ( \beta – \alpha)^3 } \)
2. 「1 / 3公式」(放物線と接線)
「1 / 3公式」は,放物線と接線に囲まれた図形の面積を求める公式です。
放物線 \( y = ax^2 + bx + c \) とその接線 \( y = mx + n \) の接点の \( x \) 座標を \( \alpha \) とすると,この放物線と接線と \( x = k \) で囲まれた図形の面積 \( S \) は
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{ |a| }{ 3 } \left| k – \alpha \right|^3 } \)
【証明】
放物線 \( f(x) = ax^2 + bx + c \) とその接線 \( g(x) = mx + n \) の接点の \( x \) 座標を \( \alpha \) とする。
このとき,方程式 \( f(x) – g(x) = 0 \) は \( x = \alpha \) を重解としてもつので,\( f(x) – g(x) \) は因数 \( ( x – \alpha)^2 \) をもつ。
よって
\( \begin{align}
f(x) – g(x) & = \left(ax^2 + bx + c \right) – \left( mx + n \right) \\
\\
& = ax^2 + ( b-m )x + c – n \\
\\
& = a ( x – \alpha )^2
\end{align} \)
したがって,下図の求める面積 \( S \) は
\( \begin{align}
\displaystyle S & = \int_{ \alpha }^k \left| f(x) – g(x) \right| dx \\
\\
& = |a| \int_{ \alpha }^k ( x – \alpha )^2 dx \\
\\
& = |a| \left[ \frac{ ( x – \alpha )^3 }{3} \right]_{ \alpha }^k \\
\\
& = \color{red}{ \frac{ |a| }{ 3 } \left( k – \alpha \right)^3 }
\end{align} \)
3. 「1 / 12公式」(放物線と2接線)
「1 / 12公式」は,放物線と2本の接線に囲まれた図形の面積を求める公式です。
放物線 \( y = ax^2 + bx + c \) と2本の接線の接点の \( x \) 座標を \( \alpha, \ \beta \)(\( \alpha < \beta \))とすると,この放物線と2接線で囲まれた図形の面積 \( S_2 \) は
\( \displaystyle \color{red}{ S_2 = \frac{ |a| }{ 12 } ( \beta – \alpha)^3 } \)
\( \displaystyle \color{red}{ S_1 : S_2 = 2 : 1 } \)
※ 【重要】2接線の交点の \( x \) 座標は \( \displaystyle \color{red}{ \frac{ \alpha + \beta }{2} } \) になる。
まずは2接線の交点の \( x \) 座標が,2接点の \( x \) 座標の中点になることを証明します。
放物線 \( f(x) = ax^2 + bx + c \) を平行移動して,放物線 \( f(x) = ax^2 \) の場合で考えても,一般性を失いません。
証明は放物線 \( f(x) = ax^2 \) で計算をしていきます。
【証明】(交点の \( x \) 座標)
放物線 \( f(x) = ax^2 \) の2本の接線を \( l, \ m \) とし,2つの接点の \( x \) 座標を \( \alpha, \ \beta \)(\( \alpha < \beta \))とする。
接点の座標はそれぞれ \( ( \alpha, \ f(\alpha) ) \),\( ( \beta, \ f(\beta) ) \)
また \( f’(x) = 2ax \)
すると,接線 \( l \) の方程式は
\( y – f(\alpha) = f’(\alpha) (x – \alpha) \)
\( y = 2a \alpha (x – \alpha) + a \alpha ^2 \)
∴ \( y = 2a \alpha x – a \alpha ^2 \)
同様に,接線 \( m \) の方程式は
\( y – f(\beta) = f’(\beta) (x – \beta) \)
∴ \( y = 2a \beta x – a \beta ^2 \)
したがって,接線 \( l, \ m \) の交点の \( x \) 座標は
\( 2a \alpha x – a \alpha ^2 = 2a \beta x – a \beta ^2 \)
\( 2a ( \alpha – \beta ) x = a ( \alpha ^2 – \beta ^2 ) \)
∴ \( \displaystyle \color{red}{ x = \frac{ \alpha + \beta }{2} } \)
以上のように,放物線の \( a, \ b, \ c \) の値によらず,2接線の交点の \( x \) 座標は,2接点の \( x \) 座標の中点になります。
続いて,面積の「1 / 12公式」の証明です。
面積は,先ほどの「1 / 3公式」を利用すると証明できます。
【証明】(1 / 12公式)
2接線の交点の \( x \) 座標は \( \displaystyle \frac{ \alpha + \beta }{ 2 } \) である。
求める面積 \( S_2 \) を 直線 \( \displaystyle x = \frac{ \alpha + \beta }{ 2 } \) で左右に2つに分割し,\( \displaystyle \frac{1}{3} \) 公式より,
\( \begin{align}
\displaystyle S_2 & = \frac{ |a| }{ 3 } \left( \frac{ \alpha + \beta }{ 2 } – \alpha \right)^3 + \frac{ |a| }{ 3 } \left(\beta – \frac{ \alpha + \beta }{ 2 } \right)^3 \\
\\
& = \frac{ |a| }{ 24 } ( \beta – \alpha )^3 + \frac{ |a| }{ 24 } ( \beta – \alpha )^3 \\
\\
& = \color{red}{ \frac{ |a| }{ 12 } ( \beta – \alpha )^3 }
\end{align} \)
また,\( \displaystyle \frac{1}{6} \) 公式より,
\( \displaystyle S_1 = \frac{ |a| }{ 6 } ( \beta – \alpha )^3 \)
したがって
\( \begin{align}
\color{red}{ S_1 : S_2 } & = \frac{ |a| }{ 6 } ( \beta – \alpha )^3 : \frac{ |a| }{ 12 } ( \beta – \alpha )^3 \\
\\
& \color{red}{ = 2 : 1 }
\end{align} \)
4. 「3次関数と接線に囲まれた面積」(1 / 12公式)
さいごに,「3次関数と接線に囲まれた面積」についても解説します。
3次関数 \( y = f(x) \)(3次の係数が \( a \))とその接線 \( y = g(x) \) が,\( x = \alpha \) で接し,\( x = \beta \) で交わるとき,この3次関数と接線で囲まれた図形の面積 \( S \) は
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{ |a| }{ 12 } ( \beta – \alpha)^4 } \)
※ 4乗なので注意を!
【証明】
3次関数 \( y = f(x) \)(3次の係数が \( a \))とその接線 \( y = g(x) \) が,\( x = \alpha \) で接し,\( x = \beta \) で交わるとき,方程式 \( f(x) – g(x) = 0 \) は \( x = \alpha \) を重解としてもち,\( x = \beta \) を解にもつので,\( f(x) – g(x) \) は因数 \( ( x – \alpha)^2 \) ,\( (x – \beta) \) をもつ。
よって \( f(x) – g(x) = a ( x – \alpha)^2 (x – \beta) \)
したがって,上図の場合で求める面積 \( S \) は
\( \begin{align}
S & = – \int_{\alpha}^{\beta} \left\{ f(x) – g(x) \right\} dx \\
\\
& = – a \int_{\alpha}^{\beta} ( x – \alpha)^2 (x – \beta) dx \\
\\
& = – a \int_{\alpha}^{\beta} ( x – \alpha)^2 \left\{ (x – \alpha) – (\beta – \alpha) \right\} dx \\
\\
& = – a \int_{\alpha}^{\beta} \left\{ ( x – \alpha)^3 – (\beta – \alpha) (x – \alpha)^2 \right\} dx \\
\\
& = – a \left[ \frac{1}{4} ( x – \alpha)^4 – \frac{1}{3} (\beta – \alpha) (x – \alpha)^3 \right]_{\alpha}^{\beta} \\
\\
& = \color{red}{ \frac{a}{12} (\beta – \alpha)^4 }
\end{align} \)
5. 積分の面積公式まとめ
さいごに今回の内容をもう一度整理します。
【1 / 6公式】
\( \displaystyle \color{red}{ \int_{\alpha}^{\beta} (x – \alpha) (x – \beta) dx = \ – \frac{1}{6} (\beta – \alpha)^3 } \)
【1 / 6公式(放物線と直線)】
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{ |a| }{ 6 } ( \beta – \alpha)^3 } \)
【1 / 6公式(放物線と放物線)】
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{ | a_1 – a_2 | }{ 6 } ( \beta – \alpha)^3 } \)
【1 / 3公式(放物線と接線)】
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{ |a| }{ 3 } \left| k – \alpha \right|^3 } \)
【1 / 12公式(放物線と2接線)】
\( \displaystyle \color{red}{ S_2 = \frac{ |a| }{ 12 } ( \beta – \alpha)^3 } \)
\( \displaystyle \color{red}{ S_1 : S_2 = 2 : 1 } \)
【1 / 12公式(3次関数と接線)】
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{ |a| }{ 12 } ( \beta – \alpha)^4 } \)
以上が積分の面積公式です。
公式を知っていると知らないとでは,計算時間に大きな差が出ます。また,公式を知っていれば解答が合っているか検算にも使えます。
「1 / 6公式」と「1 / 3公式」は特に重要なので,必ずマスターしておきましょう!
わかりやすい