東大塾長の山田です。
このページでは、「因数定理」について解説します。
今回は「因数定理」の公式や使い方に加え、「因数の見つけ方」、「割り算の簡便法(組み立て除法)」についても超わかりやすく解説しています。
ぜひ最後まで読んで、勉強の参考にしてください!
1. 因数定理とは?(公式)
それではさっそく因数定理について解説していきます。
整式 \( P(x) \) が \( x- \alpha \) を因数にもつ \( \Leftrightarrow \ P(\alpha) = 0 \)
因数定理は、必要十分条件になっていることがポイントです。
- 「\( P(x) \) が \( x- \alpha \) を因数にもつ」\( \Rightarrow \)「\( P(\alpha) = 0 \)」
- 「\( P(\alpha) = 0 \)」\( \Rightarrow \)「\( P(x) \) が \( x- \alpha \) を因数にもつ」
どちらも成り立ちます。
ひとつ具体例を挙げて、調べてみましょう。
【例】
\( P(x) = x^2 + x – 2 \) のとき
\( x^2 + x – 2 = (x-1)(x+2) \) より、\( P(x) \) は \( (x-1) \) を因数にもつ。
\( \alpha = 1 \) として
\( \color{red}{ P(\alpha) } = P(1) = 1^2 + 1 – 2 \color{red}{ = 0 } \)
よって
- 「\( P(x) \) が \( x- \alpha \) を因数にもつ」\( \Rightarrow \)「\( P(\alpha) = 0 \)」
が確認できました(\( \alpha = -2 \) でも成り立ちます)。
一方の
- 「\( P(\alpha) = 0 \)」\( \Rightarrow \)「\( P(x) \) が \( x- \alpha \) を因数にもつ」
は明らかです。
\( P(1) = 1^2 + 1 – 2 = 0 \) となります。
また、\( P(x) = x^2 + x – 2 = (x-1)(x+2) \) と因数分解できるので、\( (x-1) \) を因数にもつことがわかります。
したがって、因数定理が成り立つことが確認できます。
2. 因数定理の証明
因数定理の証明は、剰余の定理と同じです。
剰余の定理の余りが0の場合が、因数定理になります。
整式 \( P(x) \) を1次式 \( (x- \alpha) \) で割ったときの余り商を \( Q(x) \),余りを \( R \) とすると
\( P(x) = (x- \alpha) Q(x) + R \)
と表すことができます(∵ 割り算の基本等式)。
この等式の両辺に \( x= \alpha \) を代入すると
\( \begin{align}
P(\alpha) & = (\alpha – \alpha) Q(\alpha) + R \\
\\
& = 0 \times Q(\alpha) + R \\
\\
& = R
\end{align} \)
よって、\( P(x) \) が \( (x- \alpha) \) を因数にもつ必要十分条件は \( R=0 \) のときである。
(∵「\( (x- \alpha) \) を因数にもつ」\( \Leftrightarrow \)「\( (x- \alpha) \) で割り切れる」)
つまり、\( P(\alpha) = 0 \) のときである。
したがって、因数定理
「整式 \( P(x) \) が \( x- \alpha \) を因数にもつ \( \Leftrightarrow \ P(\alpha) = 0 \)」
が成り立つ。
剰余の定理がよくわからない人は「剰余の定理まとめ(公式・証明・問題)」の記事もぜひチェックしてみてください。
3. 因数定理を使う問題(因数分解)
因数定理はその名の通り、因数を見つけるときに活躍する定理なので、因数分解するとき(高次方程式を解くとき)にとても役に立ちます。
具体的に、因数定理を使って因数分解の問題をやってみましょう。
3.1 因数定理を使った因数分解の問題
\( x^3 – 6x^2 + 11x – 6 \) を因数分解せよ。
【解答】
\( P(x) = x^3 – 6x^2 + 11x – 6 \) とおく。
因数定理で因数を求めるために、\( P(x) = 0 \) となるような \( x \) を探します。
\( \begin{align}
P(2) & = 2^3 – 6 \cdot 2^2 + 11 \cdot 2 – 6 \\
& = 8 – 24 + 22 – 6 \\
& = 0
\end{align} \)
となるので、因数定理より、\( P(x) \) は \( x-2 \) を因数にもつことがわかりました。
\( x^3 – 6x^2 + 11x – 6 \) を \( x-2 \) で割り算をすると
したがって
\( \begin{align}
P(x) & = (x-2)(x^2 – 4x + 3) \\
\\
& = \color{red}{ (x-2)(x-1)(x-3) \ \cdots 【答】 }
\end{align} \)
3.2 因数の見つけ方
因数定理を使って因数分解をする方法は理解できましたか?
問題をこなしていくうちに気付くことがあると思います。
それは、「肝心の『\( P(\alpha) = 0 \) になる \( \alpha \)(因数)』を見つけるの大変じゃね!?」ということです。
でも安心してください!因数の見つけ方というものがちゃんと存在します!
ここでは、「因数の見つけ方」について解説していきます。
結論から言うと、\( P(\alpha) = 0 \) になる \( \alpha \) の候補は次の通りです。
\( P(x) \) について,\( P(\alpha) = 0 \) となる \( \alpha \) の候補は
\( \large{ \displaystyle \color{red}{ \pm \frac{定数項の約数}{最高次の係数の約数} } } \)
例えば、\( P(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d = 0 \) であれば、\( P(\alpha) = 0 \) となる \( \alpha \) の候補は \( \displaystyle \color{red}{ \pm \frac{dの約数}{aの約数} } \) になります。
【証明】
\( P(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d = 0 \) とする。
\( \displaystyle P \left( \frac{q}{p} \right) = 0 \) のとき,\( P(x) \) は \( px-q \) で割り切れるから,商を \( lx^2 + mx + n \) とすると,
\( ax^3 + bx^2 + cx + d \\ = (px-q) (lx^2 + mx + n) \)
(係数はすべて整数)が成り立つ。
両辺の最高次(\( x^3 \))の項と定数項を比較すると
\( a=pl, \ \ d=-qn \)
よって,\( \alpha \) の候補は
\( \displaystyle \color{red}{ \frac{q}{p} = \pm \frac{dの約数}{aの約数} } \)
つまり、\( \displaystyle \color{red}{ \pm \frac{定数項の約数}{最高次の係数の約数} } \)
(最高次の係数が1のときは,\( \alpha \) の候補は 定数項の正負の約数 ということになる。)
先ほどの例題でいうと、\( P(x) = x^3 – 6x^2 + 11x – 6 \) でした。
\( x^3 – 6x^2 + 11x – 6 = (x- \alpha) (x^2 + px + q) \) とすると,\( -6 = \ – \alpha q \)
\( \alpha q \) が整数なら,\( \alpha \) は定数項「-6」の約数なので、\( P(\alpha) = 0 \) となる \( \alpha \) は、±1,±2,±3,±6 のどれかになります。
同様に、\( P(x) = 2x^3 – 9x^2 + 2 \) であれば、最高次(\( 2x^3 \))の係数は「2」、定数は「2」なので、\( P(\alpha) = 0 \) となる \( \alpha \) は、±1,±2,\( \displaystyle \pm \frac{1}{2} \) から探せばよいです。
例では3次式の場合のみ解説しましたが、この定理は \( P(x) \) が何次式でも成り立ちます。
この方法を知っていれば、闇雲に代入して探す必要がなくなります!
3.3 組み立て除法
もうひとつ、高次式の因数分解をするときの問題が「筆算の割り算だるくね!?」ということです。
この割り算を簡単に計算する方法が「組み立て除法」です。
\( a_0 x^3 + a_1 x^2 + a_2 x + a_3 \) を \( x- \alpha \) で割ったときの商を \( b_0 x^2 + b_1 x + b_2 \),余りを \( R \) とすると
\( \begin{align}
& a_0 x^3 + a_1 x^2 + a_2 x + a_3 \\
\\
= & (x- \alpha) (b_0 x^2 + b_1 x + b_2) + R \\
\\
= & b_0 x^3 + (b_1 – \alpha b_0)x^2 \\
& \ + (b_2 – \alpha b_1)x + (R – \alpha b_2)
\end{align} \)
よって、両辺の係数を比較すると
\( \begin{cases}
a_0 = b_0\\
a_1 = b_1 – \alpha b_0 \\
a_2 = b_2 – \alpha b_1 \\
a_3 = R – \alpha b_2
\end{cases} \)
したがって
\( \begin{cases}
b_0 = a_0 \\
b_1 = a_1 + \alpha b_0 \\
b_2 = a_2 + \alpha b_1 \\
R = a_3 + \alpha b_2
\end{cases} \)
この計算を下の図の形式で行うのが、組み立て除法です。
文字ばかりでわかりにくいと思うので、先ほどの例題を使って具体的にやってみましょう。
【例】 \( (x^3 – 6x^2 + 11x – 6) \div (x-2) \)
- 割る式 \( x-2 \) の「2」と,割られる式 \( x^3 – 6x^2 + 11x – 6 \) の係数1,-6,11,-6を書く。
- 最初の1をそのまま下に下ろして1と書く。
- 下ろした 1×2=2 を -6 の下に書き,-6+2=-4 を下に書く。
- さらに -4×2=-8 を 11 の下に書き,-8+11=3 を下に書く。
- 3×2=6 を-6 の下に書き,6+(-6)=0 を下に書く。
- 結果より、商は \( x^2-4x+3 \),余り0 となる。
4. 因数定理まとめ
さいごに今回の内容をもう一度整理します。
- 因数定理\( \cdots \)整式 \( P(x) \) が \( x- \alpha \) を因数にもつ \( \Leftrightarrow \ P(\alpha) = 0 \)
- 因数の見つけ方\( \displaystyle \cdots \color{red}{ \pm \frac{定数項の約数}{最高次の係数の約数} } \)
- 組み立て除法\( \cdots \)「(多項式)÷(1次の多項式)」の簡便法。
以上が因数定理についての解説です。
因数定理は問題を解く過程でよく使います。因数の見つけ方を覚えておけば、すぐに因数を見つけられるようになるので、ぜひ覚えておいてください。
お疲れさまでした!
ありがとうございました
ありがとうございました
3,2の因数の見つけ方の最後2の約数で1/2が出ているのはなぜですか
定数項の「約数」
± ━━━━━━━━━━━
最高次の係数の「約数」
だから、分母に入る数は(2X³)の係数の2の、「約数」である1、2で、分子も定数2の
「約数」1、2が入るので
1 2 1 2
━ =1 ━ =2 ━ ━ = 1
1 , 1 , 2 , 2
で1、1/2、2の三つが候補なんだと思いました
間違ってたらすいません。
虚数解を持つ高次元式も同じように因数分解出来ますか?