ドップラー効果の公式まとめ(問題と立式解説)

東大塾長の山田です。

今回の記事で扱うのはドップラー効果という現象です。名前ぐらいは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

ドップラー効果は日常で実感することも多い現象であるとともに、受験でも扱われる機会の多い単元です。言葉の意味はもちろんですが、式やイメージでしっかりと理解することが重要です。

このページではドップラー効果について詳しく説明しているで、ぜひ勉強の参考にしてください!

1. ドップラー効果とは

「救急車が自分に近づいてくるとサイレンの音が高くなり、救急車が自分から離れていくと音が低くなっていく」

そのような経験をしたことがある人は多いと思います。実はこれがドップラー効果なのです。

これを一般化して説明すると以下のようになります。

ドップラー効果とは

音源と観測者が近づいているとき、観測者は音源の振動数よりも大きい振動数の音(高い音)を聞き、逆に音源と観測者が遠ざかっているとき、観測者は音源の振動数よりも小さい音(低い音)を聞きます。

このように、音源や観測者の運動によって、音源と振動数と異なった振動数の音が聞こえる現象のことを「ドップラー効果」といいます。

ドップラー効果は音のみならず光においても成り立ちます。
光の場合は、遠ざかる高原からの光が赤っぽく見える赤方偏移や、近づく光源からの光が青っぽく見える青方偏移が、ドップラー効果の表れとなります。

2. 音のドップラー効果の立式

次に音のドップラー効果がどのように立式できるかについて考えてみましょう。

以下では、音源の振動数(単位時間に音源から発せられる波の個数)を\(f\)、音速を\(c\)として考えます。

音源が静止していると考えると、時間\(t\)の間に、音源は\(ft\)個の波を出し、波の先端は\(ct\)だけ進みます。よって、この時生じる波の波長(波一個分の長さ)を\(λ\)とすると、

\[\lambda=\displaystyle\frac{ct}{ft}=\displaystyle\frac{c}{f}\]

が成立します。

以下ではこれを前提として、議論を行います。

2.1 音源が動く場合

まずは音源が動く場合について考えてみます!

①音源が音波を追いかける向きに速さ\(v_s\)で動いている場合を考えてみます。

この場合、時間\(t\)の間に、音源は\(ft\)個の波を出し、波の先頭は\(ct\)だけ進み(波は空気を媒介して進むから、音源の速度は関係ない)、音源自体は音波の向きと同じ方向に\(v_s t\)だけ進みます。
よってこのときの、波長\(\lambda^{*}\)は以下のように表記することができます。

\[\lambda^{*}=\displaystyle\frac{ct-v_s t}{ft}=\displaystyle\frac{c v_s}{f}\]

このように音源が動くときは、「波長が短く」なり、「音が高く聞こえる」ことが分かります!

②音源が音波から遠ざかる向きに速さ\(v_s\)で動くときについて考えますが、考え方は同じです。

時間\(t\)の間に、音源は\(ft\)個の波を出し、波の先頭は\(ct\)だけ進み(波は空気を媒介して進むから、音源の速度は関係ない)、音源自体は音波の向きと同じ方向に\(v_s t\)だけ進みます。
よってこのときの、波長\(\lambda^{*}\)は以下のように表記することができます。

\[\lambda^{*}=\displaystyle\frac{ct+v_s t}{ft}=\displaystyle\frac{c+v_s}{f}\]

このように音源が動くときは、「波長が長く」なり、「音が低く聞こえる」ことが分かります。

以上①②をまとめると、音源が動く場合のドップラー効果について以下のことが分かります!(ただし速度\(v_s\)の正の向きは、音波の運動方向と一致)

音源が動く場合のドップラー効果

\[\lambda^{*}=\displaystyle\frac{c-v_s}{f}=\displaystyle\frac{音源に対する音の速さ}{f}\]

音源の動く向きと音波の動く向きが一致するときに波長が短くなる(音源の動く向きと音波の動く向きが一致しないときに波長が長くなる)ということを頭に入れておくと、符号ミスも少なくなります!

 

2.2 観測者が動く場合

次に観測者が動く場合について考えてみます!

①観測者が、音波を追いかける向きに速さ\(v_o\)で、動いている場合を考えてみます。

この場合、時間\(t\)の間に、波の先頭は\(ct\)だけ進みますが、観測者も波の進む方向に\(v_o t\)だけ進むので、結局このときの観測する振動数\(f^{*}\)(単位時間あたりに受け取る波の個数)は、以下のようになります。

\[f^{*}=[受け取った波の個数]×\displaystyle\frac{1}{t}=\displaystyle\frac{ct-v_o t}{\lambda}×\displaystyle\frac{1}{t}=\displaystyle\frac{c-v_o}{\lambda}\]

②次に、観測者が音波から遠ざかる向きに速さ\(v_o\)で動いている場合についても同様に考えていきます。

時間\(t\)の間に、波の先頭は\(ct\)だけ進みますが、観測者も波の進む方向と逆方向に\(v_o t\)だけ進むので、結局このときの観測する振動数\(f^{*}\)(単位時間あたりに受け取る波の個数)は、以下のようになります。

\[f^{*}=[受け取った波の個数]×\displaystyle\frac{1}{t}=\displaystyle\frac{ct+v_o t}{\lambda}×\displaystyle\frac{1}{t}=\displaystyle\frac{c+v_o}{\lambda}\]

以上①②をまとめると、観測者が動く場合のドップラー効果について以下のことが分かります!(ただし速度\(v_o\)の正の向きは、音波の運動方向と一致)

観測者が動く場合のドップラー効果

\[f^{*}=\displaystyle\frac{c-v_o }{\lambda}=\displaystyle\frac{観測者に対する音の速さ}{\lambda}\]

これも、音源が動く場合と同様に、音波の動く方向と観測者の動く方向が一致するときに振動数が小さくなる(音波の動く方向と観測者の動く方向が一致しないときに振動数が大きくなる)ということを頭に入れておくと、符号ミスも少なくなります!

 

2.3 音源と観測者が動く場合

最後に音源と観測者どちらも動く場合ですが、これは今まで考えた二つを組み合わせると簡単に導出できます。

観測者が動く場合のドップラー効果の式は

\[f^{*}=\displaystyle\frac{c-v_o }{\lambda}\]

でしたが、この\(\lambda\)を音源が動く場合のドップラー効果で導出した

\[\lambda^{*}=\displaystyle\frac{c-v_s}{f}\]

に置き換えてあげると、音源と観測者の双方が動く場合のドップラー効果の式が得られます!

音源と観測者が動く場合のドップラー効果

\[f^{*}=\displaystyle\frac{c-v_o }{\lambda^{*}}=\displaystyle\frac{c-v_o }{c-v_s}f=\displaystyle\frac{観測者に対する音の速さ}{音源に対する音の速さ}f\]

これらは必ず頭に入れておきましょう!

 

2.4 注意点

ここまで、音源が動く場合と観測者が動く場合を別々に論じてきました。

その結果に対して、音源の近づく速さ\(v_s\)と観測者の近づく速さ\(v_o\)が仮に等しいとしても、二つの振動数が一致しないことを不思議に感じた人もいるのではないでしょうか?

ドップラー効果を音源と観測者の二体問題として考えれば、確かにこれは矛盾ですが、実際のところ音のドップラー効果は、二体問題ではなく三体問題なのです。

ドップラー効果では、静止・運動はすべて、音源と観測者の相対的な関係ではなく、媒質(空気)に対しての静止・運動を意味しています。

したがって、\(v_s\)や\(v_o\)も媒質(空気)に対する速さとなります。
言い換えると、上の議論は空気の静止している座標系での話であるということができます。

 

2.5 風が吹いている場合

それでは風が吹いている場合はどうなるのでしょうか?

上で話したように、今までは空気の静止している座標系で議論を行ってきたので、風が吹いている場合も同様に議論を行える必要があります。

そのために風が吹いている場合は、風とともに動く系(空気の静止系)で考える必要があります!

式の上ではどうなるのでしょうか?以下の状況を考えてみましょう。

音源が速度\(v_s\)、観測者が速度\(v_o\)で動いていて、この時の風速が\(w(<v_s)\)であったとします。(すべて右向き正、)

このとき空気の静止系における音源の速度\(v_s^{*}\)、観測者の速度\(v_o^{*}\)はそれぞれ、

\[v_s^{*}=v_s-w,\quad v_o^{*}=v_o+w\]

であるから、このとき観測者の聞く振動数\(f^{*}\)は

\[f^{*}=\displaystyle\frac{c-v_o^{*}}{c-v_s^{*}}f=\displaystyle\frac{c+w-v_o}{c+w-v_s}\]

となり、結局単に風が吹いているために、音速が\(c→c+w\)となったとして計算できることが分かりました!

Point!

風が吹いている場合は、\(c→c+w\)としてドップラー効果の式を適用させればよい。

 

2.6 斜め方向のドップラー効果

音源の運動方向とはずれたところに観測者がいる場合、ドップラー効果はどのようになるのでしょうか?

下のような状況を考えてみましょう。

このとき観測者が観測する振動数\(f^{*}\)はどうなるでしょうか?
ドップラー効果は突き詰めると、波源と観測者の距離が変わることが原因です。それを踏まえると、結局は音源と観測者の直線分の速度(下図オレンジ)のみを考えればよく、

\[f^{*}=\displaystyle\frac{c}{c-v_o \cos\theta}f\]

と表記することができます!

Point!

音源の運動線とはずれた方向に観測者がいる場合、運動線に関する方向のみでドップラー効果を考えればよい。

 

3. 実際に問題を解いてみよう(センター過去問)

ここまでの事項は理解できたでしょうか?

ドップラー効果についてしっかり理解できたか、以下のセンター過去問を解いて確認してみましょう。

センター物理(2017、改)

 音のドップラー効果について考える。音源、観測者、反射板はすべて一直線上に位置しているものとし、空気中の音の速さは\(V\)とする。また,風は吹いていないものとする。

【問】静止している振動数\(f_1\)の音源へ向かって、反射板を速さ\(v\)で動かした。音源の背後で静止している観測者は、反射板で反射した音を聞いた。その音の振動数は\(f_2\)であった。反射板の速さ\(v\)を表す式を求めよ。

頑張って解いてみてください!

方針がたちづらい人のためにヒントを載せておきます。

ヒント

今回のように手数が多い問題では、一つ一つ現象を理解していくことが大事です。

この問題のポイントは、反射板で反射された音をどう扱うか、という点にあります。そのため以下の手順で求めていくことが求められます。

①まず反射板を動く観測者と考えて、板の受け取る振動数\(f^{*}\)を考える。
②次に反射板を振動数\(f^{*}\)の動く音源と考えて、観測者の受け取る振動数を考える。

この手順で考えてみてください!

十分に考えたでしょうか?以下が解答になります。

解答

①まずは反射板を動く観測者と考えて、板の受け取る振動数\(f^{*}\)とします。

この時の振動数は

\[f^{*}=\displaystyle\frac{V-(-v)}{V}f_1=\displaystyle\frac{V+v}{V}f_1\cdots①\]

となります。

②次に反射板を振動数\(f^{*}\)の動く音源と考えて、観測者の受け取る振動数\(f_2\)を考えます。

このとき、観測者が聞く振動数は、

\[f_2=\displaystyle\frac{V}{V-v}f^{*}\]

この式に①式を代入すると、

\[f_2=\displaystyle\frac{V+v}{V-v}f_1\]

これを解いて、

\[v=\displaystyle\frac{f_3-f_1}{f_3+f_1}V\]

と分かります。

どうだったでしょうか?特に符号ミスがないか、いま一度確認してみてください!

 

4. まとめ

以上です。最後に今回学んだことをまとめておきます。ぜひ復習に活用してください!

ドップラー効果まとめ

音源が動く場合のドップラー効果

\[\lambda^{*}=\displaystyle\frac{c-v_s}{f}=\displaystyle\frac{音源に対する音の速さ}{f}\]

観測者が動く場合のドップラー効果

\[f^{*}=\displaystyle\frac{c-v_o }{\lambda}=\displaystyle\frac{観測者に対する音の速さ}{\lambda}\]

どちらも動く場合のドップラー効果

\[f^{*}=\displaystyle\frac{c-v_o }{\lambda^{*}}=\displaystyle\frac{c-v_o }{c-v_s}f=\displaystyle\frac{観測者に対する音の速さ}{音源に対する音の速さ}f\]

風が吹いている場合
⇒\(c→c+w\)としてドップラー効果の式を適用させればよい。

斜め方向の場合
⇒運動線に関する方向のみでドップラー効果を考えればよい。

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