ヤングの実験(公式と証明、応用パターン)

東大塾長の山田です。
このページでは、ヤングの実験」について詳しく解説しています

「ヤングの実験の概要」や、「入試で問われやすい応用パターン」まで、式や図を用いて丸暗記に終始せず説明を行っています。
ぜひ勉強の参考にしてください!

1. ヤングの実験とは

1.1 実験の概要

ヤングの実験とは、複スリットを用いた、光の干渉性を示す実験のことです。
干渉とは、複数の波の重ね合わせによって新しい波形ができることです。

トーマス・ヤングが、光源からの光を平行な二つのスリットを通すと、つい立て上に干渉縞(明暗の縞模様)を生じることを、この実験を通して示しました。

二つのスリットの光がスクリーンに投影されるとき、双方の光があたる中央部が明るくなるのは直感的にわかると思いますが、二つのスリットの間隔が短い時は、スクリーンには下図のような縦模様が写されます。
これは光が干渉性という性質を持っていることに起因します。

以下では、どのようにしてそのような縦模様が出るのか式を用いて解説していきます。

 

1.2 明線・暗線の条件(定義)

それでは、どのようにしてスクリーン上に明るい部分と暗い部分が現れるのか考えていきましょう!下図のような実験装置を考えてみます。

各スリットを \(S_1, S_2, S_3\) とし、各スクリーン間の距離を \(l,L\)、スリット \(S_1\) と \(S_2\) の間の長さを \( d \) とします。ただし、\( l,L \) は \( d \) に比べて十分に長いとします。

光を干渉させるためには、スリット \( S_1 \) と \( S_2 \) から同じ波長で同位相の光を発生させる必要があります。

光源からは様々な位相の光が発生しています。
そこでスリット \( S_0 \) を通して光を回折させることで、\( S_1 \) と \( S_2 \) でほぼ同位相の光を得ることができます。

今回は、実験装置の中で下図のように原点と軸を取ったときの点Pについて考えていきます。

このとき、光の干渉によりスクリーン上に明暗の縞模様ができる条件は、

\( \begin{align}
\displaystyle & [光の経路差(光路差)] \\
\\
& = \left|(S_0 S_2+S_{2} P)-(S_0 S_1+ S_{1} P)\right| \\
\\
& = \left|S_{2} P-S_{1} P\right| \\
\\
& = \lambda \times \left\{\begin{array}{c}{m}\cdots明線 \\ {m+\frac{1}{2} \cdots暗線}\end{array}\right.
\end{align} \)

(\( m \) は整数)

となります。このとき \( m \) に対応する干渉縞のこと「\( m \) 次の明線(暗線)」といいます。

 

1.3 光路差の求め方(二通り)

このとき「光路差」がどのように表記できるのか考えていきましょう。

1.3.1 純粋に計算

まずは三平方の定理を用いて純粋に計算していきましょう。
面倒くさいですが、実際に手を動かして式変形を行うことが重要です。

三平方の定理より、

\( \begin{align}
\displaystyle & S_1 P-S_2 P \\
\\
& = \sqrt{L^{2}+\left(x+\frac{d}{2}\right)^{2}}-\sqrt{L^{2}+\left(x-\frac{d}{2}\right)^{2}} \\
\\
& = L \sqrt{1+\left(\frac{x+\frac{d}{2}}{L}\right)^{2}}-L\sqrt{1+\left(\frac{x-\frac{d}{2}}{L}\right)^{2}}
\end{align} \)

ここで、\( x⋘1 \) の時に成り立つ近似、

\( \displaystyle (1+x)^{n} \simeq 1+n x \)

を用いると、

\( \begin{align}
\displaystyle & S_1 P-S_2 P \\
\\
& ≒ L\left\{1+\frac{1}{2}\left(\frac{x+\frac{d}{2}}{L}\right)^{2}\right\}-L\left\{1+\frac{1}{2}\left(\frac{x-\frac{d}{2}}{L}\right)^{2}\right\} \\
\\
& = \frac{xd}{L}
\end{align} \)

 

となります。

 

1.3.2 図形的性質を用いる

上の方法の他に図形的な性質を用いるという方法もあります。下図を見てください。

\( L \) が十分に長いことから、\( \angle S_1 P S_2 \) が微小角となるので、\(\triangle P S_1 Q\) を二等辺三角形とみなすことができます。

このとき、

\( \displaystyle S_1 P-S_2 P=d\sin\theta \)

とすることができ、\( \theta ≒ 0 \) の時の近似

\( \displaystyle \sin \theta ≒ \tan \theta ≒ \theta \) を用いると、

\( \displaystyle S_1 P-S_2 P = d \tan \theta = d \frac{x}{L} \)

とすることができ、勿論ですが同じ結果が得られます。この方法を用いた方が計算が容易なので以後はこの方法を用いていきます。

結局、\(x<0\)の場合も考えると、以下の結果が得られます。

\( \displaystyle \left| S_1 P -S_2 P \right| = d \frac{|x|}{L} \)

 

1.4 明線・暗線の条件・様子(式で)

得られた光路差を、先ほどの干渉条件に代入していきましょう。

位置\(x\)の点Pが明線になる条件を考えると、

\( \displaystyle \frac{dx}{L} = m \lambda \)

\( \displaystyle ∴ \ x = \frac{Lm\lambda}{d} ≡ x_m \)

明線同士の間隔を \( \Delta x \) とすると、

\( \displaystyle \Delta x=x_{m+1} – x_m = \frac{L\lambda}{d} \)

となることが分かります。

この結果により以下のことが分かります!

わかること

① \( \displaystyle x=\frac{Lm\lambda}{d} ∝ m \) より、\( m \) の絶対値が大きくなるほど、原点からの距離も大きくなる。

② \( \displaystyle x = \frac{Lm\lambda}{d} ∝ \lambda \) より、\( m \) 次の明線においては、原点から離れれば離れるほど波長の大きい色の光が現れる。

③ \( \displaystyle \Delta x=x_{m+1} -x_m = \frac{L\lambda}{d} \) より、明線間隔は \( m \) に依存せず、等間隔である。

この①②③を踏まえると明線の様子は下図のようになることが分かります!

*\( m=0 \) では、すべての波長の光が集まるので白色光が現れます。

この三点は入試で聞かれることも多々あるので、式を理解したうえで覚えてしまいましょう!

 

2. ヤングの実験の応用例

ここまでの内容は理解できたでしょうか?
ヤングの実験(に類似したもの)が入試で問われる際は、「上の実験でさらに条件を変えたときにどうなるか」が問われることが多いです。

その際、光路差さえ分かってしまえば、あとは1.4 明線・暗線の条件・様子(式で)で行った議論を繰り返せば良いです。
ここでは「条件を変えた際、光路差がどう変わるか」「明線の位置はどうずれるのか」に焦点を置いて、説明を行いたいと思います。

2.1 光源の位置をずらした場合

まずは以下のように光源の位置を距離\(a\)だけずらしたときについて考えていきましょう。(ただし\(a⋘l\))

この時の光路差は、

\( \begin{align}
\displaystyle [光路差] & = \left| (S_0 S_1+S_{1} P) – (S_0 S_2+ S_{2} P) \right| \\
\\
& = (S_0 S_2-S_0 S_1)+(S_1 P-S_2 P)
\end{align} \)

となります。

先ほど求めたように、\( \displaystyle S_1 P-S_2 P = \frac{dx}{L} \) ですが、\( S_0 S_2-S_0 S_1 \) をどのように求めるかが問題です。

実は求め方はとても簡単で、先ほど用いた図形的性質を使ってあげればよく、下図のように \( μ \) を定めれば、

\( \displaystyle S_0 S_2-S_0 S_1 = d \sin \mu ≒ d \tan \mu = d \frac{a}{l} \)

となり、結局光路差は

\( \displaystyle [光路差] = \frac{dx}{L} + \frac{da}{l} \)

となります!

この時の明線条件

\( \displaystyle \frac{dx}{L} + \frac{da}{l} = m \lambda \)

であり、

\( \displaystyle x_m = m \frac{\lambda L}{d} – a \frac{L}{l} \)

\( \displaystyle \Delta x = x_m + 1 – x_m = \frac{L\lambda }{d} \)

となります。

このことから

「明線間隔は不変で、全体が \( -x \) 向きに \( \displaystyle a \frac{L}{l} \) だけ移動する」

ことが分かります!

補足

上で求めた \( x_m \) に \( m=0 \) を代入すると、

\( \displaystyle x_0 = – a \frac{L}{l} \)

が得られますが、実はこれを簡単に導出する方法があります。

スリット \( S_1, S_2 \) 近傍に着目してみましょう。

\( m=0 \) のとき \( \theta = \mu \) となるので、以下の経路を光はたどります。

これをさらに単純化すると下図のようになります。

上の図をイメージすると、

\( \displaystyle \left|x_0 \right| = L \tan \theta = L \tan \mu = L \frac{a}{l} \)

\( \displaystyle x_0 = – a \frac{L}{l} \)

とすぐに求めることができます!

試験中時間がないときや、厳密な記述が求められていないときは、このようにして求めるという方法もあります。

 

2.2 スリットの前に屈折率\(n\)の膜を貼ったとき

次に、スリット \( S_2 \) の前に、屈折率 \( n \) で厚さが \( b \) の膜を貼ったとします。

この時の光路差は

\( \begin{align}
\displaystyle [光路差] & = (nb+S_2 P) – (b+S_1 P) \\
\\
& (n-1)b+\displaystyle\frac{dx}{L}
\end{align} \)

よって、この時の明線条件は、

\( \displaystyle (n-1) b + \frac{dx}{L} = m \lambda \)

であり、

\( \displaystyle ∴ \ x_m = m \frac{L\lambda}{d} + \frac{(n-1)bL}{d} \)

\( \displaystyle \Delta x = x_m + 1 – x_m = \frac{L\lambda }{d} \)

となります。このことから

「明線間隔は不変で、全体が \( +x \) 向きに \( \displaystyle \frac{(n-1)bL}{d} \) だけ移動する」

ことが分かります!

 

3. まとめ

以上です!ヤングの実験について理解できたでしょうか?形を覚えるまで何度も導出しましょう。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!

まとめ

以下、\(m\)は整数とする。

\( \begin{align}
\displaystyle & [光の経路差(光路差)] \\
\\
& =\left| (S_0 S_2+S_{2} P) – (S_0 S_1+ S_{1} P) \right| \\
\\
& = \left| S_{2} P-S_{1} P \right| \\
\\
& = d \frac{\left|x \right|}{L} \\
\\
& = \lambda \times \left\{ \begin{array}{c}{m}\cdots明線 \\ {m+\frac{1}{2} \cdots暗線}\end{array} \right.
\end{align} \)

これを解くと、

\( \displaystyle x = \frac{Lm\lambda}{d} \)

明線同士の間隔は

\( \displaystyle \Delta x=x_{m+1} -x_m = \frac{L\lambda}{d} \)

また、この結果より明線の様子は下図のようになる。

 

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