東大塾長の山田です。
このページでは、無限級数について説明しています。
無限(等比)級数について、収束条件やその解釈を詳しく説明し、練習問題を挟むことで盤石な理解を図っています。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 無限級数について
1.1 無限級数と収束条件
下式のように、項の数が無限である級数のことを「無限級数」といいます。
\[\displaystyle\sum_{n=1}^{∞}a_n=a_1 +a_2+a_3+\cdots\]
たとえば
のような式も、無限級数であると言えます。
また、無限級数の第\(n\)項までの和のことを「部分和」といい、ここでは\(S_n\)と書くことにします。
このとき、「数列\(\{S_n\}\)が収束すること」を「無限級数\(\displaystyle\sum_{n=1}^{∞}a_n\)が収束する」ことと定義します。収束は、和をもつと同じ意味と考えてくれれば結構です。(⇔発散する)
例えば上の無限級数に関していえば、
\[
\begin{cases}
nが偶数のとき:S_n=0\\
nが奇数のとき:S_n=1
\end{cases}
\]
となり、\(\{S_n\}\)は発散する。
1.2 定理
次に、無限級数を扱う際に用いる超重要定理について説明します。
まずは以下のような無限級数について考えてみましょう。
\[1+2+3+4+5+6+\cdots\]
この数列は無限に大きくなっていきます。このときもちろん無限級数は「発散」していますね。
ということは、無限級数が収束するためには\(a_{\infty}=0\)になっている必要がありそうですね。そこで、今述べたことと同じことを言っている以下の定理を紹介します!
\(\displaystyle\sum_{n=0}^{∞}a_n\)が収束⇒\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=0\)
式をみればなんとなく意味をつかめる人が多いと思いますが、この定理を用いる際にはいくつか注意しなければいけない点があります。
まずは証明から確認しましょう。
証明
第\(n\)項までの部分和を\(S_n\)とすると、
\[S_n=a_1+a_2+\cdots +a_n\]
ここで、\(\lim_{n \to \infty}S_n=\alpha\)とおくとします。(これは定義より無限級数が収束することと同義)
\(n \to \infty\)だから\(n≧2\)としてよく、このとき
\[a_n=S_n-S_{n-1}\]
\(n \to \infty\)すると
\[\lim_{n \to \infty}a_n→\alpha-\alpha=0\]
よって
\[\displaystyle\sum_{n=0}^{∞}a_nが収束⇒\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=0\]
注意点
①この定理は以下のように対偶を取って考えた方がすんなり頭に入るかもしれません。
\[\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n≠0⇒\displaystyle\sum_{n=0}^{∞}a_nが発散\]
理解しやすい方で覚えると良いでしょう!
②この定理の逆
\[\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=0⇒\displaystyle\sum_{n=0}^{∞}a_nが収束\]
は成立しません。以下に反例を挙げておきます。
\[a_n=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}\]
は、\(a_n\to 0\)(\(n\to\infty\))であるが、
\[a_n=\sqrt{n+1}-\sqrt{n}\]
より、
\[
\begin{aligned}
\sum_{k=1}^{n}a_{k}
&=\sqrt{2}-\sqrt{1}+\sqrt{3}-\sqrt{2}+\cdots\sqrt{n+1}-\sqrt{n} \\
&=\sqrt{n+1}-1
\end{aligned}
\]
よって
\[\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_n=+\infty\]
となり、\(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_n\)は発散してしまいます。
1.3 練習問題
ここまでの知識が身についたか、練習問題を解いて確認してみましょう!
次の無限級数の収束・発散を調べ、収束するときはその和を求めよ。
(1) \(2-\displaystyle\frac{3}{2}+\displaystyle\frac{3}{2}-\displaystyle\frac{4}{3}+\displaystyle\frac{4}{3}-\displaystyle\frac{5}{4}\cdots\)
(2) \(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\displaystyle\frac{1}{n(n+2)}\)
無限級数の定義や、さきほどの定理を参照して考えていきましょう!
考えてみましたか?
それは解答です!
【解答】
(1) 第\(n\)項を\(a_n\)とすると、明らかに\(\displaystyle\lim_{n=0\to\infty}a_n≠0\)。
よって、\(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_n\)は発散\(\cdots\)【答】
(2) 定石通り部分和を求めていきましょう。部分和を\(S_n\)とおくと
\[
\begin{aligned}
S_n=\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\displaystyle\frac{1}{k(k+2)}
&=\displaystyle\frac{1}{2}\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\left(\displaystyle\frac{1}{k}-\displaystyle\frac{1}{k+2}\right)\\
&=\displaystyle\frac{1}{2}\left(\displaystyle\frac{1}{1}+\displaystyle\frac{1}{2}-\displaystyle\frac{1}{n+1}-\displaystyle\frac{1}{n+2}\right)\\
&=\displaystyle\frac{3}{4}\quad(n\to\infty)
\end{aligned}
\]
よって
\[\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\displaystyle\frac{1}{n(n+2)}=\displaystyle\frac{3}{4}\cdots【答】\]
無限級数の求め方には、部分和を考えるか、第\(n\)項を考えるかの二通があることを頭に入れておきましょう!
2. 無限等比級数について
続いて、無限等比級数について扱っていきましょう。
2.1 無限等比級数とは
無限級数の中で以下のような、無限に続く等比数列の和のことを「無限等比級数」といいます。
このとき、等比数列の初項は\(a\)、公比は\(r\)となっています。
2.2 無限等比級数の公式
無限級数の収束条件を求める場合、無限等比級数と無限級数では求め方に違いがあります。
部分和の極限に関しては先ほど説明した通りです。ここからは等比の場合における「公式」について扱っていきます。
まず簡単な例を見てみましょう。以下の無限等比級数について考えてみましょう。
\[\displaystyle\frac{1}{2}+\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{8}+\displaystyle\frac{1}{16}+\cdots=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^n=1\]
なぜこの無限等比級数の和が1になるのか、これは下図を見れば何となくわかるはずです。
一辺の長さが1の正方形を半分に分割し続ければ、いずれは正方形全体をカバーできるというのが上の式の意味です。
このような無限等比級数の和を、式で導き出すにはどのようにすればよいのでしょうか?
一般に、無限等比級数が収束するのは以下の場合に限られることが知られています。
無限等比級数
\[a+ar+ar^2+\cdots\]
が収束するための必要十分条件は
\[a=0\quad∨\quad|r|<1\]
であり、その和は
\[
\begin{cases}
a=0のとき:0\\
|r|<1のとき:\displaystyle\frac{a}{1-r}
\end{cases}
\]
これは裏を返せば、
という意味になります。
この公式を用いると、さきほどの無限等比級数の和は\(\displaystyle\frac{\frac{1}{2}}{1-\frac{1}{2}}=1\)となり、同じ答えを導き出すことができました!
この公式を証明してみましょう。
証明
(Ⅰ) \(a=0\)のとき
自明に無限等比級数の和は\(0\)となり、収束します。
(Ⅱ) \(r=1\)のとき
求める無限等比級数の和は
\[a+a+\cdots\]
となり発散します。
(Ⅲ) \(r≠1\)のとき
無限等比級数の部分和を\(S_n\)とおくと、
\[S_n=a+ar+ar^2+\cdots+ar^{n-1}\]
これは等比数列の和の公式より簡単に求めることができ、
\[S_n=\displaystyle\frac{a(1-r^n)}{1-r}\]
このとき。求める無限級数の値は、\(\lim_{n=0\to\infty}S_n\)であり、これは
\[
\begin{cases}
|r|<1のとき:\displaystyle\frac{a}{1-r}に収束\\
|r|>1のとき:発散
\end{cases}
\]
となることが分かります。
公式の解釈
\(\displaystyle\frac{a}{1-r}\)に収束するというのも、「無限等比級数の値が初項\(a\)に比例する」「公比が1に近いほど絶対値が大きくなり、\(r\to 1\)で発散する」というイメージを持っておけば覚えやすいはずです!
覚えるのは大前提ですが、導出も容易なのでいつでもできるようにしておきましょう!
2.3 練習問題
練習問題を解いて知識が定着したか確認していきましょう。
(1) 無限級数\(\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}a^{2k-1}\)の和を求めよ。ただし\(a\)は\(k\)に依らない定数である。
(2) 二つの無限等比級数
\[
\begin{cases}
S=(x-1)+(x-1)(x+y)+(x-1)(x+y)^2+\cdots\\
T=(y-1)+(y-1)(x^2+y^2)+(y-1)(x^2+y^2)^2+\cdots
\end{cases}
\]
がともに収束する点\((x,y)\)の範囲を図示せよ。
見た目に惑わされず、公式通りに場合分けをして考えてみましょう。
考えてみましたか?
それは解答です!
【解答】
(1) 与無限級数は
\[\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}a^{2k-1}=\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}a(a^2)^{k-1}\]
となる。これは、初項\(a\)、公比\(a^2\)の無限等比級数であるから
\[
\begin{cases}
a=0のとき:0に収束\\
a^2<1,\quad a≠0のとき:\displaystyle\frac{a}{1-a^2}\\
a^2≧1のとき:発散する
\end{cases}
\]
以上まとめて
\[
\begin{cases}
|a|<1のとき:\displaystyle\frac{a}{1-a^2}\\
|a|≧1のとき:発散する
\end{cases}
\]
(2) \(S\)は、初項\(x-1\)、公比\(x+y\)より、収束条件は
\[\quad x-1=0\quad∨\quad|x+y|<1\] \[⇔x=1\quad∨\quad-x-1<y<-x+1\cdots①\]
\(T\)は、初項\(y-1\)、公比\(x^2+y^2\)より、収束条件は
\[\quad y-1=0\quad∨\quad|x^2+y^2|<1\] \[⇔y=1\quad∨\quad x^2+y^2<1\cdots②\]
よって①∧②より、下図斜線部を得る。(境界除く)
*(1, 1)も含まれることも忘れずに!
しっかり解けるようにしておきましょう!
3. まとめ
お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!
収束条件の違い
無限級数:\(\displaystyle\sum_{n=1}^{∞}a_n=a_1 +a_2+a_3+\cdots\)
定理:\(\displaystyle\sum_{n=0}^{∞}a_n\)が収束⇒\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=0\)
逆が成り立たないことに注意!
無限等比級数:\(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_n=a+ar+ar^2+\cdots=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}ar^{n-1}\)
収束条件:\(a=0\quad∨\quad|r|<1\)
であり、その和は
\[
\begin{cases}
a=0のとき:0\\
|r|<1のとき:\displaystyle\frac{a}{1-r}
\end{cases}
\]
練習問題(2)なのですがy=1(-2<x<0)は含まれないのでしょうか?