東大塾長の山田です。
このページでは、置換積分について詳しく解説しています。
積分における重要ツールである置換積分、計算方法についてはもちろん、その証明や、そもそもどういった計算を行っているのかを視覚的にわかりやすく解説しています。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 置換積分とは
置換積分とは、被積分関数を新しい関数の式で置き換えて(置換)計算する、という操作のことを指します。
これは、変数をうまく変換することで、計算量を減らす際に用いられることが多いです!
言葉だけだとイメージが湧きづらいと思うので、実際の例を用いて確認していきましょう。
2. 不定積分の置換積分
まずは不定積分の置換積分について扱っていきます。
2.1 公式
\(x=g(t)\)と置換すると
\(\displaystyle\int f(x) d x=\int f(g(t)) \frac{d x}{d t} d t\)
上の式が言いたいのは、
「非積分関数を新しい変数\(t\)で置き換える」
「\(\displaystyle\frac{dx}{dt}\)を掛ける」
の二つだけです。
実際に計算して確認してみましょう。
2.2 計算例
(1) \(\displaystyle\int x(2-x)^{4} d x\)
(2) \(\displaystyle\int \sqrt{x+1}(x+2) d x\)
それぞれ、「このままじゃ計算が面倒くさいから置換してみる」という精神のもと行っていきましょう。
【解答】
(1) このままじゃ\((2-x)^4\)の展開が面倒くさいので、\(t=2-x\)と置換してみましょう。また、\(\displaystyle\frac{dt}{dx}=-1\)より
\(\begin{aligned}\displaystyle\int x(2-x)^{4} d x&=\int(2-t) t^{4} \cdot(-1) d t\\&=\int\left(t^{5}-2 t^{4}\right) d t\end{aligned}\)
となり、だいぶ計算しやすくなりましたね。最後にこれを計算してあげると
\(\begin{aligned}\int\left(t^{5}-2 t^{4}\right) d t&=\displaystyle\frac{1}{6}t^6-\displaystyle\frac{2}{5}t^5+C\\&=\displaystyle\frac{1}{6}(2-x)^6-\displaystyle\frac{2}{5}(2-x)^5+C\end{aligned}\)
となります。(Cは積分定数)
(2) これもルートの計算が面倒くさいので、\(\sqrt{x+1}=t\)と置換します。
このとき、\(x=t^2-1\)で、両辺を微分することで、\(\displaystyle\frac{dx}{dt}=2t\)という関係式を得ることができます。よって
\(\begin{aligned}\displaystyle\int \sqrt{x+1}(x+2) d x&=\displaystyle\int\left(t^{3}+t\right) 2 t d t\\ &=\int 2 t^{4}+2 t^{2} d t\\&=\frac{2}{5} t^{5}+\frac{2}{3} t^{3}+C\\&=\frac{2}{5}(x+1)^{\frac{5}{2}}+\frac{2}{3}(x+1)^{\frac{3}{2}}+C\end{aligned}\)
という結果を得ることができます。
このように面倒くさい計算をすることなく、簡単に答えを導き出せるのです。
2.3 証明
最後の、なぜこのような変形を行っても良いのか証明します。
【証明】
\(f(x)\)の原始関数を\(F(x)\)とすると、
\(\displaystyle\frac{d F(x)}{d x}=f(x)\)
が成立します。このとき、公式\(\displaystyle\int f(x) d x=\int f(g(t)) \frac{d x}{d t} d t\)の右辺は、\(F(x)+C\)となります。
このとき、\(F(x)\)を\(t\)で微分すると、合成関数の微分公式より
\(\begin{aligned}\displaystyle\frac{dF(x)}{dt}&=\frac{d x}{d t} \frac{d F(x)}{d x}\\&=\frac{d x}{d t} \cdot f(x)\\&=\frac{d x}{d t} f(g(t))\end{aligned}\)
これは、\(\displaystyle\frac{d x}{d t} f(g(t))\)の\(t\)による積分が、\(F(x)\)になることを表しています。よって、公式の右辺も\(F(x)+C\)となります。
3. 定積分の置換積分
次は、定積分について考えてみましょう。不定積分と異なり、積分区間にも気を配る必要があることに注意です。
3.1 公式
まずは公式です。
\(x=g(t)\)と置換すると
\(\displaystyle\int_{a}^{b} f(x) d x=\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} f(g(t)) \displaystyle\frac{d x}{d t} d t\)
ただし、\(t\)が\(\alpha \to \beta\)と単調に変化するとき、\(x\)は\(a\to b\)と単調に変化するものとします。
定積分の場合、実際にやることは以下の三つです。
「非積分関数を新しい変数\(t\)で置き換える」
「\(\displaystyle\frac{dx}{dt}\)を掛ける」
「積分区間を変更する」(定積分との違い)
これを踏まえて例題を解いてみましょう。
3.2 例題
(1) \(\displaystyle\int_{0}^{1} \displaystyle\frac{x}{\left(1-x^{2}\right)^{1 / 3}} d x\)
(2) \(\int_{0}^{1} \frac{d x}{1+x^{2}}\)
どのように置換すれば計算が簡単になるか、どのように積分範囲が変化するかを常に注意しましょう。
【解答】
(1) 明らかに分母が面倒くさい形をしているので、\(1-x^2=t\)と置換します。
このとき、\(-2x \displaystyle\frac{dx}{dt}=1\)かつ、\(x:0\to 1\)のとき、\(t:1\to 0\)となるから
\(\begin{aligned}\displaystyle\int_{0}^{1} \displaystyle\frac{x}{\left(1-x^{2}\right)^{1 / 3}} d x&=-\int_{1}^{0} \frac{1}{2} t^{-1 / 3} d t\\&=\left[\frac{3}{4} t^{2 / 3}\right]_{0}^{1}\\&=\displaystyle\frac{3}{4}\end{aligned}\)
(2) どのように置換するのが良いでしょうか?ここは、だまされたと思って、\(x=\tan \theta\)(\(-\displaystyle\frac{\pi}{2}<\theta <\displaystyle\frac{\pi}{2}\))と置換してみましょう。(置換テクニックはこちら)
このとき、\(\displaystyle\frac{d x}{d \theta}=\displaystyle\frac{1}{\cos ^{2} \theta}\)であり、\(x:0\to1\)のとき、\(\theta :0\to\displaystyle\frac{\pi}{4}\)だから
\(\begin{aligned}\displaystyle\int_{0}^{1} \frac{d x}{1+x^{2}}&=\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}} \frac{1}{1+\tan^{2}\theta}\frac{d\theta}{\cos ^{2} \theta}\\&=\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}} \cos^2 \theta\frac{d\theta}{\cos ^{2} \theta}\\&=\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}} d\theta\\&=\displaystyle\frac{\pi}{4}\end{aligned}\)
とてもスムーズに計算することができました。
計算ミスなくできたでしょうか?(2)の置換方法をその場で考えることは困難だと思いますので、パターンとして頭に入れておきましょう。(パターンについてはこちら)
3.3 証明
不定積分の場合と同様に証明を行いましょう。せっかくなので、不定積分の場合の結果を用いていきます。
【証明】
先ほど同様、\(f(x)\)の原始関数を\(F(x)\)とすると、不定積分の公式より\(F(g(t))\)が\(f(g(t)) \frac{d x}{d t}\)の原始関数であることが分かります。
よって
\(\begin{aligned}\displaystyle\int_{a}^{b} f(x) d x&=F(b)-F(a)\\&=F(g(\beta))-F(g(\alpha))\\&=\int_{\alpha}^{\beta} f(g(t)) \frac{d x}{d t} d t\end{aligned}\)
となり、示すことができました。
4. 知っておかなければならない置換積分
ここで知っておいた方が良いであろう置換の方法について取り上げておきます。
3.2で扱った問題で\(x=\tan\theta\)と置いた問題ありましたが、この置換を1から思いつくのは至難の業です。ほかにもこのような置換方法があるので、簡単な計算例とともにまとめておきます!
4.1 \(x=a\tan \theta\)と置換するとき
被積分関数が、\(\displaystyle\frac{1}{x^2+a^2}\)の形のとき、\(x=a\tan\theta\)と置換するととても簡単に計算することができます。
【例】\(a>0\)のとき、\(\displaystyle\int_{0}^{a}\displaystyle\frac{1}{x^2+a^2}dx\)を計算してみましょう。
\(x=a\tan\theta\)と置換すると、被積分関数は
\(\displaystyle\frac{1}{x^2+a^2}=\displaystyle\frac{1}{a^2(1+\tan^2\theta)}=\displaystyle\frac{\cos^2\theta}{a^2}\)
となり、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=\displaystyle\frac{a}{\cos^2\theta}\)で\(x:0\to a\)のとき\(\theta:0\to\displaystyle\frac{\pi}{4}\)となるから
\(\begin{aligned}\displaystyle\int_{0}^{a}\displaystyle\frac{1}{x^2+a^2}dx&=\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\displaystyle\frac{\cos^2\theta}{a^2}\displaystyle\frac{a}{\cos^2\theta}d\theta\\&=\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\displaystyle\frac{1}{a}d\theta\\&=\displaystyle\frac{\pi}{4a}\end{aligned}\)
4.2 \(x=a\sin\theta\)と置換するとき
被積分関数が、\(\sqrt{a^2-x^2}\)の形のとき、\(x=a\sin\theta\)と置換するととても簡単に計算することができます。
【例】\(a>0\)のとき、\(\displaystyle\int_{0}^{a}\sqrt{a^2-x^2}dx\)を計算してみましょう。
\(x=a\sin\theta\)と置換すると、被積分関数は
\(\begin{aligned}\sqrt{a^2-x^2}=\sqrt{a^2(1-\sin^2\theta)}&=\sqrt{a^2\cos^2\theta}\\&=a|\cos\theta|\end{aligned}\)
となり、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=a\cos\theta\)で\(x:0\to a\)のとき\(\theta:0\to\displaystyle\frac{\pi}{2}\)となるから
\(\begin{aligned}\displaystyle\int_{0}^{a}\sqrt{a^2-x^2}dx&=\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}a\cos\theta\cdot a\cos\theta d\theta\\&=a^2\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\cos^2\theta d\theta\\&=a^2\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\displaystyle\frac{1+\cos 2\theta}{2} d\theta\\&=\displaystyle\frac{a^2\pi}{4}\end{aligned}\)
となります。
この2パターンは頭に入れておきましょう!
5. 置換積分の本質
ここまで延々と置換積分の計算方法について述べてきましたが、最後に結局置換積分とは何なのかについて考えていきましょう。
まずは以下の計算を見てみましょう。
\(\displaystyle\int_{0}^{1}x^2 dx=\frac{1}{3}\)
これは、実際に計算してみるとわかります。次に、この計算において、\(x=\displaystyle\frac{1}{2}t\)なる置換を行ってみましょう。
このとき、\(\displaystyle\frac{dx}{dt}=\frac{1}{2}\)と、\(x:0\to 1\)のとき\(t:0\to 2\)であることを用いると、以下の関係を得ることができます。
\(\displaystyle\int_{0}^{1}x^2 dx=\displaystyle\int_{0}^{2}\frac{1}{4}t^2\cdot\frac{1}{2} dt=\frac{1}{3}\)
この式の意味を図形的に、今回は積分なので面積に着目して考えてみましょう。
まず最左辺の\(\displaystyle\int_{0}^{1}x^2 dx\)について、これは下図の小さな長方形(たて\(x^2\)、横\(dx\))の面積の合計を意味しています。
これに、\(x=\displaystyle\frac{1}{2}t\)の置換を施すとはどういうことでしょうか?
まず元々の被積分関数が\(x^2 \to \displaystyle\frac{1}{4}t^2\)となり、置換から\(\displaystyle\frac{dx}{dt}=\frac{1}{2}\)となり、積分範囲が\(0\to x\to 1⇒0\to t\to 2\)となりますね。
さて上図について考えてみましょう。
まず被積分関数が\(y=\displaystyle\frac{1}{4}t^2\)になったことで、高さは変わらないのに長方形の横幅だけが二倍になってしまいます(上図オレンジ)。つまり、オレンジ面積\(\displaystyle\int_{0}^{2}\frac{1}{4}t^2 dt\)が、元の面積\(\displaystyle\int_{0}^{1}x^2 dx\)の二倍になってしまっているのです。
その幅の伸び縮み(今回は伸び)を修正するために、\(\displaystyle\frac{1}{2}dt\)が後ろについて、結局\(\displaystyle\int_{0}^{2}\frac{1}{8}t^2 dt\)(上図緑曲線)を考えればよいことが分かりますね。
つまり、ここまでの議論をまとめると
①置換により幅が伸び縮みする
②その分だけ、置換式の微分が伸び縮みを修正する役割を持つ
となることが分かります!これで置換積分の公式の意味が理解できたのでないでしょうか。
お疲れ様でした!重要な積分公式なので、原理含めてしっかりと頭に入れましょう!
参考書で勉強していたら、
∫f(sinθ)・cosθdθ の場合、sinθ=tとおく
と書いてあるのですが、このときdθ/dxが必要になると思うのですが、どうやって出すのでしょうか?
この参考書では置換積分のやり方が初めから少し違っていて、
sinθ=tより、(sinθ)´dθ=t´dt よって、cosθdθ=dt
という感じになっています。
答えて頂けたら幸いです。
だいぶ前のコメントなので解決済みかもしれませんが、
おっしゃる通り
x=sinθをθ=で始まる等式に直すのは高校数学では不可能です。
そこで、置換積分の時は
dx/dθを計算します。
dxやdθは変数ではありませんが、このページで証明されているように変数のような取り扱いができます。
つまり、dx/dθ=cosθなのでdx=cosθdθと表すことが可能です。
あとは積分式のdxに代入して計算してみてください
「3.2 例題(1)」で、積分区間に1が含まれるにもかかわらず、分母に(1-x^2)^(1/3)があるので、分母が0になることがあるかと思います。今回は、広義積分として収束しますが、高校生向けの記事として適切とはいいがたいかと思いました。
x=a*sinθとする置換積分って、半径rの円と直線y=aが囲む領域の面積の計算にも使えるでしょうか?
この置換積分の例題にあったSQRT(r^2-x^2)から円の方程式が思い起こされたので質問してみました。
計算ミスなのかもしれませんが、定積分の範囲に逆三角関数が出てきてしまい難しいです。
答えて頂けたら幸いです。