【数学Ⅲ】積分計算の型網羅part3(分数関数)

東大塾長の山田です。

このページでは、分数関数の積分について詳しく説明しています!

ぜひ勉強の参考にしてください!

1. 分数関数の積分

1.1 パターン分け

分数関数は以下のパターンに限られます。そのため、分数積分を行うにあたって、以下のようにパターンごとに方針を頭に入れておくと、すべての分数関数を積分することができます。

1.2 必要な道具

分数関数の積分をスムーズに行うためにも、以下の二つの道具を揃えておく必要があります。

\(\displaystyle\int \frac{f'(x)}{f(x)} dx=\log |f(x)|+C\)

一個目は上記の積分公式です。以下ではこの公式が多用されるので必ず頭に入れておきましょう。特に、\(f(x)=x\)のとき

\(\displaystyle\int \frac{1}{x} dx=\log |x|+C\)

となります。

部分分数分解

部分分数分解とは、以下のように分母が因数分解されているような分数をいくつかの分数に分解する作業のことを言います。

【例】

\(\displaystyle\frac{1}{(x-3)(x-7)}=\frac{1}{4}\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{x-7}-\frac{1}{x-3}\right)\)

一般に、部分分数分解は以下のようになることが知られています。

部分分数分解パターン

\(\displaystyle\frac{1}{(x-\alpha)(x-\beta)}=\displaystyle\frac{a}{x-\alpha}+\displaystyle\frac{b}{x-\beta}\)

\(\displaystyle\frac{1}{(x-\alpha)^2 (x-\beta)}=\frac{a}{x-\alpha}+\frac{b}{(x-\alpha)^2}+\frac{c}{x-\beta}\)

これは証明なしに使えます。あとは右辺を通分してあげて、左辺の分子と比較すると、\(a, b, c\)を求めることができます。

上の形に分解できることを必ず頭に入れておきましょう。

2.積分パターンと計算例

それでは以下のパターン分けに従って、分数関数の積分について考えていきましょう!

まずは上のパターン分け以前に、とても簡単に積分できるとき「分子が分母の微分になっているとき」について考えます。

2.1 分子が分母の微分になっているとき

例えば、

\(\displaystyle\frac{1}{x},\quad \frac{2x+3}{x^2+3x},\quad \frac{\cos x}{\sin x}\)

等の関数です。これは先ほど紹介した積分公式\(\displaystyle\int \frac{f'(x)}{f(x)} dx=\log |f(x)|+C\)を用いるとすぐに計算できるので、見つけたらラッキーと思いましょう。

以下にいくつか計算例を載せておきます。

【計算例】

\(\displaystyle\int \frac{2x+3}{x^2+3x}dx =\log|x^2+3x+C|\)

\(\displaystyle\int \displaystyle\frac{6x+6}{3x^2+6x+7} dx=\log (3x^2 +6x+7)+C\)

\(\displaystyle\int \frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}} dx =\log (e^x+e^{-x})+C\)

このようにすぐに求めることができますが、ほとんどの分数関数はこのようにうまくいきません。それへの対処法を以下で学んでいきましょう。

2.2 分母が\(x\)の一次式になっているとき

これは先ほどの「分子が分母の微分になっているとき」の応用版です。なぜなら、一次式が分母のとき分子は必ず定数で、また、一次式を微分した結果も必ず定数だからです。

あえて公式チックに書くならば以下のようになります。

\(\displaystyle\int \frac{k}{ax+b} dx =\frac{k}{a}\log |ax+b|+C\)

計算例は以下のようになります。

【計算例】

\(\displaystyle\int \frac{4}{2x+3} dx =2 \log |2x+3|+C\)

\(\displaystyle\int \frac{4}{7x+9} dx =\frac{4}{7} \log |7x+9|+C\)

2.3 分母が\(x\)の二次式になっているとき

次に、分母が二次式の場合について考えていきます。

2.3.1 分母が二つの一次式に因数分解できるとき

まずは分母が一次式の積で因数分解できるとき(分母=0が相異なる実数解を持つ)と木について考えていきます。

例えば以下のような関数です。

\(\displaystyle\frac{1}{x^2-4x-32}=\frac{1}{(x+4)(x-8)}\)

\(\displaystyle\frac{2}{x^2-1}=\frac{2}{(x-1)(x+1)}\)

この形を見て何をすればよいかすぐに分かるのではないでしょうか、そう「部分分数分解」です。試しに上の関数を部分分数分解してみましょう。

\(\displaystyle\frac{1}{x^2-4x-32}=\frac{1}{(x+4)(x-8)}=\frac{1}{12}\left(\frac{1}{x-8}-\frac{1}{x+4}\right)\)

\(\displaystyle\frac{2}{x^2-1}=\frac{2}{(x-1)(x+1)}=\frac{1}{x-1}-\frac{1}{x+1}\)

それぞれの関数を\(x\)で積分してみましょう。ここで出てくるのが\(\displaystyle\int \frac{f'(x)}{f(x)} dx=\log |f(x)|+C\)です。

\(\begin{aligned}\displaystyle\int \frac{1}{12}\left(\frac{1}{x-8}-\frac{1}{x+4}\right) dx &=\frac{1}{12}\left(\log|x-8|-\log |x+4|\right)\\&=\frac{1}{12}\log \left|\frac{x-8}{x+4}\right|+C\end{aligned}\)

\(\begin{aligned}\displaystyle\int \left(\frac{1}{x-1}-\frac{1}{x+1}\right) dx &=\log |x-1| -\log |x+1|\\&=\log |\frac{x-1}{x+1}|+C \end{aligned}\)

となり、\(\log\)の和(差)で表現することができますね。これを公式チックにまとめると以下のようになります。

\(\begin{aligned}\displaystyle\int \frac{1}{(ax+b)(cx+d)} dx &= \int \left(\frac{A}{ax+b}+\frac{B}{cx+d}\right) dx \\&=K_1\log |ax+b|+K_2 \log |cx+d| +C\end{aligned}\)

2.3.2 分母が完全平方式になるとき

次に、分母が完全平方式\((x-\alpha)^2\)になる場合について考えていきます。この場合も先ほどと同じように用いるのは「部分分数分解」です。これは早速問題を解いてみることで確認していきましょう。

【例】\(\displaystyle\int \frac{3x+5}{(x+1)^2} dx\)

まずは部分分数分解です。

\(\displaystyle\frac{3x+5}{(x+1)^2}=\frac{A}{(x+1)^2}+\frac{B}{x+1}\)

として\(A, B\)を求めると、

\(A=2,\quad B=3\)

となるから

\(\displaystyle\frac{3x+5}{(x+1)^2}=\frac{2}{(x+1)^2}+\frac{3}{x+1}\)

これを\(x\)で積分していきましょう。

\(\begin{aligned}\displaystyle\int \frac{3x+5}{(x+1)^2} dx &=\int \left(\frac{2}{(x+1)^2}+\frac{3}{x+1}\right) dx\\&=-\frac{2}{x+1}+3\log |x+1| +C\end{aligned}\)

となります。

この一連の計算を公式チックに書くと以下のようになります。

\(\begin{aligned}\displaystyle\int \frac{px+q}{(ax+b)^2} dx&=\int \left (\frac{A}{(ax+b)^2}+\frac{B}{ax+b}\right) dx \\&= \frac{K_1}{ax+b}+K_2 \log |ax+b| +C\end{aligned}\)

2.3.3 分母が\((ax+b)^2+A\)となるとき

最後に扱うパターンですが、この場合は定積分で出題されることがほとんどです。不定積分の場合は三角関数の逆関数が登場することになりますが、高校範囲ではまず登場しません。ここでも定積分の場合のみ扱います。

ここでは、置換積分が大活躍します。

いくつか例を挙げて確認していきます。

【例1】 \(\displaystyle\int_0^a \frac{1}{x^2 +a^2} dx\)

\(x=a\tan\theta\)と置換すると、被積分関数は

\(\displaystyle\frac{1}{x^2+a^2}=\displaystyle\frac{1}{a^2(1+\tan^2\theta)}=\displaystyle\frac{\cos^2\theta}{a^2}\)

となり、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=\displaystyle\frac{a}{\cos^2\theta}\)で\(x:0\to a\)のとき\(\theta:0\to\displaystyle\frac{\pi}{4}\)となるから

\(\begin{aligned}\displaystyle\int_{0}^{a}\displaystyle\frac{1}{x^2+a^2}dx&=\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\displaystyle\frac{\cos^2\theta}{a^2}\displaystyle\frac{a}{\cos^2\theta}d\theta\\&=\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\displaystyle\frac{1}{a}d\theta\\&=\displaystyle\frac{\pi}{4a}\end{aligned}\)

 

【例2】\(I=\displaystyle\int_{-1}^0 \frac{1}{x^2 +2x +2} dx\)

被積分関数の分母を\((ax+b)^2 +A\)の形にしましょう。

\(\begin{aligned}I=\displaystyle\int_{-1}^0 \frac{1}{x^2 +2x +2} dx&=\int \frac{1}{(x+1)^2+1} dx \end{aligned}\)

ここで、\(x+1=t\)と置換すると、\(dx=dt\)かつ、\(x:-1\to 0\)で\(t:0\to 1\)だから

\(\begin{aligned}I=\displaystyle\int_{-1}^0 \frac{1}{(x+1)^2+1} dx &=\int_0^1 \frac{1}{1+t^2} dt\end{aligned}\)

ここで先ほど同様、\(t=\tan \theta\)とおくと、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=\displaystyle\frac{1}{\cos^2\theta}\)で\(x:0\to 1\)のとき\(\theta:0\to\displaystyle\frac{\pi}{4}\)となるから

\(\begin{aligned}I&=\displaystyle\int_0^1 \frac{1}{1+t^2} dt\\&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}} d\theta \\&=\frac{\pi}{4}\end{aligned}\)

となります。

これは不定積分ではないので、公式のようなものはありませんが、方針を述べるとしたら以下のようになります。

\(I=\displaystyle\int \frac{1}{(ax+b)^2+A} dx\)

のとき、\(ax+b=A\tan \theta\)と置換すると、うまくいく。

3. まとめ

お疲れ様でした!最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に活用してください!

分数関数の積分まとめ

分子が分母の微分になっているとき

\(\displaystyle\int \frac{f'(x)}{f(x)} dx=\log |f(x)|+C\)

分母が一次式

\(\displaystyle\int \frac{k}{ax+b} dx =\frac{k}{a}\log |ax+b|+C\)\(\)

分母が二次式

分母が一次式の積で因数分解可能

\(\begin{aligned}\displaystyle\int \frac{1}{(ax+b)(cx+d)} dx &= \int \left(\frac{A}{ax+b}+\frac{B}{cx+d}\right) dx \\&=K_1\log |ax+b|+K_2 \log |cx+d| +C\end{aligned}\)

分母が完全平方式

\(\begin{aligned}\displaystyle\int \frac{px+q}{(ax+b)^2} dx&=\int \left (\frac{A}{(ax+b)^2}+\frac{B}{ax+b}\right) dx \\&= \frac{K_1}{ax+b}+K_2 \log |ax+b| +C\end{aligned}\)

それ以外

\(I=\displaystyle\int \frac{1}{(ax+b)^2+A} dx\)

のとき、\(ax+b=A\tan \theta\)と置換すると、うまくいく。

理系専門オンライン予備校LUS
※無料:過去問演習プリント/参考書解説授業
6か月で偏差値を+15上げる
理系専門オンライン予備校LUS
※無料:過去問演習プリント/参考書解説授業
6か月で偏差値を+15上げる