高校数学でオイラーの公式を理解する!

東大塾長の山田です。

このページでは、オイラーの公式について高校数学の範囲を用いて解説しています。

オイラーの公式についてしっかりと説明したのち、実際の問題での使い方、数種類の証明を載せています。

この記事を読むにあたっては、複素平面の知識が必要なので、不安がある方は以下の記事も参照してみてください。

ぜひ勉強の参考にしてください!

1. オイラーの公式について

1.1 オイラーの公式とは

オイラーの公式とは、指数関数と三角関数の間に成立する以下の関係のことを言います。

オイラーの公式

\(e^{i\theta}=\cos \theta +i\sin \theta\)

この公式は、任意の複素数\(\theta\)において成立しますが、特に\(\theta\)が実数の時には、\(\theta\)が複素数\(e^{i\theta}\)が為す複素平面上の偏角に対応します。

さらに、オイラーの公式に\(\theta =\pi\)を代入すれば有名なオイラーの等式を得ることができます。

オイラーの等式

\(e^{i\pi }=-1\)

一見何の関係もない、三角関数と指数関数の間にこのような関係があるとは驚きですね。

2.  オイラーの公式の使い方・メリット

オイラーの公式を用いることで、問題を解くときに非常に楽になる場合があります。いくつかの観点からそれについて紹介していきます。

2.1 三角関数の計算が指数計算に変わる

複素数は以下のように極座標の形式で表現することができます。

\(z=r_1 (\cos \theta+i\sin\theta)\)

以下の二つの複素数\(z_1, z_2\)の積を考えてみましょう。

\(z_1=r_1(\cos \theta _{1}+i\sin\theta _{1})\)
\(z_2=r_2(\cos \theta _{2}+i\sin\theta _{2})\)

このとき、積を計算してみると

\(\begin{aligned}z_1 \times z_2&=r_1(\cos \theta _{1}+i\sin\theta _{1})\times r_2(\cos \theta _{2}+i\sin\theta _{2})\\&=r_1 r_2\{\cos (\theta _{1}+\theta _{2})+i\sin (\theta _{1}+\theta _{2}) \})\\\end{aligned}\)

となります。本来は、途中の計算に三角関数の加法定理を用いる必要があり、途中計算はやや煩雑なものになってしまいます。

そこでオイラーの公式を用いてみましょう。

それぞれの複素数は

\(z_1=r_1\times e^{i\theta _{1}},\quad z_2=r_2\times e^{i\theta _{2}}\)

とでき、それぞれの積を考えてみると

\(\begin{aligned}z_1\times z_2&=r_1 e^{i\theta _{1}}\times r_2 e^{i\theta _{2}}\\&= r_1 r_2 e^{i(\theta _{1}+\theta _{2})}\\&=r_1\times r_2\times\{\cos (\theta _{1}+\theta _{2})+i\sin (\theta _{1}+\theta _{2}) \} \\\end{aligned}\)

となり、とても簡単に計算することができます。つまり、加法定理の計算を指数関数の積に落とし込むことができたのです。

また、オイラーの公式を使えば上の計算のように、ド・モアブルの定理も単なる指数関数の性質\((e^{a})^{b}=e^{ab}\)について述べたに過ぎないことが分かりますね。

2.2 単に解答がスッキリとする

これもメリットの一つですが、解答が非常にすっきりとします

オイラーの公式をもちいて

\(\cos \theta +i\sin \theta =e^{i\theta}\)

と短くできるので当たり前といえば当たり前ですが、ド・モアブルの定理を用いるときも指数関数の性質を用いて直感的に計算できるので、おススメです!

3. オイラーの公式の証明

非常に便利で美しいオイラーの公式ですが、どのように導出することができるでしょうか?高校生でも理解できる範囲で何通りか証明していきましょう。

3.1 ド・モアブルの定理を用いた証明

自然対数\(e\)の性質と、ド・モアブルの定理を用いて証明していきます。証明の前の準備として、以下のような計算を行ってみましょう。

【準備】

\(\displaystyle\lim_{n\to \infty}\left(1+\displaystyle\frac{1}{n}\right)^n=e\)を用いて、\(\displaystyle\lim_{n\to \infty}\left(1+\displaystyle\frac{3}{n}\right)^n\)を求めてみましょう。

実際に計算してみると

\(\begin{aligned}\displaystyle\lim_{n\to \infty}\left(1+\displaystyle\frac{3}{n}\right)^n&=\displaystyle\lim_{n\to \infty}\left(1+\displaystyle\frac{1}{\frac{n}{3}}\right)^n\\&=\left(\displaystyle\lim_{n\to \infty}\left(1+\displaystyle\frac{1}{\frac{n}{3}}\right)^{\frac{n}{3}}\right)^3\\&=e^3\\\end{aligned}\)

となります。この性質を適用すると、実数定数\(a\)を用いて

\(\displaystyle\lim _{n \rightarrow \infty}\left(1+\frac{a}{n}\right)^{n}=e^a\)

と書けると予測できますね。

この\(a\)が実数定数ではなく、複素数の時にも同様のことが成り立つという前提のもと証明を行っていきます。(実際には厳密な証明が必要ですが、高校範囲を逸脱するのでここでは省略します)

【証明】先ほどの計算例より

\(e^{i\theta}=\displaystyle\lim _{n \rightarrow \infty}\left(1+\frac{i\theta}{n}\right)^{n}\)

と書くことができます。ここから三角関数の極限

\(\displaystyle\lim _{h \rightarrow 0} \frac{\sinh }{h}=1⇔\displaystyle\lim _{h \rightarrow 0}\sin h=\displaystyle\lim _{h \rightarrow 0} h\)

を用いて考えていきます。(これは\(h\)と\(\sin h\)がともに収束するからこその式変形です。)

まず、\(n\to\infty\)において、\(\cos \displaystyle\frac{\theta}{n}\)は\(1\)に収束します。(☆)

また、先ほどの極限公式から

\(\displaystyle\lim _{n \rightarrow \infty}\sin \displaystyle\frac{\theta}{n}=\displaystyle\lim _{n \rightarrow \infty} \displaystyle\frac{\theta}{n}\)

が成り立ちます。(♡)

よって(☆)(♡)を用いてあげると

\(\begin{aligned}e^{i\theta}&=\lim _{n \rightarrow \infty}\left(1+\frac{i\theta}{n}\right)^{n}\\&=\lim _{n \rightarrow \infty}\left(\cos \displaystyle\frac{\theta}{n}+i\sin\displaystyle\frac{\theta}{n}\right)^{n}\end{aligned}\)

と書き換えることができます。この式にド・モアブルの定理を適用すると

\(\begin{aligned}e^{i\theta}&=\lim _{n \rightarrow \infty}\left(\cos \displaystyle\frac{\theta}{n}+i\sin\displaystyle\frac{\theta}{n}\right)^{n}\\&=\cos \theta +i\sin \theta\end{aligned}\)

というオイラーの公式を導出することができました。

エレガントな証明方法ですが、実数において成立することが複素数でも成立する、という乱暴な議論を行っているため(証明すれば正しいことは分かる)、いささか証明としては不安なところもあります。

そこで他のいくつかの方法も紹介していこうと思います。

3.2 微分による証明

次に、微分を用いた証明です。うまい関数\(f(x)\)を設定する必要があるため、汎用性はありません。

【証明】\(x\)の関数\(f(x)\)を以下のように設定します。

\(f(x)=(\cos x-i \sin x ) \cdot e^{i x}\)

\(f(x)\)の微分は以下のようになります。

\(\begin{aligned} f^{\prime}(x) &=(\cos x-i \sin x)^{\prime} \cdot e^{i x}+(\cos x-i \sin x) \cdot\left(e^{i x}\right)^{\prime} \\ &=(-\sin x-i \cos x) \cdot e^{i x}+(\cos x-i \sin x) \cdot i e^{i x} \\ &=\{(-\sin x-i \cos x)+(i \cos x+\sin x)\} \cdot e^{i x} \\ &=0 \end{aligned}\)

これにより、\(f(x)\)が定数関数であることが分かります。よって、\(f(x)=f(0)\)より

\(f(x)=(\cos 0 -i\sin 0)\cdot e^{i\cdot 0}=1\)

となり、

\((\cos x-i \sin x) \cdot e^{i x}=1\)

が分かります。ここで両辺に、\(\cos x-i \sin x\)の共役複素数である\(\cos x+i \sin x\)を掛けてあげると上式は

\(e^{i x}=\cos x+i \sin x\)

となり、オイラーの公式を導出することができました。

3.3 微分方程式による証明

次に、微分方程式を用いて証明してみましょう。微分方程式については以下の記事で詳しくまとめています。

それでは証明です。

【証明】実数\(x\)による関数\(y(x)\)を以下のように定めます。

\(y=f(x)=\cos x+i\sin x\cdots①\)

この微分方程式を解いて、\(y=e^{i x}\)であることを証明していきましょう。

ここで①の両辺を微分し、両辺に虚数単位\(i\)を掛けると以下のようになります。

\(i \frac{\mathrm{d} y}{\mathrm{d} x}=\underbrace{-i \sin x}_{\frac{\mathrm{d} \cos x}{\mathrm{d} x}=-\sin x}-\underbrace{\cos x}_{\frac{\mathrm{d} \sin x}{\mathrm{d} x}=\cos x}\cdots②\)

①②より

\(i\displaystyle\frac{dy}{dx}=-y\)

であり、この微分方程式を解くと一般解

\(y=f(x)=Ce^{ix}\)

が得られます。\(C\)は任意定数です。ここで初期条件\(f(0)=1\)を用いると\(C=1\)が分かり、

\(y=e^{ix}\)

が得られます。以上まとめて

\(e^{i x}=\cos x+i \sin x\)

となり、オイラーの公式を導出することができました。

3.4 マクローリン展開を用いた証明(大学範囲)

最後に、マクローリン展開を用いて証明してみましょう。マクローリン展開について分かりやすく説明した記事を以下に紹介しておきます。

マクローリン展開による証明は一瞬で終わります。

【証明】

マクローリン展開より

\(\begin{aligned} e^{x} &=1+\frac{x}{1 !}+\frac{x^{2}}{2 !}+\frac{x^{3}}{3 !}+\cdots \\ \sin x &=x-\frac{x^{3}}{3 !}+\frac{x^{5}}{5 !}-\cdots \\ \cos x &=1-\frac{x^{2}}{2 !}-\frac{x^{4}}{4 !}+\cdots \end{aligned}\)

\(e^{ix}\)をマクローリン展開していき、実部と虚部に分解すると

\(\begin{aligned} e^{ix} &=1+\frac{i x}{1 !}+\frac{(i x)^{2}}{2 !}+\frac{(i x)^{3}}{3 !}+\cdots \\ &=1+\frac{i x}{1 !}-\frac{x^{2}}{2 !}-\frac{i x^{3}}{3 !}+\cdots \\ &=\left(1-\frac{x^{2}}{2 !}+\frac{x^{4}}{4 !}-\cdots\right)+i\left(x-\frac{x^{3}}{3 !}+\frac{x^{5}}{5 !}-\cdots\right) \\ &=\cos x+i \sin x \end{aligned}\)

となり、オイラーの公式を導出することができました。

とてもエレガントな解法なのでマクローリン展開の帰結とともに覚えておくと良いかもしれませんね。

 

 

以上です!証明も覚えやすいものが多いと思うので、オイラーの公式をいつでも使えるように準備しておくと良いでしょう!

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1件のコメント

3.1の最後の証明で(1+iθ/n)のn乗の極限を(cosθ/n+isinθ/n)のn乗の極限に変形するのは問題なのでしょうか。たとえば(1+θ/n)のn乗の極限は1のn乗の極限にはできないので、n乗の中身だけを極限と交換するのはダメだと言われました。

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