東大塾長の山田です。
このページでは、「物質量(mol)」について解説しています。
物質量に関する単位(mol)や、それらを用いた計算問題の解答例を載せています。
物質量は様々な問題に絡んでくるので、ぜひこの記事を読んでマスターしてください!
1. 物質量
1.1 物質量とは?
物質量とは単位の1つで、モル(mol)を用いて表します。
物質量について、鉛筆の例を用いて説明していきます。
ここに鉛筆が1本あります。この鉛筆が12本集まったものを1ダースと呼びます。
物質量もダースと同じように考えることができます。
ここに、一粒の原子があります。
これが6.02×1023個集まったカタマリのことを、1molとよびます。
6.02×1023個という数はどんな原子(分子)でも一緒になります。
1.2 アボガドロ定数
1molは原子が「6.02×1023個」集まったものであると説明しました。
この「6.02×1023」という数字には名前がついていて「アボガドロ定数」といいます。
質量数12の炭素C原子12g中に、6.02×1023個のC原子が含まれています。この数のことを、アボガドロ定数といいます。
アボガドロ定数の単位は(/mol)です。
アボガドロ定数 = 6.02×1023 [/mol]
2. 化学反応式と物質量
物質量に関して化学反応式を使う計算問題がたくさん出題されます。
この記事でも計算問題の例を示しますが、それにあたって覚えておくべきことを説明したいと思います。
まず、覚えておいてほしいことは
係数比=モル比
となることです。ここで下の化学式を例に説明します。
\( N_2+3H_2→2NH_3 \)
化学反応式における係数の比は「molの比」を表しています。
それぞれの係数比は、窒素分子:水素分子:アンモニア=1:3:2となっています。
これは、1molの窒素分子と3molの水素分子から2molのアンモニアが生成することを表しています。
3. molを使った単位
ここでは、molを使った単位を紹介していこうと思います。
3.1 モル質量
物質1molあたりの質量(g)をモル質量といい、原子量・分子量・式量に「g/mol」の単位をつけたものです。
\( \displaystyle 物質量(mol)=\frac{質量(g)}{モル質量(g/mol)} \)
塩化ナトリウム(\( \rm NaCl \))のように、分子の存在しない物質については、化学式量が分子量に相当することから、その式量にgをつけた質量がモル質量である。
NaClの式量は58.5であるから、NaClのモル質量は58.5g/molとなります。
3.2 モル体積
0℃、1気圧(1.013×105Pa)を標準状態と呼びます。
モル体積とは、気体物質1mol当たりの体積のことをいい、気体の種類にかからわず、標準状態で22.4L/molとなります。
モル体積 = 22.4(L/mol)
3.3 モル濃度
「溶液1[L]に含まれる溶質のmol数」のことをモル濃度といい、単位は(mol/L)で表します。
\( \displaystyle モル濃度(mol/L)=\frac{溶質(mol)}{溶媒(L)} \)
3.4 質量モル濃度
「溶媒1kgに含まれる溶質のmol数」のことを質量モル濃度といい、単位は(mol/kg)で表します。
\( \displaystyle 質量モル濃度(mol/kg)=\frac{溶質(mol)}{溶媒(kg)} \)
溶質とは「溶けている物質」、溶媒とは「物質を溶かしている溶液」、溶液とは「溶媒と溶質を合わせたもの」であることに注意してください。
4. molを用いた計算問題の例
ここでは、上で説明してきた単位に関する計算問題の例と解答を紹介していきたいと思います。
4.1 モル質量に関する計算問題
アルミニウムが10.8gある。このアルミニウムの物質量は何molか。また、この中に含まれるアルミニウム原子の数はどれだけか。
原子量はAl=27.0、アボガドロ定数は6.0×1023/molとする。
【物質量】
アルミニウムのモル質量は27.0 g/molであるから、アルミニウム10.8gの物質量は
\( \displaystyle \frac{10.8 g}{27.0 g/mol}=0.40〔mol〕 \)
答‥0.40 mol
【原子の数】
アルミニウムの原子の数は
\( \displaystyle 6.0\times10^{23} /mol\times0.40 mol=2.4\times10^{23}〔個〕 \)
答‥2.4×1023 個
4.2 モル体積に関する計算問題
標準状態で504mLの気体がある。この気体の物質量は何molか。また、この気体が酸素であったとき、質量はどれくらいか。
ただし、原子量O=16.0とする。
【物質量】
504mL=5.04×10-1Lであるから
\( \displaystyle \frac{5.04\times10^{-1} L}{22.4 L/mol}=2.25\times10^{-2}〔mol〕\)
答‥2.25×10-2 mol
【質量】
酸素は\(\rm O_2\)=32.0であるので質量をmとすると、物質量は2.25×10-2molであるから
\( \displaystyle m=32.0 g/mol\times2.25\times10^{-2} mol=0.72〔g〕\)
答‥0.72 g
4.3 モル濃度に関する計算問題
水酸化ナトリウム5.0gを水に溶かして250mLとしたときの水酸化ナトリウムのモル濃度を求めよ。NaOHの式量は40.0とする。
NaOHのモル質量は40.0g/molであるから、NaOH5.0gの物質量は
\( \displaystyle \frac{5.0 g}{40.0 g/mol}=0.125〔mol〕 \)
溶媒は250mL=0.25Lであるから
\( \displaystyle \frac{0.125 mol}{0.25 L}=0.50〔mol/L〕 \)
答‥0.50 mol/L
次に溶液のモル濃度の希釈に関する問題を説明していきます。
希釈するうえで大事なことは
希釈前と希釈後とで「mol数」は変わらない
ということです。
このことを頭に入れて問題を解いていきましょう。
モル濃度が0.50mol/Lのグルコース水溶液400mLに、水を加えて1600mLにした。このときできた溶液のモル濃度を求めよ。
まず、水溶液に含まれるグルコースの物質量を求める。
\( ぢさ0.50 mol/L\times\frac{400}{1000}=0.20〔mol〕 \)
よって、希釈後の水溶液のモル濃度は
\( \displaystyle \frac{0.20 mol}{1.6 L}=0.125〔mol/L〕\)
答‥0.125 mol/L
4.4 質量モル濃度に関する計算問題
730gの塩化水素(\(\rm HCl)\)を400gの水に溶かしたときの質量モル濃度を求めよ。ただし、原子量は\(\rm H\)=1.0、\(\rm Cl\)=35.5とする。
\(\rm HCl\)のモル質量は36.5となるから質量730gの塩化水素の物質量は
\( \displaystyle \frac{730 g}{36.5 g/mol}=20〔mol〕\)
よって、これを水400g=0.4kgに溶かした時の質量モル濃度は
\( \displaystyle \frac{20 mol}{0.4 kg}=50〔mol/kg〕\)
答‥50 mol/kg
4.5 応用問題
これまでに使ったものを使って問題を解いてみましょう。
ただし、アボガドロ定数は6.0×1023 /mol、原子量はH=1.0、N=14.0、O=16.0とします。
標準状態で4.48Lの窒素を500mLの水に溶かしたときの水溶液のモル濃度を求めよ。
標準状態で4.48Lの窒素の物質量はモル体積は22.4L/molより
\( \displaystyle \frac{4.48 L}{22.4 L/mol}=0.20〔mol〕 \)
これを、500mL=0.50Lの水に溶かしたから
\( \displaystyle \frac{0.20 mol}{0.50 L}=0.40〔mol/L〕 \)
答‥0.40 mol/L
標準状態で1.5×1023個の水素の気体の体積を求めよ。
標準状態で1.5×1023個の水素の物質量は、アボガドロ定数が6.0×1023 /molより
\( \displaystyle \frac{1.5\times10^{23}}{6.0\times10^{23}}=0.25〔mol〕 \)
モル体積は22.4L/molより
\( \displaystyle 0.25 mol\times22. L/mol=5.6〔L〕 \)
答‥5.6 L
200mLの水にある量の酸素を溶かしたときモル濃度は1.0mol/Lとなった。このとき、溶かした酸素の質量を求めよ。
求める酸素の質量を\(\rm x(g)\)とする。このときの酸素の物質量は
\( \displaystyle \frac{x}{32}〔mol〕 \)
これを水200mL=0.2Lに溶かしたときのモル濃度が1.0mol/Lとなるから
\( \displaystyle \frac{\frac{x}{32}(mol)}{0.2 L}=1.0 mol/L \)
\( \displaystyle x=6.4〔g〕 \)
答‥6.4 g
4.6 化学反応式を用いる計算問題
ここでは、化学反応式を使った計算問題の解き方を紹介します。
水素12gと酸素160gを密閉容器に封入し、完全に反応を進行させて水を生成した。反応後の容器に含まれる物質とその質量を求めよ。ただし、原子量はH=1.0、O=16.0とする。
まず、この反応の化学反応式を考えます。化学反応式は下のようになります。
\[2H_2+O_2→2H_2O\]
また、密閉容器内に存在する水素と酸素の物質量は
【水素】
\( \displaystyle \frac{12 g}{2 g/mol}=6.0〔mol〕\)
【酸素】
\( \displaystyle \frac{160 g}{32 g/mol}=5.0〔mol〕 \)
となる。
次に化学反応式を使って反応した水素と酸素の量、生成した水の量を求める。
上記にあるように、化学反応式の係数比はモル比と等しい。
問題文に完全に反応が進行したとあるので水素か酸素のどちらかが完全になくなるまで反応が進んだことになる。
水素と酸素は2:1で反応するので酸素がすべて反応するには水素は10mol存在しないといけないので、水素が完全になくなるまで反応したとわかる。
ここで、それぞれの物質の反応前後での物質量の変化を見てみると
となり、反応が終わった後の密閉容器には酸素2molと水6molが残ることがわかる。
それぞれの質量が求まり答えが出る。
【酸素】
\( \displaystyle 2mol\times32g/mol=64〔g〕 \)
【水】
\( \displaystyle 6mol\times18g/mol=108〔g〕 \)
答‥酸素64 g、水108 g
5. まとめ
最後に物質量についてまとめます。
- 物質量とは単位の1つで、モル(mol)を用いて表す。
- 化学反応式において、係数比=モル比となる。
- アボガドロ定数は6.02×1023(/mol)
- 物質1molあたりの質量(g)をモル質量をいい、原子量・分子量・式量に「g/mol」の単位をつけたもの
- モル体積とは、気体物質1mol当たりの体積のことをいい、気体の種類にかからわず、標準状態で22.4L/molとなる。
- 「溶液1[L]に含まれる溶質のmol数」のことをモル濃度といい、単位は(mol/L)で表す。
- 「溶媒1kgに含まれる溶質のmol数」のことを質量モル濃度といい、単位は(mol/kg)で表す。
学校の試験、入試などで物質量を用いる計算問題はたくさん出題されます。
ここでつまずいてしまうとこれ以降の問題が理解できないということになりかねません。
より多くの量の問題を解き、素早く確実に解くことができるように練習しましょう!
わかりやすい解説をありがとうございます