東大塾長の山田です。
このページでは、「剰余の定理」について解説します。
今回は「剰余の定理」の公式と証明に加え、「剰余の定理と因数定理の違い」についても解説しています。
さいごには剰余の定理を利用する練習問題も用意しているので、ぜひ最後まで読んで勉強の参考にしてください!
1. 剰余の定理とは?
それではさっそく剰余の定理について解説していきます。
1.1 剰余の定理(公式)
整式 \( P(x) \) を1次式 \( (x- \alpha) \) で割ったときの余りは \( \color{red}{ P(\alpha) } \)
剰余の定理は、余りを求めるときにとても便利な定理です。
具体例は次の通りです。
【例】
整式 \( P(x) = x^3 – 3x^2 + 7 \) を
- \( x – \color{red}{ 1 } \) で割った余りは \( P(1) = \color{red}{ 1 }^3 – 3 \cdot \color{red}{ 1 }^2 + 7 = 5 \)
- \( x + 2 \) で割った余りは \( P(-2) = (-2)^3 – 3 \cdot (-2)^2 + 7 = -13 \)
このように、剰余の定理を利用することで、実際に多項式の割り算を行わなくても、余りをすぐに求めることができます。
1.2 剰余の定理の証明
なぜ剰余の定理が成り立つのか、証明をしていきます。
剰余の定理の証明はとてもシンプルです。
整式 \( P(x) \) を1次式 \( (x- \alpha) \) で割ったときの商を \( Q(x) \),余りを \( R \) とすると
\( P(x) = (x- \alpha) Q(x) + R \)
と表すことができます(∵ 割り算の基本等式)。
この等式の両辺に \( x= \alpha \) を代入すると
\( \begin{align}
\color{red}{ P(\alpha) } & = (\alpha – \alpha) Q(\alpha) + R \\
\\
& = 0 \times Q(\alpha) + R \\
\\
& \color{red}{ = R }
\end{align} \)
よって、\( \color{red}{ P(\alpha) = R } \) となり、証明ができました。
2. 【補足】割る式の1次の係数が1でない場合
割る式の \( x \) の係数が1でない場合の余りは、次のようになります。
整式 \( P(x) \) を1次式 \( (ax+b) \) で割ったときの余りは \( \displaystyle P \left( – \frac{b}{a} \right) \)
具体例は次の通りです。
【例】
整式 \( P(x) = x^3 – 3x^2 + 7 \) を \( 2x + 1 \) で割った余り \( R \) は
\( \displaystyle R = P \left( – \frac{1}{2} \right) = \frac{49}{8} \)
3. 【補足】剰余の定理と因数定理の違い
「剰余の定理と因数定理の違いがわからない…」と混同されてしまうことがあります。
剰余の定理の余りが0の場合が、因数定理です。
余りが0ということは、
\( P(x) = (x- \alpha) Q(x) + 0 \)
ということなので、両辺に \( x= \alpha \) を代入すると
\( P(\alpha) = 0 \)
が得られます。
また、「\( x- \alpha \) で割ると余りが0」\( \Leftrightarrow \)「\( x- \alpha \) で割り切れる」\( \Leftrightarrow \)「\( x- \alpha \) を因数にもつ」ということです。
したがって、因数定理
整式 \( P(x) \) が \( x- \alpha \) を因数にもつ \( \Leftrightarrow \ P(\alpha) = 0 \)
が成り立ちます。
3. 剰余の定理を利用する問題
それでは、剰余の定理を利用する問題に挑戦してみましょう。
3.1 例題1
整式 \( P(x) = x^3 + ax^2 + bx + 27 \) は \( x+3 \) で割り切れ,\( x-1 \) で割ると3余る。
このとき,定数 \( a, \ b \) の値をそれぞれ求めよ。
【解答】
\( P(x) \) が\( x+3 \) で割り切れるので、剰余の定理より
\( P(-3)=0 \)
すなわち \( 3a-b=0 \ \cdots ① \)
\( P(x) \) が\( x-1 \) で割ると3余るので、剰余の定理より
\( P(1)=3 \)
すなわち \( a+b=-25 \ \cdots ② \)
①,②を連立して解くと
\( \displaystyle \color{red}{ a = – \frac{25}{4}, \ b = – \frac{75}{4} \ \cdots 【答】 } \)
3.2 例題2
整式 \( P(x) \) を \( x-4 \) で割ると余りは10,\( x+1 \) で割ると余りは5となる。
このとき,\( P(x) \) を \( x^2 – 3x – 4 \) で割ったときの余りを求めよ。
- \( x^2 – 3x – 4 = (x-4)(x+1) \) なので、\( P(x) \) を \( (x-4)(x+1) \) で割ったときの余りを考えればよい。
- また、2次式で割ったときの余りは1次式以下になる(これ重要なポイントです)。
よって、余りは \( \color{red}{ ax+b } \) とおける。
この2つの方針で考えていきます。
【解答】
\( P(x) \) を \( x^2 – 3x – 4 \),すなわち\( (x-4)(x+1) \) で割ったときの商を \( Q(x) \),余りを \( ax+b \) とすると
\( \color{red}{ P(x) = (x-4)(x+1) Q(x) + ax + b } \)
条件から、剰余の定理より
\( P(4) = 10 \)
すなわち \( 4a+b=10 \ \cdots ① \)
また、条件から、剰余の定理より
\( P(-1) = 5 \)
すなわち \( -a+b=5 \ \cdots ② \)
①,②を連立して解くと
\( a=1, \ b=6 \)
よって、求める余りは \( \color{red}{ x+6 \ \cdots 【答】 } \)
今回の例題2ように、剰余の定理の問題の基本は「まず割り算の等式をたてる」ことです。
4. 剰余の定理まとめ
さいごに今回の内容をもう一度整理します。
- 整式 \( P(x) \) を1次式 \( (a- \alpha) \) で割ったときの余りは \( \color{red}{ P(\alpha) } \)
- 整式 \( P(x) \) を1次式 \( (ax+b) \) で割ったときの余りは \( \displaystyle P \left( – \frac{b}{a} \right) \)
・剰余の定理を利用することで、実際に多項式の割り算を行わなくても、余りをすぐに求めることができる。
・剰余の定理の余りが0の場合が、因数定理。
以上が剰余の定理についての解説です。
この記事があなたの勉強の手助けになることを願っています!
例題1の解答に「a+b=25」とありますが、正しくは「a+b=−25」ではないでしょうか
何ヶ所か計算の答えが間違っています。
○剰余の定理 例
○例題1の解答の答え
修正よろしくお願いします