東大塾長の山田です。
このページでは、「二項定理」について解説します。
二項定理に対して「式が長いし、 \mathrm{C} が出てくるし、抽象的でよくわからない…」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、二項定理は原理を理解してしまえば、とても単純な式に見えるようになり、簡単に覚えられるようになります。
また、理解がグッと深まることで、二項定理を使いこなせるようになります。
今回は二項定理の公式の意味(原理)から、例題で二項定理を利用する問題まで超わかりやすく解説していきます!
ぜひ最後まで読んで、勉強の参考にしてください!
1. 二項定理とは?
それではさっそく二項定理の公式について解説していきます。
1.1 二項定理の公式
\color{red}{ \begin{align} (a+b)^n = & {}_n \mathrm{C}_0 a^n b^0 + {}_n \mathrm{C}_1 a^{n-1} b^1 \\ & + {}_n \mathrm{C}_2 a^{n-2} b^2 + \cdots \\ & + {}_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r + \cdots \\ & + {}_n \mathrm{C}_n a^0 b^n \end{align} }
\large{ \color{red}{ \Leftrightarrow \ (a+b)^n = \displaystyle \sum_{ r = 0 }^{ n } {}_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r } }
これが二項定理です。
二項定理は (a+b)^5, \ (a+b)^{10} のような、2項の累乗の式「 (a+b)^n 」の展開をするとき(各項の係数を求めるとき)に威力を発揮します。
文字ばかりでイメージしづらいかもしれません。
次は具体的な式で考えながら、二項定理の公式の意味(原理)を解説していきます。
1.2 二項定理の公式の意味(原理)
順を追って解説するために、まずは (a+b)^2 の展開を例にとって考えてみます。
そもそも、多項式の展開は、分配法則で計算しますね。
(a+b)^2 = (a+b) (a+b) となり、
「1つ目の (a+b) の a か b から1つ、そして2つ目の (a+b) の a か b から1つ選び掛け合わせていき、最後に同類項をまとめる」と、計算できますね。

ab の項に注目してみると、 ab の項がでてくるときというのは a を1つ、 b を1つ選んだときです。
つまり!2つある( )のうちから、1つの( )で a (あるいは1つの b )を選ぶということです。
その選び方は、「 \large{ {}_2 \mathrm{C}_1 = 2 } 通り」あります。
よって、 ab の係数は「2」となります。
二項定理の係数 \large{ \mathrm{C} } はこういう意味です。
同じように、 (a+b)^5 の展開で考えてみます。
(a+b)^5 を二項定理で展開すると
\begin{align} (a+b)^5 = & {}_5 \mathrm{C}_0 a^5 b^0 + {}_5 \mathrm{C}_1 a^4 b^1 + {}_5 \mathrm{C}_2 a^3 b^2 \\ & + {}_5 \mathrm{C}_3 a^2 b^3 + {}_5 \mathrm{C}_4 a^1 b^4 + {}_5 \mathrm{C}_5 a^0 b^5 \\ \\ = & \ a^5 + 5a^4 b + 10a^3 b^2 \\ & \ \ \ + 10a^2 b^3 + 5ab^4 + b^5 \end{align}
となります。
この計算の係数 \large{ \mathrm{C} } がどこからくるのか、さっきの例と同じように考えると
- 「 a^5 の項は、5つの( )の中から0つの( )で b を選ぶ」
→係数は \color{red}{ {}_5 \mathrm{C}_0 } - 「 a^4 b の項は、5つの( )の中から1つの( )で b を選ぶ」
→係数は \color{red}{ {}_5 \mathrm{C}_1 } - 「 a^3 b^2 の項は、5つの( )の中から2つの( )で b を選ぶ」
→係数は \color{red}{ {}_5 \mathrm{C}_2 } - 「 a^2 b^3 の項は、5つの( )の中から3つの( )で b を選ぶ」
→係数は \color{red}{ {}_5 \mathrm{C}_3 } - 「 ab^4 の項は、5つの( )の中から4つの( )で b を選ぶ」
→係数は \color{red}{ {}_5 \mathrm{C}_4 } - 「 b^5 の項は、5つの( )の中から5つの( )で b を選ぶ」
→係数は \color{red}{ {}_5 \mathrm{C}_5 }
よって、二項定理の公式による計算が成り立つことがわかりますね!
2. 二項定理の証明
証明は、ここまでの解説を一般化した、 (a+b)^n の場合で考えればよいです。
(a+b)^n = \underbrace{(a+b) (a+b) \cdots \cdots (a+b)}_{n個}
この展開式の a^{n-r}b^r の項は、 n 個の( )のうちから、 a を (n-r) 個、 b を r 個選び、それらを掛け合わせ、そのすべてを足し合わせたものです。
それらの項の数は {}_n \mathrm{C}_{n-r} = {}_n \mathrm{C}_r (個)だから、 a^{n-r}b^r の係数は {}_n \mathrm{C}_r です。
よって、 (a+b)^n の展開式の a^{n-r}b^r の係数は {}_n \mathrm{C}_r だから
\color{red}{ \begin{align} (a+b)^n = & {}_n \mathrm{C}_0 a^n b^0 + {}_n \mathrm{C}_1 a^{n-1} b^1 \\ & + {}_n \mathrm{C}_2 a^{n-2} b^2 + \cdots \\ & + {}_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r + \cdots \\ & + {}_n \mathrm{C}_n a^0 b^n \end{align} }
∴ \color{red}{ (a+b)^n = \displaystyle \sum_{ r = 0 }^{ n } {}_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r }
が成り立ちます。
ちなみに、この (a+b)^n の展開式の「第( r+1 )項: {}_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r 」を、 (a+b)^n の展開式の一般項といいます。
また、「 {}_n \mathrm{C}_r 」を二項係数といいます。
3. 【補足】パスカルの三角形
補足として「パスカルの三角形」についても解説していきます。
次のルールでつくる数字でできた三角形をパスカルの三角形という。
- 頂点は1,各行の左右両端の数は1
- 各行の両端以外の数は、その左上と右上の数の和になる

このパスカルの三角形がなんなのかというと、
「2行目以降の各行の数が、 (a+b)^n の二項係数になっている!」んです。
例えば、先ほど例で挙げた \color{red}{ (a+b)^5 } の二項係数は
「1,5,10,10,5,1」なので、同じになっています。
同様に他の行の数字も、 (a+b)^n の二項係数になっています。

つまり、累乗の数があまり大きくないときは、このパスカルの三角形を書いて二項係数を求めたほうが早く求められます!
ですので、パスカルの三角形は便利なので、場合によっては利用するのも手です。
4. 二項定理を利用する問題(係数を求める問題)
それでは、二項定理を利用する問題をやってみましょう。
(x-3)^7 の展開式における x^4 の係数を求めよ。
【解答】
(x-3)^7 の展開式の一般項は
\color{red}{ \displaystyle {}_7 \mathrm{C}_r x^{7-r} (-3)^r }
x^4 の項は r=3 のときだから
{}_7 \mathrm{C}_3 x^4 (-3)^3 = -945x^4
よって、求める係数は \color{red}{ -945 \ \cdots 【答】 }
5. 二項定理のまとめ
さいごにもう一度、今回のまとめをします。
- 二項定理の公式…
\color{red}{ \begin{align} (a+b)^n = & {}_n \mathrm{C}_0 a^n b^0 + {}_n \mathrm{C}_1 a^{n-1} b^1 \\ & + {}_n \mathrm{C}_2 a^{n-2} b^2 + \cdots \\ & + {}_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r + \cdots \\ & + {}_n \mathrm{C}_n a^0 b^n \end{align} }
\color{red}{ \Leftrightarrow \ \large{ (a+b)^n = \displaystyle \sum_{ r = 0 }^{ n } {}_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r } } - 一般項: {}_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r , 二項係数: {}_n \mathrm{C}_r
- パスカルの三角形… (a+b), \ (a+b)^2, \ (a+b)^3, \cdots の展開式の各項の係数は、パスカルの三角形の各行の数と一致する。
以上が二項定理についての解説です。二項定理の公式の使い方は理解できましたか?
この記事があなたの勉強の手助けになることを願っています!
今回電気主任技術者の免状を受験のため、二項定理・近似値が、理解できず困っています。
読んでもわからなかった
シグマを勉強してから来なさい!!
わかった!中3で理解できるほど簡単だからありがたい
パスカルの三角形は自分は高校で習っていません。しかし今の高校生には当たりまえのことなんでしょう。
とてもわかりやすかったです!
nCn-r=nCrではなく
nCn-r=nCnになるのはなぜせすか?
nCn-r=nCrが正しくnCn-r=nCnはミスだと思いますよ。
具体的に考えると、
7C7-3=7C7-4というのはいいですね?
分からなければ解いてみてください。
同じ値になります。
そして、nCnの時n=7、r=7とすると、
7C7-7=7C7-0=1
これを一般化すると
nCn-r=nCn-0=nCn
n=rの場合は、nCn−r=nCnとなるだけで、
一般化した結果、nCn-r=nCnという説明はおかしいですよ。
正しく一般化というのであれば、
nCn−r=nCr (n≠r)
nCn-r=nCn (n=r)
わかりやすかったです!
例題でx=4の時r=3になる理由がよくわからないです。教えていただきたいです。
x=4ではなく、x^4(xの4乗)です。ここでは、一般項のa^n-r(aのn-r乗)が例題のx^4の部分に相当します。
(a=xとなる)つまりx^n-rがx^4になればrが分かります!
ここでのnは7なので、nに代入すると、x^7-rになります。これがx^4になればよいので指数だけに着目すると
7-r=4の式がたちます。これを解くとr=3となるというわけです。
長くなりましたが結論としては、x=4のときr=3になるのではなく、r=3のときx^4になるということです!
あとは、このrを一般項に代入すればこの問題は解けますよ!
3秒で理解出来たこの記事は最高
そんじにはむずいっよー!
なんとな~く理解することができました。助かりました。ホントにわからなすぎて発狂するとこでしたので…。
ちょうど先生がパスカルの三角形と二項係数との関係性を教えてました
すごく興味深いです
ワイ天才
理解できてうれしんじろう
分かるまで読みこむぜ…
8x^2+2ax-2a^2を4x+3aで割った時の余りが商よりも大きいのは何故ですか?
8x^2+2ax-2a^2を4x+3aで割った時の余りが商よりも大きいのは何故ですか?
よく分かんなかった。。分かるまでやるかぁ
5つの()のなかから0の()みたいなやつの模範解答はナシナシのナシですか?
めっちゃわかりやすい。簡潔にまとめてくれてて助かった