東大塾長の山田です。
このページでは、「恒等式」について解説します。
今回は「恒等式とその性質」という基礎的なことから,「恒等式を利用する問題の解き方(係数比較法&数値代入法)」まで、超わかりやすく解説していきます!
ぜひ最後まで読んで、勉強の参考にしてください!
1. 恒等式とは?
まずは恒等式とは何か確認しましょう。
1.1 恒等式と方程式の違い
まず、等式は「方程式」と「恒等式」の2種類に分けることできます。
方程式はすでに馴染みがあると思いますが、これら2つの定義は次の通りです。
- 方程式\( \cdots \)変数に特定の数を代入したときだけ成り立つ等式。
- 恒等式\( \cdots \)変数にどんな数を代入しても成り立つ等式。
たとえば、「\( 5x-10=0 \)」や「\( x^2=2x+3 \)」、「\( 2x+y=x+2y \)」などは方程式です。
・「\( 5x-10=0 \)」は、\( x=2 \) のときだけ成り立つ。
・「\( x^2=2x+3 \)」は、\( x=-1, \ 3 \) のときだけ成り立つ。
・「\( 2x+y=x+2y \)」は、等式を満たす\( x, \ y \)は無数にあるが、たとえば「\( (x, \ y) = (1, \ 0) \)」のときは成り立たない。
一方、「\( (x+1)^2 = x^2 + 2x + 1 \)」や「\( (x+y)(x-y) = x^2 – y^2 \)」などは恒等式です。
「\( (x+1)^2 = x^2 + 2x + 1 \)」も「\( (x+y)(x-y) = x^2 – y^2 \)」も、\( x \) や \( y \) にどんな数を代入しても成り立つ。
1.2恒等式の性質
次は、恒等式の性質についてみていきましょう。
- \( P(x)=0 \)が \( x \) についての恒等式である
\( \Leftrightarrow \) \( P(x) \)の各項の係数はすべて0である。 - \( P(x), \ Q(x) \)が \( x \) についての恒等式である
\( \Leftrightarrow \) \( P(x), \ Q(x) \)の同じ次数の項の係数がそれぞれ一致する。
もう少し具体的に説明します。
たとえば
【性質①】
\( \color{red}{ ax^2 + bx + c = 0 } \) が\( x \) についての恒等式ならば、[各項の係数]=0なので、
\( \color{red}{ a=0, \ b=0, \ c=0 } \)
【性質②】
\( \color{red}{ ax^2 + bx + c = Ax^2 + Bx + C } \) が\( x \) についての恒等式ならば、
\( \color{red}{ a=A, \ b=B, \ c=C } \)
となります。
1.3恒等式の性質の証明
恒等式の性質がなぜ成り立つか証明をします。
\( a, \ b, \ c, \ A, \ B, \ C \) を実数として、
\( \color{red}{ ax^2 + bx + c = Ax^2 + Bx + C } \ \cdots ① \)
が \( x \) についての恒等式ならば、\( x \) にどのような数を代入しても等号が成り立つことになります。
よって、①に \( x=0, \ 1, \ -1 \) を代入すると
\( \color{red}{ c=C } \ \cdots ② \)
\( a+b+c = A+B+C \ \cdots ③ \)
\( a-b+c = A-B+C \ \cdots ④ \)
②,③,④を連立してとくと
\( \color{red}{ a=A, \ b=B, \ c = C } \)
したがって、①が \( x \) についての恒等式ならば、\( a=A, \ b=B, \ c=C \)が成り立つ。
2. 恒等式の解き方
それでは、恒等式の問題をやってみましょう。
等式
\( \begin{align}
& a(x-1)^3 + b(x-1)^2 + c(x-1) + d \\
& = 2x^3 – 3x^2 + x + 4
\end{align}\)
が \( x \) についての恒等式となるように,定数 \( a, \ b, \ c, \ d \) を求めよ。
恒等式の問題の解き方は「係数比較法」と「数値代入法」の2パターンあります。
それぞれ解説していきます。
2.1 解法①「係数比較法」
「係数比較法」とは、恒等式の性質「同じ次数の項の係数が一致する」を利用して解く方法です。
与式を整理して、両辺の係数を比較して定数を求めます。
【解答】
まずは左辺を展開して整理します。
\( \begin{align}
& [左辺] \\
& = a(x-1)^3 + b(x-1)^2 + c(x-1) + d \\
& = a(x^3 – 3x^2 + 3x – 1) + b(x^2 – 2x + 1) \\
& \ \ \ \ + c(x-1) + d \\
& = \color{red}{ a }x^3 + \color{red}{ (-3a+b) }x^2 \\
& \ \ \ \ + \color{red}{ (3a-2b+c) }x + \color{red}{ (-a+b-c+d) }
\end{align} \)
左辺と右辺の係数は一致するので
\( \begin{cases}
a=2 \ \cdots ① \\
-3a+b = -3 \ \cdots ② \\
3a-2b+c=1 \ \cdots ③ \\
-a+b-c+d=4 \ \cdots ④
\end{cases} \)
①,②,③,④を連立して \( a, \ b, \ c, \ d \) を求めると
\( \color{red}{ a=2, \ b=3, \ c=1, \ d=4 \ \cdots 【答】 } \)
2.2 解法②「数値代入法」
「数値代入法」は、恒等式の性質「\( x \) にどのような数を代入しても等号が成り立つ」ことを利用して解く方法です。
\( x \) に適当な値を代入して、定数を求めます。
ただし、数値代入法で解く場合は注意が必要です。
適当に代入した値以外でも成り立つかは不明なので、恒等式であることを確認する必要があります。
【解答】
この等式が恒等式ならば、\( x=0, \ 1, \ 2, \ 3 \) を代入しても成り立つ。
\( x=0 \) を代入すると
\( -a+b-c+d=4 \ \cdots ① \)
\( x=1 \) を代入すると
\( d=4 \ \cdots ② \)
\( x=2 \) を代入すると
\( a+b+c+d=10 \ \cdots ③ \)
\( x=4 \) を代入すると
\( 8a+4b+2c+d=34 \ \cdots ④ \)
①,②,③,④を連立して \( a, \ b, \ c, \ d \) を求めると
\( a=2, \ b=3, \ c=1, \ d=4 \)
このとき \( a, \ b, \ c, \ d \) を与式の左辺に代入すると
\( \begin{align}
& [左辺] \\
& = 2(x-1)^3 + 3(x-1)^2 + (x-1) + 4 \\
& = 2(x^3 – 3x^2 + 3x – 1) + 3(x^2 – 2x + 1) \\
& \ \ \ \ + (x-1) + 4 \\
& = 2x^3 – 3x^2 + x + 4
\end{align} \)
[左辺]=[右辺] となったので、与式は恒等式である。
よって
\( \color{red}{ a=2, \ b=3, \ c=1, \ d=4 \ \cdots 【答】 } \)
3. 恒等式のまとめ
さいごにもう一度、今回のまとめをします。
- 恒等式\( \cdots \)変数にどんな数を代入しても成り立つ等式。
- 恒等式の性質\( \cdots \)左辺と右辺の同じ次数の項の係数が一致する。
- 恒等式の解き方\( \cdots \)
- 「係数比較法」:与式を整理して、両辺の係数を比較して定数を求める方法。
- 「数値代入法」:\( x \) に適当な値を代入して、定数を求める方法。
(※恒等式であることを確認する必要がある。)
以上が恒等式についての解説です。恒等式の意味や、2通りの解き方について理解できましたか?
この記事があなたの勉強の手助けになることを願っています!
ため(理解の助け)になりました。
わかりやすく、かつ正確な恒等式の説明の記事を書いていただいて、ありがとうございます。
恒等式の次数はどうやって求めればいいんですか