東大塾長の山田です。
このページでは、高校物理の「速度と加速度の公式」について、微分・積分を使いながら詳しく解説しています。
このページを読めば
・位置・速度・加速度の関係を本質から理解できるので
・公式を丸暗記しなくても簡単に覚えられ
・いつでも自分で公式を導ける
ようになります!
「手っ取り早く公式を知りたい!」という方は、「3. 速度・加速度の公式まとめ」からご覧ください。
それではいきましょう!
1. 位置・速度・加速度の関係
まずは、位置・速度・加速度の関係について解説していきます。
1.1 平均の速さとは?
物理では一般的に、位置を\( x \)、速度を\( v \)、加速度を\( a \)で表します。
時刻 \( t_0 \)から\( t_{0}+\Delta{t} \) の間に、物体が位置 \( x_0 \) から \( x_{0}+\Delta{x} \) まで移動したとき、
速さは \( \displaystyle v=\frac{\Delta{x}}{\Delta{t}} \) となります。
これが平均の速さを表しています。
「\( \Delta \)(デルタ)」とは、「微小な」という意味です。
「\( \Delta{t} \)」は、「微小時間」という意味になります。
1.2 瞬間の速さとは?
平均の速さの\( \Delta{t}→0 \)(\( \Delta{t} \)を限りなく0に近づける)とすると,
{\( \Delta{t}→dt,\Delta{x}→dx \)(微小変化)}
\( \displaystyle v=\frac{dx}{dt} \) ということになります。
これが瞬間の速さを表しています。
次で,イメージしやすいように図を使ってもう一度解説をします。
1.3 平均の速さと瞬間の速さの図解
上の図のように、速さ(曲線)が刻々と変わっているとします。
ある時刻\( t_1 \)のときに、\( x_1 \)の位置にいます。
\( \Delta{t} \)秒だけたったとき(\( t_{1}+\Delta{t} \)[秒])に、\( x_{1}+\Delta{x} \) という位置にいるとします。
このとき、\( t_1 \) 秒から \( (t_{1}+\Delta{t}) \) 秒の、何秒間かの平均の速さは
\( \displaystyle 平均の速さ = \frac{(x_1+\Delta{x})-x_1}{(t_1+\Delta{t})-t_1} = \frac{\Delta{x}}{\Delta{t}} \)
ということになります。
これを、下の図のように、\( \Delta{t}→0 \) としていくと、時刻 \( t_1 \) という瞬間の、速さとなります。
式で表すと、
\( \displaystyle \lim_{\Delta{t} \to 0} \frac{\Delta{x}}{\Delta{t}} = \frac{dx}{dt} = v \)
となり、これが瞬間の速さとなります。
距離(\( x \))を時間(\( t \))で微分すると、速さ(\( v \))になる。
\( \displaystyle 速さ:v = \lim_{\Delta{t} \to 0} \frac{\Delta{x}}{\Delta{t}} = \frac{dx}{dt} \)
逆に、速さ(\( v \))を時間(\( t \))で積分すると、距離(\( x \))になります。
\( \displaystyle v = \frac{dx}{dt} \ \Leftrightarrow \ x = \int v \,dt \)
速さ(\( v \))を時間(\( t \))で積分すると、距離(\( x \))になる。
\( \displaystyle 距離(変位):x = \int v \,dt \)
次は加速度について、解説していきます。
1.4 加速度とは?
加速度 \( a \) とは「速度の時間に対する変化の割合」のことです。
つまり、「速さがどれだけ早くなるか」ということです。
よって、\( \displaystyle a = \frac{dv}{dt} \) で計算することができます。
\( x=x(t) \)(←「位置\( x \)が時刻\( t \)のとき、この位置にいます」とわかるということ)
\( \displaystyle v = \frac{dx}{dt} \) より
\( \displaystyle a = \frac{dv}{dt} = \frac{dx}{dt} \cdot \frac{1}{dt} = \frac{d^{2}x}{dt^2} \)
また、逆に、加速度 \( a \) が分かると(\( a \)は定数だとして)、加速度 \( a \) を時間 \( t \) で積分すると、速さ \( v \) になります。
\( \displaystyle v = \int a \,dt = at+v_0 \)
(\( t=0 \) のとき \( v=v_0 \) だとする)
さらに、速さ \( v \) を時間 \( t \) で積分すると、距離 \( x \) になります。
\( \begin{align}
\displaystyle x & = \int v \,dt \\
& = \int (at+v_0) \,dt \\
& = \frac{1}{2}at^{2}+v_{0}t+x_0
\end{align} \)
(\( t=0 \) のとき \( x=x_0 \) だとする)
加速度\( a \)、速さ\( v \)、距離\( x \)、\( t=0 \)のとき\( v=v_0 \)、\( x=x_0 \)とするとき、
\( \displaystyle 加速度:a = \frac{dv}{dt} = \frac{d^{2}x}{dt^2} \)
\( \displaystyle 速さ:v = \int a \,dt = at+v_0 \)
\( \begin{align}
\displaystyle 距離(変位): x & = \int v \,dt = \int (at+v_0) \,dt \\
& = \frac{1}{2}at^{2}+v_{0}t+x_0
\end{align} \)
1.5 加速度の求め方具体例
例えば、上の図のように、1秒後のときの速さが3[m/s]、2秒後のときの速さが6[m/s]のとき、加速度 \( a \) は、
\( \begin{align}
\displaystyle 加速度\ a & = \frac{dv}{dt}\\
\\
& = \frac{6-3 \mathrm{ [m/s] }}{2-1 \mathrm{ [s] }} = \frac{3 \mathrm{ [m/s] }}{1 \mathrm{ [s] }} \\
\\
& = 3 \mathrm{ [m/s^2] }
\end{align} \)
となります。
1.6 距離=「\( v-t \)グラフ」の面積
次に、\( \displaystyle x = \int_{t_0}^{t_1} v \, dt \) の右辺は、下の図の面積を表すことになります。
つまり、
\( \begin{align}
\displaystyle x & = \int_{t_0}^{t_1} v \, dt \\
\\
& = \left[ \left( t=t_0 \right)から\left( t=t_1 \right)までの移動距離 \right]
\end{align} \)
ということになります。
「\( v-t \)グラフ」の面積=移動距離
\( \displaystyle x = \int_{t_0}^{t_1} v \, dt \)
2. 等加速度直線運動の公式まとめ
ここで、よく使う公式をまとめておきます。
時刻 \( t=0 \) で、\( v=0 \)、\( x=0 \)、また加速度は \( a \)(定数)であるとき、
\( \displaystyle 速さ:v = \int a \, dt = at \ \cdots ①\)
\( \displaystyle 距離(変位):x = \int v \, dt = \frac{1}{2}at^2 \ \cdots ② \)
さらに、この運動が、
\( \begin{cases}
\displaystyle t = t_{1}のとき、v=v_{1}、x=x_{1} \\
\displaystyle t = t_{2}のとき、v=v_{2}、x=x_{2}
\end{cases} \)
となるとき、
\( \begin{cases}
v_1=at_1 \\
v_2=at_2
\end{cases} \)
\(
\displaystyle \left\{
\begin{align}
x_1 = \frac{1}{2}a{t_1}^2 \\
x_2 = \frac{1}{2}a{t_2}^2
\end{align}
\right.
\)
より、以下の式が導くことができます。
\( \begin{align}
\displaystyle ∴ \ {v_2}^{2}-{v_1}^{2} & = a^{2}{t_2}^{2}-a^{2}{t_1}^{2} \\
\\
& = 2x_{2}a-2x_{1}a \\
\\
& = 2a(x_{2}-x_{1})
\end{align} \)
\( \displaystyle {v_2}^{2}-{v_1}^{2} = 2a(x_{2}-x_{1}) \ \cdots ③\)
3. 速度・加速度の公式まとめ
最後にもう一度、速度・加速度のポイントと公式をまとめておきます。
- 距離(\( x \))を時間(\( t \))で微分すると、速さ(\( v \))になる。
\( \displaystyle 速さ:v = \lim_{\Delta{t} \to 0} \frac{\Delta{x}}{\Delta{t}} = \frac{dx}{dt} \)
- 速さ(\( v \))を時間(\( t \))で積分すると、距離(\( x \))になる。
\( \displaystyle 距離(変位):x = \int v \,dt \)
加速度 \( a \)、速さ \( v \)、距離 \( x \)、\( t=0 \) のとき \( v=v_0 \)、\( x=x_0 \) とするとき、
\( \displaystyle 加速度:a = \frac{dv}{dt} = \frac{d^{2}x}{dt^2} \)
\( \displaystyle 速さ:v = \int a \,dt = at+v_0 \)
\( \begin{align}
距離(変位): x & = \int v \,dt = \int (at+v_0) \,dt \\
& = \frac{1}{2}at^{2}+v_{0}t+x_0
\end{align} \)
「\( v-t \)グラフ」の面積=移動距離
\( \displaystyle x = \int_{t_0}^{t_1} v \, dt \)
時刻 \( t=0 \) で、\( v=0 \)、\( x=0 \)、また、加速度は \( a \)(定数)であるとき、
\[ 速さ:v = \int a \, dt = at \]
\[ 距離(変位):x = \int v \, dt = \frac{1}{2}at^2 \]
距離と速度の関係式:
\[ \ \ \ \ \ \ \ {v_2}^{2}-{v_1}^{2} = 2a(x_{2}-x_{1}) \]
以上が、速度・加速度の公式の解説です。
相加相乗平均の公式や使い方は理解できましたか?
ただの公式の丸暗記よりも、微分積分を用いることで直感的な理解が深まります。
実際に問題を解いていけば、今回解説した「微積物理」の威力を痛感できるはずです!
一部式の意味がわからないところがある。速度から加速度を求める式で、a=dx/dt・1/dtのところでなぜdx・1がdとxの2乗になりdt・dtがdとtの2乗になる所です。
式でわからないところがある。速度から加速度を求める式で、a=dx/dt・1/dtのところでなぜdx・1がd^2xとなり、dt・dtがdt^2になるのかわかりません。
1/dtには、tで微分をする、という意味があります。
なので、dx/dt・1/dtは、xをtで2回微分する、という意味になります。
よって、2回微分することを表すために、みはらやさんが疑問をもたれたような表記方法が用いられています。(おそらく教科書の2次導関数の説明に詳しく書かれているかと思います。)
微分は、表記こそ分数のようですが、分数とは全くの別物であることに注意が必要です。
「距離(変位)」という表記について意味がわかりません。距離=|変位|なら分かります。
さらに、「速さ(v)を時間(t)で積分すると、距離(x)になる。」これについては本当に意味がわかりません。先ほど申した通り、距離は変位の絶対値です。同じものだと思っているなら、書き換えます。「速さ(v)を時間(t)で積分すると、変位(x)になる。」このように書き換えたとしても意味がわからない。「変位」ではなく、「直交座標」です。直交座標というのは、初期座標と変位の和です。