東大塾長の山田です。
このページでは、数学B数列の「等差数列」について解説します。
今回は等差数列の基本的なことから,一般項,等差数列の和の公式とその証明まで,具体的に問題(入試問題)を解きながら超わかりやすく解説していきます。
また,参考として調和数列についても解説しています。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 等差数列とは?
まずは,等差数列の定義を確認しましょう。
隣り合う2項の差が常に一定の数列のこと。
例えば,数列
1, 4, 7, 10, 13, 16, \( \cdots \)
は,初項1に次々に3を加えて得られる数列です。
1つの項とその隣の項との差は常に3で一定です。
このような数列を 等差数列 といい,この差(3)を 公差 といいます。
したがって,等差数列 \( {a_n} \) の公差が \( d \) のとき,すべての自然数 \( n \) について次の関係が成り立ちます。
\( a_{n+1} = a_n + d \) すなわち \( a_{n+1} – a_n = d \)
2. 等差数列の一般項
2.1 等差数列の一般項の公式
数列 \( {a_n} \) の第 \( n \) 項 \( a_n \) が \( n \) の式で表されるとき,これを数列 \( {a_n} \) の 一般項 といいます。
等差数列の一般項は次のように表されます。
初項 \( a \),公差 \( d \) の等差数列 \( {a_n} \) の一般項は
\( \large{ \color{red}{ a_n = a + (n-1) d } } \)
(第 \( n \) 項)=(初項)+(\( n \)-1)×(公差)
なぜこのような式なるのかを,必ず理解しておきましょう。
次で解説していきます。
2.2 等差数列の一般項の導出
【証明】
初項 \( a \),公差 \( d \) の等差数列 \( {a_n} \) の第 \( n \) 項は次の図のように表される。
第 \( n \) 項は,初項 \( a_1 = a \) に公差 \( d \) を \( (n-1) \) 回加えたものだから,一般項は
\( \large{ \color{red}{ a_n = a + (n-1) d } } \)
となる。
2.3 等差数列の一般項を求める問題(入試問題)
\( a_5 = 3 \),\( a_{10} = -12 \) である等差数列 \( {a_n} \) の公差と一般項を求めよ。
[2010 大阪工業大]
【解答】
この数列の初項を \( a \),公差を \( d \) とすると
\( a_n = a + (n-1) d \)
\( a_5 = 3 \),\( a_{10} = -12 \) であるから
\( \begin{cases}
a + 4d = 3 \\
a + 9d = -12
\end{cases} \)
これを解くと \( a = 15 \),\( d = -3 \)
したがって,公差 \( \color{red}{ -3 \cdots 【答】} \)
一般項は
\( \begin{align}
\color{red}{ a_n } & = 15 + (n-1) \cdot (-3) \\
\\
& \color{red}{ = -3n + 18 \cdots 【答】}
\end{align} \)
2.4 等差数列の性質(等差中項)
数列 \( a, \ b, \ c \) が等差数列ならば
\( b – a = c – b \) ゆえに \( 2b = a+c \)
このとき,\( b \) を \( a \) と \( c \) の 等差中項 といいます。
\( \displaystyle b = \frac{a + c}{2} \) より,\( b \) は \( a \) と \( c \) の相加平均になります。
3. 等差数列の和
次は等差数列の和について解説していきます。
3.1 等差数列の和の公式
初項から第 \( n \) 項までの等差数列の和を \( S_n \) とする。
① 初項 \( a \),末項 \( l \),項数 \( n \) のとき
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ S_n = \frac{1}{2} n (a + l) } } \)
② 初項 \( a \),公差 \( d \),項数 \( n \) のとき
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ S_n = \frac{1}{2} n \left\{ 2a + (n-1) d \right\} } } \)
なぜこのような式なるのかを,必ず理解しておきましょう。
次で解説していきます。
3.2 等差数列の和の公式の証明
まずは具体的に「初項1,公差2,項数10の等差数列の和S」を求めることを考えてみましょう。
次のように,ますSを並べ,その下に和の順序を逆にしたものを並べます。
そして辺々を足します。
すると,「2S=20が10個分」となるので
\( 2S = 20 \times 10 \)
∴ \( \displaystyle \color{red}{ S } = \frac{1}{2} \times(20 \times 10) \color{red}{ = 100 } \)
と求めることができました。
順序を逆にしたものと足し合わせることで,和が同じ数字が項の数だけ出てくるので,数列の和を求めることができます!
この考え方で,一般化して等差数列の和を求めてみましょう。
初項 \( a \),末項 \( l \),項数 \( n \) の等差数列の和を \( S_n \) とすると
右辺は,\( a + l \) を \( n \) 個加えたものなので
\( 2 S_n = n (a+l) \)
∴ \( \displaystyle \color{red}{ S_n = \frac{1}{2} n (a + l) } \cdots ① \)
また,\( l \) は第 \( n \) 項なので
\( l = a + (n-1) d \)
これを①に代入すると
\( \displaystyle \color{red}{ S_n = \frac{1}{2} n \left\{ 2a + (n-1) d \right\} } \)
が得られます。
よって公式②は①を変形したものです。
3.3 等差数列の和を求める問題
それでは,公式を使って等差数列の和を求める問題にチャレンジしてみましょう。
次のような和Sを求めよ。
(1) 初項20,公差3の等差数列の初項から第10項までの和
(2) 等差数列 \( 1, \ 4, \ 7, \ \cdots , \ 100 \) の和
(1)は初項・公差がわかっているので,公式①で一発です。
(2)は初項1,公差3,末項100とわかりますが,項数がわかりません。まずは項数を求めてから,公式で和を求めます。
【解答】
(1) 初項20,公差3,項数10より
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ S } & = \frac{1}{2} \cdot 10 \left\{ 2 \cdot 20 + (10-1) \cdot 3 \right\} \\
\\
& \color{red}{ = 335 \cdots 【答】}
\end{align} \)
(2) 初項1,公差3であるから,末項100が第 \( n \) 項であるとすると
\( 1 + (n-1) \cdot 3 = 100 \)
∴ \( n = 34 \)
よって,初項1,末項100,項数34の等差数列の和を求めると
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ S } & = \frac{1}{2} \cdot 34 (1 + 100) \\
\\
& \color{red}{ = 1717 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
・末項がわかれば \( \displaystyle \color{red}{ S_n = \frac{1}{2} n (a + l) } \)
・公差がわかれば \( \displaystyle \color{red}{ S_n = \frac{1}{2} n \left\{ 2a + (n-1) d \right\} } \)
4. 調和数列【参考】
4.1 調和数列とは?
数列 \( {a_n} \) において,その逆数を項とする数列 \( \displaystyle \left\{ \frac{1}{a_n} \right\} \) が等差数列をなすとき,もとの数列 \( {a_n} \) を 調和数列 といいます。
つまり
\( \displaystyle \color{red}{ \frac{1}{a_{n+1}} – \frac{1}{a_n} = d } \) (一定)
【例】
\( \displaystyle 1, \ \frac{1}{3}, \ \frac{1}{5}, \ \frac{1}{7}, \ \cdots \) は調和数列。
この数列の各項の逆数 \( 1, \ 3, \ 5, \ 7, \ \cdots \) は,初項1,公差2の等差数列であるから。
4.2 調和数列の問題
調和数列に関する問題の解説もしておきます。
調和数列 \( 30, \ 20, \ 15, \cdots \) の一般項 \( a_n \) を求めよ。
【解答】
\( \left\{ a_n \right\} : 30, \ 20, \ 15, \cdots \) が調和数列であるから,
\( \displaystyle \left\{ \frac{1}{a_n} \right\} : \frac{1}{30}, \ \frac{1}{20}, \ \frac{1}{15}, \cdots \) は等差数列となる。
\( \displaystyle \left\{ \frac{1}{a_n} \right\} \) の初項は \( \displaystyle \frac{1}{30} \),公差は \( \displaystyle \frac{1}{20} – \frac{1}{30} = \frac{1}{60} \) であるから,一般項は
\( \displaystyle \frac{1}{a_n} = \frac{1}{30} + (n-1) \cdot \frac{1}{60} = \frac{n+1}{60} \)
したがって,数列 \( {a_n} \) の一般項は
\( \displaystyle \color{red}{ a_n = \frac{60}{n+1} \cdots 【答】 } \)
5. 等差数列まとめ
さいごに今回の内容をもう一度整理します。
【等差数列の一般項】
初項 \( a \),公差 \( d \) の等差数列 \( {a_n} \) の一般項は
\( \large{ \color{red}{ a_n = a + (n-1) d } } \)
(第 \( n \) 項)=(初項)+(\( n \)-1)×(公差)
【等差数列の和の公式】
初項 \( a \),公差 \( d \),末項 \( l \),項数 \( n \) の等差数列の和を \( S_n \) とすると
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ S_n = \frac{1}{2} n (a + l) } } \)
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ S_n = \frac{1}{2} n \left\{ 2a + (n-1) d \right\} } } \)
以上が等差数列の解説です。
和の公式は,公式を丸暗記するというよりは,式の意味を理解することが重要です!
そうすれば公式を忘れることもなくなりますし,自分で簡単に導出することができます。
等差数列をマスターして,数列を得点源にしてください!
ためになりました
ありがとうございます
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ありがとうございます。
ためになりましたー!ありがとんとん
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