ロピタルの定理まとめ(証明・問題・使い方)

東大塾長の山田です。

このページでは、ロピタルの定理について詳しく説明しています。

極限計算における最強の計算ツールとして名高いロピタルの定理ですが、実際はそれが適用できる問題・できない問題が存在しています。そのような問題の見分け方や、定理そのものの証明についても確認しましょう。

ぜひ勉強の参考にしてください!

1.ロピタルの定理について

1.1 ロピタルの定理とは

ロピタルの定理とは以下のことを指します。

ロピタルの定理

\(\displaystyle\lim_{x\to a}\)が不定形かつある条件を満たせば

\(\displaystyle\lim _{x \rightarrow a} \displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}=\displaystyle\lim _{x \rightarrow a} \displaystyle\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}\)

が成立する。

ある条件というのがミソで、これは厳密に定義するのが難しい(面倒)のであえてこのような書き方をしました。後に、計算例とともにどのような場面で使えないのかをしっかりと解説します!

1.2 使用例

入試で出現する不定形の極限においては、ほとんどの場合ロピタルの定理を適応することができます!

まずは三角関数の極限の有名公式について考えましょう。

【例】 \(\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{\sin x}{x}=1\)

これにロピタルの定理を用いると

\(\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{\sin x}{x}=\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{\cos x}{1}=1\)

となり、同じ結果が導出できました。

他の例も見ていきましょう。正攻法とロピタルの定理どちらでも解いていきましょう。

【例】 \(\displaystyle\lim_{x\to 0}\displaystyle\frac{\sin 2x}{x+\sin x}\)

・正攻法

\[\begin{aligned}\displaystyle\lim_{x\to 0}\displaystyle\frac{\sin 2x}{x+\sin x}&=\lim _{x \rightarrow 0} \frac{2 \sin x \cos x}{x+\sin x}\\&=\lim _{x \rightarrow 0} \frac{2 \cdot \frac{\sin x}{x} \cdot \cos x}{1+\frac{\sin x}{x}}\\&=\frac{2 \cdot 1 \cdot 1}{1+1}=1\\\end{aligned}\]

・ロピタルの定理

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\displaystyle\frac{\sin 2x}{x+\sin x}\)は不定形だから、ロピタルの定理より

\(\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{\sin 2 x}{x+\sin x}=\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{2 \cos 2 x}{1+\cos x}=1\)

となり同じ結果になりましたね。

ロピタルの定理は以下のように複数回使う場合もあります。

【例】 \(\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{x-\sin x}{x^{3}}\)

\(\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{x-\sin x}{x^{3}}\)は不定形だから、ロピタルの定理より

\(\begin{aligned}\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{x-\sin x}{x^{3}}&=\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{1-\cos x}{3 x^{2}}\\&=\displaystyle\lim _{x \rightarrow 0} \displaystyle\frac{\sin x}{6 x}\\&=\displaystyle\frac{1}{6}\\\end{aligned}\)

が分かります!

使い方については分かったでしょうか?微分さえできれば極限が分かるというとても便利な公式ですが、実は不定形でもロピタルの定理が使えない場面があります。

1.3 使えない場合

使えないのはどういった場合でしょうか?以下の問題を解いてみましょう。

【問】 \(\displaystyle\lim _{x \rightarrow \infty} \displaystyle\frac{x-\cos x}{x}\)

これは正攻法で解くことができます。

【解答】正攻法

\[\begin{aligned}\displaystyle\lim _{x \rightarrow \infty} \displaystyle\frac{x-\cos x}{x}&=\displaystyle\lim_{x\to\infty}1-\displaystyle\frac{\cos x}{x}\\&=1\quad (∵はさみうちの原理)\\\end{aligned}\]

この極限は不定形なのでロピタルの定理を用いていきましょう。このとき

\(\displaystyle\lim _{x \rightarrow \infty} \displaystyle\frac{x-\cos x}{x}=\displaystyle\lim _{x \rightarrow \infty}(1+\sin x)\)

となり、振動してしまいます。このように\(\lim _{x \rightarrow a} \frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}\)が存在しないものについては、ロピタルの定理が適用できません。

この例のように、「本当は解があるのにロピタルの定理を用いても解が求まらない」場合はあります。しかし、「本当は解があるのにロピタルの定理を用いたらそれとは異なる解が求まる」というパターンは存在しません。

つまり、ロピタルの定理が使えない場合は自分で気づくことができます!

1.4 ロピタルの定理が使える条件(完全版)

不定形の場合でもロピタルの定理が使えない場合があるのは分かったと思います。実は上で扱ったパターン以外にもロピタルの定理が使えない場合は存在します。

それを踏まえて、「ロピタルの定理が使える条件」を紹介します。

ロピタルの定理が使える条件

①関数\(f(x),\quad g(x)\)が\(x=a\)を含む区間\(I\)で連続

②区間\(I\)の\(x≠a\)で微分可能∧\(g'(x)≠0\)である

③不定形である

④\(\lim _{x \rightarrow a} \frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}=A(-\infty ≦ A ≦ \infty)\)が存在する

これらすべての条件を満たす場合においてのみ、ロピタルの定理

\[\lim _{x \rightarrow a} \frac{f(x)}{g(x)}=\lim _{x \rightarrow a} \frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}=A\]

が成立する。

実は用いるのにはこれだけの条件を満たしている必要があるのです。

1.5 高校数学における位置づけ

1.3でも述べたように、ロピタルの定理が使えない場合にはすぐに気づくことができるので、ロピタルの定理を使ったせいで間違えるという事態はないはずです。

しかし、実際にロピタルの定理を用いることができる条件を見てわかったように、実際使うためには制約があります。解答で用いる場合にはそれらの条件を吟味しないと減点になる可能性もあります。

受験で出てくる極限の問題はかならず正攻法で解けるようになっているので、ロピタルの定理はあくまでも「検算ツール」として用いると良いでしょう!

2. ロピタルの定理の証明

次に、ロピタルの定理を証明してみましょう。

証明の手順は以下のようになります。

証明の手順

①ラグランジュの平均値の定理(俗にいう平均値の定理)を証明

②ラグランジュの平均値の定理を用いて、コーシーの平均値の定理を証明

③コーシーの平均値の定理を用いて、ロピタルの定理を証明

2.1 ラグランジュの平均値の定理

平均値の定理

区間\([a,b]\)で連続、\((a,b)\)で微分可能な関数\(f(x)\)について

\[\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f^{\prime}(c)\]

なる\(c\)が、\(a\)と\(b\)の間に存在する。

証明は上の参考記事に載っています。

2.2 コーシーの平均値の定理

次にコーシーの平均値の定理を示しましょう。

コーシーの平均値の定理

関数\(f(t), g(t)\)は閉区間\([a, b]\)で連続であり、開区間\((a,b)\)で微分可能とします。また、\(g(a)≠g(b)\)であり、区間\((a,b)\)中の各点において、\(\displaystyle\frac{dg(t)}{dt}≠0\)を満たする。

このとき、

\[\left.\frac{d f(t) / d t}{d g(t) / d t}\right|_{t=c}=\frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}\]

なる実数\(c\)(\(a<c<b\))が少なくとも一つ存在する。

これを示していきましょう。

【証明】

開区間\([a, b]\)において関数\(h(t)\)を

\(h(t) :=f(t)-\displaystyle\frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}\{g(t)-g(a)\}\)

と定義します。このとき、\(h(t)\)は

\(h(a)=h(b)=f(a)\)

を満たします。ここで、ラグランジュの平均値の定理より

\(\left.\displaystyle\frac{d h(t)}{d t}\right|_{t=c}=\displaystyle\frac{h(b)-h(a)}{b-a}=0\)

なる実数\(c\)(\(a<c<b\))が存在します。したがって

\(\begin{aligned}\left.\frac{d h(t)}{d t}\right|_{t=c}&=\left.\frac{d f(t)}{d t}\right|_{t=c}-\frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)} \cdot\left.\frac{d g}{d t}\right|_{t=c}\\&=0\\\end{aligned}\)

が成立するので、閉区間\([a,b]\)で、

\(\left.\displaystyle\frac{d f(t) / d t}{d g(t) / d t}\right|_{t=c}=\displaystyle\frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}\)

なる\(c\)が常に存在します。これによりコーシーの平均値の定理が示されました。

2.3 ロピタルの定理

さあいよいよロピタルの定理です。コーシーの平均値の定理を用いて証明しましょう。改めて定義の確認です。

ロピタルの定理

関数\(f(x),\quad g(x)\)が\(x=a\)を含む区間\(I\)で連続で、区間\(I\)の\(x≠a\)で微分可能∧\(g'(x)≠0\)で、不定形であるとき

\(\lim _{x \rightarrow a} \frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}=A(-\infty ≦ A ≦ \infty)\)

が存在するならば

\(\displaystyle\lim _{x \rightarrow a} \displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}=\displaystyle\lim _{x \rightarrow a} \displaystyle\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}\)

が成立する。

さあ示していきましょう。

【証明】

関数\(f(t),g(t)\)は\(x=a\)の近傍で微分可能なので、コーシーの平均値の定理を用いると

\(\begin{aligned}\left.\frac{d f(t) / d t}{d g(t) / d t}\right|_{c}&=\frac{f(t)-f(a)}{g(t)-g(a)}\\&=\frac{f(t)}{g(t)}\end{aligned}\)

なる実数\(c\)(\(a<c<b\))ご存在することが分かります。

ここで\(t\to a\)とすると、はさみうちの原理より、\(c\to a\)となるから

\(\begin{aligned}\lim _{t \rightarrow a} \frac{f(t)}{g(t)}&=\lim _{t \rightarrow a} \frac{d f(t) / d t}{d g(t) / d t}\\&=\displaystyle\lim_{t\to a}\displaystyle\frac{f'(t)}{g'(t)}\\\end{aligned}\)

となり、ロピタルの定理が証明されました。

かなり面倒くさい証明ですが、高校範囲で証明できることは頭に入れておくと良いと思います。

3. まとめ

お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!

ロピタルの定理まとめ

ロピタルの定理

関数\(f(x),\quad g(x)\)が\(x=a\)を含む区間\(I\)で連続で、区間\(I\)の\(x≠a\)で微分可能∧\(g'(x)≠0\)で、不定形であるとき

\(\lim _{x \rightarrow a} \frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}=A(-\infty ≦ A ≦ \infty)\)

が存在するならば

\(\displaystyle\lim _{x \rightarrow a} \displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}=\displaystyle\lim _{x \rightarrow a} \displaystyle\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}\)

が成立する。

位置づけ

ロピタルの定理を用いて出した極限と正攻法で出した極限が一致しないことはないので、ロピタルの定理を使ったせいで間違えるということはないが、高校数学の範囲ではあくまでも「検算ツール」として用いるのが無難です。

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