熱力学第一法則と熱力学の枠組み

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東大塾長の山田です。

このページでは、熱力学第一法則について詳しく説明しています。

熱力学の根幹をなすといっても過言ではない、熱力学第一法則形は簡単ですが、実際に用いる際にどこから求めればよいのか、符号ミスが怖いといった懸念がつきものです。この記事を読めば、それらがすべて解決します!

ぜひ勉強の参考にしてください!

1. 熱力学第一法則について

1.1 熱力学第一法則とは

熱力学第一法則の第一法則は、熱力学におけるエネルギー保存則であり、「エネルギーがひとりでに増えたり消えたりしない」という経験的事実を定式化したものです。

この法則は、エネルギー変化が、熱と仕事の和で与えられるということを意味しており、以下のように定式化することができます。

熱力学第一法則

\[\Delta U=-W+Q\]

\(\Delta U:内部エネルギーの変化\)
\(W:気体がする仕事\)
\(Q:吸熱量\)

この法則は、以下のように言葉で理解するのが一番間違いないです。

「熱を吸収した分から、外部に仕事をした分を差し引くと、内部エネルギーの上昇度になる。」

気体の内部エネルギーは温度\(T\)に比例するため、熱を吸収すればするほど内部エネルギーが大きくなり、仕事を外部にしたらその分エネルギーは小さくなるよなー、といったことを何となくイメージしてもらえたら、上の式や符号の意味も分かるのではないでしょうか?

自分なりに、覚えやすいイメージを持っておくと良いと思います。あくまでも、気体の内部エネルギーに焦点を当てた式であることに注意する必要があります。

他にも法則があるの?

熱力学「第一」法則と聞いて、他にも法則があるのか?と思った人もいるでしょうう。もちろんあります。高校物理ではあるかうことはないですが、概要だけ紹介しておきます。

・熱力学第零法則
⇒物体AとB、BとCがそれぞれ熱平衡ならば、AとCも熱平衡にある。

・熱力学第二法則
⇒一つの熱源から正の熱を受け取り、これをすべて仕事に変える以外に、他に何の変化も起こさないようなサイクルは存在しない。
⇔一つの熱源から正の熱を受け取って働き続ける熱機関は実現不可能である。

・熱力学第三法則
⇒有限回の操作では、絶対零度に到達することはできない。

大学の熱力学ではこれらの法則を扱うので、頭の片隅にでも入れておくと良いでしょう!

1.2 例題

簡単な計算問題を何問か解いてみて、使い方を確認しましょう。

例題

【問】気体が\(100\)[J]の熱を吸収し、外部へ\(300\)[J]の仕事をしたとする。内部エネルギーの変化はいくらか。また、このとき温度は上がったか、下がったか。

 

【解答】

熱力学第一法則\(\Delta U=-W+Q\)に各値を代入すると、

\[\Delta U=-300+100=-200\cdots(答)\]

また、内部エネルギー変化\(\Delta U\)は\(\Delta T\)に比例するから、温度は下がった。

注:\(W\)が外部への仕事であることに注意しましょう。

例題

【問】気体が\(100\)[J]の仕事をされたとき、内部エネルギーは\(200\)[J]上昇した。このとき、熱を吸収したか、放出したか。またその大きさはいくらか。

【解答】

熱力学第一法則\(\Delta U=-W+Q\)に各値を代入すると、

\[200=100+Q, \quad ∴Q=100[\rm{J}]\]

となり、\(100\)[J]の熱を吸収したことが分かる。

まずはこれらの問題を確実に解けるようにしましょう!

2. 熱力学第一法則の用い方

ここでは、熱力学第一法則が熱力学の問題を解くにあたって、どのような立ち位置にいるのか、どのように用いればよいのか、をまとめたいと思います。

これは高校物理における熱力学の根幹をなす部分なので、必ず理解しましょう。

2.1 熱力学の枠組み

熱力学の問題を解くにあたって、意識すべき枠組みは以下の通りです。

この図の意味をしっかりと理解することができれば、熱力学の問題を解くにあたって、とても見通しが良くなります。

図だけではわかりづらい部分もあると思うので、下で詳しい解説を行います!

2.2 枠組みの詳しい説明

熱力学の問題の基本は、理想気体の状態方程式と熱力学第一法則です。

状態方程式

内部エネルギー変化\(\Delta U\)を求めるためには、温度\(T\)が分かる必要があるので、状態方程式では温度を求めることを第一目標にしていきます。

容器の体積\(V\)、気体の物質量\(n\)はたいていの場合問題文の条件からわかり、気体定数\(R\)は文字定数として与えられているので、新たに求める必要はありません。

圧力\(P\)は、たいていの場合つり合いの式から求まります。

上図のような状況だと、つり合いの式より、

\[PS-mg=0 \quad ∴P=\displaystyle\frac{mg}{S}\]

と分かります。圧力は静止状態におけるつり合いから求めることが多いことを頭に入れておきましょう。

これで気体の状態方程式における温度\(T\)以外の量が求まったので、\(T\)を求めることができます。

熱力学第一法則

次に熱力学第一法則です。

まず内部エネルギー変化\(\Delta U\)は、\(U=\displaystyle\frac{3}{2}nRT\)より温度が分かれば、\(U\)も\(\Delta U\)もわかります。
熱力学第一法則を用いる際は、まず内部エネルギー変化を求めるのが大鉄則です。

次に求めるべきは、仕事\(W\)です。仕事を考えるときの鉄則は、P-V図です。P-V図を考えれば、必ず仕事を求めることができます。

上の図でいえば、台形の面積を求めるというのが基本になります。

そして、\(\Delta U\)と\(W\)が分かったので、熱力学第一法則より\(Q\)が分かります。
そもそも\(Q\)とは、\(\Delta U\)の原因が\(W\)だけだとすると数え落とすことになるその他のエネルギー流入のことであり、直接計算で求めることはできません。このことも頭に入れておきましょう。

こうして一連の流れを確認したところで、もう一度熱力学の枠組みを確認してみましょう。

かなり見通しが良くなったのではないでしょうか?これを意識して一問解いてみましょう。

2.3 熱力学の確認問題(これが解ければ熱力学はばっちり!)

先ほど学んだ枠組みをフル活用する問題です。ぜひチャレンジしてみてください!

【問】上図のような状態を考える。\(n\)molの気体をゆっくりと加熱したとき、ピストンが右方向に\(h\)だけ移動した。この変化における以下の量を求めよ。

①気体が外部にした仕事\(W\)
②気体の内部エネルギー変化\(\Delta U\)
③気体が吸収した熱量\(Q\)

ヒント

まずは自分で図を書いてみて、どのように力が働くのかを理解しましょう。

次に、最初と最後の条件を考えるのではなく、運動の途中に着目すると状況が把握しやすいです。

また、最初から状態方程式を考えるのではなく、自分でしっかりと条件を立ててから用いることを意識!

しっかりと考えることができたでしょうか?それでは解答です!

解答

下図のように、ピストンが\(x\)だけ移動した状況を考えてみます。ただし\(0≦x≦h\)。

このときの気体の体積

\[V=S\left(l+x \right)\]

ピストンのつり合いより、

\[0=PS-P_0 S-kx\] \[∴P=P_0+\displaystyle\frac{k}{S}x\]

これよりこの運動におけるのP-Vグラフを書くことができます。(\(P\)が\(x\)を変数として表せることが重要)

すると、

\[W=\int_{0}^{h} P S d x\] \[\quad =\int_{S l}^{S\left(l+h\right)} P d V\] \[\quad =\frac{1}{2}\left\{P_{0}+\left(P_{0}+\frac{kh}{S}\right)\right\} S h\] \[\quad =P_0 Sh+\displaystyle\frac{1}{2}kh^2\cdots(答)\]

状態方程式より、

\[\left\{\begin{array}{l}{P_{0} S l=n RT_0} \\ {\left(P_{0}+\frac{k h}{S}\right) s(l+h)=n R T_{1}}\end{array}\right.\]

注:この段階まで状態方程式を用いなかったことに着目。状態方程式を用いるのは、このくらいまで条件が出そろってからでも大丈夫です。

このとき、

\[\Delta U=\frac{3}{2} n R T_{1}-\frac{3}{2} n R T_{0}\] \[\qquad =\frac{3}{2}\left(P_0 S h+k l h+k h^{2}\right)\cdots(答)\]

熱力学第一法則より、

\[\Delta U=-W+Q\] \[∴Q=\frac{5}{2} P_{0} S h+\frac{3}{2} k lh+2 k h^{2}\cdots(答)\]

この問題は、完璧に解けるまで何回も解き直しましょう!

3. 熱力学第一法則からわかること(モル比熱)

熱力学第一法則を用いて、定圧変化・定積変化におけるモル比熱を求めることができます。モル比熱とは以下のような量です。

モル比熱とは

モル比熱とは、1molの気体の温度を1K上げるために必要な熱量のことで、

\[(モル比熱)=\displaystyle\frac{(吸熱量)}{(モル数)\times(温度変化)}\]

で計算することができます。

今から定積変化のモル比熱\(C_V\)と・定圧変化のモル比熱\(C_P\)をもとめていきましょう。

\(n\)[mol]の気体が以下のA、B、Cの三状態を取りうるとします。ただし\(A\)のける温度を\(T\)[K]、\(B,C\)における温度を\(T+\Delta T\)とします。

このとき、状態方程式より、

\[
\begin{cases}
P_0 V_0=nRT\\
P_B V_0=nRT\\
P_0 V_C=nR\left(T+\Delta T \right)
\end{cases}
\]

内部エネルギー変化は、温度変化のみに依存するので、A⇒B、A⇒Cの各過程で等しく、

\[\Delta U_{AB}=\Delta U_{AC}=\displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\]

となります。ここで気体が外部にした仕事は、P-V図の面積より、

\[
\begin{cases}
W_{AB}=0\\
W_{AC}=P_0 \left(V_C-V_0\right)=nR\Delta T
\end{cases}
\]

ここで、熱力学第一法則より

\[\Delta U=-W+Q\quad ∴Q=\Delta U+W\]

とできるので、各過程における吸熱量は

\[
\begin{cases}
Q_{AB}=\displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\\
Q_{BC}=\left(\displaystyle\frac{3}{2}R+R\right)R\Delta T=\displaystyle\frac{5}{2}nR\Delta T
\end{cases}
\]

となります。よって各過程におけるモル比熱は以下のようになります。

A⇒B(定積変化)におけるモル比熱\(C_V\)は、

\[C_V=\displaystyle\frac{Q_{AB}}{n\Delta T}=\displaystyle\frac{3}{2}R\]

A⇒C(定圧変化)におけるモル比熱\(C_P\)は、

\[C_P=\displaystyle\frac{Q_{AC}}{n\Delta T}=\displaystyle\frac{5}{2}R\]

これより以下の関係が成り立つことが分かります!

モル比熱

定積モル比熱:\(C_V=\displaystyle\frac{3}{2}R\)
定圧モル比熱:\(C_P=\displaystyle\frac{5}{2}R\)

マイヤーの法則:\(C_P-C_V=R\)

比熱比:\(γ=\displaystyle\frac{C_P}{C_V}=\displaystyle\frac{5}{3}\)

ただしこれらは、すべて単原子理想気体における値。

4. まとめ

お疲れ様でした。熱力学第一法則を理解するだけで、多くのことが説明できることが分かったと思います。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!

まとめ

熱力学第一法則:\(\Delta U=-W+Q\)

\(\Delta U:内部エネルギーの変化\)
\(W:気体がする仕事\)
\(Q:吸熱量\)

熱力学の枠組み

定積モル比熱:\(C_V=\displaystyle\frac{3}{2}R\)
定圧モル比熱:\(C_P=\displaystyle\frac{5}{2}R\)

マイヤーの法則:\(C_P-C_V=R\)

比熱比:\(γ=\displaystyle\frac{C_P}{C_V}=\displaystyle\frac{5}{3}\)

ただしこれらは、すべて単原子理想気体における値。

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