東大塾長の山田です。
このページでは、パップス・ギュルダンの定理について詳しく説明しています。
パップス・ギュルダンの定理の詳しい説明や、注意点・証明についてじっくりと説明した後に、例題を解くことで確実な理解を図っています。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. パップス・ギュルダンの定理について
1.1 パップス・ギュルダンの定理とは
パップス・ギュルダンの定理とは、回転体の体積を求める際に使うことができる、面白い定理です。
入試で直接活用できる機会は少ないですが、覚えておくと面白いかもしれません!
以下、公式を用いる際の注意点を考えていきます。
2. さらに詳しく
パップス・ギュルダンの定理を考えるにおいて、どのような点に気を使うべきでしょうか?一緒に考えていきましょう。
2.1 注意点と考え方
まず注意点です。パップス・ギュルダンの定理を用いることができる条件として「回転して自身と重ならない」というの必須条件です。つまり、下図のような図形の回転体に対して、この定理を用いることはできません。
また、パップス・ギュルダンの定理は、バウムクーヘン積分同様教科書では証明されていない定理のため、証明なしに記述答案で用いるのは少々リスキーです。また、これだけを用いて解答が出せるような問題はあまり出題されないので、豆知識・検算ツールとして頭に入れておくのが良いでしょう。
2.2 重心の求め方
公式においては、重心\(G\)と回転軸との距離\(d\)を用いましたが、一般に重心はどのように求めることができるでしょうか?
重心とは、感覚的には「図形\(A\)を一本の棒で支えた際にバランスがとれる点」のことを指します。物理では以下のように重心を定義しましたね、
【参考】物理における重心
\(x_G=\displaystyle\frac{m_1x_1+m_2x_2+\cdots +m_n x_n}{m_1+m_2+\cdots +m_n}\)
数学的には、重心の\(x\)座標は積分を用いた形で表現されます!
\(\begin{aligned}x_G&=\displaystyle\frac{\int_a^b x f(x) dx}{\int_a^b f(x) dx}\\&=\frac{\int_a^b x f(x) dx}{S}\end{aligned}\)
どうしてこのように表現できるのか、物理における重心の表し方を参考にして求めていきましょう!
【導出】
上図の図形の重心\(x_G\)を求めていきます。物理における重心公式では、質量\(m\)と座標が用いられていました。座標は分かっているので、質量を求めることを目標にしていきます。
図形の面密度を\(\rho\)とすると、\(x~x+dx\)における微小面積は、上図のオレンジ色の射線部の面積を長方形で近似することで
\(\rho f(x) dx\)
と書くことができます。つまり、重心の\(x\)座標\(x_G\)は、物理の重心公式を参考にすると
\(\begin{aligned}x_G&=\displaystyle\frac{\int_a^b x\rho f(x) dx}{\int_a^b \rho f(x) dx}\\&=\displaystyle\frac{\int_a^b x f(x) dx}{\int_a^b f(x) dx}\\&=\frac{\int_a^b x f(x) dx}{S}\end{aligned}\)
となります。
の導出方法は頭に入れておくと良いでしょう!
3. 証明
上で用いた重心公式を用いて、パップス・ギュルダンの定理を証明していきましょう。
今回は、バームクーヘン積分の帰結部分を用いていきます。
\(y=f(x)\)が連続関数で、\(x\)軸、\(y=f(x)\)、\(x=a, b\)で囲まれた部分(下図射線部)を\(y\)軸周りに一回転させた時の体積\(V\)は
\(V=\displaystyle\int_a^b 2\pi x f(x) dx\)
ただし、\(f(x)≧0\)と\(0≦a≦b\)が前提条件です。
それでは証明です。
【証明】
バウムクーヘン積分の帰結部分より
\(V=2\pi \displaystyle\int_a^b x f(x) dx\)
となります。ここで重心の定義式より
\(d S=\displaystyle\int_a^b xf (x) dx\)
だから
\(V=S\times 2\pi d\)
となることが分かりました。
バウムクーヘン積分とパップス・ギュルダンの定理の興味深い関係についてはこちらも参考にしてください。
4. 問題例(正攻法との比較も)
ここまで、定理の意味や導出について扱ってきました。最後に実際に計算を行ってみましょう。高校数学の範囲で求めた際の解答についても考えていきます。
【問】 \(x^2 +(y-a)^2 =r^2\)を\(x\)軸を回転軸として回転させた時にできる立体の体積を求めよ。ただし、\(a>r\)とする。
それでは解いていきましょう。まずは正攻法について考え、次に検算ツールとしてパップス・ギュルダンの定理を用いていきます。
【正攻法】
塩の方程式について解くと
\(y=a±\sqrt{r^2-x^2}\)
となります。ここで\(y_± =a±\sqrt{r^2-x^2}\)とおきます。(複合同順)
このとき、求める回転体の体積は
\(\begin{aligned}V&=\pi\displaystyle\int_{-r}^r \left({y_+}^2-{y_-}^2\right) dx\\&=\pi\int_{-r}^r\{\left(a+\sqrt{r^2-x^2}\right)^2-\left(a-\sqrt{r^2-x^2}\right)^2\} dx\\&=\pi\int_{-r}^r 4a\sqrt{r^2-x^2} dx\\&=4\pi a\cdot\left(\frac{1}{2}\pi r^2\right)\\&=2\pi^2ar^2\end{aligned}\)
となりました。パップス・ギュルダンの定理を用いましょう。
【検算】
パップス・ギュルダンの定理を用います。円の面積が\(S=\pi r^2\)となり、重心の移動距離が\(2\pi a\)だから、求める体積は
\(V=[重心の移動距離]\times S=2\pi^2 ar^2\)
となりもちろん解答と一致しました。
このようにパップス・ギュルダンの定理を用いると瞬殺できる問題もあることを頭に入れておくと良いと思います。
下図のように、面積が\(S\)である平面図形\(A\)を、直線\(l\)の周りに回転させてできる回転体の体積\(V\)は、
\(V=S\times2\pi d=[重心の移動距離]\times S\)
となります。ただし、\(d\)は\(A\)の重心と回転軸との距離です。