東大塾長の山田です。
このページでは、「位置ベクトル」について解説します。
今回は「位置ベクトルとは何か?」という基本的なことから,「内分点・外分点・三角形の重心の位置ベクトルの公式」について,問題を解きながら具体的に超わかりやすく解説しています。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 位置ベクトルとは?
平面上で1点 \( O \) を固定して考えると,任意の点 \( P \) の位置は,ベクトル \( \vec{ p } = \overrightarrow{ OP } \) となります。
このとき
「\( \vec{ p } \) は点 \( O \) に関する点 \( P \) の位置ベクトル」
といい,\( \color{red}{ P ( \vec{ p } ) } \) と表します。
位置ベクトルにおける点 \( O \) は,平面上のどこに定めてもOKです。
これ以降の解説は,特に断りがない限り,点 \( O \) に関する位置ベクトルとします。
また,2点 \( A ( \vec{ a } ) \),\( B ( \vec{ b } ) \) に関して,ベクトル \( \overrightarrow{ AB } \) は
「\( \large{ \color{red}{ \overrightarrow{ AB } = \vec{ b } – \vec{ a } } } \)」
と表します。
ベクトルは「向きと大きさ」をもつ量で,位置については考えません。
そこで,位置ベクトルを定義することで,特定の性質をもった点の位置を表すことができます。
(特定の性質をもった点とは、次から解説する「内分点・外分点・重心などの五心」などのことです。)
2. 内分点の位置ベクトル
位置ベクトルの定義がわかったところで,次は内分点の位置ベクトルについて解説していきます。
2.1 内分点の位置ベクトルの公式と証明
【証明】
\( A(\vec{ a }) \),\( B(\vec{ b }) \),\( P(\vec{ p }) \) とする。
線分ABを \( m : n \) に内分する点をPとすると
\( \displaystyle \overrightarrow{ AP } = \frac{m}{m+n} \overrightarrow{ AB } \)
よって
\( \displaystyle \vec{ p } – \vec{ a } = \frac{m}{m+n} ( \vec{ b } – \vec{ a } ) \)
ゆえに
\( \displaystyle \vec{ p } = \left( 1 – \frac{m}{m+n} \right) \vec{ a } + \frac{m}{m+n} \vec{ b } \)
よって
\( \displaystyle \color{red}{ \vec{ p } = \frac{ n \vec{ a } + m \vec{ b } }{ m + n } } \)
数学Ⅱで学習する内分点の公式と同じですね!
「(たすき掛けのように)斜めにかける」ということを覚えておきましょう。
2.2 内分点の位置ベクトルの問題
内分点の位置ベクトルの公式を使って,問題を解いてみましょう。
2点 \( A(\vec{ a }) \),\( B( \vec{ b } ) \) を結ぶ線分ABについて,次のような点Pの位置ベクトル \( P( \vec{ p } ) \) を \( A(\vec{ a }) \),\( B(\vec{ b }) \) を用いて表せ。
(1) 2:1に内分する点P
(2) 3:5に内分する点P
公式に当てはめるだけです!
【解答】
(1) 線分ABを2:1に内分する点P
\( \begin{align}
\displaystyle \vec{ p } & = \frac{ \vec{ a } + 2 \vec{ b } }{2+1} \\
\\
& = \color{red}{ \frac{1}{3} \vec{ a } + \frac{2}{3} \vec{ b } \cdots 【答】 }
\end{align} \)
(2) 線分ABを3:5に内分する点P
\( \begin{align}
\displaystyle \vec{ p } & = \frac{ 5 \vec{ a } + 3 \vec{ b } }{3+5} \\
\\
& = \color{red}{ \frac{5}{8} \vec{ a } + \frac{3}{8} \vec{ b } \cdots 【答】 }
\end{align} \)
3. 外分点の位置ベクトル
次は外分点の位置ベクトルについて解説していきます。
3.1 外分点の位置ベクトルの公式と証明
2点 \( A(\vec{ a }) \),\( B( \vec{ b } ) \) を結ぶ線分ABを \( m : n \) に外分する点Qの位置ベクトルを \( \vec{ q } \) とすると
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ \vec{ q } = \frac{ -n \vec{ a } + m \vec{ b } }{ m – n } } } \)
【証明】
\( A(\vec{ a }) \),\( B(\vec{ b }) \),\( Q(\vec{ q }) \) とする。
\( m>n \) のとき,線分ABを \( m : n \) に外分する点をQとすると
\( \displaystyle \overrightarrow{ AQ } = \frac{m}{m-n} \overrightarrow{ AB } \)
よって
\( \displaystyle \vec{ q } – \vec{ a } = \frac{m}{m-n} ( \vec{ b } – \vec{ a } ) \)
ゆえに
\( \displaystyle \vec{ p } = \left( 1 – \frac{m}{m-n} \right) \vec{ a } + \frac{m}{m-n} \vec{ b } \)
よって
\( \displaystyle \color{red}{ \vec{ q } = \frac{ -n \vec{ a } + m \vec{ b } }{ m – n } } \)
\( m<n \) のとき,線分ABを \( m : n \) に外分する点をQとすると
\( \displaystyle \overrightarrow{ AQ } = \frac{m}{n-m} \overrightarrow{ BA } = \frac{m}{m-n} \overrightarrow{ AB } \)
ゆえに,\( m>n \) のときと同様に示される。
したがって
\( \displaystyle \color{red}{ \vec{ q } = \frac{ -n \vec{ a } + m \vec{ b } }{ m – n } } \)
これも,数学Ⅱで学習する外分点の公式と同じです。
外分も「\( m : -n \) に内分する点」と考えると,内分点の位置ベクトルの公式と同じものとみなすことができます!
3.2 外分点の位置ベクトルの問題
外分点の位置ベクトルの公式を使って,問題を解いてみましょう。
2点 \( A(\vec{ a }), \ B( \vec{ b } ) \) を結ぶ線分ABについて,次のような点Qの位置ベクトル \( Q( \vec{ q } ) \) を \( A(\vec{ a }) \),\( B(\vec{ b }) \) を用いて表せ。
(1) 1:3に外分する点Q
(2) 5:2に外分する点Q
これも公式に当てはめて求めましょう!
【解答】
(1) 線分ABを1:3に外分する点Q
\( \begin{align}
\displaystyle \vec{ q } & = \frac{ -3 \vec{ a } + 1 \vec{ b } }{1-3} \\
\\
& = \color{red}{ \frac{3}{2} \vec{ a } – \frac{1}{2} \vec{ b } \cdots 【答】 }
\end{align} \)
(2) 線分ABを5:2に外分する点Q
\( \begin{align}
\displaystyle \vec{ q } & = \frac{ -2 \vec{ a } + 5 \vec{ b } }{5-2} \\
\\
& = \color{red}{ – \frac{2}{3} \vec{ a } + \frac{5}{3} \vec{ b } \cdots 【答】 }
\end{align} \)
4. 三角形の重心の位置ベクトル
もうひとつ,三角形の重心の位置ベクトルについて解説していきます。
4.1 三角形の重心の位置ベクトルの公式と証明
3点 \( A(\vec{ a }) \),\( B( \vec{ b } ) \),\( C( \vec{ c } ) \) を頂点とする△ABCの重心Gの位置ベクトル \( \vec{ g } \) は
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ \vec{ g } = \frac{ \vec{ a } + \vec{ b } + \vec{ c } }{ 3 } } } \)
【証明】
\( A(\vec{ a }) \),\( B(\vec{ b }) \), \( C(\vec{ c }) \),\( G(\vec{ g }) \) とする。
MはBCの中点だから
\( \displaystyle \overrightarrow{ OM } = \frac{ \overrightarrow{ OB } + \overrightarrow{ OC } }{2} \)
∴ \( \color{blue}{ 2 \overrightarrow{ OM } = \overrightarrow{ OB } + \overrightarrow{ OC } } \cdots ① \)
重心Gは,中線AMを2:1に内分する点だから
\( \displaystyle \overrightarrow{ OG } = \frac{ \overrightarrow{ OA } + \color{blue}{ 2 \overrightarrow{ OM } } }{2+1} \)
①を代入すると
\( \displaystyle \displaystyle \overrightarrow{ OG } = \frac{ \overrightarrow{ OA } + \color{blue}{ \overrightarrow{ OB } + \overrightarrow{ OC } } }{3} \)
ゆえに
\( \displaystyle \color{red}{ \vec{ g } = \frac{ \vec{ a } + \vec{ b } + \vec{ c } }{ 3 } } \)
重心とは,三角形の3辺の中線の交点のことで,重心は3つの中線それぞれを2:1に内分します。
重心の知識が曖昧な人は,「三角形の重心について知っておきたい知識まとめ」の記事で詳しく解説しているので,参考にしてください。
4.2 三角形の重心の位置ベクトルの問題
重心の位置ベクトルに関する,「点の一致の証明問題」をやってみましょう。
△ABCの辺BC,CA,ABをそれぞれ1:2に内分する点をP,Q,Rとする。また,△ABCの重心をG,△PQRの重心をHとする。
このとき,GとHは一致することを示せ。
「2点G,Hが一致 \( \Longleftrightarrow \) 2点G,Hの位置ベクトルが一致」となります。
それぞれの位置ベクトルを表し,一致することを示していきます。
【解答】
A,B,C,Gの位置ベクトルを,それぞれ \( \vec{ a } \),\( \vec{ b } \),\( \vec{ c } \),\( \vec{ g } \) とし,P,Q,R,Hの位置ベクトルを,それぞれ \( \vec{ p } \),\( \vec{ q } \),\( \vec{ r } \),\( \vec{ h } \) とすると
\( \displaystyle \color{red}{ \vec{ g } = \frac{ \vec{ a } + \vec{ b } + \vec{ c } }{ 3 } } \cdots ① \)
また
\( \displaystyle \color{blue}{ \vec{ p } = \frac{ 2\vec{ b } + \vec{ c } }{ 3 } } \),\( \displaystyle \color{blue}{ \vec{ q } = \frac{ 2\vec{ c } + \vec{ a } }{ 3 } } \),\( \displaystyle \color{blue}{ \vec{ r } = \frac{ 2\vec{ a } + \vec{ b } }{ 3 } } \)
ゆえに
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \vec{ h } } & = \frac{ \color{blue}{ \vec{ p } } + \color{blue}{ \vec{ q } } + \color{blue}{ \vec{ r } } }{3} \\
\\
& = \frac{1}{3} \left( \color{blue}{ \frac{ 2\vec{ b } + \vec{ c } }{ 3 } } + \color{blue}{ \frac{ 2\vec{ c } + \vec{ a } }{ 3 } } + \color{blue}{ \frac{ 2\vec{ a } + \vec{ b } }{ 3 } } \right) \\
\\
& = \frac{1}{3} \cdot \frac{ 3 ( \vec{ a } + \vec{ b } + \vec{ c } ) }{3} \\
\\
& \color{red}{ = \frac{ \vec{ a } + \vec{ b } + \vec{ c } }{ 3 } } \cdots ②
\end{align} \)
①,②から \( \color{red}{ \vec{ g } = \vec{ h } } \)
よって,点Gと点Hは一致するから,△ABCと△PQRの重心は一致する。
5. 位置ベクトルまとめ
さいごに今回の内容をもう一度整理します。
【内分点・外分点の位置ベクトル】
2点 \( A(\vec{ a }) \),\( B( \vec{ b } ) \) を結ぶ線分ABを \( m : n \) に内分する点P,外分する点Qの位置ベクトルをそれぞれ \( \vec{ p } \),\( \vec{ q } \) とすると
\( \displaystyle \color{red}{ \vec{ p } = \frac{ n \vec{ a } + m \vec{ b } }{ m + n } } \) , \( \displaystyle \color{red}{ \vec{ q } = \frac{ -n \vec{ a } + m \vec{ b } }{ m – n } } \)
【三角形の重心の位置ベクトル】
3点 \( A(\vec{ a }) \),\( B( \vec{ b } ) \),\( C( \vec{ c } ) \) を頂点とする△ABCの重心Gの位置ベクトルを \( \vec{ g } \) とすると
\( \displaystyle \color{red}{ \vec{ g } = \frac{ \vec{ a } + \vec{ b } + \vec{ c } }{ 3 } } \)
以上が位置ベクトルの解説です。位置ベクトルの使い方や問題の解き方は理解できましたか?
今回解説した「内分点・外分点・三角形の重心の位置ベクトル」は,空間内でもまったく同様に表されます。
どんどん練習問題に取り組んで,位置ベクトルをマスターしてください!
2点 \( A(\vec{ a }), \ B( \vec{ b } ) \) を結ぶ線分ABを \( m : n \) に内分する点Pの位置ベクトルを \( \vec{ p } \) とすると
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ \vec{ p } = \frac{ n \vec{ a } + m \vec{ b } }{ m + n } } } \)