東大塾長の山田です。
このページでは、「命題」とその基本事項、逆・裏・対偶について、順を追ってわかりやすく解説していきます。
命題の分野は、大学受験では頻出問題です。
実際、センター試験ではほぼ毎年命題が大問1つ分出題されています。
このページを最後まで読んで、命題の用語や考え方をしっかりと理解して、命題をマスターしましょう!
1. 命題とは?
命題とは、正しいか正しくないかが明確に決まる文や式のことです。
以下の4つの例で、具体的に解説します。
- A君は日本人である。
- 10000は大きい数字である。
- 3は1より大きい。
- 1は3より大きい。
まず、「① A君は日本人である」は命題です。
これは国籍をチェックすれば、“Yes”か“No”かはっきりわかります。
ですので、「①A君は日本人である」は命題となります。
次の、「② 10000は大きい数字である」は命題ではありません。
なぜなら、何に対して“大きい”のか、わからないからです。
「10000」は、“1”に対しては大きいですが、“100万”に対しては小さいです。
ですので、「② 10000は大きい数字である」という文は、正しいか正しくないか判断できないので、命題ではありません。
次の、「③ 3は1より大きい」は命題です。
これは常に正しいといえるので、命題となります。
では、「④ 1は3より大きい」はどうでしょうか?
これも命題となります。
「1は3より大きい」というのは、間違っています。
正しくないと明確に決まるので、「④ 1は3より大きい」は命題となります。
- 命題…正しいか正しくないかが、明確に決まる文や式のこと。その文や式が正しくとも、正しくなくとも、明確に決まれば、その文や式は命題となる。
2. 命題の真偽とは?
命題が正しいとき、その命題は真(しん)であるといいます。
命題が正しくないとき、その命題は偽(ぎ)であるといいます。
先ほどの例では、
- 「3は1より大きい」…真
- 「1は3より大きい」…偽
となります。
- 命題が正しいとき…真である
- 命題が正しくないとき…偽である
という。
3. 命題の仮定と結論
命題「\( p \) ならば \( q \)」を「\( p \Rightarrow q \)」とも書きます。
このとき、\( p \) を仮定、\( q \) を結論といいます。
例えば、
\( \displaystyle \large{ x=3 \Rightarrow x^2=9 } \)
という命題では、「\( x=3 \)」が仮定、「\( x^2=9 \)」が結論となります。
4. 条件と集合の関係
条件 \( p \) を満たすものの全体の集合を \( P \)、条件 \( q \) を満たすものの全体の集合を \( Q \) とします。
命題「\( p \Rightarrow q \)」が真であるとき、条件 \( p \) を満たすものは、必ず条件 \( q \) を満たすことになります。
つまり、\( P \) は \( Q \) に含まれている(\( P \subset Q \))となります。
また、命題「\( p \Rightarrow q \)」が偽であるとき、\( P \subset Q \) が成り立たないということになります。
つまり、\( P \) の中に、条件 \( q \) を満たさない要素(\( Q \) の外にある要素)があるということになります。
図の色付けた部分(\( P \cap \overline{Q} \))の、仮定 \( p \) を満たすが、結論 \( q \) を満たさないものを、この命題の反例といいます。
具体的に例を挙げて解説します。
\( \displaystyle x=3 \Rightarrow x^2=9 \)
\( x=3 \) のとき、\( x^2=9 \) となるので、この命題は真です。
ここで、仮定「\( x=3 \)」を満たす集合を \( P \) とすると、\( P \) は \( x=3 \) となります。
一方、結論「\( x^2=9 \)」を満たす集合を \( Q \) とすると、\( Q \) は \( x=-3,3 \) となります。
よって、下のようにベン図で表すと、集合 \( P \) が集合 \( Q \) に含まれることがわかります。
\( n \) は素数である \( \Rightarrow \) \( n \) は奇数である
仮定「\( n \) は素数である」を満たす集合を \( P \) とすると、\( P \) は \( n=2,3,5,7,11, \cdots \) となります。
一方、結論「\( n \) は奇数である」を満たす集合を \( Q \) とすると、\( Q \) は \( n=1,3,5,7,9, \cdots \) となります。
よって、集合 \( P \) と集合 \( Q \) の関係は下のベン図のようになります。
反例は「\( n=2 \)」となります。
5. 条件の否定とは?
次は「否定」について解説していきます。
5.1 否定の意味と表し方
条件 \( p \) に対して、「\( p \) でない」条件を「\( p \) の否定」といい、\( \overline{p} \) で表します。
例えば、「\( x \) は奇数である」の否定は、「\( x \) は奇数でない」、すなわち「\( x \) は偶数である」となります。
- 「\( x \) は奇数である」の否定は、「\( x \) は奇数でない」、すなわち「\( x \) は偶数である」
- 「\( x = 1\)」の否定は、「\( x = 1 \) でない」、すなわち「\( x \neq 1 \)」
- 「\( x ≧ 2\)」の否定は、「\( x ≧ 2 \) でない」、すなわち「\( x \lt 2 \)」
5.2 「かつ」と「または」の否定
「かつ」と「または」の否定についての解説です。
「\( p \) かつ \( q \)」の否定、つまり「 \( \overline{ pかつq } \) 」は「\( \overline{p} \) または \( \overline{q} \)」と同値になります。
「\( p \) または \( q \)」の否定、つまり「 \( \overline{ pまたはq } \) 」は「\( \overline{p} \) かつ \( \overline{q} \)」と同値になります。
これはド・モルガンの法則と同じ考え方です。
「否定すると、「かつ」と「または」が入れ替わる」と覚えておきましょう。
例えば、「\( x \gt 0 \) かつ \( y ≦ 0 \)」の否定は、「\( x ≦ 0 \) または \( y \gt 0 \)」となります。
- 「\( x \gt 0 \) かつ \( y ≦ 0 \)」の否定は、「\( x ≦ 0 \) または \( y \gt 0 \)」
- 「\( x ≧ 5 \) または \( x \lt -2 \)」の否定は、「\( x \lt 5 \) かつ \( x ≧ -2 \)」、すなわち「\( -2 ≦ x \lt 5 \)」
- 「\( x=y=o \)」の否定は、「\( x=0 \) かつ \( y=0 \)」の否定なので、「\( x \neq 0 \) または \( y \neq 0 \)」
\( \displaystyle \large{ \overline{ pかつq } \ \ \iff \ \overline{p} または \overline{q} } \)
\( \displaystyle \large{ \overline{ pまたはq } \ \ \iff \overline{p} かつ\overline{q} } \)
否定すると、「かつ」と「または」が入れ替わる。
5.3 「すべて」と「ある」の否定
「すべて」と「ある」の否定についての解説です。
「すべての \( x \) について \( p \) である」の否定は、「ある \( x \) について \( \overline{ p } \) である」となります。
また、「ある \( x \) について \( p \) である」の否定は、「すべての \( x \) について \( \overline{ p } \) である」となります。
つまり、「『すべて』と『ある』の否定」では、\( p \) と \( \overline{ p } \)・「すべて」と「ある」が入れ替わります。
例えば、
「すべての実数 \( x \) について \( x^2 ≧ 0 \)」の否定は、
「ある実数 \( x \) について \( x^2 \lt 0 \)」となります。
- 「すべての実数 \( x \) について \( x^2 ≧ 0 \)」の否定は、「ある実数 \( x \) について \( x^2 \lt 0 \)」
- 「少なくとも1つの自然数 \( x \) について \( x^2+2x-3=0 \)」の否定は、「すべての自然数 \( x \) について \( x^2+2x-3 \neq 0 \)」
補足を加えておくと、「すべて」と「ある」の否定では、もとの命題とその否定では、必ず真偽が入れ替わります。
つまり、もとの命題が真であるなら、その否定は偽になり、もとの命題が偽であるなら、その否定は真になります。
- \( \overline{すべてのxについてp} \) \( \longrightarrow \) ある\( x \)について\( \overline{ p } \)
- \( \overline{あるxについてp} \) \( \longrightarrow \) すべての\( x \)について\( \overline{ p } \)
「\( p \)」と「\( \overline{ p } \)」、「すべて」と「ある」が入れ替わる。
6. 命題の逆・裏・対偶をわかりやすく解説
次は、命題の「逆」「裏」「対偶」について解説します。
6.1 逆・裏・対偶とは?
命題「\( p \Rightarrow q \)」に対して、
- 「\( q \Rightarrow p \)」を逆
- 「\( \overline{p} \Rightarrow \overline{q} \)」を裏
- 「\( \overline{q} \Rightarrow \overline{p} \)」を対偶
といいます。
具体的に例を挙げてみます。
命題「\( x=2 \) ならば \( x^2=4 \)」の逆・裏・対偶は
- 逆:「\( x^2=4 \) ならば \( x=2 \)」
- 裏:「\( x \neq 2 \) ならば \( x^2 \neq 4 \)」
- 対偶:「\( x^2 \neq 4 \) ならば \( x \neq 2 \)」
となります。
6.2 逆・裏・対偶の真偽
逆・裏・対偶で重要なポイントとして、「命題の真偽とその対偶の真偽は一致する」ということです。
つまり
- 「『\( p \Rightarrow q \)』が真なら、対偶である『\( \overline{q} \Rightarrow \overline{p} \)』も真」
- 「『\( p \Rightarrow q \)』が偽なら、対偶である『\( \overline{q} \Rightarrow \overline{p} \)』も偽」
となります。
しかし、命題の真偽とその逆、裏の真偽は必ずしも一致しませんので注意して下さい。
これらのことは、ベン図でも確認することができます。
条件 \( p \) を満たすものの全体の集合を \( P \)、条件 \( q \) を満たすものの全体の集合を \( Q \) とすると
\( \begin{align}
\displaystyle p \Rightarrow q が真 & \Leftrightarrow P \subset Q \\
\\
& \Leftrightarrow \overline{Q} \subset \overline{P} \\
\\
& \Leftrightarrow \overline{q} \subset \overline{p}
\end{align} \)
しかし、\( P \subset Q \) であっても、必ずしも \( Q \subset P \) とは限りません。
したがって、命題の真偽とその逆、裏の真偽は必ずしも一致しません。
また、命題の逆と裏は、対偶の関係になっています。
したがって、ある命題の逆と裏の真偽は一致します。
以上のことを、先ほどの例で確認をしてみましょう。
- 命題:「\( x=2 \) ならば \( x^2=4 \)」…真
- 逆:「\( x^2=4 \) ならば \( x=2 \)」…偽
- 裏:「\( x \neq 2 \) ならば \( x^2 \neq 4 \)」…偽
- 対偶:「\( x^2 \neq 4 \) ならば \( x \neq 2 \)」…真
命題:「\( x=2 \) ならば \( x^2=4 \)」は、\( x=2 \) を \( x^2 \) に代入すると \( x^2=4 \) となるので、真となります。
逆:「\( x^2=4 \) ならば \( x=2 \)」は、\( x^2=4 \Leftrightarrow x=\pm 2\) となるので、偽となります。(反例:\( x=-2 \))
裏:「\( x \neq 2 \) ならば \( x^2 \neq 4 \)」は、\( x=-2 \) のとき \( x^2=4 \) となるので、偽となります。(反例:\( x=-2 \))
対偶:「\( x^2 \neq 4 \) ならば \( x \neq 2 \)」は、明らかに真です。
したがって
- もとの命題と対偶の真偽が一致
- 逆と裏の真偽が一致
することが確認できました。
7. 命題の重要事項まとめ
さいごに、今回解説したことをすべてまとめておきます。
- 命題…正しいか正しくないかが、明確に決まる文や式のこと。その文や式が正しくとも、正しくなくとも、明確に決まれば、その文や式は命題となる。
- 命題の真偽…命題が正しいとき、その命題は真(しん)であるといい、正しくないとき偽(ぎ)であるという。
- 仮定と結論…命題「\( p \) ならば \( q \)」を「\( p \Rightarrow q \)」とも書き、\( p \) を仮定、\( q \) を結論という。
- 反例…\( P \cap \overline{Q} \) の、仮定 \( p \) を満たすが、結論 \( q \) を満たさないもののこと。
- 否定…条件 \( p \) に対して、「\( p \) でない」条件を「\( p \) の否定」といい、\( \overline{p} \) で表す。
- 「かつ」と「または」の否定…
- \( \displaystyle \overline{ pかつq } \ \ \iff \overline{p} \ \ または \ \ \overline{q} \)
- \( \displaystyle \overline{ pまたはq } \ \ \iff \overline{p} \ \ かつ \ \ \overline{q} \)
否定すると、「かつ」と「または」が入れ替わる。
- 「すべて」と「ある」の否定…
- \( \overline{すべてのxについてp} \) \( \longrightarrow \) ある \( x \) について \( \overline{ p } \)
- \( \overline{あるxについてp} \) \( \longrightarrow \) すべての \( x \) について \( \overline{ p } \)
「\( p \)」と「\( \overline{ p } \)」、「すべて」と「ある」が入れ替わる。
- 命題「\( p \Rightarrow q \)」に対して
- 逆…「\( q \Rightarrow p \)」
- 裏…「\( \overline{p} \Rightarrow \overline{q} \)」
- 対偶…「\( \overline{q} \Rightarrow \overline{p} \)」
- 命題の真偽とその対偶の真偽は一致する。
- 命題の真偽とその逆、裏の真偽は必ずしも一致しない。
以上が命題の基本事項と、逆・裏・対偶の解説です。
冒頭でも述べた通り、命題は大学受験で頻出問題です。
命題の意味と考え方をしっかりと理解して、命題をマスターしてくださいね!