東大塾長の山田です。
このページでは、「電場と電位」について詳しく解説しています。
物理の中でも何となくの理解に終始しがちな電場・電位の概念について、詳しい説明や豊富な例・問題を通して、しっかりと理解することができます。
ぜひ勉強の参考にしてください!
0. 電場と電位
まずざっくりと、電場と電位について説明します。ある程度の前提知識がある人はこれでもわかると思います。
後に詳しく説明しますが、結局は以下のようにまとめることができることは頭に入れておきましょう。
これが電場と電位の基本になります。
1. 電場について
それでは一つ一つかみ砕いていきましょう。
1.1 電場とは
先ほど、電場とは「静電場において単位電荷を想定したときに受ける力のこと」で、単位は[N/C]です。
つまり、電場 \( \vec{E} \) 中で電荷 \( q \) に働く力は、
\( \displaystyle \vec{F}=q\vec{E} \)
と書き下すことができます。これは必ず頭に入れておきましょう!
1.2 重力場と静電場の対応関係
静電場についてイメージがつきづらいかもしれません。
そこで、高校物理においても日常生活においても馴染み深い(?)であろう重力場との関係について考えてみましょう。
図にまとめてみました。
重力 | (静)電気力 | |
荷量 | 質量 \(m\quad[\rm{kg}]\) | 電荷 \(q \quad[\rm{C}]\) |
場 | 重力加速度 \(\vec{g} \quad[\rm{m/s^2}]\) | 静電場 \(\vec{E} \quad[\rm{N/C}]\) |
力 | 重力 \(m\vec{g} \quad[\rm{N}]\) | 静電気力 \(q\vec{E} \quad[\rm{N}]\) |
このように、電場と重力場を関連させて考えることで、丸暗記に陥らない理解へと繋げることができます。
1.3 点電荷の作る電場
次に点電荷の作る電場について考えてみましょう。
簡単に導出することができますが、そのためにはクーロンの法則について理解する必要があります(クーロンの法則についてはこちら)。
点電荷 \( Q \) が距離 \( r \) 離れた点に作る電場の強さを考えていきましょう。
ここで、注目物体は点電荷 \( q \) とします。点電荷 \( Q \) の作る電場を求めたいので、点電荷\(q\)(試験電荷)に依らない量を考えることができるのが理想です。
このとき、試験電荷にかかる力 \( \vec{F} \) は
\( \displaystyle \vec{F}=q\vec{E} \)
と表すことができ、クーロン則より、
\( \displaystyle \vec{F}=k\displaystyle\frac{Qq}{r^2} \)
と表すことができるので、結局 \( \vec{E} \) は
\( \displaystyle \vec{E} = k \frac{Q}{r^2} \)
となります!これは向き付きの量なので、いくつか点電荷があるときは1つ1つが作る電場を合成することになります。
これについては以下の例題を解くことで身につけていきましょう。
1.4 例題
それでは例題です。ここまでの内容が理解できたかのチェックに最適なので、頑張って解いてみてください!
\( xy \)平面上の点 \( \left( -a, \ 0 \right ) \) に電荷 \( -Q \) が、点 \( \left( a, \ 0 \right) \) に電荷 \( +Q \) が置かれている。
【問】以下の点における電場を求めよ(ただし、\( x \)方向、\( y \)方向に分けて答えよ)。
(1) \( \left( 0, \ y \right) \)
(2) \( \left( a, \ a \right) \)
分かりやすい図を描くことで、しっかりと状況が把握できるようにしましょう。
考えてみましたか?それでは解答です。
(1) まず、二つの点電荷がどのような電場を形成するのかを確かめてみましょう。
上が電場を図示したものです。
\( E_- \)は負電荷の作る電場で、\(E_+\)は正電荷の作る電場を表しています。
そして \( E \) はその重ね合わせとなります(ここでは \( E_x \))。
このとき、\( y \)方向については互いに打ち消しあうので
\( \displaystyle E_y=0 \ \color{red}{ \cdots 【答】 } \)
\( x \)方向について、
\( \begin{align}
\displaystyle E_x & = -\frac{k Q}{a^{2}+y^{2}} \cos \theta \times 2 \\
\\
& = – \frac{k Q}{a^{2}+y^{2}} \cdot \frac{a}{\sqrt{a^{2}+y^{2}}} \times 2 \\
\\
& = – \frac{2 k Q a}{\left(a^{2}+y^{2}\right)^{\frac{3}{2}}} \ \color{red}{ \cdots 【答】 }
\end{align} \)
となります。
(2) 同様に考えていきましょう。
以下では、負の点電荷との距離が \( \sqrt{5} a \) であることに注意していきましょう。
図より、
\( \begin{align}
\displaystyle E_{x} & = – \frac{k Q}{5 a^{2}} \cos \alpha \\
\\
& = – \frac{k Q}{5 a^{2}} \frac{2 a}{\sqrt{5 a}} \\
\\
& =-\frac{2 kQ}{5 \sqrt{5} a^{2}} \ \color{red}{ \cdots 【答】 }
\end{align} \)
\( \begin{align}
E_{y} & = E_{+}-E_{-} \sin \alpha \\
\\
& = \frac{k Q}{a^{2}} – \frac{k Q}{5 a^{2}} \cdot \frac{a}{\sqrt{5} a} \\
\\
& = \left( 1-\frac{1}{5 \sqrt{5}} \right) \frac{k Q}{a^{2}} \ \color{red}{ \cdots 【答】 }
\end{align} \)
となることが分かります。
しっかりと正解することはできたでしょうか?
しっかりと図示することで全体像が見えてくることもあるので、手を抜かないでしっかりと図示する癖を付けておきましょう!
1.5 電気力線(該当記事へのリンクあり)
電場を扱うにあたって「電気力線」はとても重要です。電場の最後に電気力線について解説を行います。
電気力線には以下の性質があります。
① 正電荷からわきだし、負電荷に吸収される。
② 接線の向き⇒電場の向き
③ 垂直な面を単位面積あたりに貫く本数⇒電場の強さ
④ 電荷 \( Q \) から、\( \displaystyle \frac{\left| Q \right|}{ε_0} \) 本出入りする。
*\( ε_0 \)とクーロン則における比例定数kとの間には、\( \displaystyle k = \frac{1}{4\pi ε_0} \) が成立する。
この中で、④の「電荷 \( Q \) から、\( \displaystyle \frac{\left| Q \right|}{ε_0} \) 本出る。」がガウスの法則の意味の表れとなっています!
\( \displaystyle [閉曲面を貫く電気力線の全本数] = \frac{[内部の全電荷]}{ε_0} \)
これを詳しく解説した記事があるので、そちらもぜひご覧ください(記事へのリンクはこちら)。
2. 電位について
電場について理解できたところで、電位について解説します。
2.1 電位とは
電位とは、先ほど説明したように「静電場において単位電荷を想定したときに生じる位置エネルギーのこと」で、単位は[V=J/C]です。
つまり、電位 \( \phi \) で電荷 \( q \) が持つ位置エネルギーは
\( \displaystyle U = q \phi \)
と書き下すことができます。これも必ず頭に入れておきましょう。
この定義を、仕事とエネルギーの観点からかみ砕いていきましょう(位置エネルギーについてはこちら)。
位置 \( r \) で電荷 \( q \) が持つ位置エネルギーは、
電場から受ける力 \( q \vec{E} \) に逆らって、\( \vec{F_外} = – q \vec{E} \) を加えて、基準点 \( \vec{r_0} \) から点 \( \vec{r} \) まで、その点電荷をゆっくり運ぶ仕事
\( \displaystyle U(\vec{r}) = \int_{\vec{r_{0}}}^{\vec{r}} \vec{F} \cdot d \vec{r} = – q \int_{\vec{r_{0}}}^{\vec{r}} \vec{E} \cdot d \vec{r} \)
で、定義されます。
ここで先ほど電位を「単位電荷を想定したときに生じる位置エネルギーのこと」と定義したことを思い出しましょう。
これを踏まえると、以下の関係が成り立つことが分かります。
\( \displaystyle \phi(\vec{r})=\frac{U(\vec{r})}{q}=- \int_{\vec{r_{0}}}^{\vec{r}} \vec{E} \cdot d \vec{r} \)
クーロン力は保存力なので、この積分は \( \vec{r} \) の経路に依らない(静電気力の仕事は経路に依らない)ので、電位は以下のようにも定義することができます。
ある点の電位とは、基準点からその点まで電荷をゆっくりと運ぶために、外力が単位電荷あたりにしなければいけない仕事のこと。
結局言いたいことは、位置エネルギーと仕事の関係であることに他なりませんが、改めて確認するためにこのような説明を行いました。
どちらの定義もしっかりと頭に入れましょう。
2.2 電位とエネルギー保存則
上の定義より、質量 \( m \)、電荷 \( q \) の粒子に対する電場中でのエネルギー保存則は以下のように書き下すことができます。
\( \displaystyle \frac{1}{2}mv^2+qV=\rm{const.} \)
この運動が重力加速度 \( g \) の重力場で行われているときは、位置エネルギーとして \( mg \) を加えるなどして、柔軟に対応できるようにしましょう。
2.3 平行一様電場と電位差
次に電位差ついて詳しく説明します。
ここでは平行一様電場 \( E \)(仮想的に平行となっている電場)中の荷電粒子 \( q \) について考えるとします。
入試で電位差を扱う場合は、平行一様電場が仮定されていることが多いです。
このとき、電荷 \( q \) にはクーロン力 \( qE \) がかかり、エネルギーと仕事の関係より、
\( \begin{align}
\displaystyle \frac{1}{2} m v^{2} – \frac{1}{2} m v_{0}^{2} & = \int_{x_{0}}^{x}(-q E) d x \\
\\
& = – q \left( x-x_{0} \right)
\end{align} \)
\( \displaystyle ⇔ \frac{1}{2}mv^2 + qEx = \frac{1}{2}m{v_0}^2+qEx_0 \)
上の項のうち、\( qEx \) と \( qEx_0 \) がそれぞれ位置エネルギー、すなわち電位であることが分かります。
よって電位は、
\( \displaystyle \phi (x)=Ex+\rm{const.} \)
と書き下すことができます。
ここで、「電位差」を「二点間の電位の差のこと」と定義すると、上の式より平行一様電場においては以下の関係が成り立つことが分かります。
このことから、電位 \( E \) の単位として、[N/C]の他に、[V/m]があることもわかります!
2.4 点電荷の電位
次に点電荷の電位について考えていきましょう。点電荷の電位は以下のように表記されます。
\( \displaystyle \phi = k \frac{Q}{r} \)
ただし無限遠を基準とする。
電場と形が似ていますが、これも暗記必須です!
ここからは電位の導出を行います。
以下の電位 \( \phi \) の定義を思い出しましょう。
\( \displaystyle \phi(\vec{r})=- \int_{\vec{r_{0}}}^{\vec{r}} \vec{E} \cdot d \vec{r} \)
ここでは、座標の向き・電場が同一直線上にあるとします。つまりベクトル量で考えなくても良いということです(ベクトルのままやっても成り立ちますが、高校ではそれを扱うことはないため省略)。
このとき、点電荷 \( Q \) のつくる電位は、
\( \displaystyle \phi(r) = – \int_{r_{0}}^{r} k \frac{Q}{r^2} d r = k Q \left( \frac{1}{r} – \frac{1}{r_0}\right) \)
で、無限遠を基準とすると(\( r_0 ⇒ ∞ \))、
\( \displaystyle \phi(r) = k \frac{Q}{r} \)
となることが分かります!
2.4 等電位線(等電位面)
先ほど、電場は高電位から低電位に向かっていると説明しました。
以下では、同じ電位を線で結んだ「等電位線」について考えていきます。
上図を考えてみると、
電荷を等電位線に沿って運んでも、位置エネルギーは不変。
⇓
電荷を運ぶのに仕事は不要。
⇓
等電位線に沿って力が働かない。
⇓
(等電位線)⊥(電場)
ということが分かります!特に最後の(等電位線)⊥(電場)は頭に入れておくと良いでしょう!
2.5 例題
電位の知識が身についたかどうか、問題を解くことで確認してみましょう!
【問】\( xy \)平面上、\( (a, \ 0)\) に電荷 \( Q \)、\( (-a, \ 0) \) に電荷 \( -Q \) の点電荷があるとする。以下の点における電位を求めよ。ただし無限を基準とする。
(1) \( (0, \ 0) \)
(2) \( (0, \ y) \)
電場のセクションにおいても、同じような問題を扱いましたが、電場と電位の違いは向きを考慮するか否かという点です。これに注意して解いていきましょう!
それでは解答です!
(1) 向きを考慮する必要がないので、計算のみでいきましょう。
\( \displaystyle \phi = \frac{kQ}{a} + \frac{k(-Q)}{a} = 0 \ \color{red}{ \cdots 【答】 } \)
(2)
\( \displaystyle \phi = \frac{kQ}{\sqrt{a^2+y^2}} \frac{k(-Q)}{\sqrt{a^2+y^2}} = 0 \ \color{red}{ \cdots 【答】 } \)
3. 確認問題
固定された \( + Q \) の点電荷から距離 \( 2a \) 離れた点で、\( +q \) を帯びた質量 \( m \) の小球を離した。\( +Q \) から \( 3a \) 離れた点を通るときの速さ \( v \)、および十分に時間がたった時の速さ \( V \) を求めよ。
今までの知識を総動員する問題です。丁寧に答えを導き出しましょう!
それでは解答です。
この荷電粒子のエネルギー保存則は,以下のように書くことができます。
\( \displaystyle \frac{1}{2} mv^2 + q \frac{kQ}{r} = 0 + q \frac{kQ}{2a}\cdots☆ \)
\( v \) には求めたい速度、\( r \) には点電荷からの距離を入れれば、値を求めることができます。
① \( v \) を求める
☆に \( v = v \)、\( r = 3a \) を代入すると、
\( \displaystyle \frac{1}{2} mv^2 + q \frac{kQ}{3a} = 0 + q \frac{kQ}{2a} )
これを解いて、
\( \displaystyle v = \sqrt{\frac{kQq}{3ma}} \ \color{red}{ \cdots 【答】 } \)
② \( V \) を求める
十分に時間がたった時、小球は無限遠に達したと考えることができる。*1
位置エネルギーの基準は無限遠ゆえ、無限遠に達したときの位置エネルギーは0。ゆえに☆は
\( \displaystyle \frac{1}{2} mV^2 + 0 = 0 + q \frac{kQ}{2a} \)
これを解いて、
\( \displaystyle V = \sqrt{\frac{kQq}{ma}} \ \color{red}{ \cdots 【答】 } \)
*1:正電荷同士は常に反発しあうため、小球は、最初の位置から正電荷\(Q\)から離れる方向に運動し続ける。
4. まとめ
お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!
単位電荷を想定して、
\( \left\{\begin{array}{l} \displaystyle 受ける力⇒電場{\vec{E}} \\ \displaystyle 生じる位置エネルギー⇒電位{\phi}\end{array} \right. \)
【電場について】
電場 \( \vec{E} \) 中で電荷 \( q \) に働く力:\( \vec{F}=q\vec{E} \)
点電荷の電場:\( \vec{E}=k\displaystyle\frac{Q}{r^2} \)
【電位について】
電位\( \phi \) で電荷 \( q \) が持つ位置エネルギー:\( U = q \phi \)
⇓
ある点の電位とは、基準点からその点まで電荷をゆっくりと運ぶために、外力が単位電荷あたりにしなければいけない仕事のこと。
エネルギー保存則:\( \displaystyle \frac{1}{2}mv^2+qV=\rm{const.} \)
電位差:\( V = Ed \)
点電荷の電位:\( \displaystyle \phi = k \frac{Q}{r} \)(無限遠基準)
等電位線の性質:(等電位線)⊥(電場)
単位電荷を想定して、
\( \left\{\begin{array}{l}\displaystyle 受ける力⇒電場{\vec{E}} \\ \displaystyle 生じる位置エネルギー⇒電位{\phi}\end{array}\right. \)