平均値の定理まとめ(証明・問題・使い方)

東大塾長の山田です。

このページでは、平均値の定理について詳しく説明しています!

形は簡単な平均値の定理ですが、その証明や入試における使い方などをしっかりと把握するのはなかなか難しいです。それらの事項について、一つ一つ丁寧に解説していきます。

ぜひ勉強の参考にしてください!

1. 平均値の定理について

1.1 平均値の定理とは

平均値の定理とは、以下のことを指します。

平均値の定理

区間\([a,b]\)で連続、\((a,b)\)で微分可能な関数\(f(x)\)について

\[\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f^{\prime}(c)\]

なる\(c\)が、\(a\)と\(b\)の間に存在する。

これだけだと意味が分からない人もいると思うので、下でその意味について解説していきます!

1.2 平均値の定理の意味

まず、区間\([a,b]\)で連続、\((a,b)\)で微分可能という言葉についてですが、これは\(a≦x≦b\)で連続で、その端点については微分不可能でもよいということを述べています!

平均値の定理そのものについてですが、下図のように図形的に解釈するとわかりやすいです。

つまり、平均値の定理は

「\((a, f(a))\)と\((b, f(b))\)を結ぶ直線の傾き\(\displaystyle\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\)」と「\(x=c\)における接線の傾き\(f'(c)\)」が等しくなるような、\(c\)が存在する

ということを言っているのです。この説明で、大体の人はイメージをつかむことができたのではないでしょうか。

1.3 平均値の定理と因数分解

平均値の定理より

\[f(b)-f(a)=(b-a)f'(c)\]

となります。この式は

「\(f(b)-f(a)\)から因数\(b-a\)を取り出す道具」

と捉えることができます!言い換えるならば、

「平均値の定理」⇔「\(f(b)-f(a)\)を因数分解する定理」

とできます!\(c\)が正確にわからないのが難点ですが、こういった視点も持ち合わせておくと良いでしょう。

2. 平均値の定理の証明

次に、平均値の定理を証明してみましょう。平均値の定理の証明は

1.最大値の原理を用いてロルの定理を証明
2.ロルの定理を用いて平均値の定理を証明

という2ステップで行われます。早速行っていきましょう!

2.1 ロルの定理とその証明

最大値の原理とは、「有界閉区間上の連続関数は最大値を持つ」というもので、感覚的には当たり前のものです。ここでの証明は省きます。(その逆の最小値の定理というものも存在します)

そしてロルの定理とは以下のことです。

ロルの定理

区間\([a,b]\)で連続、\((a,b)\)で微分可能な、\(f(a)=f(b)\)なる関数\(f(x)\)について

\[f'(c)=0\quad (a<c<b)\]

を満たす\(c\)が存在する。

まずはロルの定理の証明です。

【証明】

Ⅰ \(f(x)=\rm{const.}\)のとき

\(a<c<b\)なる任意の\(c\)で、

\[f'(c)=0\]

となり成り立ちます。

 

Ⅱ \(f(a)<f(t)\)なる\(t\)が存在するとき

最大値の原理より、\(a<c<b\)で\(f(c)\)が最大になるような\(c\)が存在します。

\(f(x)\)が\(c\)で微分可能なことと、\(f(c) \geq f(c+h)\)より

\[\begin{cases}f^{\prime}(c)=\displaystyle\lim _{h \rightarrow+0} \displaystyle\frac{f(c+h)-f(c)}{h} \leq 0\\f^{\prime}(c)=\displaystyle\lim _{h \rightarrow-0} \displaystyle\frac{f(c+h)-f(c)}{h} \geq 0\end{cases}\]

より

\[f'(c)=0\]

となることが分かりました。

 

Ⅲ \(f(a)>f(t)\)なる\(t\)が存在するとき

最小値の原理(最大値の原理の逆)より、\(a<c<b\)で\(f(c)\)が最小になるような\(c\)が存在します。

\(f(x)\)が\(c\)で微分可能なことと、\(f(c) ≦ f(c+h)\)より

\[\begin{cases}f^{\prime}(c)=\displaystyle\lim _{h \rightarrow+0} \displaystyle\frac{f(c+h)-f(c)}{h} ≦ 0\\f^{\prime}(c)=\displaystyle\lim _{h \rightarrow-0} \displaystyle\frac{f(c+h)-f(c)}{h} ≧ 0\end{cases}\]

より

\[f'(c)=0\]

となります。

2.2 平均値の定理の証明

ついに平均値の定理の証明です。ロルの定理を用いたいので、関数\(f(x)\)に、「端点の値が等しい」というロルの定理の条件を満たすような\(g(x)\)を考えてみましょう。

それでは証明です。

【証明】

関数:\(g(x)=f(x)+\alpha x\)を考えてみましょう。このとき

\[g(a)=g(b)\]

なる\(\alpha\)を探します。それぞれ代入すると

\[\quad f(a)+\alpha a=f(b)+\alpha b\] \[∴\alpha =-\displaystyle\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\]

となり、

\[g(x)=f(x)-\displaystyle\frac{f(b)-f(a)}{b-a}{x}\]

という関数が、\(g(a)=g(b)\)を満たすことが分かりました。
よってロルの定理より

\[g'(c)=0 \quad (a<c<b)\]

なる\(c\)が存在することが分かり

\[g^{\prime}(c)=f^{\prime}(c)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=0\]

より、平均値の定理が得られました。

この流れは抑えておくと良いでしょう!

3. 平均値の定理の使い方

次に平均値の定理の使い方を学んでいきましょう。

平均値の定理を用いる問題は主に2種類あります。「不等式の証明」と「漸化式と極限」です。一つ一つ確認してみましょう。

3.1 不等式の証明

鉄則

\(f(b)-f(a)\)を含む不等式の証明問題では、平均値の定理が使われることがほとんど!

平均値の定理を用いる不等式の証明においては、上のことが大鉄則になります。問題を解いて確認していきましょう。

例題

【問】以下の不等式が成立することを示せ。

\[\log (\log q)-\log (\log p)<\frac{q-p}{e} \quad(e ≦ p<q)\]

\(\log (\log q)-\log (\log p)\)が含まれているので、平均値の定理を用いることが分かります。

【解答】

\(f(x)=\log (\log x)\)とすると、\(f(x)\)は\(x>1\)で連続∧微分可能な関数です。

\[f^{\prime}(x)=\frac{(\log x)^{\prime}}{\log x}=\frac{1}{x \log x}\]

ここで、平均値の定理より

\[\frac{\log (\log q)-\log (\log p)}{q-p}=\frac{1}{c \log c}(p<c<q)\]

なる実数\(c\)が存在することが分かります。

さらに\(e ≦ p<c<q\)より

\[c<c\log c\]

よって、\(e<c \log c\)より

\[\frac{1}{c \log c}<\frac{1}{e}\]

以上から

\[\quad \frac{\log (\log q)-\log (\log p)}{q-p}<\frac{1}{e}\] \[∴\log (\log q)-\log (\log p)<\frac{q-p}{e}\]

このように平均値の定理を用いることができます!

3.2 漸化式と極限

漸化式において平均値の定理を用いるのは、その漸化式が解けない\(x_{n+1}=f(x_n)\)で与えられていて、その数列\(x_n\)の極限を求める場合です。その場合、取る手順は以下のようになっています。

鉄則

1.\(x=f(x)\)の解を求める。(仮に解を\(\alpha\)とする)

2.平均値の定理を用いて

\[\left|x_{n+1}-\alpha\right| ≦ r\left|x_{n}-\alpha\right| \quad(0<r<1)\]

を導く。

3.上の不等式を繰り返して用いて

\[0≦\left|x_{n}-\alpha\right| ≦ r^{n-1}\left|x_{1}-\alpha\right|\]

\(0<r<1\)ゆえ、\(\lim _{n \rightarrow \infty} r^{n-1}\left|x_{1}-\alpha\right|=0\)だから、はさみうちの原理より

\[\lim _{n \rightarrow \infty}\left|x_{n}-\alpha\right|=0\quad ∴\lim _{x \rightarrow \infty} x_{n}=\alpha\]

これが主な手順です。これを用いて以下の問題を解いてみましょう。(出典:東大理類)

例題

【問】\(f(x)=\displaystyle\frac{x}{2}(1+e^{-2(x-1)})\)とする。

(1) \(x>\displaystyle\frac{1}{2}\)のとき、\(0 ≦f^{\prime}(x)<\displaystyle\frac{1}{2}\)を示せ。

(2) \(x_0>\displaystyle\frac{1}{2}\)のとき、数列\(\{x_n\}\)を\(x_{n+1}=f(x_n)\)で定める。このとき、\(\displaystyle\lim _{n \rightarrow \infty} x_{n}=1\)を示せ。

東大の問題といえども、定石通り解けてしまいます。

それでは解答です!

【解答】

(1) 単なる計算問題です。

\[\begin{array}{l}{f^{\prime}(x)=\displaystyle\frac{1}{2}\left\{1+e^{-2(x-1)}-2 x e^{-2(x-1)}\right\}} \\ {f^{\prime \prime}(x)=\displaystyle\frac{1}{2}\left\{-2 e^{-2(x-1)}-2 e^{-2(x-1)}+4 x e^{-2(x-1)}\right\}=2 e^{-2(x-1)}(-1+x)}\end{array}\]

\(f”(x)=0\)とすると、\(x=1\)

\[f^{\prime}\left(\frac{1}{2}\right)=\frac{1}{2}(1+e-e)=\frac{1}{2}, \quad \lim _{x \rightarrow \infty} f^{\prime}(x)=\frac{1}{2}\]

より以下の増減表を得ます。

\[\begin{array}{c|ccccc} x &\displaystyle\frac{1}{2} & \cdots & 1 & \cdots & \infty \\ \hline f’'(x) & \quad & – & 0 & + & \quad \\ \hline f'(x) & \displaystyle\frac{1}{2} & \searrow & 0 &  \nearrow& \displaystyle\frac{1}{2}\end{array}\]

\[∴0≦f'(x)<\displaystyle\frac{1}{2}\quad (x>\displaystyle\frac{1}{2})\]

 

(2) \(f(1)=1\)に注意しましょう。(\(x_n≠1\))のもとで、平均値の定理より

\[\frac{f\left(x_{n}\right)-f(1)}{x_{n}-1}=f^{\prime}(c)\]

なる\(c\)が\(1\)と\(x_n\)の間に存在します。(1)と合わせると、

\[\left|x_{n+1}-1\right|<\frac{1}{2}\left|x_{n}-1\right|\quad (x_{n}>\frac{1}{2}, x_{n} \neq 1) \]

Ⅰ \(x_0 =1\)のとき

数列\(\{x_n\}\)はすべて\(1\)なので大丈夫。

 

Ⅱ \(x_0 ≠1\)のとき

数列\(\{x_n\}\)はすべて、\(x_{n}>\frac{1}{2}, x_{n} \neq 1\)を満たすから上記の不等式を繰り返し用いることができ

\[\left|x_{n}-1\right|<\frac{1}{2^{n}}\left|x_{0}-1\right|\]

\(n\to \infty\)とすると

\[\lim _{n \rightarrow \infty} x_{n}=1\]

が得られます。

4. まとめ

お疲れ様でした。最後に今回学んだことをまとめておくので、復習に役立ててください!

まとめ

平均値の定理

区間\([a,b]\)で連続、\((a,b)\)で微分可能な関数\(f(x)\)について

\[\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f^{\prime}(c)\]

なる\(c\)が、\(a\)と\(b\)の間に存在する。

平均値の定理の使い方

Ⅰ:不等式の証明

\(f(b)-f(a)\)を含む不等式の証明問題では、平均値の定理が使われることがほとんど!

Ⅱ:漸化式と極限

1.\(x=f(x)\)の解を求める。(仮に解を\(\alpha\)とする)

2.平均値の定理を用いて

\[\left|x_{n+1}-\alpha\right| ≦ r\left|x_{n}-\alpha\right| \quad(0<r<1)\]

を導く。

3.上の不等式を繰り返して用いて

\[0≦\left|x_{n}-\alpha\right| ≦ r^{n-1}\left|x_{1}-\alpha\right|\]

\(0<r<1\)ゆえ、\(\lim _{n \rightarrow \infty} r^{n-1}\left|x_{1}-\alpha\right|=0\)だから、はさみうちの原理より

\[\lim _{n \rightarrow \infty}\left|x_{n}-\alpha\right|=0\quad ∴\lim _{x \rightarrow \infty} x_{n}=\alpha\]

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