中線定理のいろいろな証明と問題

東大塾長の山田です。
このページでは、垂線定理」について解説します

中線定理とその証明を、イラスト付きで丁寧にわかりやすく解説していきます
また、さいごには中線定理を利用する練習問題も用意しているので、ぜひ勉強の参考にして「中線定理」をマスターしてください!

1. 中線定理とは?

中線定理

\( \mathrm{ \triangle ABC } \)の辺\( \mathrm{ BC } \)の中点を\( \mathrm{ M } \)とするとき

\( \displaystyle \color{red}{ AB^2 + AC^2 = 2(AM^2 + BM^2) } \)

これが中線定理です!中線定理は「パップスの定理」ともいいます。

 

2. 中線定理の証明

それでは、なぜ中点定理が成り立つのか?証明をしていきます。
中線定理はいろいろな方法で証明ができるので、紹介していきますね。

2.1 【証明①】三平方の定理による証明

まずは三平方の定理を使った証明方法です。

\( \mathrm{ AB>AC } \)の\( \mathrm{ \triangle ABC } \)を考えます。

点\( \mathrm{ A } \)から辺\( \mathrm{ BC } \)(またはその延長)に下ろした垂線を\( \mathrm{ AH } \)、辺BCの中点を\( \mathrm{ M } \)とします。

\( \mathrm{ \triangle ABH } \)に三平方の定理を用いると

\( \begin{align}
AB^2 & = BH^2 + AH^2 \\
\\
& = (BM+MH)^2 + AH^2 \\
\\
& = BM^2 + 2 \cdot BM \cdot MH + MH^2 + AH^2 \ \cdots ①
\end{align} \)

\( \mathrm{ \triangle ACH } \)に三平方の定理を用いると

\( \begin{align}
AC^2 & = CH^2 + AH^2 \\
\\
& = (MC-MH)^2 + AH^2 \\
\\
& = MC^2 -2 \cdot MC \cdot MH + MH^2 + AH^2 \ \cdots ②
\end{align} \)

①+②より

\( \begin{align}
AB^2 + AC^2 & = \small{ (BM^2 + 2 \cdot BM \cdot MH + MH^2 + AH^2) + (MC^2 -2 \cdot MC \cdot MH + MH^2 + AH^2) } \\
\\
& = 2BM^2 + 2MH^2 + 2AH^2 \\
\\
& = 2(BM^2 + \color{red}{MH^2 + AH^2}) \ \cdots ③
\end{align} \)

ここで、\( \mathrm{ \triangle AMH } \)に三平方の定理を用いると

\( \color{red}{MH^2 + AH^2 } = \color{red}{ AM^2 } \ \cdots ④ \)

③,④より

\( \begin{align}
AB^2 + AC^2 & = 2(BM^2 + \color{red}{MH^2 + AH^2}) \\
\\
& = 2( \color{red}{ AM^2 } + BM^2 )
\end{align} \)

したがって \( \color{red}{ AB^2 + AC^2 = 2( AM^2 + BM^2 ) } \)となり、証明できました。

 

\( \mathrm{ AB≦AC } \)の三角形の場合でも、同様に成り立つことが証明できます。

 

2.2 【証明②】余弦定理による証明

次は余弦定理を使った証明方法です。

補足

余弦定理については「余弦定理まとめ(公式・面積・問題と解き方)」の記事で詳しく解説しています。余弦定理を忘れてしまった人は確認しておきましょう。

\( \mathrm{ \triangle AMB } \)に余弦定理を用いると

\( \displaystyle \cos \angle AMB = \frac{AM^2 + BM^2 – AB^2}{2 \cdot AM \cdot BM} \ \cdots ① \)

\( \mathrm{ \triangle AMC } \)に余弦定理を用いると

\( \displaystyle \cos \angle AMC = \frac{AM^2 + CM^2 – AC^2}{2 \cdot AM \cdot CM} \ \cdots ② \)

\( \mathrm{ \color{red}{ BM=CM } } \)より、②は

\( \displaystyle \cos \angle AMC = \frac{AM^2 + \color{red}{ BM^2 } – AC^2}{2 \cdot AM \cdot \color{red}{ BM }} \ \cdots ②’ \)

また、\( \mathrm{ \angle AMB = 180^\circ – \angle AMC } \)なので

\( \begin{align}
\cos \angle AMB & = \cos (180^\circ – \angle AMC) \\
\\
& = – \cos \angle AMC \ \cdots ③
\end{align} \)

補足

  • 三角比の変換公式\( \cdots \color{red}{ \cos (180^\circ – \theta) = – \cos \theta } \)

三角比の変換公式については「sin cos tanの変換公式と覚え方」の記事で詳しく解説しています。三角比の変換公式を忘れてしまった人は確認しておきましょう。

よって、\( ①, ②’, ③ \)より

\( \begin{align}
\cos \angle AMB & = \ – \cos \angle AMC \\
\\
\frac{AM^2 + BM^2 – AB^2}{2 \cdot AM \cdot BM} & = \ – \frac{AM^2 + BM^2 – AC^2}{2 \cdot AM \cdot BM} \\
\\
AM^2 + BM^2 – AB^2 & = -AM^2 – BM^2 + AC^2 \\
\\
AB^2 + AC^2 & = 2AM^2 + 2BM^2 \\
\\
∴ \ AB^2 + AC^2 & = 2(AM^2 + BM^2)
\end{align} \)

したがって \( \color{red}{ AB^2 + AC^2 = 2( AM^2 + BM^2 ) } \)となり、証明できました。

 

2.3 【証明③】ベクトルによる証明

次はベクトルを使った証明方法です。

ベクトルはどこを始点にするかで計算が大きく違ってきますが、今回は中点 \( \mathrm{ M } \) を始点にして計算をしていきます。

\( \overrightarrow{ MA } = \overrightarrow{ a }, \ \ \overrightarrow{ MB } = \overrightarrow{ b } \)とおくと、\( \overrightarrow{ MC } = \ – \overrightarrow{ MB } = \ – \overrightarrow{ b } \)となります。

\( \begin{align}
& AB^2 + AC^2 \\
\\
& = |\overrightarrow{ b } – \overrightarrow{ a }|^2 + |- \overrightarrow{ b } – \overrightarrow{ a }|^2 \\
\\
& = (|\overrightarrow{ b }|^2 – 2 \cdot \overrightarrow{ b } \cdot \overrightarrow{ a } + |\overrightarrow{ a }|^2 ) + (|\overrightarrow{ b }|^2 + 2 \cdot \overrightarrow{ b } \cdot \overrightarrow{ a } + |\overrightarrow{ a }|^2 ) \\
\\
& = 2 |\overrightarrow{ b }|^2 + 2 |\overrightarrow{ a }|^2 \\
\\
& = 2 AM^2 + 2 BM^2 \\
\\
& = 2( AM^2 + BM^2 )
\end{align} \)

したがって \( \color{red}{ AB^2 + AC^2 = 2( AM^2 + BM^2 ) } \)となり、証明できました。

 

2.4 【証明④】座標平面による証明

さいごは座標平面を使った証明方法です。

\( M(0, \ 0), \ A(a, \ b), \ B(-c, \ 0), \ C(c, \ 0) \) と座標を設定します。

中線定理 \( AB^2 + AC^2 = 2( AM^2 + BM^2) \) の左辺は

\( \begin{align}
AB^2 + AC^2 & = \{ a-(-c) \}^2 + b^2 + (a-c)^2 + b^2 \\
\\
& = 2a^2 + 2b^2 + 2c^2 \ \cdots ①
\end{align} \)

一方、中線定理\( AB^2 + AC^2 = 2( AM^2 + BM^2) \)の右辺は

\( \begin{align}
2( AM^2 + BM^2) & = 2( a^2 + b^2 + c^2 ) \\
\\
& = 2a^2 + 2b^2 + 2c^2 \ \cdots ②
\end{align} \)

よって、①,②より中線定理の両辺は一致するので、\( \color{red}{ AB^2 + AC^2 = 2( AM^2 + BM^2 ) } \) が成り立つことが証明できました。

 

3. 中線定理を利用する練習問題

それでは、中線定理を使う問題を実際に解いてみましょう!

例題

\( \mathrm{ \triangle ABC } \)の辺\( \mathrm{ BC } \)の中点を\( \mathrm{ M } \)とする。\( \mathrm{ AB=3, AC=5, A=60^\circ } \)のとき、\( \mathrm{ AM } \)の長さを求めよ。

中線定理 \( AB^2 + AC^2 = 2( AM^2 + BM^2) \) を使うために、まずは \( \mathrm{ BM } \)(または \( \mathrm{ CM } \))の長さを求めます。

角が1つわかっているので、余弦定理を使って \( \mathrm{ BC } \) を求めることができるので、そうすれば \( \mathrm{ BM } \)(または\( \mathrm{ CM } \))の長さもわかります。

  1. 余弦定理でBCを求める→BMがわかる
  2. 中線定理でAMを求める

という流れで解いていきます。

【解答】

\( \mathrm{ \triangle ABC } \) に余弦定理を用いると

\( \begin{align}
BC^2 & = AB^2 + AC^2 -2 \cdot AB \cdot AC \cdot \cos 60^\circ \\
\\
& = 3^2 + 5^2 -2 \cdot 3 \cdot 5 \cdot \frac{1}{2} \\
\\
& = 19 \\
\end{align} \)

\( \displaystyle ∴ \ BC = \sqrt{19} \)

よって \( \displaystyle \color{red}{ BM = \frac{1}{2} BC = \frac{\sqrt{19}}{2} } \)

 

中線定理より

\( \displaystyle AB^2 + AC^2 = 2( AM^2 + BM^2) \)

\( \begin{align}
\displaystyle 2AM^2 & = AB^2 + AC^2 – 2BM^2 \\
\\
& = 3^2 + 5^2 – \frac{19}{2} \\
\\
& = \frac{49}{2}
\end{align} \)

よって \( \displaystyle AM^2 = \frac{49}{4} \)

∴ \( \displaystyle AM = \color{red}{ \frac{7}{2} \ \cdots 【答】 } \)

 

4. 中線定理のまとめ

以上が中線定理の解説です。証明や使い方はしっかり理解できましたか?

中線定理を知っていれば問題が早く解けることがあるので、証明を含めておさえておきましょう!

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