東大塾長の山田です。
このページでは、区分求積法について詳しく説明しています!
区分求積法の説明や導出についてはもちろん、入試で意識すべきポイントや豊富な例題を紹介しており、この記事だけで区分求積法についての盤石な知識を取り入れることが可能です。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 区分求積法とは
まずは区分求積法とは何かについて説明していきます。
1.1 区分求積法の公式
まずは公式の形について
関数\(f(x)\)が閉区間\([a, b]\)で連続かつ微分可能な時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n-1}f\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)\frac{b-a}{n}=\int_a^b f(x) dx\)
特に、\(a=0,\quad b=1\)のとき
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n-1}f\left(\frac{k}{n}\right)\frac{1}{n}=\int_0^1 f(x) dx\)
が成立します。教科書に載っているのはほとんどこの形ではないでしょうか。
パッと見中々覚えづらい形をしているようにも見えますが、どのように公式がなりっ立っているのかを理解できれば、いつでもすぐに書き下すことができます。以下では、区分求積法の導出について学んでいきましょう。
1.2 求め方
区分求積法は面積の成り立ちそのものです。順を追って公式を導出していきます。
【導出】
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n-1}f\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)\frac{b-a}{n}=\int_a^b f(x) dx\cdots (*)\)
(*)式の右辺が\(\displaystyle\int_a^b f(x) dx\)ということは、左辺は下図の射線部の面積を表しているとわかります。
この部分の面積を「無数の長方形の和」に近似して求めていきましょう。
閉区間\([a, b]\)における\(f(x)\)を、\(n\)個の長方形に均等に分割すると、その横幅\(\Delta x\)は、\(\Delta x=\displaystyle\frac{b-a}{n}\)となります。
また、左下端が\(x_k\)(\(a≦x_k≦b,\quad 0≦k≦n-1\))の長方形について考えると、その縦の長さは、\(f\left(a+\displaystyle\frac{b-a}{n}k\right)\)となります。
つまり左下端が\(x_k\)(\(a≦x_k≦b,\quad 0≦k≦n-1\))の長方形の面積は
\(f\left(a+\displaystyle\frac{b-a}{n}k\right)\cdot\displaystyle\frac{b-a}{n}\)
と書き下すことができます。
ここで、長方形の和が実際の面積に近づくにはどのようにすれば良いでしょうか?横幅が限りなく小さい長方形を詰め込んでいけば、実際の面積に近づいていくと考えましょう。(下図参照)
つまり、\(\Delta x\to 0\)となればよいことが分かります。\(\Delta x=\frac{b-a}{n}\)で、\(a, b\)が定数であることを考えると、\(\Delta x\to 0 ⇒n\to\infty\)となります。
このとき、横幅が非常に小さい長方形の面積の和は
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n-1}f\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)\frac{b-a}{n}\)
と書くことができます。これが射線部の面積に等しくなることを考えてあげると
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n-1}f\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)\frac{b-a}{n}=\int_a^b f(x) dx\cdots (*)\)
という区分求積法の形が求まることが分かりました。
これが「区分してから無数のものを足す」という区分求積法の成り立ちです。
区分求積法は、結局無限個の長方形の和を考えてあげたに過ぎないのです。この成り立ちさえ分かっていれば、式を書き下すことも簡単だと思われます。
よく見る形である
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n-1}f\left(\frac{k}{n}\right)\frac{1}{n}=\int_0^1 f(x) dx\)
についても、\(0≦x≦1\)で\(y=f(x)\)の面積を求めたに過ぎないということもわかると思います。
2.区分求積法のポイント
区分求積法とその成り立ちについては理解できたでしょうか?ここからは、区分求積法について何を意識していけばよいのか、という点から解説していきます。
2.0 これさえ抑えれば大丈夫!
区分求積法において抑えるべきポイントは以下の4つです。
①:左辺の具体的な形が与えられたときに右辺を連想する
②:たくさんの\(n\)と\(k\)の式の足し算を見たときに区分求積法を連想する
③:少しのはじっこのずれは気にしない
④:\(p\)個とばしは\(\displaystyle\frac{1}{p}\)になる
一つ一つの意味について考えていきましょう。
2.1 左辺の具体的な形が与えられたときに右辺を連想する
これは区分求積法で一番大事なことです。以下の例で確認してみましょう。
【例】
たとえば、
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} \left(\frac{1}{\sqrt{n^2+1}}+\frac{1}{\sqrt{n^2+2^2}}+\cdots +\frac{1}{\sqrt{n^2+n^2}}\right)\cdots①\)
という式の形を見たときに、これを
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{\sqrt{n^2+k^2}}=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n \frac{1}{n}\cdot\frac{1}{\sqrt{1+(\frac{k}{n})^2}}\)
と変形して
\(\displaystyle\int_0^1 \frac{1}{\sqrt{1+x^2}} dx\cdots②\)
という風に捉えることができるかという点です。
①から②を連想するためには多くの問題をこなす必要があります。これをすぐに連想できるようになるのが理想形です。
2.2 たくさんの\(n\)と\(k\)の式の足し算を見たときに区分求積法を連想する
これは上のように連想するための知識とも言えますが、たくさんの足し算を見たときに区分求積法がすぐにイメージできるとだいぶ考えやすくなります。
【例】
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{n+1}+\frac{1}{n+2}+\cdots +\frac{1}{n+2n}\right)\)
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{(1+2+3+\cdots +n)(1^4 +2^4 +3^4+\cdots +n^4)}{(1^2 +2^2 +3^2+\cdots +n^2)(1^3 +2^3+3^3+\cdots +n^3)}\right)\)
どちらの例も後半の演習問題で扱っているので、そちらもぜひ参照してください。
2.3 少しのはじっこのずれは気にしない
先ほど扱った関数で、
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{n+1}+\frac{1}{n+2}+\cdots +\frac{1}{n+2n}\right)\)
がありましたが、これを区分求積法で求めた値と
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{n+4}+\frac{1}{n+5}+\cdots +\frac{1}{n+2n}\right)\)
はどちらも同じ値になります。これは\(n\to\infty\)としたことで\(\displaystyle\frac{1}{n+k}\)が無限小となり、数個無くなっただけでは影響を及ぼさない、ということを意味しています。
同様に、\(n\to \infty\)としたとき
\(\displaystyle\sum_{k=1}^n \frac{1}{n}f\left(\frac{k}{n}\right),\quad\sum_{k=1}^{n+6} \frac{1}{n}f\left(\frac{k}{n}\right),\quad \sum_{k=0}^n \frac{1}{n}f\left(\frac{k}{n}\right) \)
は全て同じ値に収束します。シグマの上端・下端が少しずれたぐらいでは大きな影響はないのです。
このように、ある程度大雑把に考えることも重要です!
2.4 \(p\)個とばしは\(\displaystyle\frac{1}{p}\)になる
これも大雑把に捉えていこうという話です。
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{n+1}+\frac{1}{n+2}+\frac{1}{n+3}+\cdots +\frac{1}{n+an}\right)\)
という極限は\(\log (1+a)\)になりますが(あとで扱います)、このうち三つおきの項を取ってきて
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{n+1}+\frac{1}{n+4}+\frac{1}{n+7}+\cdots +\frac{1}{n+an-b}\right)\)
を考えたとき、この極限値は、\(\displaystyle\frac{1}{3}\times \log (1+a)\)になります。
これは下図で\(\displaystyle\frac{1}{n}\to \infty\)のとき、三つの長方形の面積がほとんど等しくなることから、感覚的に納得できると思います。
3.演習問題
ここまでの知識をフル活用して問題を解いてみましょう!
3.1 問題
【問】区分求積法を利用して、以下の値を求めよ。
(1) \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{n+1}+\frac{1}{n+2}+\cdots +\frac{1}{n+an}\right)\)
(2) \(\displaystyle\lim_{n\to\infty} \frac{1}{n^2}(\sqrt{n^2-1}+\sqrt{n^2-4}+\cdots+\sqrt{n^2-(n-1)^2})\)
(3) \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{(1+2+\cdots +n)(1^4 +2^4+\cdots +n^4)}{(1^2 +2^2 +\cdots +n^2)(1^3 +2^3+\cdots +n^3)}\right)\)
3.2 解答
区分求積法の右辺の形をうまく連想しましょう。
それでは解答です!
【解答】
(1) \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{n+1}+\frac{1}{n+2}+\cdots +\frac{1}{n+an}\right)\)
もとの式を変形していくと
\(\begin{eqnarray}&&\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{n+1}+\frac{1}{n+2}+\cdots +\frac{1}{n+an}\right)\\&=&\displaystyle\lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^{an}\frac{1}{n}\cdot \frac{1}{1+\frac{k}{n}}\\&=&\int_0^a \frac{1}{1+x} dx\\&=&[\log (1+x)]_0^a \\&=&\log (1+a)\end{eqnarray}\)
(2) \(\displaystyle\lim_{n\to\infty} \frac{1}{n^2}\left(\sqrt{n^2-1}+\sqrt{n^2-4}+\cdots +\sqrt{n^2-(n-1)^2}\right)\)
もとの式を変形していくと
\(\begin{eqnarray}&&\displaystyle\lim_{n\to\infty} \frac{1}{n^2}\left(\sqrt{n^2-1}+\sqrt{n^2-4}+\cdots +\sqrt{n^2-(n-1)^2}\right)\\&=&\displaystyle\lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^{n-1}\frac{1}{n}\sqrt{1-{\frac{n}{k}}^2}\\&=&\int_0^1 \sqrt{1-x^2} dx\\&=&\frac{\pi}{4}\end{eqnarray}\)
【補足】
\(\displaystyle\int_0^1 \sqrt{1-x^2} dx\)は、下図の四分円の面積です。
(3) \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{(1+2+\cdots +n)(1^4 +2^4+\cdots +n^4)}{(1^2 +2^2 +\cdots +n^2)(1^3 +2^3+\cdots +n^3)}\right)\)
式変形を行います。
\(\begin{eqnarray}&&\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{(1+2+\cdots +n)(1^4 +2^4+\cdots +n^4)}{(1^2 +2^2 +\cdots +n^2)(1^3 +2^3+\cdots +n^3)}\right)\\&=&\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\displaystyle\frac{(\frac{1}{n}+\frac{2}{n}+\cdots +\frac{n}{n})(\frac{1^4}{n^4} +\frac{2^4}{n^4}+\cdots +\frac{n^4}{n^4})}{(\frac{1^2}{n^2} +\frac{2^2}{n^2} +\cdots +\frac{n^2}{n^2})(\frac{1^3}{n^3} +\frac{2^3}{n^3}+\cdots +\frac{n^3}{n^3})}\right)\\&=&\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\displaystyle\frac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^n\left(\displaystyle\frac{k}{n}\right)\cdot\displaystyle\frac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^n\left(\frac{k}{n}\right)^4}{\displaystyle\frac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^n\left(\frac{k}{n}\right)^2\cdot\frac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^n\left(\frac{k}{n}\right)^3}\\&=&\frac{\displaystyle\int_0^1 x dx\cdot\displaystyle\int_0^1 x^4 dx}{\displaystyle\int_0^1 x^2 dx\cdot \displaystyle\int_0^1 x^3 dx}\\&=&\frac{\displaystyle\frac{1}{2}\cdot\displaystyle\frac{1}{5}}{\displaystyle\frac{1}{3}\cdot\displaystyle\frac{1}{4}}\\&=&\frac{6}{5}\end{eqnarray}\)
以上です!一連の流れをしっかりと把握しておきましょう!
limitの計算をインテグラの計算に変えていますが、そんなことを証明なしにして話をすすめていいのですか?
とても分かりやすい!愛してるよ!