東大塾長の山田です。
このページでは、「ド・モルガンの法則」とその証明について、わかりやすく解説していきます。
ド・モルガンの法則は、式変形の途中で使ったり、ド・モルガンの法則を使うことで、集合の証明問題を楽に解けることがあります。
ですので、必ずマスターしておく必要があります。
このページを最後まで読み、ド・モルガンの法則をよく理解して、集合の問題を得点源にしてください!
1. ド・モルガンの法則をわかりやすく解説
それでは、さっそくド・モルガンの法則について解説していきます。
1.1 ド・モルガンの法則とは?
集合では、次の規則性が成り立ちます。
\( \large{ \overline{ A \cup B } = \overline{A} \cap \overline{B} } \)
\( \large{ \overline{ A \cap B } = \overline{A} \cup \overline{B} } \)
※「\( A \cup B \)」は\( A \)と\( B \)の和集合,「\( A \cap B \)」は\( A \)と\( B \)の共通部分,「\( \overline{A} \)」は\( A \)の補集合を表します。
これをド・モルガンの法則といいます。
1.2 ド・モルガンの法則をベン図で証明
論理式だけではピンと来ない人でも、ベン図を使うと簡単に理解することができます。
\( \large{ \overline{ A \cup B } = \overline{A} \cap \overline{B} } \)
の式からみていきましょう。
まず左辺の \( \overline{ A \cup B } \) から考えます。
\( A \cup B \) を図で表すと、下の図1の左のようになります。
となると、\( \overline{ A \cup B } \) は図1の右のようになります。
一方、右辺の \( \overline{A} \cap \overline{B} \) は、\( \overline{A} \) と \( \overline{B} \) の共通部分なので、下の図2の右のようになります。
よって、図1・図2から、
\( \large{ \overline{ A \cup B } = \overline{A} \cap \overline{B} } \)
が成り立つことがわかります。
同様に、
\( \large{ \overline{ A \cap B } = \overline{A} \cup \overline{B} } \)
の式もみていきましょう。
まず、左辺の \( \overline{ A \cap B } \) から考えます。
\( A \cap B \) を図で表すと、下の図4の左のようになります。
となると、\( \overline{ A \cap B } \) 図4の右のようになります。
一方、右辺の \( \overline{A} \cup \overline{B} \) は、
\( \overline{A} \) と \( \overline{B} \) の和集合なので、下の図5の右のようになります。
よって、図4・図5から、
\( \large{ \overline{ A \cap B } = \overline{A} \cup \overline{B} } \)
が成り立つことがわかります。
ド・モルガンの法則が成り立つのは、納得できたと思います。
1.3 ド・モルガンの法則を論理式で証明
次は、ド・モルガンの法則を論理式で証明をしていきます。
集合の証明では、
「\( A = B \)」を証明するには、「\( A \subset B \) かつ \( B \subset A \)」が成り立つことを示せばよいです。
「\( A \subset B \)」を証明するには、「\( x \in A \) ならば \( x \in B \)」を示せばよいです。
つまり、「\( A = B \)」を証明するには、「『\( x \in A \) ならば \( x \in B \)』かつ『\( x \in B \) ならば \( x \in A \)』」を示せばよいです。
- \(A \subset B \)の証明方法 \( \cdots x \in A \ ならば \ x \in B \)
- \( A = B \) の証明方法 \( \cdots A \subset B \ かつ \ B \subset A \)
それでは、ド・モルガンの法則
\( \large{ \overline{ A \cup B } = \overline{A} \cap \overline{B} } \)
の証明をしていきます。
\( \overline{ A \cup B } = \overline{A} \cap \overline{B} \)は、
\( \overline{ A \cup B } \subset \overline{A} \cap \overline{B} \) かつ \( \overline{A} \cap \overline{B} \subset \overline{ A \cup B } \)
を示せばよい。
(i) \( \overline{ A \cup B } \subset \overline{A} \cap \overline{B} \)
\( x \in \overline{ A \cup B } \) とすると、\( x \notin A \cup B \)
つまり、\( x \) は \( A \) にも \( B \) にも属さないので、
\( x \notin A \) かつ \( x \notin B \)
ゆえに、\( x \in \overline{A} \) かつ \( x \in \overline{B} \)
よって、\( x \in \overline{A} \cap \overline{B} \)
したがって、\( \overline{ A \cup B } \subset \overline{A} \cap \overline{B} \)
(ii) \( \overline{A} \cap \overline{B} \subset \overline{ A \cup B } \)
\( x \in \overline{A} \cap \overline{B} \) とすると、\( x \in \overline{A} \)かつ\( x \in\overline{B} \)
ゆえに、\( x \notin A \) かつ \( x \notin B \)
よって、\( x \notin A \cup B \) となるので、
\( x \in \overline{ A \cup B } \)
したがって、\( \overline{A} \cap \overline{B} \subset \overline{ A \cup B } \)
(i),(ii)より、\( \overline{ A \cup B } \subset \overline{A} \cap \overline{B} \) かつ \( \overline{A} \cap \overline{B} \subset \overline{ A \cup B } \)であるから、\( \overline{ A \cup B } = \overline{A} \cap \overline{B} \)
以上のように証明ができました。
\( \large{ \overline{ A \cap B } = \overline{A} \cup \overline{B} } \)
もほぼ同じように証明ができます(ここでは省略します)。
1.4 ド・モルガンの法則を例題で確認
次は、具体的に例題をやってみて、ド・モルガンの法則が成り立つか確認してみます。
\( U = \{ 1,2,3,4,5,6,7,8,9 \} \) を全体集合とする。\( U \) の部分集合 \( A = \{ 1,2,3,5,7 \} \),\( B = \{ 3,4,5,9 \} \) について,次の集合を求めよ。
(1) \( \overline{A} \) (2) \( \overline{B} \)
(3) \( \overline{A} \cap \overline{B} \) (4) \( \overline{A} \cup \overline{B} \)
(5) \( \overline{ A \cup B } \) (6) \( \overline{ A \cap B } \)
集合の要素を求める問題では、ベン図をかいて条件を整理しましょう。
ベン図をかくポイントは、
- \( A,B \)両方に属する要素(\( A \cap B \))
- \( A \)だけに属する要素(\( A \cap \overline{B} \))
- \( B \)だけに属する要素(\( \overline{A} \cap B \))
- \( A,B \)どちらにも属さない要素(\( \overline{A} \cap \overline{B} \))
の順でかいていくことです。
それでは、かいたベン図から解答をバンバン答えていきます。
(1) \( \overline{A} = \{ 4,6,8,9 \} \)
(2) \( \overline{B} = \{ 1,2,6,7,8 \} \)
(3) \( \overline{A} \cap \overline{B} = \{ 6,8 \} \)
(4) \( \overline{A} \cup \overline{B} = \{ 1,2,4,6,7,8,9 \} \)
(5) \( \overline{ A \cup B } = \{ 6,8 \} \)
(6) \( \overline{ A \cap B } \{ 1,2,4,6,7,8,9 \} \)
(3)と(5),(4)と(6)の結果から、
ド・モルガンの法則
\( \large{ \overline{ A \cup B } = \overline{A} \cap \overline{B} } \)
\( \large{ \overline{ A \cap B } = \overline{A} \cup \overline{B} } \)
が成り立つことがわかります。
1.5 3つの集合の場合のド・モルガンの法則
ここまで2つの集合の場合で解説をしてきましたが、ド・モルガンの法則は、3つの集合の場合でも成り立ちます。
\( \large{ \overline{ A \cup B \cup C } = \overline{A} \cap \overline{B} \cap \overline{C} } \)
\( \large{ \overline{ A \cap B \cap C } = \overline{A} \cup \overline{B} \cup \overline{C} } \)
もっというと、集合がいくつあってもド・モルガンの法則は成り立ちます。
\( \overline{ A_1 \cup A_2 \cup \dots \cup A_n } = \overline{A_1} \cap \overline{A_2} \cap \cdots \cap \overline{A_n} \)
\( \overline{ A_1 \cap A_2 \cap \dots \cap A_n } = \overline{A_1} \cup \overline{A_2} \cup \cdots \cup \overline{A_n} \)
2. ド・モルガンの法則まとめ
さいごに、もう一度「ド・モルガンの法則」と、集合の証明のやり方についてまとめておきます。
- \(A \subset B の証明方法 \cdots x \in A \ ならば \ x \in B \)
- \( A = B の証明方法 \cdots A \subset B \ かつ \ B \subset A \)
\( \large{ \overline{ A \cup B } = \overline{A} \cap \overline{B} } \)
\( \large{ \overline{ A \cap B } = \overline{A} \cup \overline{B} } \)
※「\( A \cup B \)」は \( A \) と \( B \) の和集合,「\( A \cap B \)」は \( A \) と \( B \) の共通部分,「\( \overline{A} \)」は \( A \) の補集合を表します。
また、ド・モルガンの法則は3つ以上の集合の場合でも成り立ちます。
\( \large{ \overline{ A \cup B \cup C } = \overline{A} \cap \overline{B} \cap \overline{C} } \)
\( \large{ \overline{ A \cap B \cap C } = \overline{A} \cup \overline{B} \cup \overline{C} } \)
以上がド・モルガンの法則の解説です。
入試では式変形の途中でド・モルガンの法則を使うことがあります。
また、ド・モルガンの法則を使うことで、集合の証明問題を楽に解ける(使わなきゃきつい)ことがあります。
ド・モルガンの法則の論理をしっかり理解して、集合の問題で確実に得点できるようにしてくださいね!
ド・モルガンの法則についてベン図を使った方法、文字での証明、実際に数字で当てはめる方法を用いて証明していてすごくわかりやすかったです。
公式の証明教科書の見てもよくわからなかったので見に来ましたがとても分かりやすかったです。浪人生活ネットで学べそうなので助かります。ありがとうございました