東大塾長の山田です。
このページでは、「ベクトルの三角形の面積公式」について解説します。
ベクトルを使った三角形の面積公式は,教科書によっては発展のページに載っていますが,この公式を知っていると知らないとでは計算の労力とスピードに大きな差が出てしまいます。
ベクトルの三角形の面積公式をマスターできるように,ぜひ勉強の参考にしてください!
1. ベクトルの三角形の面積公式
三角形の面積はベクトルで次のように表すことができます。
\( \triangle OAB \) で,\( \overrightarrow{ OA } = \vec{ a } = (a_1, \ a_2) \),\( \overrightarrow{ OB } = \vec{ b } = (b_1, \ b_2) \) とすると,面積 \( S \) は
【ベクトル表示Ver.】
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ S = \frac{1}{2} \sqrt{ \left| \vec{ a } \right|^2 |\vec{ b }|^2 – ( \vec{ a } \cdot \vec{ b } )^2 } } } \)
【成分表示Ver.】
\( \displaystyle \large{ \color{red}{ S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 – a_2 b_1| } } \)
次は,それぞれの公式の導き方を解説していきます。
2. ベクトルの三角形の面積公式の証明
まずは「ベクトル表示Ver.」の方からいきます。
この公式は,
- 三角比の面積公式「\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} ab \sin \theta } \)」
- 三角比(三角関数)の相互関係「\( \color{red}{ \sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 } \)」
- ベクトルの内積「\( \color{red}{ \vec{ a } \cdot \vec{ b } = \left| \vec{ a } \right| | \vec{ b } | \cos \theta } \)」
を使って導きます。
【証明】「\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} \sqrt{ \left| \vec{ a } \right|^2 |\vec{ b }|^2 – ( \vec{ a } \cdot \vec{ b } )^2 } } \)」
\( \triangle OAB \) で,\( \overrightarrow{ OA } = \vec{ a } \),\( \overrightarrow{ OB } = \vec{ b } \) ,\( \triangle OAB \) の面積を \( S \) とする。
\( \angle AOB = \theta \) とすると,面積 \( S \) は
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} \left| \vec{ a } \right| | \vec{ b } | \sin \theta } \)
\( \sin \theta > 0 \) であるから
\( \sin \theta = \sqrt{ 1 – \cos ^2 \theta } \)
よって
\( \displaystyle S = \frac{1}{2} \left| \vec{ a } \right| | \vec{ b } | \color{red}{ \sqrt{ 1 – \cos ^2 \theta } } \)
また
\( \displaystyle \cos \theta = \frac{ \vec{ a } \cdot \vec{ b } }{ \left| \vec{ a } \right| | \vec{ b } | } \)
より
\( \begin{align}
\displaystyle S & = \frac{1}{2} \left| \vec{ a } \right| | \vec{ b } | \sqrt{ 1 – \color{red}{ \left(\frac{ \vec{ a } \cdot \vec{ b } }{ \left| \vec{ a } \right| | \vec{ b } | } \right)^2 } } \\
\\
& = \frac{1}{2} \sqrt{ \left| \vec{ a } \right|^2 | \vec{ b } |^2 – ( \vec{ a } \cdot \vec{ b } )^2 }
\end{align} \)
ゆえに \( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} \sqrt{ \left| \vec{ a } \right|^2 |\vec{ b }|^2 – ( \vec{ a } \cdot \vec{ b } )^2 } } \)
以上のように式変形をすることで,公式を導くことができます。
このまま「成分表示Ver.」にいきます。
【証明】「\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 – a_2 b_1| } \)」
\( \overrightarrow{ OA } = \vec{ a } = (a_1, \ a_2) \),\( \overrightarrow{ OB } = \vec{ b } = (b_1, \ b_2) \) とすると,
\( \left| \vec{ a } \right|^2 = {a_1}^2 + {a_2}^2 \),\( | \vec{ b } |^2 = {b_1}^2 + {b_2}^2 \),\( \vec{ a } \cdot \vec{ b } = a_1 b_1 + a_2 b_2 \)
であるから
\( \begin{align}
S & = \frac{1}{2} \sqrt{ \left| \vec{ a } \right|^2 |\vec{ b }|^2 – ( \vec{ a } \cdot \vec{ b } )^2 } \\
\\
& = \frac{1}{2} \sqrt{ ({a_1}^2 + {a_2}^2 ) ({b_1}^2 + {b_2}^2 ) – (a_1 b_1 + a_2 b_2 )^2 } \\
\\
& = \frac{1}{2} \sqrt{ {a_1}^2 {b_2}^2 – 2 a_1 b_1 a_2 b_2 + {a_2}^2 {b_1}^2 } \\
\\
& = \frac{1}{2} \sqrt{ ( a_1 b_2 – a_2 b_1 )^2 } \\
\\
& = \frac{1}{2} | a_1 b_2 – a_2 b_1|
\end{align} \)
ゆえに \( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 – a_2 b_1| } \)
3. ベクトルの三角形の面積の求め方(問題)
それでは、具体的にベクトルで三角形の面積を求める問題で、公式の使い方を確認しましょう。
次の3点を頂点とする三角形の面積を求めよ。
(1) \( A(0, \ 0), \ B(3, \ 1), \ C(2, \ 4) \)
(2) \( A(1, \ 0), \ B(-1, \ 3), \ C(-2, -1) \)
(1)は公式に当てはめて一発です。
(2)は,どの点も原点でないので、このままでは公式が使えません。
そこで,頂点が原点にくるように平行移動をしてから,公式を利用して解きます。
では,やってみましょう!
【解答】
(1) \( A(0, \ 0), \ B(3, \ 1), \ C(2, \ 4) \)
\( \begin{align}
\displaystyle S & = \frac{1}{2} | 3 \cdot 4 – 1 \cdot 2 | \\
\\
& = \color{red}{ 5 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
(2) \( A(1, \ 0), \ B(-1, \ 3), \ C(-2, -1) \)
点Aが原点Oにくるように平行移動するとき,\( x \) 軸方向に-1だけ平行移動させればよい。
このとき,点B,Cの平行移動後の点はそれぞれ \( \color{red}{ B’(-2, \ 3) } \),\( \color{red}{ C’ (-3, -1) } \) となる。
したがって,求める面積 \( S \) は
\( \begin{align}
\displaystyle S & = \frac{1}{2} | (-2) \cdot (-1) – 3 \cdot (-3) | \\
\\
& = \color{red}{ \frac{11}{2} \cdots 【答】 }
\end{align} \)
4. ベクトルの三角形の面積公式まとめ
さいごに今回の内容をもう一度整理します。
\( \overrightarrow{ OB } = \vec{ b } = (b_1, \ b_2) \) とすると,面積 \( S \) は
【ベクトル表示Ver.】
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} \sqrt{ \left| \vec{ a } \right|^2 |\vec{ b }|^2 – ( \vec{ a } \cdot \vec{ b } )^2 } } \)
【成分表示Ver.】
\( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 – a_2 b_1| } \)
座標が既知の場合の面積は,この公式で簡単に求めることができます。
しかし,例題(2)のように「1点が原点になければ使えない」ので,「平行移動をしてから公式を使う」ということがポイントです。
ベクトルの三角形の面積公式は必ず覚えておきましょう!
ありがとうございます