金属結晶まとめ

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東大塾長の山田です。

この記事では、金属結晶について解説しています。

金属結晶の構造には3種類あり、それぞれで考え方が異なります。ここでは、間違えることがないように導き方や考え方など詳しく説明しています。是非参考にしてください。

1. 結晶格子

金属結晶(金属の結晶)では、金属原子が金属結合によって規則正しく配列し、結晶格子を作っています。結晶格子とは、結晶の構成粒子の立体的な配列を示したもので、その最小の繰り返し単位を単位格子といいます。

結晶格子には以下の3種類があります。

①体心立方格子

次の図のように、立方体の各頂点と立体の中心に同種の粒子が配列された結晶格子を体心立方格子といいます。

図1

 

②面心立方格子

次の図のように、立方体の各頂点と各面の中心に同種の粒子が配列された結晶格子を面心立方格子(立方最密構造)といいます。

図2

 

③六方最密構造

次の図のように、正六角柱の各頂点と2つの正六角形の面の中心、さらに2つの正六角形の面にはさまれた空間に原子があるものを六方最密構造といいます。

しかし、正六角柱は単位格子ではなく、下図のように六角柱の三分の一に相当する四角柱の部分が単位格子となります。

図3

図1~図3では、それぞれの原子は離れていますが、金属の結晶格子について、単位格子の一辺の長さと原子半径の関係や充填率を考える際には、金属原子は球であり、それらは互いに接していると仮定します。

各原子の立体的な配置を示すと、次のような模型になります。

図4 体心立方格子

図5 面心立方格子

図6 六方最密構造

 

 

金属の結晶格子の種類

①体心立方格子

例:\({\rm Na}\),\({\rm K}\),\({\rm Fe}\)

②面心立方格子(立方最密構造)

例:\({\rm Al}\),\({\rm Cu}\)、\({\rm Ag}\)

③六方最密構造

例:\({\rm Be}\),\({\rm Mg}\),\({\rm Zn}\)

 

2. 配位数

結晶中のある1個の粒子に注目したとき、その粒子の最も近い位置に存在する周囲の粒子の数のことを配位数といいます。

 

①体心立方格子

図7

図7は、体心立方格子の単位格子で、各原子の中心位置が示されています。

このオレンジ色の原子は、このオレンジ色の原子から互いに等しい距離に存在する8個の緑色の原子に取り囲まれています。よって、体心立方格子の配位数は8となります。

 

②面心立方格子

図8

図8は、面心立方格子の単位格子を2つ上下に重ねたもので、各原子の中心位置が示されています。中心に描かれた1つのオレンジ色の原子に注目してみましょう。

このオレンジ色の原子は、このオレンジ色の原子から互いに等しい距離に存在する12個の緑色の原子に取り囲まれています。よって、面心立方格子の配位数は12となります。

 

③六方最密構造

図9

図9は、六方最密構造における原子の配列を表した六角柱を2つ上下に重ねたもので、各原子の中心位置が示されています。中心に描かれた1つのオレンジ色の原子にみましょう。

このオレンジ色の原子は、このオレンジ色の原子から互いに等しい距離に存在する12個の緑色の原子に取り囲まれています。よって、六方最密構造の配位数は12となります。(1つの正六角柱の上面と下面それぞれの中心に存在する原子を結んだ線は、真ん中の3つの原子を頂点とする正三角形の中心を通ります。)

 

3. 単位格子中に含まれる原子の総数

ここでは、3つの単位格子中に含まれる原子の総数を求めてみましょう。

 

①体心立方格子

体心立方格子の単位格子中には、8つの頂点にそれぞれ\(\frac{1}{8}\)個分ずつ(各頂点に位置する原子は、周囲の8個の単位格子に属しているため、1個の単位格子中には\(\frac{1}{8}\)個分ずつが含まれることになる)立方体の中心に丸々1個分、合計で(\(\frac{1}{8}\times8+1=)\)2個分の原子が含まれています。

 

②面心立方格子

面心立方格子の単位格子中には、8つの頂点にそれぞれ\(\frac{1}{8}\)個分ずつ6つの面の中心にそれぞれ\(\frac{1}{2}\)個分ずつ(各面の中心に位置する原子は、向かい合う2個の単位格子に属しているため、1個の単位格子中には\(\frac{1}{2}\)個分ずつが含まれることになる)合計で(\(\frac{1}{8}\times8+\frac{1}{2}\times6=\))4個分の原子が含まれています。

 

③六方最密構造

図10

六方最密構造の原子の数について考えましょう。1でも説明したように六方最密構造の単位格子は正六角柱の\(\frac{1}{3}\)となります。

まず、正六角柱の上面(下面)について考えると、図10は六方最密構造の正六角柱をうえから見た図です。太線で囲まれた部分が単位格子です。単位格子内には、\(\frac{1}{3}\)個分の原子が2個\(\frac{1}{6}\)個分の原子が2個存在します。これが、上面と下面それぞれにあるので、上面と下面にある原子の数は        (\(\frac{1}{3}\times2+\frac{1}{6}\times2=\))1個です。

また、上下の2つの面にはさまれた空間にちょうど3個分の原子が含まれています。単位格子は、正六角柱の\(\frac{1}{3}\)であるから、単位格子内の上下の2つの面にはさまれた空間には(\(3\times\frac{1}{3}=\))1個分の原子が存在します。

これより、六方最密構造の単位格子中に含まれる原子の総数は(\(1+1=\))2個となります。

上下の2つの面にはさまれた空間にある3個分は、丸々3個がそのまま含まれているわけではなく、図11(断面図)のように、ちょうど合計で3個分が含まれているということになります。

図11

 

4. 単位格子の1辺の長さと原子半径の関係

ここでは、単位格子の一辺の長さ\(l\)と原子半径\(r\)の関係を考えてみましょう。

この2つの関係が分かれば、単位格子の一辺の長さ\(l\)から原子半径\(r\)を求めることもできるし、逆に、原子半径\(r\)から単位格子の一辺の長さ\(l\)を求めることができます。

ここで紹介する計算例をもとに自分で導けるように練習してみてください。

4.1 体心立方格子

図12

図13

体心立方格子の場合は、単位格子の中心を通る対角線、つまり、単位格子を等しい2つの三角柱に分割して得た断面(図12の赤線を通る平面で切ったもの)の対角線上で図13のように、原子が互いに接しています。

つまり、この対角線の長さは、ちょうど原子半径\(r\)の4倍に相当します。また、単位格子の一辺の長さを\(l\)とするとこの対角線の長さは\(\sqrt{3}l\)とも表すこともできます。これより、

\[4r=\sqrt{3}l\]

という関係が導かれます。

 

4.2 面心立方格子

図14

図15

面心立方格子の場合は、単位格子の1つの面の対角線上で図15のように、原子が互いに接しています。

つまり、この対角線の長さは、ちょうど原子半径\(r\)の4倍に相当します。また、単位格子の一辺の長さを\(l\)とするとこの対角線の長さは、\(\sqrt{2}l\)とも表すこともできます。これより、

\[4r=\sqrt{2}l\]

という関係が導かれます。

 

4.3 六方最密構造

六方最密構造の場合は、六方最密構造の高さと原子半径\(r\)の関係を求めたいと思います。

図16

六方最密構造の高さは図16の青やじるしで表したところです。六方最密構造の高さを\(l\)としたとき、まず、\(\frac{l}{2}\)を求めたいと思います。ここでは、原子半径を\(r\)とします。

図16における正六角柱の上面の中心の原子の中心と黄色の3つの原子の中心を頂点とする正四面体を考えると、図17のようになります。図17ではそれぞれの原子は離れていますが、隣り合う原子はすべて接しており、正四面体の一辺の長さは原子半径\(r\)の2倍の\(2r\)となります。

図17

まず、図18のように各頂点を\(\rm A~D\)とします。また、点\(\rm A\)から\(\triangle{\rm BCD}\)に降ろした垂線の足を\(\rm H\)とします。このとき、線分\(\rm AH\)が\(\frac{l}{2}\)と等しくなります。よって、\(\rm AH\)の長さを求めましょう。

図18

点\(\rm H\)は正三角形の中点です。点\(\rm D\)と点\(\rm H\)を通る直線と線分\(\rm BC\)の交点を\(\rm M\)とします。このとき、点\(\rm M\)は線分\(\rm BC\)の中点となります。

図19

このとき、\(\triangle{\rm CDM}\)は\(\angle{\rm CMD}=90°\)となる直角三角形となります。これより、線分\(\rm DM\)の長さは三平方の定理から

\[(2r)^2=(\rm DM)^2+r^2\]

\[∴ {\rm DM}=\sqrt{3}r\]

となります。ここで、点\(\rm H\)は\(\triangle{\rm BCD}\)が正三角形であるため、\(\triangle{\rm BCD}\)の中心であり重心となります。これより、線分\(\rm DH\)と線分\(\rm HM\)の長さの比は、\({\rm DH}:{\rm HM}=2:1\)となるので、線分\(\rm DH\)の長さは、\({\rm DH}=\frac{2\sqrt{3}}{3}r\)です。

次に、\(\triangle{\rm ADH}\)は\(\angle{\rm AHD}=90°\)の直角三角形であるから、三平方の定理より

\[(2r)^2=(\frac{2\sqrt{3}}{3}r)^2+(\rm AH)^2\]

\[∴ {\rm AH}=\frac{2\sqrt{6}}{3}r\]

となります。よって、六方最密構造の高さ\(l\)は

\[\frac{l}{2}=\frac{2\sqrt{6}}{3}r\]

\[l=\frac{4\sqrt{6}}{3}r\]

 

以上をまとめると

単位格子の一辺の長さ(l)と原子半径(r)の関係

①体心立方格子:\(4r=\sqrt{3}l\)

②面心立方格子:\(4r=\sqrt{2}l\)

六方最密構造の高さ(l)と原子半径(r)の関係

\(l=\frac{4\sqrt{6}}{3}r\)

5. 充填率

金属結晶において、金属原子を互いに接する球であると仮定したときの、単位格子の体積に占める単位格子中の金属原子の体積の割合(百分率)のことを充填率をいいます。

充填率

\[充填率=\frac{単位格子中の金属原子の体積}{単位格子の体積}\times100\]

それでは、体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造それぞれの充填率を求めてみましょう。

以下では、\(π=3.14、\sqrt{2}=1.41、\sqrt{3}=1.73\)として考えます。

5.1 体心立方格子

ここでは、単位格子の一辺の長さを\(l\)、原子半径を\(r\)とします。

まず、単位格子の体積は\(l^3\)です。また、単位格子中の原子の総体積は、単位格子中に原子は2個分含まれるので、\(\frac{4}{3}πr^3\times2\)です。ここで、上で求めたように体心立方格子では\(r=\frac{\sqrt{3}}{4}l\)であるから、原子の体積は\(\frac{4}{3}π(\frac{\sqrt{3}}{4}l)^3\)と表せます。よって、求める充填率は、

体心立方格子の充填率

\[体心立方格子の充填率=\frac{単位格子中の金属原子の体積}{単位格子の体積}\times100\]

\[=\frac{\frac{4}{3}π(\frac{\sqrt{3}}{4}l)^3\times2}{{l}^3}\times100≒68(%)\]

 

5.2 面心立方格子

ここでは、単位格子の一辺の長さを\(l\)、原子半径を\(r\)とします。

まず、単位格子の体積は\(l^3\)です。また、単位格子中の原子の総体積は、単位格子中に原子は4個分含まれるので、\(\frac{4}{3}πr^3\times4\)です。ここで、上で求めたように体心立方格子では\(r=\frac{\sqrt{2}}{4}l\)であるから、原子の体積は\(\frac{4}{3}π(\frac{\sqrt{2}}{4}l)^3\)と表せます。よって、求める充填率は、

面心立方格子の充填率

\[面心立方格子の充填率=\frac{単位格子中の金属原子の体積}{単位格子の体積}\times100\]

\[=\frac{\frac{4}{3}π(\frac{\sqrt{2}}{4}l)^3\times4}{{l}^3}\times100≒74(%)\]

 

5.3 六方最密構造

ここでは、原子半径を\(r\)とします。六方最密構造の充填率を求めるには、単位格子ではなく正六角柱を使います。

まず、正六角柱の体積を求める。正六角柱の上面(もしくは下面)が一辺の長さが\(2r\)の正三角形6個からできているので、上面(もしくは下面)の面積は\(\sqrt{3}r^2\times6\)。また、上で求めたように六方最密構造の高さは\(\frac{4\sqrt{6}}{3}r\)となるから、正六角柱の体積は\(6\sqrt{3}r^2\times\frac{4\sqrt{6}}{3}r=24\sqrt{2}r^3\)です。

また、原子の総体積は\(\frac{4}{3}πr^3\times6\)です。よって、充填率は

六方最密構造の充填率

\[六方最密構造の充填率=\frac{単位格子中の金属原子の体積}{単位格子の体積}\times100\]

\[=\frac{\frac{4}{3}πr^3\times6}{24\sqrt{2}r^3}\times100≒74(%)\]

 

以上より、充填率をまとめると次のようになります。

充填率

①体心立方格子:\(68%\)

②面心立方格子:\(74%\)

③六方最密構造:\(74%\)

面心立方格子は、立方最密構造とも呼ばれ、「最密」であることは六方最密構造と同じです。これは、充填率がともに74%であることを考えればよくわかると思います。

 

6. 最密構造について

最密構造には、立方最密構造(面心立方格子)と六方最密構造があります。この両者の違いについて考えてみましょう。

最密構造の模型を作りましょう。まず、球を(平面的に)密に並べ、第1面を作ります。次に、同様に第2面を作り、第1面のくぼみの上に第2面の球が乗るように重ねます。(図20)

図20

次に、第3面を作り、第2面のくぼみの上に第3面の球が乗るように重ねます。このときに、人によって異なるものがでできあがります。

第2面のくぼみには、互いに状況の異なる、2種類のくぼみがあります。1つは、真下に第1面の球があるくぼみ(くぼみ1)です。もう1つは、真下に第1面の球がないくぼみ(くぼみ2)です。この2種類のくぼみは隣り合っていて、両方のくぼみに同時に乗せることはできません。したがって、どちらのくぼみに乗せるかによって、異なったものができます。

図21

第2面のくぼみ1に球が乗るように第3面を重ねると、六方最密構造になるます。つまり、六方最密構造は第1面と第3面で同じ位置に球があり、AーBーA型ともいえる構造をしていることになります。(図22)

図22

一方、第2面のくぼみ2に球が乗るように第3面を重ね、さらに、第3面にある「真下に第1面の球があるくぼみ」球が乗るように第4面を重ねると、立方最密構造(面心立方格子)になります。つまり、立方最密構造(面心立方格子)は第1面と第4面で同じ位置に球があり、AーBーCーA型ともいうような構造をしていることになります。(図23)

図23

 

7. まとめ

最後に、金属結晶についてまとめておこうと思います。

  • 金属結晶には体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造の3種類がある。
  • 配位数は、体心立方格子が8、面心立方格子が12、六方最密構造が12である。
  • 単位格子中に含まれる原子の総数は、体心立方格子が2個、面心立方格子が4個、六方最密構造が2個である。
  • 単位格子の一辺の長さ\(l\)と原子半径\(r\)の関係は、体心立方格子が\(4r=\sqrt{3}l\)、面心立方格子が\(4r=\sqrt{2}l\)である。
  • 六方最密構造の高さを原子半径\(r\)を用いて表すと、\(\frac{4\sqrt{6}}{3}r\)である。
  • 充填率は、体心立方格子が68%、面心立方格子と六方最密構造が74%である。

 

金属結晶の構造は六方最密構造が他2つと単位格子などの考え方が違ってくるのでしっかり覚えてください。

最後の最密構造についての部分は、最難関大では出題されることがあります。上位の大学を狙っている方は是非参考にしてください。

この記事は覚えておくべきことは少ないですが、問題を出されたときに自分で導き出せるようにこの記事を読んでしっかりマスターしてください!

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